オーダーベルの続き
立て続けになった音楽に、センサーの故障だろ?と思う自分がいる一方、もしかして幽霊?と最悪の事態を考える自分もいました。
そして私の出した結論は、
【怖いけど玄関まで行って、この目で確認する】
でした。
恐る恐る玄関に近付き、なるべく足音が鳴らないように擦り足で歩きました。
「ティントン♪ティントン♪ティントーン♪ティントントントントン♪」
今度はセンサーが私自身に反応して音楽が鳴りました。
センサーの故障でもないようです。
かと言って、恐れていた存在のせいでもないようです。
取りあえず事務所に戻ろうと、玄関に背を向けた時です。
「ティントン♪ティントン♪ティントーン♪ティントントントントン♪」
私を嘲笑うかの様にまた音楽が鳴りました。
私は一目散に事務所まで逃げました。
最悪だったのが、そのまま着替えて帰りたかったのですが、まだ入力作業が途中だったのです。
渋々、パソコンに向かいます。
音に怯えながら、入力作業を続けます。
キーボードにタッチする音も気になった為、人差し指1本で数字を打ち込みました。
あと少しで仕事が終わる!と言う時でした。
「ガラガラッ ガタッ」
と厨房の方から音がしました。
うわぁ~今度はなんだよと思いましたが、それは製氷機が受け皿に氷を排出する音でした。
さっきの音楽のせいで、どうやら神経が過敏になっているようです。
やっとの思いで入力作業を終え、すぐさま更衣室でスーツに着替えていた時でした。
「ピンポーン」
紛れも無い、オーダーベルの音でした。
日常であるはずの職場が非日常の物になってしまいました。
【人間が本気で怖い時は、声も出ないし、すぐに逃げる事も出来ない】と誰かが言っていた意味がよくわかりました。
しばらく固まっていた私は、取りあえずスーツに着替え終える事を選択しました。
またオーダーベルが鳴るんじゃないかと思っていましたが、今だ2回目のベルは鳴りません。
「よし、今のうち帰ろう!」
自分に言い聞かせ、事務所を後にしました。
そして足早に玄関に向かいました。
その時、私は見てはいけない物を見てしまったのです。
それはオーダーベルを鳴らしたテーブルの番号を表示する「電光掲示板」
その電光掲示板には…
「25」
と表示されていました。
私は無視して玄関から出て、駐車場に停めてある自分の車までダッシュしました。
テーブル25番なんて、私の店にはないんです…
怖い話投稿:ホラーテラー 現役探偵さん
作者怖話