短編2
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白い服の女Ⅱ

背の低い鏡面台があるでしょ。お姉ちゃんは立ってるから腰より下しか写らない。

そこに、もうひとり分の足が写っていたの。泥で汚れた裸の足。薄汚い白いスカートがすぐ背後にピッタリと並んで立ってる。

首筋に息が掛かりそうなほど近いのに、どうして気がつかないのかしら。

これには流石のお姉ちゃんも頭が真っ白になって動けなかったらしいわ。可哀想にね。

金縛りとも放心ともつかない状態のままじっとしていると、青白い足が鏡の中で周囲を ぐるり ぐるり と回り始めたそうよ。

まるで品定めでもするように。もしくは「ねえ見てるんでしょ」とでも言いたげに。

極度の緊張のためでしょうね、お姉ちゃんは段々と息苦しくなって、大声を出しながら外へ逃げ出したい衝動にかられたの。

すると目は自然と窓へ向かい……馬鹿よね。窓ガラスが鏡の代わりになって、今度こそ幽霊の全身が見えてしまった。

肩まである長い髪。顔は所々が崩れて表情が見えない。腹は根こそぎないのか極端に抉れて

全身のバランスが有り得ないことになってる。棒きれのような腕。白い服。

そいつが「やっと気がついた」とばかりに頬ずりしてきて、いい加減に気を失ったそうよ。

2人は互いに目撃した幽霊を絵に描き合うと、特徴が完璧に一致した、これはどうしても実在してるとしか思えない、だからどうにかしろ! ですって。

どうしろっていうのよ。たしかに、ここまで聞いてしまった以上、何もせず収める訳にもいかない。

とりあえず、私の部屋の四方に盛り塩をして納得して貰ったわ。これで済むかしら。

それにしても子供って素直な感性を持ってるのね。「白い服の女」ですって。定型句よね。死装束か貞子か知らないけれど、可愛らしいわ。あるいは本来の死者はそういう格好なのかしら。

まぁ仮に2人が本当の幽霊を見たとして、偶然でしょうね。たまたま波長が合ってしまっただけ。

ふつうは縁が深くないと見たり、感じたりは出来ないものよ。まして、あの娘達に霊感なんてある訳ないわ。

だっていつも私の背後にいる貴方に気がついてないんだもの。

それとも貴方、娘には見えないよう姿を消してるのかしら。

そうよね。殺されて当然の男でも2人の前では父親でいたいものね。

娘の健全な成長を望むなら、そのまま大人しくしていることね。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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