中編3
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トイレットペーパー

この日、俺は休日だというのに朝早くから出勤してました。

いつもだったら4~5人はいる事務所も今日は俺一人。

せっかくの日曜日なのに仕事なんて、まったくついてない…しかし、明日の事を考えたらどうしても今日中にやっとかないといけないしなぁ…せめて昼には帰宅出来るようにと、まだ陽の昇らない朝の5時に出社したんです。

事務所に着き、入口ドアの鍵をカチャカチャと開けてすぐに全ての電気をオン。

PCの電源を入れ、ウインドウズが完全に起ち上がるまでコーヒーで一服タイム。

タバコを一本吸い終わり、さあ仕事に取り掛かるかと腰をあげるや否や、不意に大便をもよおしちゃいました。

タバコとコーヒーが効いたかな…。

まあどうせ誰もいないんだし、携帯でも見ながらゆっくりと用をたすか。なんて思いながらトイレへ。

携帯見ながらゆっくりと用をたし、すっきりしたところでトイレットペーパーに手を伸ばしたら、

「ゲッ!紙がちょっとしかないじゃないか! これじゃあ足りないだろう~」

慌ててトイレ内をキョロキョロ見回すと、上の棚に予備が置いてありました。

「ああ~、よかった~」

ホッと胸を撫で下ろしながら中腰の姿勢でトイレットペーパーを取ろうとした瞬間、

バチンッ!

いきなりトイレの電気が落ちちゃったんです。

「ひっ!」

いきなりのことでビックリし、なぜ突然電気が落ちたのかを考えて全身がガクガクブルブル。

真っ暗闇の中、無意識のうちに全神経が音に集中していく。

なんか変な音や声が聞こえてきたら嫌だなぁ…と思いつつも、こういう時って心情に反するっていうか、逆に鼓膜は研ぎ澄まされていくんですよねー。

両腕にはびっしりと鳥肌を立ち、怖くて動けないでいると、1分も経たぬうちにパチッ、パチパチッと何事もなく電気が復活。

「おっ、点いた! こえ~、マジで怖かった~! 勘弁してくれよ~、まったく」

恐怖心を取り除くためワザと大声で言いながら着座。

「あっ、紙、紙っ!」

早くここから出ようと思い起き上がると、棚の上に置いてあったはずのトイレットペーパーがなくなっている。

「あれ? 紙がない??」

不思議に思い、辺りをキョロキョロ。

しかし、どこにもない。

「な、なんで!? ああ~、もう、しょうがないなぁ!」

この時点で恐怖心がマックスになってたんで、なくなったことを詮索するのはすぐに止めました。

仕方なく僅かに残っている紙で拭こうと思い、左にあるトイレットペーパーを見たら…

「―――ッ!?」

全身の毛が一瞬で逆立ちました。

なんと、棚の上にあったはずの新しいトイレットペーパーがそこにキッチリとはまってたんです!

鳥肌が頭のてっぺんから下へプツプツプツプツッと立っていくのが分かりました。

や、やばい…

なんか、やばい気がする…

電気は点いたものの、恐怖で身体が動かない。

逆立つ毛、また、その開いた毛穴に一本一本針を差し込まれたような感覚。

これまで心霊体験など一度もしたことのなかった俺は、凄まじいパニック状態に陥りました。

何分くらいだろう…暫く経ってからようやく腕を動かせるようになったんで、右手を伸ばし恐る恐る紙を引っ張り、これまた恐る恐る尻を拭いて水を流しました。

ガーッ、ゴゴゴッ――!

普段の『ジャー、ジョポジョボ』といった音とははまるで違うトイレの水流音!

「ひえっ!」

俺はおもわず小さく鋭く叫んでからビクンッとその場で身体を跳ねあげました。

歯をカチカチ鳴らしながら急いでトイレから出ると、ふと誰かが視野の中に!

だ、誰かいる…!?

俺の視野に入った誰かは、こちらに顔を向けることなく事務所の入り口まで行き、スーッとドアを突き抜けていきました。

驚愕の光景に身体は硬直し、止まることない悪寒で歯はガチガチと鳴りっぱなし。

結局、窓から朝日が差し込むまで一歩もその場から動けませんでした。

もう仕事どころじゃなく急いで家に帰ったんですが、視野に入ってきた人物をよーく考えてみると、もしかしたら先月亡くなった上司かもしれません。

部下思いの素晴らしい上司でした。

休日なのに朝から仕事しにきた俺を労いにでも来たんでしょうか…。

※萎えさせるようで申し訳ありませんが、これは創作です。

怖い話投稿:ホラーテラー 梅太郎さん  

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