「××君、あのもの達が現存している原動力は私達の想像している以上に強い執着心を抱いた憎悪や怨嫉、恨みなどの思念なのです。
亡くなると冥伏してしまうのですが、それに反するとは、なかなか出来ることではありません」
続けて「その中でも我々の祖先に類しない存在であれば、法力がなかなか通じづらいのです。
それに霊道で移動したり情報交換をしています。
1度やっかいなものに目をつけられると常に監視と再び襲う機会に狙われるので危険なんです」
「思念がまだ弱い相手なら浄霊や除霊で対処する人もいるでしょうが、この手段は一時的に憑いた霊を遠くに飛ばすだけなので、悪質なものに対しては返って憎悪の思念を強くさせるので、危険です。成仏をさせなければなりません」
「さて本題に戻りますと××君があの日以来、住職様の言いつけを守り、同じような場所に近づかないようにしてきましたよね。
それを知っている、あのもの達がとった手段は、おびき寄せることです」
「昨夜見かけた人、聞こえた携帯電話の音などは実在していません。
全て、××君を闇に招くために用意した幻です。
しかしあの会社員達がいたお陰で助かったようなものです。しかし奥に入っていった方は新たな獲物にされてしまいましたね」
私の顔をじっと見ただけで、ここまでわかる鬼太郎に敬服しました。
「火事の件ですが、私もずっとチャンスを待っていました。しかし私は個人的に行動することが許されておりませんので、勝手に外出など出来ないのです」
「じゃあ外出の名目を作ってくるよ、ちょっと待ってな」と私が立ち上がると、「しかし、どうやって…」と言う鬼太郎。
「ここの御住職様に頼んでくるから。信徒の頼みとあっては聞かないわけにはいかないでしょ」
「相変わらずですね」と鬼太郎は笑顔を見せてくれました。
許可がでて鬼太郎を外に連れ出すことができました。
昨夜の場所に2人で行き、現場に着くと鬼太郎はしばらく考えこみます。
すると細身の鬼太郎は隙間の中へ入っていくと、何かを唱え始めました。
しかし私が聞いたことのない、普段のお経とは違うようでした。
唱え終わると中から出てきました。
「今のもお経なの?」と尋ねる私に、
「違うよ。今のは密かに身につけた、新たな特技。さて遅くなると叱られますので帰りましょう」
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怖い話投稿:ホラーテラー ミルキーウェイさん
作者怖話