短編2
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エレベーターの怪

かなり昔の話になります。私は当日振付師の仕事をしていました。

芸能界という華やかな業界人相手の仕事でしたのでスケジュールは早朝から深夜までいつも詰まっていました。

家にはほとんど寝に帰るだけ。それでも忙しさを忘れられる環境が欲しかった為、六本木にあるマンションの一室を借りました。

引っ越してから半年経った頃、私の住むマンションの8階で殺人事件が起こりました。

男女間のもつれで住人だったホステスの女性が交際中の男性に刃物でめった刺しにされるという事件でした。

私は早朝帰宅する事も多かったので仕事帰りのホステスとエレベーターを共にしたわいもない会話もする事がよくあったのでなんだか他人事に思えなくなり悲しくなりました。

シャネルの香水にロングヘアーの長身の美人な人でした。

事件の次の日、警察の人とエレベーターが一緒になり8階でエレベーターの扉が開きました。廊下の突き当たりの真っ正面の部屋の扉には立入禁止のテープがありました。彼女の部屋です。生々しさが伝わってきました。いつも彼女が8階で降りるとき『おやすみなさい』と微笑んでくれたのを思い出しました。

マンションは事件で騒々しい日が続きましたがしばらくすると忙しい毎日で事件の事はすっかり忘れて仕事に没頭していました。

事件から半年程経ったある日、帰宅しようとエレベーターを押すと若いホステス風の女の子が駆け寄り『一緒に乗ってもらえませんか』と声をかけてきた。もちろん承諾しましたが理由を聞くと『あの事件の被害者の霊が出るって噂なんですよ。私の部屋9階なんですよ。確かに9って押してるのに必ず8階で一回止まるんですよ。扉が開いて被害者の部屋が見えるじゃないですか。もぉ怖くて。』と半泣き。

そんな噂初耳だった。私は怖がる彼女をなだめて一緒にエレベーターに乗り込んだ。

続く

怖い話投稿:ホラーテラー アネモネさん  

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