中編4
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霊同士のジレンマまとめ

遅くなりすみませんでした。

最後ですのでお付き合い願います。

高校が違ってもよく遊んでいた中島と自分は大学生になっても相変わらずで、

中島が社会人になりお金に余裕があるため、飲み代などをよく自分におごってくれました。

そんな中島との最近の飲みでの話。

「おまえさぁ、兵藤ちゃんのこと覚えてる?」

今までタブーとされてきた話に触れた中島だったんですが、

何年も前のことでしたので

「お前が化け物見たやつだろ?

それがなんかあったん?」

普通に返した自分に中島は

「あのことなんだけど仕事で先輩が現場に行くのに俺の家まで迎えに来てくれたんだよ。

そん時あそこ通ったんだよね。」

あんなに怯えてた中島が仕事のためにあの場所を通ったことを聞いて、

あれ以来、自分も用務員さんの自宅周辺は行っていなかったために

「今どうなってた?」

と聞くと予想を覆す答えが…

「とりあえずまだ空き地で買い主を募集する看板が立ってる。

そんなことより

まだあの化け物がいる。」

もうその言葉を聞いたときは唖然としました。

何年も前なのにあの場所にまだいるというのです。

「しかもあの時みたいに兵藤ちゃんが野島をいたぶってるけど野島は笑ってた。」

「なんでまだそんなことしてん!?」

自分が尋ねると

「高校の時に婆ちゃんが死んだ時にお経をあげに来たお寺の和尚さんにこの話をしてどういうことなのか聞いてみたんさ。

したらな、その年取った和尚さんは

「その化け物と呼ばれてる2人は2人で1つの妖怪のような存在なんでしょう。

女性の方は生前に自分が受けた苦痛をその男に堪え難い苦痛として与えたい復讐、憎悪の一心で男を攻撃しているのでしょう。

しかし男はその女性から受ける苦痛を自らの快楽として捩曲げて受け止め、

愛する人からもたらされる快楽をより欲しているのでしょう。

つまりですね、

この二人には成仏という概念がなく成仏しないんですよ。

女性は男を痛め付けたい一心ですが、それを男は最大の快楽として感じてより一層その快楽を求めます。

そして苦痛を感じない男に女性は更に男を痛め付けていく……

この二人の行為はジレンマになっていて、終わることのない無限地獄になっているのですね。

それにきっと私どものような力を持った者達が二人を成仏させようと阻むことなら二人は

男への復讐を遮る者、

女性からの快楽を遮る者

として私どもを認識して、

憎しみを晴らす女性と悦楽を求める男という絶対に合わさることのない両者が結果的にですが2人して1つの妖怪として私どもに牙をむくでしょう。

私のように長くこの身を仏道に捧げた者でもきっとその二人の呪縛を解き放つことは不可能です。

欲に溺れた男も去ることながら、

死んだ後も憎悪を晴らすために姿形を変えてしまった女性の持った復讐の炎は誰にも消せない強い炎なのです。

この世で1番恐いものとは人の心、その中でも怨み、憎悪の心なのですよ。

あなたは二人の姿を見たと言っていますがあの二人を止めるようなことをしては絶対にいけませんよ。

こう話している今も、

あの二人は無限地獄に陥って終わりのない憎愛劇を繰り広げる、

もののけと化しているんですから…

もし彼女らを妨げることがあるようなら彼女らはその憎悪の矛先をあなた達に向けますよ。

そして全力であなたを排除するでしょう。

生前のあなたがお世話になった女性達だとは今は思わない方が良いですよ。

今は只々、復讐を遂げるため、果てない快楽を満たすためにこの世に残る鬼、妖怪なのですよ。」

って神妙な顔して俺に言ってきたんだ。

もうどうにもなんねぇな…」

この話を聞いた自分はゾッとしたが、

なんだかやるせない気持ちになってしまった。

用務員さんは本当に化け物になってしまった。

しかも天国へ行く道を自ら捨てて未だに残る復讐の執念を晴らすために化け物になってしまった。

お寺の和尚さんが言っていたように憎しみや怨みがどれだけ恐ろしいか身に染みた出来事でした。

自分も人に怨まれるようなことだけは絶対にしたくないと心から思いました。

みなさんも人への怨みを買うような行為をするのは避けてくれと心から願います。

そして中島と自分は深酒をしないで帰路に着きました。

長文ありがとうございました。

初心者の投稿にコメントを書き込んでくださった方々のアドバイスを踏まえ、

まだ他にいくつかこれよりは全然小さな事件ですが、経験していますのでまたいつかお会いしましょう。

怖い話投稿:ホラーテラー 乾さん  

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