大学の頃に同じ学部だった友人T。
二年生の頃のある日、Tは遅れていたレポートを仕上げるためパソコン室で夜遅くまで残っていた。
気がつくと周りには誰もいなく、一人黙々と作業をしていたという。
キーボードのタイピング音が、静かなパソコン室で響いていた。
その大学の廊下などに設置されたライトは、自動に点灯・消灯がされるもの。
センサーがついており、人が通るとライトがしばらく点灯するという設備だ。
パソコン室に通じる一本の長い廊下は、その時しばらく誰も通っていなかったためライトが消えていた。
Tがしばらく作業をしていると、パッとライトが点灯するのが見えた。
(誰か来たのか?)
しかし廊下はシーンと静まり、人の気配はなかった。
パッ
パッ
パッ
いくつかに区切られた廊下のライトが、こちらに向かって順番に点灯されていく。
奇妙に思ったTだが、レポートを提出できなければ単位が取れない。
なんとかレポートを仕上げるため作業に集中した。
やがて、そろそろレポートが完成するか…と思っていた時だった。
ポンポン…と肩がやんわりと叩かれた。
無論、後ろに人の気配は一切ない。
さすがにゾクゾクっと背中に寒気を感じた。
しかし、Tは作業する手を休めない。
頬をスウッと氷のように冷たい手と長く伸びた爪が撫でた。
思わずキーボードから手を離したが、また作業に戻る。
やっとレポートが完成したTは、ホッとして両手を上に伸ばした。
そしてパソコンの画面に目を戻すと、そこには赤字で奇妙な記号がズラリとならんでいた。
さっきまで必死で書いていたはずのレポートはどこにも見当たらない。
「うわおおぎゃーーっ!!」
ついにTは怒号とも悲鳴ともつかないような叫びを上げ、そのままパソコン室を飛び出したのだった。
結局レポートは間に合わず、単位を落としてしまったという。
怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん
作者怖話