中編5
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ラブレターⅤ

長々と申し訳ありません。

やはり長すぎるか、と投稿を止めようと思ったのですが、やはり書き始めたからにはやり遂げるべきだと思い、また性懲りもなく投稿させて頂きました。

中にはこの話の内容、長さによって不快感を覚える方もいらっしゃる様で申し訳ございません。私の文才のなさが簡潔にまとめれない要因だと言う事は重々承知しております。

また予め、今回も書ききれなかった事を重ねてお詫び申し上げます。

ラブレターⅣの続き。

それから数日後。

あれ以来、私の身には何も起こらず、また、息子に聞いても女を見る事はないとの事でした。

少し肩透かしを食らった様にも感じながら、日々が過ぎていきます。しかし、その話題が尽きる事はありませんでした。

夜の街と言うのは非常に狭いもので、私の体験は噂となり、方々に飛び散っていた様です。そんなある日の事、私の友人達が自然と店に集まりました。

無論、その話題が華を咲かせ、友人達からは「是非、写真を見たい」とせっつかれる始末。仕方なく、店を閉めて皆を連れ、我が家へ着いたのが午前四時を回った頃でした。

皆が一様に気味が悪い、と言いながらも写真を何度となく取り換えては「何がしたいんだろう?」と私と同じ疑問を口に出していました。そんな中、一人の友人、仮にタカシとします。

彼が口を開きました。

「あり得ない写真ばっかだね、ほんと」

そりゃそーだ、等と皆も私も返しましたが、彼は「そうじゃなくて」と手を前に突きだし、私たちを制します。

「うん。いや、技術的にだよ。コピー然り、写真然り。この写真なんて見てみなよ」

彼が指した写真は件の女が写る後ろに私の息子が写る、唯一、女の全体像が写るスナップ。

「このスーパーって、うちだよね?」

彼の問いに私は一度だけ頷きます。彼はその店舗勤務ではないが、そのスーパーのスーパーバイザーとして働いています。そして、彼が言わんとしている所はこうでした。

女の肩が見えている所から、これは携帯で撮るような自撮りではない事。

そうであるにも関わらず、アングル的にかなり高い場所から撮られている事。

──言われて見れば、確かにカメラアングルとしてはかなり上から撮られています。さらに彼はこう続けました。

「明日にでも確認してみなよ。マスターのちびちゃんが居る場所から、この女まで大体……5m。で、女が立ってる目の前、つまりカメラ側はただの壁。って言うか、職員用の通用口だよ。俺が図面ひいたもん」

つまり、女は壁面ギリギリに立っているにも関わらず、カメラはその壁の中辺りから撮られている、そう言いたい様でした。さらに彼が言うには、例え天井ギリギリにカメラを構えてズームアウトしても難しいと思う、との事です。

「……つまり?」

嫌な汗が私の服の中を湿らせます。

「たぶんこれ、人外。人じゃないって意味のね。画像加工かもしれんが、ね」

突拍子もない事を真顔で言う彼に、私は返す言葉が見つかりませんでした。

冷たい血、コピー、写真……泥。認めたくない部分が色濃くなって行くのが嫌で堪りません。一つだけの救いは画像加工と言う、現実感のある言葉。

──ピーンポーン

そして、このタイミングで音が家中に響きました。それは来客を知らせるチャイム。

正直、予想外の出来事に心臓は波打ちました。しかし、すでに時間は早朝の五時をゆうに回ってはいたものの、この中の誰かが呼んだのかな、そう思い、インターホンの受話器をあげました。後ろからは「タイミング良すぎだろ」なんて声も聞こえます。

しかし、受話器をあげ、外のカメラが写し出す画像には何も映ってはいません。不思議に思いながら確認の為に外に出てみても、やはり何も見えませんでした。

まさか、あの女?──

それが頭を過った時にふと、地面を見てみると何かが大量に散らばっていました。

まだ昇りきっていない朝日が照らしたもの。そこにあったのは大量の頭皮が付いた毛髪と、二つに切り裂かれた写真でした。

「……え」

腰が砕ける、とはよく言ったもので、まるで下半身に力入らず、私はその場にへたり込んでしまいました。

私の帰りが遅いので心配して出てきた友人達は大量の黒い何かの中心で座る私を見て、言葉を無くしているようで玄関先で固まっています。

そのままの体勢で固まる友人達を呆然と見つめていると、その影に隠れて何かが玄関に向かっているのが見えました。

あいつだ──

理由なく、そう思いました。

痺れた様に動かない足を殴り、玄関へと走ります。友人達が何かを言っていましたが、耳には届きません。

ただ、とにかく入れちゃダメだ、と言う気持ちが強く、友人達を押し退け開いていたドアを乱暴に蹴りました。

大きな音が響き渡り、友人達が唖然とする中、私はそのまま玄関に背を向け、……友人からの後日談としては、血走った目で荒い息を吐く姿に狂ったかと思った、そんな表情で何度も何度も、いるはずのあの女を探しました。しかし、その姿はどこにも確認出来ません。

友人達に謝りながら、今回の落とし物を見に行くと、友人がライターを持ちながら何やらやっています。

「本物だな、ほら」

ライターで炙られたそれは、人毛特有の鼻につく臭いを放ちながら、燃えていきます。

「……じゃ、犯人は人間なのかな?」

おおよそ自分でも信じられない言葉が口から出てきました。私のその問いに誰も口を開こうとはしません。

あまりの異常性の高さに、生身の人間の仕業とは考えられない、それほどまでに凄惨な光景でした。

「でもさ、人間だったとして。これだけ髪の毛あったら、いくつカツラ作れるんだろ」

タカシは目を細めながらそう言うと、落ちている毛髪を一掴みしました。

「店の監視カメラやら、これやら色々調べてみるよ」

彼はそう言うと帰り、他の友人も各々に「資料、資料」とコピーをとって帰っていきました。この時ほど良き友人に囲まれていると実感した事はありません。

そして、この全てを含めた事が、意外な形で私を事の全貌へと導いてくれました。それは決して私が望んだ形ではありませんでしたが。

怖い話投稿:ホラーテラー 優しい止まり木さん  

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