「毛むくじゃらは鼻を近づけて私が着ていた服の臭いをかぎ始めたの。
そしたら今度は、おたけびをあげて私の服を引き裂き始めたのよ・・恐怖で心臓が破裂しそうだったわ。
その後も鼻を近づけて臭いをかぎ続けていたけど、私の股間付近で鼻を止めたの。
毛むくじゃらはもう一度ほえると、私に覆い被さってきたの・・・」
次の日、目が覚めたオクサナは自分が囚われの身であること、そしてあの毛むくじゃらの奥さんになってしまったことを悟った。
タング(ビッグフット)が出て行くときは洞穴の出口を大きな石で塞いでいくので、少女にとってその石をどかして逃げ出すことは不可能だった。
タングは彼女のためにブルーベリー、ナッツ、きのこ、生肉を持って帰ってきた。
それでも毎晩のように繰り返される性交渉は、オクサナにとっては拷問だった。
洞穴の片隅には湧き水があり、その水はどこかへ流れ出ていっていた。
タングは少女が外へ出るのを厳しく拒絶していたが、少しずつ「美女と野獣」の関係が進展し始めた。
タングはオクサナが所持していたCDプレーヤーに強く興味を示していた。
持っていたCDはKINOというバンドのベスト版だけだったが、彼女がヘッドホンをして音楽を聴く格好を見せると、
タングはその真似をしてCDを聴き始めた。それどころか、特定の一曲をえらく気に入ったようだった。
やがてバッテリーが少なくなり、音楽が聴けなくなってくるとタングは怒り始めた。
「私はプレーヤーから電池を取り出して、これが無くなると音楽が聴けなくなるのとジェスチャーで説明したわ。
次の朝、タングは一本だけ電池を持って外へ出て行ったの。。
その夜戻ってくると、手には電池パックが握られていたわ。」
タングが近くの町へ行き、小さな店に侵入して電池パックを奪ってきたのは明らかなことで、
このときオクサナは、自分がいる洞穴からそう遠くない場所に町があるということを悟った。
ずっと洞窟に幽閉されていたオクサナには朝夕の変わり目、そして季節の移り変わりが全く分からなかった。
やがてタングが冬に備えて食料を蓄え始めると、外はもう秋なんだと窺い知ることができた。
続く
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話