中編5
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雨中のライダー

この話は、私が以前付き合っていた彼から聞いたお話です。

彼「よし!今日も走りに行こうぜ!」

仲間「「おぅーー!!」」

彼は所謂“走り屋”でした。

それと同時に“見える人”でもありました。

彼の母親の家系がそうだったらしく

昔はそれを生業としていた頃もあったそうです。

彼の兄妹は長男の彼に、歳の近い妹二人がいましたが

母親の血を一番に受継いでいたのは彼だけだったそうです。

その日もいつものコースである“○ろは坂”に行ったそうです。

走り屋の間では有名な所で、ご存知の方も多いと思いますが

○木県・○光市の○ろは坂は紅葉の綺麗な場所でも有名です。

ですがそれと同時に

心霊スポットとしても有名な場所でもあります。

逸話は色々ありますが

その地形上、“交通事故”が多いのは確かだそうです。

その日は生憎の雨でしたが

そんな事はお構い無しで

彼と彼の仲間はいつものバイクに乗り

目的地の○ろは坂に向かいました。

彼は仲間内ではリーダー格だった為

何をする時も彼がいつも先頭でした。

もちろん“走る”時も彼が先頭でした。

彼等が○ろは坂についた時は先程よりも雨がひどくなっており

数十メートル先も見えないくらいでした。

しかし彼等にはそんな事は関係ありません。。

いつものように彼を先頭に

○ろは坂の頂上から一気に下り始めました。

さすがにいつも走り慣れてる道なだけあり

彼等は何事もなくいつものように○ろは坂を下っていました。

左右に体を傾けカーブを曲がり、ヘアピンカーブを過ぎ

○ろは坂の中間くらいに差し掛かった時

彼はある異変に気づきました。

『…斜め右後ろに、誰かがいる…』

一見普通なように思いますが、彼等の中ではありえない事でした。

“掟”“決まり”とも言うべきでしょうか。

仲間内の間では走っている間に

“絶対に彼の前や横には出ていけない”

という決まりみたいなものがあったそうです。

『ったく誰だよっ!調子にのってるヤツはっ!!』

と思うのが自然でした。

“前に出てくるな”という意味を込めて

彼はスピードを上げ前に出ようとしました。

しかしそれどこかそのバイクは彼の横にピタッと付きそして

急に彼を抜いて彼より前に出ました。

彼『くそっ!誰だアイツ!!』

“追抜いてやる”そう思いさらにスピードを上げようとした時です……!!

キッキィィーーーッガシャンッ!!!

彼『危ねっ!!』

今まさに抜ことしていたバイクが彼の数メートル前で急ブレーキをかけ

そのまま転倒したのです。

このままでは自分も転倒してしまう!

そう思い彼も急ブレーキをかけました。

幸い転倒は免れ、接触もありませんでした。

彼「大丈夫かっ!?」

急いでヘルメットを外し!

バイクから降りて駆け寄ろう!

と思い顔を上げると…!

そこには誰もいませんでした。

彼『!?』

もちろん人もバイクも

ヘルメットや破損したであろうバイクの欠片すらありませんでした。

とりあえずバイクから降りてちゃんと見てみようと思った時…!!

仲間「お~い!タカ!」

後方から聞こえてきたのは先程まで直ぐ後ろを走っていた筈の仲間達でした。

仲間A「はぁ~、俺達を置いて行くなよ~な~」

仲間B「お前危ねえ~だろ、あんなにスピード出して~」

彼「はっ?何言ってんだよ!俺は普通に、しかも、お前等の誰かが俺の前にっ…!」

と言いかけて仲間達の顔を見ました。

”全員いる“

確かに全員が彼の後方にバイクを止め、彼のことを見ていました。

『じゃあ、一体誰が??』

たった今起こった事を仲間全員に話しをしました。

勿論誰も心当たりがありませんし

そもそも彼を抜いたりしないし

仮に仲間内で彼を抜くものがいたとしたら

誰かしら声をかける!

との事でした。

しかも彼等曰く

彼のバイクは坂の中間地点より少し前から急にスピードを上げ

正直危ないのでないかと

何度も大声で呼んでいたそうです。

ですが、彼には全く見に覚えがありませんでした。

急にスピードをあげたつもりもなかったし

呼ばれた声も彼には全く聞こえていませんでした。

一体何が起こったんだろう?

不思議に思っていると、仲間の一人が。

仲間C「おい。あれ…!」

と言って彼の後方を指差しました。

ここで止まっていなければそのまま下るはず右カーブ。

その先には…

雨で地ばんがゆるみ倒れたであろう大木に

一台の車がぶつかり事故にあっていました。

そのカーブは見通しが悪く、カーブミラーもありません。

おそらく普通にカーブを曲がった車が大木に気づかずぶつかってしまったのでしょう。

彼「俺…ここで止まっていなかったら…」

彼がここで止まっていなかったら

確実に前の車と同じ状態になっていたでしょう…。

ここからは彼自身の見解ですが

『あのライダーは“危ない!”と身をもって教えることで

自分を助けてくれたんだ。』

と言っていました。

おそらくあのライダーはこの場所、もしくはこの○ろは坂で亡くなった方だそうです。

ですが彼はその後言葉をつなげてこうも言いました

彼「そういうヤツばかりじゃない…。」

私「どういう事?」

と私が聞くと…

彼「気づかない間にひっぱられていた…。仲間の一人が言っていただろう?俺が危ないくらいにスピードを出していたって。」

私「あっ…。」

確かに危ないくらいに彼のバイクはスピードをだしていた…

仲間が呼んでも聞こえない…

彼自身も気がついていない…

これがあちらの世界の人に

引っ張らるという事だそうです。

彼はその後も何度か○ろは坂に行ったそうですが

あの日以降は何も起こる事はなかったそうです。

私には“霊感”と呼べるものはありません。

以前家族と夜中に○ろは坂を通る機会がありました。

彼のような体験はしていませんが、

『夜中には2度と通りたくない…』

と思ったのはこの話を聞いたからではなく、

正直な感想です。

山道を車でぐるぐると…

登っているのか…

下っているのか…

どの道に続いているのか…

そんな気持ちになる場所でした。

夜道はお勧めしません。

是非、紅葉の季節にでも………

【完】

長くなりましたが最後読んで頂き有難う御座いました。

“彼”に纏わる話はいくつかありますので

またの機会に投稿させて頂きます。

怖い話投稿:ホラーテラー 営業雪さん

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