中編3
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見守る人

■シリーズ1 2

これは、俺が小学二年生の時の話しです。怖くはないんですけど、良かったら読んで下さい。

その日 自転車でブラブラしていた俺は、小さな公園があるのを発見した。

ブランコと滑り台、それと砂場があるだけの小さな公園。

「こんなとこに公園なんてあったんだ…」

そんな事を思いながら足を止めると、自分と同じ歳くらいの男の子が 木の棒で地面に絵を書いてるのに気がついた。

ちょうど友達が用事があったりで暇だった俺は、その子と遊びたいと思って 声をかける事にした。

「何を書いてるの?」

後ろから突然声をかけた俺に、その子は驚いて目を丸くして

「えっ!?あ、ラ、ライオン…」

と言った。俺が「一緒に遊ぼ」と誘うと、

「…いいの?でも…」

と立ち上がった。その子は足と手が不自由らしく、

「僕、走ったりとかあんまり出来ないんだけど…いい?」

と、申し訳なさそうに聞いてきた。

彼の名前は友也君。俺の二つ上の四年生。

少し下かな?と思っていたから、年上だと聞いて驚いた。

公園の目の前のアパートに住んでいて、養護学校から送迎バスで帰ると 夕方までこの公園で遊んでいるという。

「この辺は子供もいないし、ここは僕専用なんだ。」

と、友也君は笑った。

友也君は体は不自由だが、俺の知らない事をたくさん知っていて、特に動物や昆虫の事には詳しく 俺達はすぐに仲良くなった。

俺が友也君を「博士みたいだ」と言うと、恥ずかしそうに照れていた。

しばらく二人で遊んでいると、少し離れた場所におじいさんが立っている事に気がついた。

おじいさんはにこにこしながら 友也君を見ている。

体が透けているので、生きている人じゃない事はすぐにわかった。

俺が少し頭を下げると、それに気づいたおじいさんが深々と礼をした。

まるで、よろしく とでも言うように。

俺達はその後も、しょっちゅう一緒に遊ぶようになった。

おじいさんは相変わらず、にこにこと友也君を見守っている。

その日、ブランコに乗った事がない(手に強く掴む力がない為)友也君の為に、俺は親父のベルトをこっそり持ってきていた。

「友也君、今日は俺がブランコに乗せてあげる!」

そう言うと、友也君とおじいさんは同じように驚いた顔をした。

「こうすれば絶対に乗れる!」

俺は友也君と自分をベルトでくくり、ブランコに座った。

ちょうど、友也君を太ももの上に乗せ 抱っこしているような形だ。

そして、二人で鎖を持つ。

おじいさんが 心配してオロオロしているのはわかっていたが、「怖かったら言って!」とだけ言い、俺は構わず漕ぎ出した。

色々教えてくれる友也君に、俺はどうしてもブランコから見える景色を見せてあげたかった。

ブランコに乗った時ってどんな感じ?と聞かれた時、上手く説明出来なかったから…。

漕ぎ出してすぐに、友也君の「わぁ〜!!」という歓喜の声が聞こえてきた。

「凄い、凄いよ〜!空が近い!」

「雲に手が届きそうだよ!」

「風が気持ちいい〜!鳥になったみたいだ!」

予想以上に喜んでくれた事に気をよくした俺は、ヘトヘトになるまでブランコを漕ぎ、酔って気持ち悪くなるまで 友也君もブランコを降りようとはしなかった。

二人でふらふらになりながらブランコを降り、ベルトをはずしてから地面に寝転がった。

その間もずっと友也君は笑っていて、おじいさんは目を細めて微笑んでいた。

次の日曜日、俺はその日も友也君と遊ぼうと 公園に向かっていた。

公園に着き自転車をとめていると、横からガシッと腕を掴まれた。

「うわっ!」

驚いて見ると、友也君のおじいさんだった。

険しい顔で何かを伝えようとしているが、よくわからない…。

「え?え!?」

戸惑う俺におじいさんは、「トモガ…トモガ…!!」と叫んだ。

! 友也君に何かあったんだ!

そう理解した俺は公園に走り、友也君の姿を探した。

「友也君!どこなの!?友也…」

茂みの近くに、友也君は腹を抱えて倒れていた。顔は真っ青で、苦しそうに呻いている。

「友也君!!」

友也君に駆け寄ると、うっすらと灰色のもやのようなものがかかっていて おじいさんは必死にそれを払っていた。

すみません 続きます

■シリーズ1 2

怖い話投稿:ホラーテラー 雀さん  

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