....削られている...

中編4
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....削られている...

八月○日

裕二が急な転勤でベトナムに行くことになった。...まぁ大きな仕事らしく期待されての抜擢らしいし簡単に会えなくなるのは残念だがしかたない。

転勤の話が決まる三日前の晩に夢をみた。

走っている........隣には裕二だ。

後ろからなにか聞こえる!!振り返ると老人だ.....なにか色がおかしい....鉄??

鉄骨のような色をした老人が手には巨大なヤスリを持っている!!髪は後ろに束ねており顔がシワだらけで性別はわからない....肌の色が鈍い光沢がある.....あいつから逃げているようだ。

速い....追いつかれる...

「なんで追いかけてくるんだよ?」

裕二は反応がない.....正面を向いて無表情のまま俺と同じ速度で走っている..

森が見えてきた!!

森の中に駆け込み、息をひそめ身を隠す.......視界が悪く裕二とははぐれてしまった。

嫌な音が聞こえてきた...言葉にならないような怒声とヤスリを勢いよくかける音だ!

「お前も...だ!...向こうの奴も...あそこに隠れている奴も.....邪魔だったんだ!削ってやる!!」

悲鳴はない....無事なのか?.....

冷や汗で眼が覚めた。

八月○日

高志が東北に引越した。でも悪い話じゃないんだ、親戚が海外に移住するらしく家を潰すのも金がかかるし住まないかということらしい。

高志は結婚してるし子供もいる、仕事は親戚ぐるみで飲食店の経営しているから近くの支店の支店長だ。二十代後半でマイホーム、立派なもんだ.....気軽には飲みにいけなくなったな。

八月○日

七月に裕二と高志と三人で飲んだ...あれがお別れ会になったな..

明日が休みで三人共グダグダになっていた。久しぶりに思いでの場所に行ったんだ。

高校生の頃、裕二と高志は新聞配達のバイトをしていた。俺は裕二の家に泊まると原付きで一緒に新聞を配る、高志の家に泊まるときも一緒だ。二人の担当地区は近く、二人の家から中間地点辺りに山の上に工場があり配達の途中すれ違うと配り終えた後に工場の駐車場に集まり缶コーヒーを飲みながらよく話をしていた。冬に飲むコーンポタージュは美味しかった。

駐車場からの見晴らしはよく、くだらない話をしながらタバコを吸ってたんだ。

その工場は交代制でいつも門が開いていた、たまに従業員のオッサンに見付かり原付きに飛び乗り逃げるのだ。そんなちょっとしたスリルも好きだった。

高志はいつも一番先に逃げる、というかアイツは常に逃げやすい位置にいる奴だった。

今は潰れて廃工場になっていたな......荒れっぱなしで草木で森みたいになってた。

夢を思い出す...「お前も...だ!...向こうの奴も...あそこに隠れている奴も.....邪魔だったんだ!削ってやる!!」.......隠れたのは俺だ.....襲われたのは裕二だろう...向こうの奴は高志だったのか??

九月○日現在

今...夢の中のようだ...森のようになった廃工場の駐車場にいる。

足が歩きだす...中に入ってしまった.......暗闇の中になにかいる!!

あの鉄の色をした老人だ...顔が怒りに満ちている...隣には銅の色?綺麗な十円玉のような色をした同じ顔の老人だ....口だけが笑っているように見える...

嫌だ!あそこには行きたくない.....足は止まってくれない..

だんだんと周りが見えてきた...巨大な万力...電動ドライバー....丸ノコ..サンダー..何かわからない道具がある..

足は進む...もう無理だ...

犬の鳴き声がする!!一匹の犬が飛び込んできた!!

タロイモだ!

鉄色の老人に噛み付いた....

眼が覚めた!!

悪夢だったがタロイモのおかげで助かったようだ...タロイモは雑種で子犬の頃から飼っていた、もう五年程前に亡くなってしまったが非常に凶暴な奴だった、とにかく家族以外になつくことがなかったし、裕二は触るなと言ってるのに頭を撫でようとして噛まれ病院に行ったこともあった。

我が家の番犬だ。

朝が明けたら寺にいってみよう。工場の事で祟られているのかもしれない.....

階段を降りて水を飲みに行こう....

俺の意思とは別に足が階段を降りていく!!

俺の視界にうつるのは手招きする銅色の老人だった!....相変わらず口だけが歪んで笑っているように見える.......

鉄色の老人が狂喜に満ちた表情でしゃがれ声の奇声をあげながら万力にはさまれた何かをヤスリで削っていた........ヤスリは赤く染まっている...タロイモなのだろう...体が半分になっていた..................「お前は昔から気に入らなかったんだ!全部削ってやる!!」鉄色の老人のしゃがれ声が聞こえる...........銅色の方は歪んだ口で笑っているようだ...

なんで俺だけがこんな目にあうんだ..............................アイツラフタリナラヨカッタノニ.......................................終

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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