中編6
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ダンボール箱

彼氏が携帯を見ながら「気になるサイト発見!!」と大きな声で言ったのでAは驚いた。

A「もう少し静かに言いなよ!ビックリしたじゃない」

彼氏「これ見てみなよ!」

Aは携帯の画面を覗き込んだ。

A「人体売ります?」

彼氏「なんか気にならない?」

A「そうかな?なんか怖いよ」

彼氏「なぁ、試しに何か買ってみようか。お前へのプレゼントとして」

A「いいわよ!気持ち悪いし」

彼氏「どうせ何も届きはしないよ!安心しな。それともお前ビビってんの?」

A「別にビビってはないわよ」

彼氏「じゃあ買っても大丈夫だな」

そう言って彼氏が、購入ボタンを勝手に押した。

A「ちょっと!何やってんのよ!!」

彼氏「大丈夫だって。こんなの届くわけないだろ。」

A「何買ったのよ」

彼氏「手首。お前に届いくようにしておいた」

A「はあ!?もし本当に届いたらどうしてくれるのよ!」

彼氏「大丈夫だって言ってるだろ」

彼氏がそう言ったので、Aは

「届いたら許さないからね!」

ときつく言い、もうこれ以上は言わなかった。

そんな出来事があってから三日後、仕事が終わり自宅まで帰ってきたAは、玄関前にダンボールの箱が置かれている事に気が付いた。

Aは「郵便物かな?」と思って箱に近寄る。

箱には「生もの」とだけ書かれていて、それ以外は何も書かれていなかった。

詳細が書かれていないところを見ると、どうやら郵便配達の人が届けてくれた物ではないみたいだ

「おかしいな?」と思いながら、箱を開けにかかるA。

箱を開け、中を見ると真空パックに包まれた肉のような物が入っていた。

「肉かな?」と思ったAだったが、パックの中で異常な程血が溜まっていたので、「変だな」と思った。

普通の牛、鶏、豚肉ならこんなに血が溜まるわけがないのだ。

Aはパックを開けた。

中身を見たAは悲鳴をあげて、その場に座り込んだ。

中には血まみれの人間の手首が入っていた。

右手首か左手首かはわからないが、指が5本あり確かに人間の手首だった。

Aは背筋がゾゾゾッとし、それと同時に、彼氏が買った手首を思い出した。

Aは怖さに震えながら「何よ!…あいつ届くわけないって言ったくせに、届いてるじゃない!」と激怒した。

震えながら携帯を手にしたAは、すぐに彼氏に電話をした。

A「ちょっと!!届いたじゃない!!」

彼氏「は?何が?」

A「あんたが買った手首よ!」

彼氏「お前冗談やめろよな。届くわけないじゃん。」

A「それが届いたのよ!とにかく今すぐ私の家まで来て!!」

彼氏「わかった行けばいいんだろ行けば。でも今仕事中だから終わってからな。それに今日は残業になりそうだから遅くなるかも」

A「は?こっちは怖くてたまらないんだから早く来て。あんたが勝手に買ったんだから責任取りなさいよ」

彼氏「分かった分かった。仕事終わってからな」

そう言って彼氏は一方的に電話を切った。

しかもAの言っている事を全く信用していない。

A「なんなのよあいつ!」

再度かけ直すA。だが彼氏は電源を切ったらしく出ない。

「何やってんのよ!もう!」

Aは仕方なく彼氏の仕事が終わるまで待つ事にした。

できれば手首の入った箱を家に入れたくはなかったが、もし家を訪ねて来た誰かが手首を見たら大変だと思ったAは、仕方なく箱を家に入れた。

部屋の中に置くのは怖かった為、玄関を入ったすぐの所に箱を置いた。

家事をしている最中でもやはり手首が気になり、ついつい玄関の方を見る。

そんな風に夜を過ごしていった。

そして家事を終え、寝ようと思ったが彼氏が来るので寝るわけにはいかないし、何よりも手首が気になって眠れなかった。

しかし今日の事で肉体的にも精神的にも疲れていたAは、壁にもたれて座り、そのまま寝てしまった。

Aが目を覚ましたのは、午前1時頃だった。

寝ぼけながら彼氏が来る事を思い出し、彼氏に電話をかけた。

彼氏「もしもし。今仕事終わったから、今から行くよ。15分くらいで着く」

Aの言っていた事を信じていない彼氏はめんどくさそうに言った。

A「もう!信じてないんだから。ちゃんと来てね」

そう言ってAは電話を切った。

そしてAは手首の方を見た。

何も変化はない。

Aが、彼氏が来るので玄関の鍵を開けに行こうとして立ち上がろうとしたその時

コ…コ…コツ…コ

Aのいる部屋のガラス戸を何かが叩き始めた。

カーテンがかかっていて外は見えなかった。

彼氏だと思ったAは

「ちゃんと玄関から入って来て。今から開けるから」と言った。

コ…コツ…コ…

A「聞いてるの?」

コ…コ…コ…

ガン…ガン…ガン

A「ひ!!」

Aは彼氏ではないと気が付いた。

A「誰!」

その時、ガラス戸の鍵の開く音がした。

A「え!!」

カーテンの向こうでガラス戸の開く音がした。

その直後。

カーテンの下から女性の顔が出てきて、Aを見た。

A「……!!!」

Aは悲鳴すら出せなかった。その場に座り込み女性の顔を見ながら、後ずさりをするA。

女性の両手が床に着いた。

Aはここで初めて女性の異変に気が付いた。

女性の左手首がないのだ。

女性はこんな言葉を口にした。

…えして……返して…返して…私の手首を返せ…

Aは恐怖を通り越した恐怖の中で、ある事に気が付いた。

今日玄関前に置かれていた手首。あの手首はきっとこの女性の手首なのだと。

女性は、手首より先を切断された腕からどっぷり血を流しながら、Aに這い寄って来た。

Aは手首を返そうとしたが怖くて身体が動かない。

女性はどんどんAに近付く。

Aは怖くてさらに後ずさりをするが、ついに背中が壁に着いた。

もう後ずさりはできない。女性が迫る。

返して…返せ…

女性がAの顔の前までやってきた時。

「きゃー!!!」

悲鳴をあげ、Aは気を失った。

しばらくするとAは目を覚ました。彼氏に起こされたのだ。

彼氏「お前どうしたんだよ!大丈夫か?怪我はないか!」

A「え…うん…大丈夫」

意識がもうろうとするA。

彼氏「よかった!…安心した。…びっくりしたよ。着いたら玄関鍵閉まってて、回り込んだら、ガラス戸が開いてて、部屋の中血まみれだったから。お前が倒れてたの見た時はさらに驚いたけど……で、この部屋の血は何…?」

Aは彼氏に全てを話した。

彼氏「そうだったのか…本当に悪かった。謝って許される事じゃないよな…」

A「怖くて何もできなかった。もう二度とあんな事しないでね…」

彼氏「ああ」

A「手首、玄関にある」

Aは彼氏と玄関に向かった。

手首は箱に入ったままだった。

Aと彼氏は手首を警察に届け、購入したサイトを伝えて、いろいろ質問を受けた後、お寺に行き、お坊さんにお祓をしてもらった。

そしてお坊さんから話をされた。

お坊さん「その手首は間違いなくその女性の手首です。女性は死んでいる状態で手首を切断されたようです。恐らく、人体を売る事で金儲けをしようと考えた人間の仕業でしょう。しかし彼氏さん。安心して下さい。女性は手首を切断する目的で殺されたわけではありません。切断された時には既に死んでいたようです。つまり、あなたが手首を注文したから女性が殺されたというわけではないという事です。となると誰かがどこからか死体を拾ってきて切断したのでしょう。しかし彼氏さん。もう二度と軽々しい行動をしてはいけませんよ!」

彼氏「はい…」

彼氏は深く反省した。

Aと彼氏はその後よく話し合った。

その女性に対して二人は深く謝罪し、お祈りをした。

女性はいったいどこで死んでいるのか。

また誰が女性を切断したのか。

犯人が捕まらない限り、また女性のような被害者が出るかも知れない。

もしかすると次は、犯人が人体を売る目的の為だけに殺される人間も出てくるかもしれない。

なぜなら、死体なんてそう簡単に見つかるわけがないのだから。そう考えると生きている人間を狙うかも知れません。

次はもしかすると生きている人間が被害者になるかもしれません…

しかしAに手首を届けたのはいったい誰だったのか?

もしかすると女性の手首を切断した犯人自らが…

怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん  

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