中編7
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落とし穴

あの黒い家の作りは純和風な邸宅。

なぜ黒なのかは、わからないし昔は黒くはなかった。しかし周りの友人からは『カッコイイ!』と絶賛されていた。

木を黒く塗装したのだろう。

田舎に住む僕らが毎日目にしている家は茶色だし、洋風の家もあった。でも日本人だからかもしれないが・・・その黒い家に憧れていた。

とりわけ大きい家でもなく、かといって小さいわけでもない庭付きの普通の家だった。

でも、どうやら人は住んでいる様子はなかった。

せっかくの『カッコイイ』家なのに・・・

外のポストには金融関係のチラシだと思われる紙がポストから溢れるくらい顔を覗かせていた。

それは梅雨の時期。

梅雨なのに晴れた日。

友人Kと高校からの帰宅途中の出来事だった。

たわいもない話をしていた。必ず黒い家の前を通る帰り道なのでその日も通過した。

しかし、いつもと違ってKが黒い家の門を通過したあたりでピタリと足を止めた。

『どうした?』

と、僕は振り返るとKは横目に黒い家を見ている。

『・・・今、人いたよな?』

Kが足を止めたのは、黒い家に人がいた・・・という理由だった。

『いや、見てないけど誰も住んでないよ?だって中古物件で売りに出されてるらしいから。』

この黒い家の門には○○不動産管理の売り物件として扱っています。と、いうような貼り紙がしてある。

『そ、そうだよな。気のせいだよな。』

Kは自分に言い聞かせるかのように、首を縦に振りながら苦笑していた。

しかし、幼稚園からの幼なじみのKのことは誰よりも知っている僕はその出来事が普通ではない。ということに感づいていた。

Kにも僕にも霊感があり、今までにも色々と二人で体験してきた。

それは、全てが科学では到底解明できないであろう現象などである。

そして恐い体験をしてきたのも事実である。

僕よりも霊感の強いKが人を見間違えたというのは、霊的な何かの可能性があるということなのだが・・・真相は、すぐわかることになった。

次の日

朝、雨音で目が覚めた。

土砂降りだ。

Kに電話をした。

『今日、どうする?たぶん電車動かないよ。』

僕らの高校は隣の市だったので電車で通学しているのだが、山道を走る電車は台風が来るだけで動かなくなる。

それは土砂降りの雨が降っても同じだ。

電車が止まってしまう。

『一応、駅まで行って動かないなら帰ろうよ。』

とりあえず、駅で待機しようと言うKに賛成し早速制服に着替えて待ち合わせの理容室駐車場で待っていた。

・・・それにしても、おかしな雨だな。別に普段降る雨と変わりはないのだが胸騒ぎがするような雨。憂鬱だ。

するとKがあちらから歩いて来る。いつもの黒い傘だ。

僕が見えるなり小走りになり『ごめん!』と寄ってきた。

駐車場から駅までは歩いて20分くらい。

あの黒い家を通過しなければならない。

雨の中を歩き始めて10分くらい経過すると黒い家の屋根と敷地を囲む塀が見えてきた。

Kが足を止めた。

僕は振り返り

『ん?黒い家が気になるのか?』と聞いたときにKは目を閉じて下を向いていた。

Kの傘は、その横に落ちていた。

『ど、どうした!』と駆け寄るとKが ハッ!とした様子で辺りをキョロキョロと見回した。

『今、金縛りに・・・』Kは、焦っている様子で口を開いた。

立ったまま眠ったように金縛りなんて初めて見た。

黒い家に何かあるのか・・・

僕らは黒い家が近付くにつれて足が重たくなるような感覚に陥っていたようだ。

明らかに歩くスピードは落ちていた。

黒い家の塀を通りやっと、門の前まで到着した。

塀は2Mくらいある。

家はスカスカの鉄格子のような門の隙間から見える。

Kと僕は、さっきの金縛りは黒い家に関係があると確信していた。

直感だから理由はないし根拠もない。

僕は門の鉄格子を握りながら何が原因なのか・・・理由を探すように家の敷地を門の隙間から覗く。

僕は庭を見ていたのだが・・・何か違和感を感じた。

『庭にある水溜まりが異常に多い・・・』気のせいか?

確かに土砂降りだが、庭にこんなに水溜まりができるか?・・・コンクリートじゃあるまいし・・・

『よいしょ・・』と

Kは、黒い家の隣にある民家の敷地を囲う1Mくらいの塀に登った。

Kからの視点は、黒い家の裏側が半分くらい見える位置だ。

『どうだ?何か見えるか?』と、水溜まりの件は何も言わずKを見上げて質問するとKは家の方を見たまま口を開けて固まっている。

『な・・・なんだよ?』Kの視線の先が気になり、僕も塀に登った。

『よいしょ・・ふぅ』

Kの視線の先を見た。

・・・誰・・・

いや、誰というよりなぜ?が正しいのか。

二人の視線の先には家の裏側が半分見えるのだが、その位置から見えたのは体の左半分が家の陰に隠れて見えないが確かに女性だ。

その女性は、雨が降る中たった一人で誰も住んでいないはずの黒い家の庭にいる。

しかも、しゃがみ込んで庭裏手の土を素手で掘り起こしているではないか。

・・・ザッ・・・ザッ・・・

雨音に混じって土を掘る音が微かだが聞こえてくる。

『何やってんだ・・・』と僕はボソッとKの後ろで呟いた。

そう、その女性は明らかに人間なのだ。

髪は肩までくらいの長さで、黒い服を着ている。

彼女の斜め後ろから見ているような形になっている僕らには彼女の顔まではわからなかった。

髪で少し隠れていたし、着ている黒い服も首あたりまであるタートルネックのような服を着ているようだった。

梅雨で少し寒いが、タートルネックは冬に着る服だ。

彼女の行動、庭の違和感、服の時期など色々わからないことだらけである。

Kが振り返って『声かけよう』と言い出した。

僕は少し恐かった。

しかし、相手は人間。

今までの体験からすれば、ちょろいと思った。

しかし、そんな話しをしている最中も彼女は土を掘っていた。

少し考えて

僕は縦に首を振り頷いた。

『ねーお姉さん!』Kが、穴を掘る女性に向かって声を発した。

ゆっくりと土を素手で掘る女性はKの声が聴こえていないのだろうか。穴を掘りつづけた。

『もしもーし?』

先程よりも大きな声で呼びかけるが、どうも聴こえてないようだ。

最初は耳が悪いのかな?そう思った。

彼女は、掘った土を選別するかのように黒い塊を穴から出した。

ちょうど僕らからは見えない位置の左側に銀色のボールがあったようだ。

その塊を、ボールに入れてプラスチックのような蓋をした。

その間にもKは女性に声をかけるが無視するかのように、急に立ち上がるとボールを持って更に裏の方へと去って行ってしまった。

Kは何を思ったのか、隣の民家の塀から黒い家の塀へと飛び移り敷地内に降りた。

『ま、待ってよ!』

僕も慌てて、黒い家の塀に移ろうとしたとき

バシャン!

『うわぁぁぁ!』

Kの悲鳴が聞こえた。

黒い家の塀に飛び移り、敷地内にいるKを見下ろす形になった。

・・・嘘だろ・・・

Kの頭だけが地面にある。

体がない。

一瞬凍りついた。

が、Kは無事だった。

Kは敷地内に降りたと同時に深い水溜まりに落ちて頭だけが浮かんでいたようだ。

安心した・・・が、

『助けて!あぶっ・・・』

バシャバシャと泥水から出れずにもがくKがいた。

安心したのも一瞬だったのだ。

どうしよう!かと、塀の上から何か使える物がないか辺りを見回した。

・・・何もない。

そのとき、僕は何を考えたのか・・・2Mもある塀の上を走り大きな水溜まりの横にある小さく見えている土の上に着地していた。

すぐさま、手を伸ばしてKの腕を掴んだ。

『頑張るんだK!』

Kは必死に僕の腕を掴むが泥のせいで足が滑り、なかなかはい上がれない状態だ。

どうする どうする

頭の中がパニック状態だった。

Kの体力は、見てわかるくらい衰えていた。

ハァ ハァ

Kの息はあがり、一生懸命もがいている。

どうしよ・・・どうしよ・・・

僕はなぜか急に瞼が重たくなり、気を失った。

・・・・・・・・・・・・・

『おい!目を覚ませ!』

という声で我に返る。

気が付き目を開けると友人宅にいた。

目の前には、さっきまで溺れていたKがいる。

服は濡れていない。

『え?K・・おまえ、溺れていただろ!大丈夫か!』

と言うと不思議そうな顔をされた。

どうやら、夢を見ていたようだ・・・

それにしてもリアルで恐い夢だった。

ため息をつき、重い腰をあげようとするがあがらない・・・というより、誰かに引っ張られているような感じだ。

ズボンのベルトを誰かに掴まれている。

『え・・・何?』

我に返ると、たった今友人宅にいたのにいつの間にか黒い家の庭にいた。

目の前には溺れかかったKが僕のベルトにしがみついている。

『助け・・・』

友人は衰弱しきっていた。

どうやら、僕は助けている最中に金縛りか何かにあったようだ。

僕は無我夢中で、引っ張った。

そしてKを救い出した。

Kはずぶ濡れで四つん這いになり、泥水を吐き出している。

そして僕らは、黒い家を後にした。

あの金縛りは・・・警告だったのか?

あの女性は?

あの女性が庭の土を掘っていた理由・・・どれも、わからなかった。

その時は・・・

怖い話投稿:ホラーテラー 福岡県民さん  

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