長編8
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タノカミサマ

長くなります。

堅苦しい文面ですが、暇な方は読んでください。

話の途中で、つじつまが合わない点があります。何の意図があってそうなったかは、わかりません。

高校生の時に友達8人で百物語をしたときに1発目から話た体験談です。

彼を《僕》とします。

僕の町は、稲作が有名な小さな町ですが飲食店の方が遠くから買い付けに来るくらい おいしいと評判のお米を作る町です。

それを陰から見守る田の神様を、地元では 【タノカンサァ】とか【タノカミサマ】と呼んでいます。

稲刈りが終わり、荒れた田んぼを掘り返し用水路から水をひいて田植の準備にととりかかる時期でした。

僕の実家は、周りを田んぼに囲まれたところです。もともと、この家の土地は祖母の土地で息子の父が家を建てるときに田んぼを埋めて稲刈りが終わり3ヶ月かけて田んぼに石を敷き詰めて家を建てたそうです。

普通なら、家を建てたこの土地でも時期になれば田植をしていましたが今年からはしなくなりました。

いつも一緒にいた近所のAくんも、家を建てる予定と聞きましたで。

ちなみに、Aくんは昔から地元では有名な地主さんの家系で金持ち…軽く劣等感ありましたけど仲良かった。

そして、ある日

夕方6時くらいにクラスの違う近所のA君と帰っていると、僕の新しい家の2つ隣りの田んぼで背中を向けて田植をしているお婆さんがいました。

春が過ぎたので、6時でもまだ明るかったのですが普通5時くらいには仕事を切り上げる。

しかし、その小さなお婆さんは急いでいるかのようにせかせかと青葉の稲を手作業で植えていた…ように見えた。

しかし、青葉の稲を持つどころか…何かザルのようなものを持つ左手から何かを右手で取って植えていた。

僕もAくんは農家ではないが、それが稲の苗でないことは確かだった。

僕『何を植えてるのかな?』

A『なんだろね?』

僕らの田舎では、誰であろうと声をかけ挨拶する風習がある。

A『こんにちは!』

と、Aが声をかけるが道路から女性がいるとこまで距離25メートルくらい離れている。

聴こえていないようだ。

僕『こ、こんにちは!』

と、Aより大きな声でお婆さんの背中に話しかけると動きがピタッとやんだ。しかし、またすぐに何かを植えだした。

A『ちぇ、なんだよ。』

僕『忙しいんだよ…』と、歩きだしたが ふと振り返ると腰を曲げた状態でお婆さんがこちらを見ていた。

手ぬぐいを頭に巻いていたので、ちゃんと見えなかったが70歳〜80歳くらいの小さなお婆さんだった。なぜか、こちらを見て笑っていた。

Aくんは、振り返らず先に行ってしまった。

お婆さんに軽く会釈をしたが、ただただ笑っているだけだった。

すぐ家に帰り着いた。『ただいま!』と帰ると母親が出てきた。『おかえり』いつもの光景だ。

僕『もう田植えするんだっけ?』

母『まだ早いよ。苗が、まだ成長してないからね。』と、言う。

僕『でも、隣の田んぼで田植えしている紫の服を着たお婆さんを見たよ?』

母『え…紫…。』と、サンダルを履いて出たが『誰もいないよ?』と返ってきた。

僕『え?』と、僕も脱ぎかけた靴を履き外に出て田んぼを見たが誰もいない。

つい2分ほど前は、いたのに…

『どうした?』と、家から父が出てきた。

母『…。』

僕『うん。さっき紫の服を着たお婆さんが田植えしていて…でもいなくなってて…さ』

『本当か?…そうか。』父は下を俯いたまま呟いた。

次の日、またAくんと学校から帰ってくると家の隣の田んぼに昨日の小さなお婆さんがいました。

僕『今日もか…大変だな…』と、言うとAくんが

『またいるよ、あの婆さん。もう無視だよ』と言うとてくてく歩きだした。

また、素通りした。

振り返ってみた。

やっぱり、婆さんはこちらを見て笑顔で何かを植えている。

今日も紫色の服を着て、白い手ぬぐいを頭に巻いている。

僕『あ、待ってよ!』先に行くAくんを追いかけた。

僕『ただいま!』

ガタガタ…玄関が閉まっている。今日は、母がいないようだ…。

両親は共働きだから、遅いときもある。

しょうがないな…と、ランドセルの横に付けている鍵を外して玄関を開けた。

ガラガラ…

すると、部屋の奥から何人もの話し声が聞こえた。

なんだろ…

奥の和室に人がいるようだ…

近くまで行くと、誰かの泣く声まで聴こえてきた。

和室の戸を少しだけ開けて覗く。

『うぅ…うぅ…』

母が泣いている。その横には、寄り添うように父がいた。

父の兄もいた。祖母もいた。

親戚一同が集まっていた。

どうしたんだろ…誰か亡くなったのかな…。

父『なぜ、…くそ!』

父が涙ながらに怒鳴る。

『それが決まりなんじゃよ…お前の父親もそうだった。』と、祖母が言うと父は歯を食いしばりながら畳に拳を振り下ろした。

ドン

父『…阻止することは出来ないのか婆ちゃん!』と、言うと

『そうじゃな…梅さんに聞いてみよう…。』

梅さんとは、近所で物知りのお婆さんで昔話などを聞かせてもらった記憶がある。

『このことは、内密だぞ。』と父の兄が言う。

みんなが、重い腰を上げた。

見つかる!そう思い、足音をたてずに玄関へ行き

今帰ってきたかのように靴を脱ぐ仕種をした。

スーッ

和室の戸が開き、父が話しかけてきた。『今、帰ったのか?』

僕『あ、うん。』

『おかえりな』真っ赤な目の父は、一生懸命に笑顔を作りながら言った。

夕食時間、母も目を赤くしながら台所に立っていた。いつもより遅い夕飯だ。

何があったの?そう聞いたらダメな雰囲気だった。しかし…

僕『母さん、どうしたの?』

と、言うと『目が痛いだけよ…』と笑った。

でも、作った笑顔だ。

父は、書斎に閉じこもり何やら誰かと電話で話している。

一体、何なんだ…。

あのお婆さんの話をしてからというもの、家族がバラバラになったようだ…。

明日、お婆さんに話しかけて確かめてみよう…。お婆さんが何か知っているはず。

次の日は、朝から雨だった。

またAくんと帰る。

まだ明るい夕方だが、雨が降っているせいか6時なのに辺りは暗かった。

いつもの田んぼ。

お婆さんが見当たらない。

A『あれ?おらんね。』と、Aと僕はキョロキョロと見渡す。

すると、

ガリガリ…ガリ

と小さな音が聞こえてきた。音は僕の家から聞こえる。

A『おまえんちから、ガリガリ聞こえるぞ!』と、Aくんが走り出した。少し正義感の強いAには、あのお婆さんのせいでうちの家族がどん底に陥った話をしているので、火がついたようだ。

俺もAくんの後を追い、自分の家の庭に入った。

うちの家は、隣りの田んぼより1メートルくらい石で高く土地を盛り上げている。水害が起きると、床下浸水するからだ。

その周りを取り囲むように、木を植えている。周りから家の様子が、はっきり見えないようになっている。

その音は、家の裏から聞こえてきた。

ガリガリ…ガリガリ

何の音だ…

すると、裏の田んぼと家の境目に誰かいる…。

ガリガリ…ガリガリ

A『おい…見てみろよ…あの婆さんだぜ…』と、Aが小さい声で木の隙間から下に指をさす。

ガリガリガリガリ…ガリガリ

僕らの1メートル低い足元で、紫の服を着た婆さんがこの音を出している。

ガリガリ… ハァハァ…

声まで漏れている…

上から覗き込む…

そして、唾を飲んだ。

爪は剥がれ、血が噴きだしながらもコンクリートで固められた石を取ろうとしている。

取れるわけはない。しかしそれでも…それでも取ろうとしている。

取れない石を手を使い、歯を使い取る。が、取れない。

石に噛み付き欠け落ちながら…それでいて歯茎からも血が流れだす…

お婆さんが座り込みながらも…必死に…歯茎を石に擦りつけながら血が飛ぶ。

僕『うわぁ!!』と、必然的に声が出てしまった。

目が合った

死ぬ…そう直感した。

血まみれの顔で見上げた口には歯がない。

A『え…婆ちゃん?な、何やってんだよ…』

Aは取り乱すことなく、『婆ちゃん?』と言う。

そう帰り道に見ていた老婆はAの婆ちゃんだった。

身体が弱く寝たきりだとは聞いていたが…

でも、意味がわからない。なぜAの婆ちゃんがうちの家の石を…しかも血まみれ…

頭がパニクった。

そして、腰が抜けた。

『タノカミ…ハ…ワシャ……ジャ…』

何やら、白目をむいて血を吐きながら言っている…が、よく聞こえないが自分がタノカミだと言う。

そんな馬鹿な…タノカミサマは、守り神だぞ。

気付くとAくんが、いない。

A『やめろ!婆ちゃん!』と、いつの間にか木と木の間からすり抜け田んぼに降りて、血まみれの老婆の背中を掴みかかり石から引き離そうとしているAがいた。

それを見て自分も、何かに憑かれたように血まみれになったお婆さんを助けるために田んぼに降りた。

『アーアー…イシ…イシ…ジャマジャ…ウエレン…イシが…アルト…ウエレン…』

そこまでだ。覚えている記憶は…

気がつくと…和室に敷いた布団に1人で寝ていた。

夢か…

しかし身体が痛い…

服を見ると、袖口などが血で滲んでいる。

現実か…

すると、どこかで見たお婆さんが部屋に入ってきた…祖母が助けを求めた 梅婆さんだった。

僕『な、何が起こったの??』と聞いてみた。

『子供は、知らなくていいことだよ…』

と、言う。

そして、誰かが数人廊下を走る足音が聞こえてきた。

うちの親と親戚達だった。

なぜだか、涙が溢れた…

『助かってよかった…』と、母親が泣きついた。すごく、嬉しかったのを覚えている。

次の日から、Aくんは無口になって僕と一緒に帰らなくなった。親に理由を尋ねても『梅婆さんが助けてくれた…それでいいじゃないか…』しか言わなかった。

あの帰り道で起こったことは、口止めされていたが学校の先生に相談した。

すると、田の神と対の老婆がいることを聞いた。

善と悪のような存在だという。

実は、ひっかかっていることがあった。

Aくんのお婆さんは、何を植えていたのか…

あの田んぼは、更に掘り返されていてわからなかったが

近くの用水路にお婆さんが持っていたと思われるザルのようなかごを見つけた。

そこには、大量の黒髪が…

黒髪を植えていたようだ…理由はわからない。

だがやはり、【田の髪様】に間違いはなかったようだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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