中編4
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トンネル

ピンポン、R先輩を投稿したかずよしです。

9年ほど前の話です。R先輩の件から心霊関係に興味を持ち始めた僕は、大学の友達

を誘って心霊スポット巡りをしていました。しかし、R先輩のように僕たちをリード

してくれる存在もおらず、ただ心霊スポット行って、怖がって帰るだけ。

遊びの延長のような気分でした。特に、県で2番目に有名なトンネルはお気に入りで

何度か足を運び肝試しをするなど、まさしくやりたい放題でした。

夏に仲の良かった高校時代の後輩が帰ってきたとき、ふとした話からそのトンネル

の話になりました。後輩は多少見える男で、面白そうだから行ってみたいとのこと。

時間も夜の2時まで待ち、せっかくなんでもう1人友達を呼び、3人でそのトンネル

へ向かいました。

そのトンネルは今はもう使われておらず、国道からそれて山道を10分ほど車で走っ

た所にあります。民家はすぐに無くなり、右に左にくねくね曲がる山道を進んで

行きます。両側は木々に囲まれていて月の明かりも届かないくらいの暗がりです。

木と木の間の暗闇が不気味で、その道が延々と続くような錯角に捕らわれた頃に、

そのトンネルは姿を現します。

入り口がガードレールで塞がれたトンネル。暴走族らしい人たちが残した落書き、

使われていない道路はひび割れていて、一層恐怖心を煽ります。ほんの微かな月光

のおかげでぼんやりと見えるトンネルの輪郭。それでも、入り口から向こうには

完全な闇の空間が広がっています。

中に入ると溜まった雨水が滴り落ちる音が絶えず聞こえ、たまに首筋に落ちる水滴が

たまりません。アスファルトがところどころ剥がれ、でこぼこになった道、よほど

注意しないとつまずいてしまいます。遠くに見える出口は明るくは無いが、回りの

闇のお陰でかろうじて見える程。まさに、肝試しに最適なスペースです。

話は戻りますが、僕の車に乗った一行は国道をそれて山道に入りました。助手席は

友人、後部座席には後輩の位置関係です。民家が無くなり、両側が木に囲まれた頃

です。キーンと耳鳴りがしました。気にせずに走っていると頭痛。一応、後部座席の

後輩にそのことを伝えると、「帰った方がいいかもね」とのこと。

今までこんな事は無かったので、今回はおとなしく帰ることになり、細い山道で無理

矢理にUターンをして引き返し始めました。走り出してすぐに、

「かずよしさん、、、緑色のタクシーなんて見たことないよね。」

「え、、、」っと僕が答えようとすると

後輩は後部座席から体を乗り出し、車のルームミラーをひっくり返しました。

「絶対に後ろを見たらいかんけん。」

意味不明

とにかく車を走らせました。後輩はずっと体を前に乗り出したまま後ろを見ています。

「逃げて!」

後輩の怒鳴り声。

とにかく車を走らせました。なんとか国道までたどり着き、町中の方に車を走らせ

たとき、また後輩が怒鳴りました。

「窓を、、、窓を閉めて」

当時、手回しの車に乗っていた僕は、全力で窓を閉めました。

「来るな!来るな!」

後輩は叫び続けています。とにかく、車を走らせ、町中に入った頃に

「もう大丈夫っす。」

と言ってくれました。近くのコンビニに車を止めて、事情を聞くことに。

山道でUターンをした時、僕たちの後ろにはタクシーが待機していたそうです。

運転手しか乗っておらず、また、もう1人の友人には確実に見えるはずなのに何の

リアクションもない。自分だけに見えている事に気づいた後輩は、もし僕に見えて

パニックになったら危ないと思い、ルームミラーをひっくり返したそうです。

その後もタクシーはずっとついてきて、国道に入る頃には僕の車に並んだそうです。

「なんだ、普通のタクシーか。」と後輩が安心しかけた瞬間に、後輩は驚愕のシーンを

目撃したそうです。

タクシーの運転手が自分の車の窓から僕の車に乗り移ろうとしていた瞬間を

急に窓を閉めたので運転手は車内に入れずに、しばらく車にぶら下がった後に消えた

そうです。

気休め程度に塩を買い、車に振りかけました。手形が残っていたそうですが、怖くて

確認していません。その後輩とは今でも仲がよく、今晩も飲みにいくのですが、

もう、色々なモノが見えることも無く、平穏な毎日を過ごしているそうです。

そして、、、

そんな怖い思いをした年の秋に、僕はとある女性に知り合います。そして、懲りない

僕は肝試しと称して、その女性を含め10人の仲間でまたあのトンネルを訪れます。

僕たちはある事件をきっかけに仲良くなることができました。

トンネル内で偶然並んで歩いていた僕たちは妙な違和感に捕らわれます。彼女の左を

歩いている僕の右足が動きずらいんです。なんというか、人の左手で掴まれている

ような感覚。彼女の方を見ると目が合いました。暗黙の了解、同時に頷いて走り出す

僕たち。

こけないように走ってトンネルを出た僕たちは一気に意気投合しました。彼女は右手

で足首を捕まれたそうです。

「こんな事ってあるんだね。」

怖がった表情を見せながらも精一杯微笑んでくれた彼女が印象的でした。

その1週間後、僕たちは付き合うことになりました。

ピンポンで離れるあの日まで、、、

怖い話投稿:ホラーテラー kazuyoshi2006さん  

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