第4回「コロナをぶっ飛ばせ!」 2021秋のリレー怪談 スタート!!
◯小説の形式及び登場人物
2021、11月21日現在
舞台;私立鳳徳学園高校;明治時代に建てられた地方の進学校。元は男子校であったが平成に入り共学制に。
旧校舎には時計塔あり。ロンドン塔によく似ている。 敷地内の一角に英国人墓地と併設して礼拝堂がある。
主人公;秋永九十九(あきなが つくも)。ごく普通の男子。部活は未定。残りの書き手さんに任せます。
ヒロイン;甘瓜美波(あまうり みなみ)、転入生。すらりとした体系のボブカットの美少女。背は高め。周囲に溶け込む気が余りないが敵は少ない。悪夢の中で主人公に会う。父の都合で引っ越してきたことになっているが、実はストーカー被害に悩まされていたことが原因。
甘瓜花波:甘瓜美波の母。鳳徳学園の新米英語教師。
因みに甘瓜家の家系。
雪波→月波→花波→美波。
校長;ロビン・ウィルソン。片言の日本語を話す英国人。顔の怪我を隠す為に半分白い仮面で覆っている。あからさまに怪しすぎてかえって怪しまれない。ニックネームは便器。
マリア・ウィルソン:故人。ロビン・ウィルソンの娘。
大神遊平の元妻であり、大神遊輔の母親。
八島弘:ロビン・ウィルソンの側近。
大神遊人:大神遊輔の祖父。
大神遊平:大神遊輔の父。妻はロビン・ウィルソンの娘、マリア・ウィルソン
オカルト研究部部長・大神遊輔。金色の目を持つ。甘瓜みなみにフラれる。狼一族とヴァンパイ◯一族のハーフ?※超難関キャラw
気水百香:大神家に仕える鳳徳学園の教員。
護摩堂アキラ:鳳徳学園生徒会長。自信が秀才である事に自負を持つ、完璧主義者。 生徒会長の権限として、彼だけが校長との面談を許されている。 八島の存在に疑問を持つ。
沢カレン:鳳徳学園二年。オカルト部の幽霊部員。今どきのギャル風女子。好奇心旺盛。体育は嫌い。放課後はデートと称したパパ活。
ユウタ:沢カレンの中学の同級生
月島聖良(つきしませいら)……進路に悩む鳳徳学園の2年生。甘瓜美波の母、英語教師の甘瓜花波と親交を持つ。魔夜中に取り込まれノイローゼになり入院。その後、学園の旧校舎から身を投げる。生死は不明。
日本生まれの日本育ちで和食党だが、曾祖母が英国人のため瞳は碧眼。曾祖母はロビン・ウィルソンの父の、姉にあたる人物。
麻希子……聖良のことを「セーラ」と呼ぶ友人。普段はいい加減だが、友だち思い。聖良にトドメを刺す。
時系列は以下の通り。
・約20年前。2001年頃。甘瓜花波とマリア・ウィルソン、鳳徳学園に在籍。教師になる夢を語り合う。
・鳳徳学園卒業後、ふたりとも学生結婚をし、大学を中退。花波は美波を、マリアは大神遊輔を出産。マリア死去。
・約10年前。2011年(美波、遊輔は小学生)。英語教師として赴任してきた花波と、月島聖良が出会う。
ふたりとも魔夜中に取り込まれ、花波の魂は八島の手中に落ちる。聖良はノイローゼになり、文化祭の前後に旧校舎から身を投げる。
・現在。2021年。魔夜中の中で、聖良と護摩堂アキラが出会う。
魔夜中;悪夢の中を指して甘瓜美波がつけた呼称。
魔夜中に持ち込めるもの;ない。だが鬼火の怪人(ジャック・オランタン)を倒せるものは夢の中にも存在する。英国人墓地、といえば○○が埋まっているはず。ただこの〇〇を使うかは残りの走者次第。
◯リレー順および〆切り(※順不同・敬称略)
第一走者:ゴルゴム13(掲示板〆:10/9 23:59/「怖話」投稿予定:10/10)
第二走者:五味果頭真 (掲示板〆:10/16 23:59/「怖話」
投稿予定:10/17)
第三走者:ロビンⓂ︎ (掲示板〆:10/23 23:59/「怖話」投稿予定:10/24)
第四走者:rano_2 (掲示板〆:10/30 23:59/「怖話」投稿予定:10/31)
第五走者:あんみつ姫(掲示板〆:11/6 23:59/「怖話」投稿予定:11/7)
第六走者:一日一日一ヨ羊羽子(掲示板〆:11/13 23:59/「怖話」投稿予定:11/14)
第七走者:綿貫一(掲示板〆:11/20 23:59/「怖話」投稿予定:11/21)
第八走者:珍味(掲示板〆:11/27 23:59/「怖話」投稿予定:11/28)
第九走者:車猫次郎(掲示板〆:12/4 23:59/「怖話」投稿予定:12/5)
第十走者:ゲル(掲示板〆:12/11 23:59/「怖話」投稿予定:12/12)
○ 控え走者 (およびリレー順希望)
・ふたば
□物語の形式
①「前半オムニバス+後半なぞとき」
メインキャラ5人(前後)分の導入となるオムニバスを4~5話続けて
残り7~8話+エンディングで、たっぷりと謎解き(および恐怖体験)。
②「途中オムニバス」
主人公視点で物語が進んでいく途中途中に、主人公以外の視点で語られる話がある、という形式。
⇒(意見)まあこれについては、いざ始まってみたら自然に決まるかもしれませんね。。
□最終話について
①合議制で内容を決め、代表者1名が執筆を行う。
②マルチエンディング →その場合、複数の希望者がそれぞれ結末を用意する。
⇒①をトゥルーエンド、②はアナザーエンド(ifのエピソード)とするなら、両立するかもしれませんね。
□タイトル 候補
タイトル候補;魔夜中の殺人鬼、魔夜中の狩人、鬼火の狩人、鬼火舞う学園、鬼火の牢獄、鬼火舞う牢獄、旧校舎に鬼火舞う刻、魅惑の旧校舎~紅蓮の狩人。
・放課後の獄舎 ~転校生と鬼火の狩人~
・ミッドナイト・パーティー
・神無き月の狩人
・Faceless sneaker(顔のない 忍び寄るもの)
○現在までのダイジェスト(綿貫様まとめ)
2021.10.16 現在。
■第一話(秋永九十九)
□シーン1 悪夢の中
九十九が、どことも知れない建物の中を歩いている。
建物の1階で、頭部が縦長のカボチャのような、背の高い、謎の人物に遭遇する。
男の手には紅蓮の炎をまとう、大ぶりの鎌が。
男の背後には制服姿の少女の死体があった。
ガツンという衝突音とともに、悲鳴が響く。男の背後にもうひとり誰かがいることに気付く。
□シーン2 学校/教室の外
九月下旬。十月末に行われる文化祭に向けて、学校中が盛り上がりつつある。
転校生の甘瓜美波が、九十九に話しかけてくる。
美波は親の都合で九月に転入してきたばかりだが、その美貌とふるまいから、当初は注目を集めていた。
しかし、オカルト研究部部長・大神遊輔のラブレターを破り捨てた事件で、「甘瓜さんは甘くない」と噂が立ち、今では男女ともに彼女から距離をとっていた。
そんな孤高の美少女に話しかけられドギマギする九十九であったが、「昨日、夢を見なかった?」という美波の言葉に戸惑う。
美波は九十九をある場所へと誘う。
□シーン3 旧校舎
美波は「あなたの見た夢の場所は、この旧校舎である」と告げる。
たしかに窓の外に見える時計塔に覚えがあった。
「校内に礼拝堂と英国人墓地があるのを知ってる?」
「私は昨日、殺されかけた」
次々と謎の言葉を紡ぐ美波。
聞けば、紅蓮の鎌を持った化け物―ジャック・オー・ランタン―に、廊下の突き当りで殺されかけたのだという。
それがただの夢でない証拠にと、美波は首の付け根に現れたミミズバレを見せる。
夢の中で彼女よりも先に女生徒が殺されたが、美波の調べによると十年前に死んだ生徒であるとのこと。
「あなたも私の夢の中にいたのよ」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、
鳴らずの時計塔が突如鳴り出す。
■第二話(大神遊輔)
□シーン4 自室
オカルト研究部部長・大神遊輔は、先日、甘瓜美波にラブレターを出したものの、ビリビリに破かれ玉砕。そのことを校内の裏サイトにもさらされ、ショックから不登校になっていた。
悪夢を見て飛び起きる遊輔。手元の時計はPM4:44を示している。
夢の内容を振り返り、気になることが出てきた遊輔は、それを確かめるため学校に行くことにする。
□シーン5 祖父の部屋
出がけに祖父に呼ばれ、父とともに祖父の部屋に。
不登校を責められるかと思いきや、
「そろそろ文化祭だ。文化祭といえばなんだ?」と謎の問いをされる。
祖父も父も遊輔の通う高校のOBだが、私立鳳徳学園は元々は男子校で、また時代柄男女交際のチャンスなど文化祭以外になかった、と告げられる。「恋愛については奥手な家系だ」とも。
大神家には遊輔の物心がついた頃から、すでに祖母・母親の姿がなかった。
□シーン6 旧校舎①
遊輔は、美波に惹かれた原因のひとつは「甘い香り」であると考えていた。
学校に到着すると、悪夢に見たであろう旧校舎へと向かう。
現場に着いて、場所の確信を持つ遊輔。
彼は悪夢の中で、美波が何者かに襲われるのを見ていた。
□シーン7 旧校舎②
遊輔は旧校舎で美波と九十九の姿を目撃し、逢引きであると思い込む。
九十九に首筋を見せる美波に、嫉妬から正気を失う遊輔。
思わず走り出し、旧校舎の裏側、英国人墓地へと足を踏み入れる。
遊輔は旧校舎に、美波とは別の魅惑的な香りが漂っていたことに気が付く。
墓地には、誰かが掘り返したような跡があった。
墓穴の中にはあるべき棺桶の存在はなくなっていた。
頭上の空を大きな鳥のような影が横切る。
空に浮かぶ真っ赤な満月を見て、自分の身体が大きくなり、全身を毛が覆いつくす感覚を得る遊輔。
その時、突然鳴らずの時計塔が鐘を鳴らし始め、それにあわせ、遊輔は吠えた。
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@ゴルゴム13 さん
ピンと伸びた弓、の下りですが、
これは和弓の、弦を張る前の状態だと思います。
その状態で、(長い棒の代わりとして)窓の外にある鳥の巣をぐいと押した、と。
そういう描写として、私は理解しました。
でも、このキーアイテム、かけ(鹿革でできた手袋)もセットでないと、引くとき手が痛いですよ(笑)
あと、力で引くには難しく、技術が要ります。
扱う人は経験者か、なんらかの方法でテクニックを得る必要がありそうです。
@ゴルゴム13 様
今頃返信申し訳ございませんでした。
今日中に本編にアップしたかったため先程本投稿してしまいました。
①RightとLiteは、実は意識してRightにしたのですが、ご指摘どおりLiteに変更いたします。
②ブラックドックの存在が、敵なのか味方なのか、守護するものが害するものかについても、いまいちはっきりしなかったため、また私の読み込み不足もあったせいで、曖昧な表現になってしまったことをお詫び申し上げます。ブラックドックについては、今後旧校舎内に入ることになると思いますが、彼らの強い味方になってもらえるといいですね。
寝返る奴も出てきてほしいところです。
というわけで、今回は、ブラックドックの存在を美波さんが、もしかしたら、味方かもしれないと匂わす部分を書き加えさせていただきますね。
また、ロビン校長が「魔夜中」でなぜ休息していられるのかについては、後半の走者の皆様にお委ねしたいと思います。いずれにせよ、彼の父親からもらった因果といいますか、悪魔との契約により、ジャック・オー・ランタンはじめ多くの「魔界」の住人たちとは、うまく共存出来ているということにしてみました。
集まった4人は、沢カレン以外は、皆、先祖が明治時代の先祖以来 ウィルソン家となんらかの因縁が在るという設定にしています。
今後、彼らの味方も増えてほしいところです。
前回、ロビンの娘マリアは、八島弘と大神遊平のどちらを愛していたのか はっきりしなかったため、そこは、曖昧に匂わせておきました。
ただ、ロビン校長としては、八島弘と添い遂げさせたかったんだろうなぁと思いまして、今回前半の下りが結構長かったものですから。ビクトリア朝は、たしかに長いんですが。😁
このあたりの過去のもやもやした人間関係も、できれば、後続の走者様に綺麗にまとめていただきたく存じます。
本当に皆様にはご迷惑をおかけしております。
温かいお言葉心より感謝申し上げます。
ゴルゴム13様も、お大事になさってくださいませ。
また、ご指導ご鞭撻のほど今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
@あんみつ姫 様
何はともあれ、お疲れ様でした。
何事も体あっての事ですから、今はそちらを最優先させてください。
物語の中間部での登場人物それぞれの背景の解き明かし、さぞ大変だったと思います。
おかげで物語の方向性が、かなり鮮明になってきました。
さて私はもう一度冒頭から読み返しをして、脳内を整理し、本番に備えていきたいと思います。
@rano_2 様
コメントが遅れていまい申し訳ありません。どうもタイミングを逸してしまいました。
新キャラ登場ですね。今までとは違った雰囲気の生徒が出てくれて話の幅が広がったなと思います。こういうカレンちゃんが美波ちゃんと舌戦を繰り広げるシーンも期待できそうです(笑)。
気になった点があるので書かせて頂きますね。
まず一つ目。冒頭の部分ですが、
「ヒロ!ヒロもパパにお願いして!教えてって!ねえ、何で?」
ここまでは子供時代のマリアの会話ですね。そして
何で…?何で…?
どうしてこんなことするの!?私、彼を愛しているの…それに…
あの人との子供がいるの!…
では唐突に成長したマリアの言葉が入ってきます。この部分は混乱してしまいます。シーン転換の補足を入れるか、別パートにまとめていただいた方が伝わりやすいかと思います。
二つ目ですが、
ピンと伸びた弓…その体を横たえ、私は躊躇なく窓に付き出し、押した…
ここは矢を放ったシーンかと思われますが、分かりづらいところです。押した、という表現は弓道でよく使われるのでしょうか。済みません、素人なもので。
今更恐縮ではありますが、もしよろしければ参考までに。それでは……
@あんみつ姫 様
長編お疲れさまでした。
色々な設定を盛り込んだ話になっていますね。夜に秋永君、美波ちゃん、アキラ君、遊輔君の集まるシーンでは、楽しいやり取りになっていると思います。
情報量が多くて整理するのが大変ですが、気になった点を書かせて頂きます。
・光を意味する英語はLightなので、Rightとは意味が違ってきます。ただ、キリスト教ではイエスの教えを道を照らす光(Light)と表現することがありますので、そのように書き直された方がよろしいかと思います。
・僕の書き方が曖昧だったこともあるのですが、甘瓜美波がなぜ英国人墓地について秋永君に話したのか、はっきりしないままでしたね。一応の僕の設定を書いておきます。まあ気に入らなければ没でも構いません。
まず、秋永君は夢の中で、甘瓜美波を助けようとしますが、全く覚えていません。そして、美波ちゃんは辛くも難を逃れています。美波さんはなぜ助かったのか?
これはブラックドッグに気付いたジャック・オー・ランタンが、とっさにその場を離れたからです。ブラックドッグが襲い掛かろうとしたその途中に秋永君が位置していたため。邪魔とばかりに跳ねのけられ、壁に激突した彼はそのまま気絶してしまいます。消え失せたジャックに変わり、美波ちゃんの前に現れたのは、赤く輝く瞳の大きな犬でした。今度こそお終いだと覚悟する彼女でしたが、唸り声を上げて近づいたブラックドッグは、彼女の匂いを嗅ぐと、そのまま興味なさげに立ち去ってしまいます。残された美波ちゃんは、死んだ女子生徒の顔を確かめ、さらに倒れ伏した秋永君を見て、こいつクラスメートじゃんと気付くわけです。秋永君にある程度心を開いていたのも、自分を助けようとしていたと察していたから、という訳です。後になってブラッグドッグについて調べた美波ちゃんは、こいつは味方かも知れないと考え始めます。
以上です。
この後についてですが、第五話で校長が魔夜中で力を蓄える、という設定については実際に何をしているのか不明ですし、ジャック・オー・ランタンに遭遇しないのか、という問題もあります。この辺は今後の書き手さんたちにゆだねられることになりますね。
では、改めてお疲れさまでした。鎮痛剤はお持ちですか? これから寒くなりますし、関節など痛くなりやすい時期です。どうぞお大事になさってください。
@あんみつ姫 様
自分のコメントを書いておりまして、先程修正していただいた文章を読ませていただきました。ありがとうございます!矛盾がないどころか自然な形で内容を加筆していただきました。
また、改めて自分の話の段階で、遊輔の変身の時間帯などについての設定を作り込めなかったことを反省しております。このたび指摘させていただいたところはそのような僕の不十分のせいだと思っておりましたので、このような形でカバーしていただき本当にありがとうございました。
他の指摘などは一切ございません。僕みたいな根暗な遊輔くんとかっこいい憧れのアキラくんが、今後どのように絡んでくるかとても楽しみです!
@五味果頭真 様
早急な回答ありがとうございました。
すみませんでした。
何度もコメントを送信し、早朝より失礼いたしました。
早速ですが、本編に挙げさせていただきます。
もし、またおかしな点がございましたら、ご指摘とご指導願えましたら嬉しいです。
早速、手を加えさせていただきますので。
ご心配をおかけし申し訳ございません。
逆に気晴らしになりますので、少しずつでも 自作品をアップしていけるように頑張りたいと思います。
しばらくは、お休みすることになるかもしれませんが、皆々様のご活躍をお祈り申し上げます。
@あんみつ姫 様
おはようございます。朝早くから返信及び加筆修正していただきありがとうございました。本来内容についての指摘をする場合、もっと早い時間帯にコメントするべきだったと反省しておりました。あくまで僕の感じたところなので、あとはあんみつ姫様の思い描くお話として完成させていただきたいと考えており、どうかご都合のいいタイミングで本編投稿していただく存じます。
改めて今日までの数日間、過酷な日々であったかと思われます。先程のコメントで言っていたことに反しますが、本当にお疲れさまでした。一日でも早く怪我が治るようどうかご自愛ください。ありがとうございました。
@五味果頭真 様
ご指摘の箇所 遊輔君の会話の部分を少し加筆修正いたしました。
「美波さんが、さっきのように、ただならぬ雰囲気で九十九君に素肌を見せているのを遠目でみて。放心状態になっちまったんだ。あぁ、もう俺の恋は、完全に終わりだぁって。甘い香りが旧校舎内に充満していてさ。俺は、その香りに誘われるように階段を下ったら、なぜか外人墓地へ繋がるドアが外側に開いていたんだよ。ふらふらと外人墓地へ行ったら…夕陽は落ちかけていたけど、黄昏って感じじゃなかった。東の空に 赤い月が出ていて。鳴らずの鐘といわれていた時計塔の鐘が、轟音を響かせて鳴り出したんだ。それと同時に、俺の身体が、姿が…変貌して。」
「地獄の釜の蓋が開くってこと。今は、その前段階ってわけか。あの時の俺が夕方なのに鐘の音を聞いたのも、赤い満月を見たのも、その予兆なのかもしれない。」
「なるほど。おそらくは、ハロウィンの文化祭が、地獄の釜の蓋が開く当日かもしれないってことか。それは、想像するに硬くないな。」
アキラが遊輔に問う。
「一つ聞いていいかな。ちょっと気になったんだけど。遊輔が変貌したのは、魔夜中とは関係なかったんだよね。確かに、二人を目にしたことによって、旧校舎へと入ったわけだけど。」
遊輔が答える。
「関係ないようだね。時間帯も必ずしも午前0時あぁ12時とは限らない。赤い月で満月ということかな。」
(アキラ)
「うーん、どうも引っかかるな。旧校舎に侵入した時、外人墓地へと続くドアが開いていたり。滅多に鳴らない時計塔の鐘が急に鳴り出したり。君を無理やり狼男にしたかった何者かの悪意を感じるなぁ。美波さんに執着するの理由のひとつに甘い香りがあるだろう。さっきから、気になっていたんだよね。君、知らず識らずのうちに、何者かによって動かされているのかもしれないよ。」
といたしました。
他にもご指摘ございましたら教えていただけたら嬉しいです。
こちらこそ、いつもありがとうございます。
この度も、とても助けられました。
このままアップしたら大変なことになっていました。
感謝します。
@五味果頭真 様
早朝から失礼いたします。
お休み中でしたらお許しください。
早速、私の拙作をお読みいただきましてありがとうございます。
呆れられてしまうのではないかと、心配しておりました。
加筆修正したものを、掲示板に挙げたほうがよろしいかどうか迷いましたが、時間も過ぎておりますので、本編にアップしてもよろしいでしょうか。
一応、掲示板に再アップした後、本編に投稿いたします。
よろしくお願い申し上げます。
とても温かないたわりと慰め、励ましのお言葉、たいそう嬉しく存じます。
励まされました。
心より感謝申し上げます。
最悪のコンディションを招いてしまったのは、私の責任でございます。
皆様には、大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございませんでした。
多大なるお褒めの言葉、恐縮しております。
ただただ、長いだけの話で、怖い要素はなく、本当に申し訳なく存じます。
早速ですが、ご指摘の箇所、加筆修正いたしました。
ありがとうございました。
矛盾点と大きな間違いに気づかず、大変失礼いたしました。
ご指摘の通り手を加えました。
内容も若干変わったかもしれませんが、大筋は同じです。
遊輔君とアキラくんの会話が二つほど増えました。
この二人、キャラは違いますが、仲良くなってほしいなぁと思います。
取り急ぎ、この様なコメントしか発することが出来ず、申し訳ございません。
五味様も、どうぞお大事になさってくださいませ。
また、書き込みさせていただきますね。
@珍味 様
こんな時間帯に申し訳ございません。
起こしてしまいましたら、お詫び申し上げます。
いやはや、不覚を取りました。
腰痛は、なかなか完治しないものとは聞いておりましたが、よもやこんな状況になってしまうとは、いかにもタイミングの悪いことでございます。
作品の整合性をもう少し検証してみたくて、rano_2様の文才と優しさに安住し、時間配分を間違えてしまったのが、そもそもの原因でした。
本当にお恥ずかしい限りでございます。
お優しく温かい励ましのお言葉心より感謝申し上げます。
作品につきましては、こんな状況下にありましたから、物語的には、やや重々しい結果となってしまいました。それにしても、私の前の走者様、作家様たちは、本当に素晴らしい才能に満たされておられるのですね。私は、ただ、乗っかっただけにすぎません。
よって、大した進展もなく、また、こんな理由で、末代まで人は人を恨んだり憎んだりするものだろうかと思いつつも、人の弱さや儚さ 悪魔にさんざんいたぶられる姿など、今現在のワタクシと照らし合わせながら書いてみました。
ただ、高校生の男女の出会いと絡みの場面を描く段階になり、本当は会話より、地の文章でそれぞれの思いを描けたら良かったのですが、遊輔、アキラ、美波、九十九が自分の子どものように可愛く感じられ、痛みを忘れて書くことが出来ました。
今後の展開も楽しみな4人です。
あ、沢カレンが追加に鳴りましたから、この子も美波とは違った魅力のある子ですから、どうぞ楽しんで遊んでやってくださいませ。
第二走者の五味様が、矛盾点をしてくださいましたので、これから、そこだけを加筆訂正し、朝までには、本編に投稿いたしたく存じます。
この掲示板での細かなミス、誤字脱字等につきましては、できるだけ排除したつもりですが、まだあるかもしれません。また、掲示板とは表現やその他若干の変更がございます。
その点は、ご了承くださいませ。
ではでは。
このへんで。
いつも人様には、お身体ご大切になどど申しておりましたが、我が身に及ぶこととなってみて、あらためて、健康の大切さを思わされております。
今週辺りから、またお寒くなるようですが、どうぞおだいじになさってくださいませ。
本編の方が、読みやすく、また、加筆修正もいたしましたので、読みやすいかと存じます。
@あんみつ姫 様
第五話に対する感想の前に、腰の怪我はいかがでしょうか。僕は体の不調がそのまま心の不調になってしまう奴なので、怪我をされてなおこの作品を最後まで仕上げられたことに敬意を払います。お疲れさまでしたというのは不似合いな気がするので、ありがとうございましたとさせていただきます。前半と後半をつないでくれる第五話という重要な話を、書き上げていただきありがとうございました。
まず第五話に抱いた感想として、僕は護摩堂アキラというキャラが好きです。優等生キャラは馬鹿っぽい(大神のような)キャラを書くよりも個人的には難しいと思うのですが、彼の口調や八島・校長との駆け引きが第四話でほのめかされたアキラのイメージにぴったりで、また彼の提案の内容も、今後は夜だけでなく昼間にも旧校舎に入ることができるようになるものだと思い、後続の方のストーリー展開を容易にするものではないかと感嘆させていただきました。僕はあんみつ姫様の作品『Mの非喜劇』に散々苦しめられた(!)もとい楽しませていただいた過去があるので、今思えばアキラを主体として書くのはあんみつ姫様の得意なところなのではないかと思ったりもしました。それくらいにアキラの校長室訪問、そして後半の四人合流の場面を、自然で魅力的な場面として読ませていただきました。
その前の描写、それから第五話の後半を占めるウィルソン一族の過去についても、悪いだけの悪役、ではない彼らの一面を歴史を絡めて明かしたところがこの話を壮大にしていて心揺さぶられました。個人的には「ロビン」の名付けの理由や「鳳徳学園」の由来、かつては大神一族と親交があったこと、秋永・甘瓜・護摩堂の先祖の登場や正体が明かされる場面、そして悪魔に魂を売るウィルソンなど、現在の登場人物の過去や由来をここまで明らかにしていただき、物語の中盤の作品としてめちゃくちゃ上手だと頭が下がりました(今後のストーリー展開という全体だけでなく、個々のキャラといった部分的なところをより魅力的にする描写は、独りよがりな僕には絶対にできないことなので、正直感動しました。この話の長さにして無駄が全然ないと、僕の第二話と比べて思ったりもしました笑)。
あとは、魔夜中の設定を具体的にしていただいたことにも感謝いたします。僕が第五話から読み取らせていただいた限りだと、ロビンウィルソンは自由に入れる・夜中12時に旧校舎が魔夜中になる・ハロウィンが近づくにしたがって(特に文化祭当日は)夢を経なくても入れるようになる=現実と連動する場合もある・ロビンは夢の中で化け物の力を得なかった時に死ぬ(これは学生たちが鎌の怪物を倒すための突破口となる気がします!)、というところですが、もし不足や間違いなどありましたら申し訳ございません。
誤字脱字は僕としてはありませんでした。一つだけ、お疲れのところを申し訳ございませんが、どうか僕からの提案として解消していただきたいことがございます。
○後半の四人が集まる場面での遊輔の語り部分、
「(前略)その残り香を頼りに、二人を追ううちに、例の化け物に出会い、仰天して外人墓地へ行ったら…時計塔の鐘が12時を告げたんだ。それと同時に、俺の姿が…変貌して。[本文よりそのまま抜き出させていただきました]」
について、細かいですがさらに二つに分けて質問させていただきます。
(1)「例の化け物に出会い」とありますが、第二話では遊輔が外国人墓地へと逃げ出したきっかけは、美波ちゃんが今にも九十九に告白しそうだと勘違いしたことで取り乱したからだとしております。この時にはまだ化け物に出会っていないので(それなのに逃げ出した遊輔のヘタレ具合に笑ってしまいました)、「二人の今後に目を背けたくて」などの理由に変更していただきたく思います(もうすでに本投稿した第二話の内容を変更することは、読者様を混乱させてしまうと思っておりますので、どうかお願いいたします)
(2)「時計塔の鐘が12時を告げたんだ」とありますが、第一話で美波ちゃんと九十九が旧校舎へと向かった場面、また第二話で遊輔が彼らの後を追って旧校舎へと入っていった場面はいずれも放課後で、時間帯としては夕方から夜にかけてになると思います。僕が放課後の時間帯にも関わらず赤い満月を登場させてしまったが故にミスリードになってしまいましたら本当に申し訳ございません。ただ、第五話での四人の結集は12時近くというこの時間帯で問題ありませんが、あくまで遊輔の発言の中の時系列に対する改善提案として、
代替案:そこでは「あの時は確か夕方だったが、俺の姿が…」とする。そして、鐘が12回鳴り終わった後の彼らの発言の中の「魔夜中と現実との境の扉が開き出したんじゃないかって」などに絡めて、遊輔の発言で、「地獄の釜の蓋が開く。ってこと。今は、その前段階ってわけか。あの時の俺が夕方なのに鐘の音を聞いたのも、赤い満月を見たのも、その予兆なのかもしれない」などとする。
といった改善をお願い申し上げます。なお、美波ちゃんと九十九、遊輔が現実で旧校舎に足を踏み入れた時点では鎌の怪物が登場する描写はないので、12時、つまり真夜中でないのに魔夜中に入って怪物に襲われたという矛盾はなく、単純に旧校舎の中で夢の話をしたということで収まるのではないかと思います
(カレンは夜中12時以降に忍び込んだために怪物に襲われた・遊輔が狼に変身しちゃう条件に「魔夜中にいる」はなく、満月や特定の匂いや感情である、という情報は、恐縮ですが僕の改善案に矛盾点がない捕捉として提示させていただきます)
ここで出した案は、指摘するだけしておいて具体的な改善方法を示さないというのは僕としてはいけないと思ったので、絞り出したものに過ぎません。どうか決して指図しているわけではないことをご了承いただきたく存じます。むしろこの長さの文章で、しかも他人との共作で、これだけの矛盾点しか出さないのは並の人ではできないと思います。僕なんて3、4分の中編でたびたび本投稿してからも訂正してるので…。
最後に、ものすごく個人的な感想になりますが、僕がひょんな思いつきで口にしてしまった三大怪人の、最後の一人「フランケンシュタイン」をこのような形で登場させていただき嬉しかったです!あと、美波ちゃんが胡散臭い男子どもと少しだけ打ち解けてて安心しました笑 空を飛ぶ化け物の示唆とか、男三人でご飯を食べる描写とか、前作までの内容を踏まえる一方で登場人物の新たな一面が見れて、完全に読者として楽しんでおります(なお僕は単純に力不足を痛感したのでもう書きたくないです笑、というよりも書けません!)
改めて、お礼申し上げます。どうか怪我がよくなることを第一にお休みになってください。
素敵な第五話をありがとうございました。
@rano_2 様
先々週、自作品を投稿した金曜日に掲示板を訪れたら、すでに本投稿されていた上に次の走者様まで決まっていて、完全にコメントするタイミングを見失ってしまった五味です。自分のことばかりでこのサイトを開いていなかったこともですが、何よりもまず、せっかくの作品に対するコメントができなくてすみませんでした。
もちろん僕のコメントに価値があるとは思ってないので、返答もいらないです。ただ、あれだけの質の話を水曜日に掲示板投稿していたことに、正直嫉妬しました。以下特にどこがすごいと思ったかです。少し長くなるのでひとまずここでお疲れさまでしたと言わせていただきます。
僕は第四話を読んで自分の高校時代を思い出してしまいました。僕自身が大神みたいな立ち位置の奴だったので(教師と恋愛してたわけではないです。ただの根暗です笑ってください)沢カレンのようなイケてる女子を恐れていたのですが、その時の気持ちを思い出せてしまうくらい会話や心情描写がリアルでした。特に弓でカラスの巣を射ってしまうところや、美波や気水のことが気に入らないと思ってるところが、思春期の女子の、男子よりも恐ろしい部分を表していて(これには僕心当たりがあるんですよ!怖かったなあ)、それも会話主体の文で、彼女の周りとの関係や彼女が教室でどのような立ち位置にいるのかを示しながら、彼女自身の心情や考えについても明らかにしているところが上手いなあと思いました(偉そうにごめんなさい。僕はぐだくだと心情描写中心の、特定の情報しかわからない文ばかり書いてしまうので、会話を上手く使いこなせる人が羨ましいです)。
全体の構成についても、導入部分のウィルソンとマリアの回想的な出来事が第四話のラストにうまく収束されている感じがして、全体的なまとまりがあって一話として完成されてると思いました(本当に偉そうにごめんなさい)。また第三話でロビン様が登場させた気水と八島という魅力的なキャラの情報を加えつつ、学生主体の話ということで新たに三人(沢、護摩堂、ユウタ)の学生をこの長さの文で登場・示唆させるのはとても難しいことなのではと自分の作品を書いてて思いました。僕には無理だったので…(ここも笑ってください)。
正直なんで水曜日に掲示板投稿できたのかわかりません。もしタイムスリップの方法を知ってるならどうか教えてください(高校時代をやり直したいなんて口が裂けても言えません)。あんみつ姫様の書かれた第五話でますます沢のピンチな状況が明らかになってますが、僕は自身の高校時代の悪夢(?)を抜きにして、あえて彼女には助かって欲しいと思っております。本気です!笑
改めて、第四走者お疲れさまでした。素敵な第四話をありがとうございました。
@あんみつ姫 様
まずは、投稿お疲れ様でした。姫様の今回リレーにかける並々ならぬ思いを感じさせる作品、心して読ませて頂きます。
ですが、腰を痛められて仕事もお休みになられたとのこと、少々心配になります。腰は拗らせると厄介ですし、折角渾身の一作を完成されても、ご健康や生活にまで影響が出てしまっては、元も子も有りません。くれぐれもご無理をなさらぬよう、まずはゆっくり養生されて下さい。返信はご無用に願います。
魅惑の旧校舎(仮) 第五話 (第四回リレー怪談)
ウィルソン家と大神家
1,ロビン・ウィルソン
私には、父の思い出があまりない。
私を産んですぐに亡くなった母 メアリーについては写真すらない。
父は、幼い私をロンドン塔に連れて行っては、いつもこう語った。
「ロビン、人間とは悲しいものだ。神とは、永遠に交わることが出来ない。どこまで行っても、人間は人間だ。神にはなれない。人間がなれるのは悪魔だ。ロビン、パパは、ママとの約束を破って、悪魔に魂を売り渡してしまった酷い人間なんだよ。」
ロンドン塔のカラスたちは、そんな父を憐れむかのように、頭上を飛び回ってはギャアギャアと泣き叫んでいた。
「ロビン、この声を君はどう思う?」
「うるさいよ。僕は嫌いだ。でも、悲しいよ。カラスだって、羽を切られたらこんな鳴き方しかできないじゃないか。勝手に、こんな場所の守り神にさせられるなんて。」
「あぁ、ロビン。君はなんて賢い子なんだ。」
父はそういって、いつも私を固く抱きしめてくれた。
「パパは、悪魔なんかじゃない。パパは、パパだ。パパより悪いやつなんていっぱいるじゃないか。パパは、僕にとって最高なんだ。」
カラスの鳴き声を聞きながら、私は、心のなかで叫び続けた。
第二次世界大戦後、日本が敗戦したことを知った翌日、父は息を引き取った。晩年、父は、わずかばかりの財産と年金で細々と暮らしていた。
それでも、後期ビクトリア朝を生き、当時の大司教から、日本に宣教を兼ねた教育の発展のために労するようにと命じられただけのことはあり、気品と教養を兼ね備えた人物だった。
病が進み、手の施しようがなくなってからも、延命治療や緩和治療をすることなく、ひっそりと死を受け入れ穏やかに息を引き取った。
今、私が校長をしている「凰徳学園」の創設に関わった父だが、学校の歴史を繙いてみても、父の名前はどこにも見当たらない。
手あたり次第に捜してみても、出てくるのは、地元の名士か「大神家」に纏わる話ばかりだ。
なにゆえ、父のような善人が、この様な不遇な目に合わなければならなかったのか。怒りと憎しみが湧き上がる。
うぐっ、うぐっ、痛い。
目の奥が疼く。
あの大事な娘マリアを奪った、憎き大神遊平に付けられた爪痕が疼く。
「いかがなさいました。ロビン様。」
「あぁ、ヒロか。…すまないな。」
「傷が痛みますか。」
「あぁ、いつものことだ。今日は、父の命日でね。顔の傷より心の傷のほうが痛むよ。」
「ヒロ、お前には、すまないことをした。ヒロとマリアが一緒になってくれさえしていたら。」
「それは…二度と口にしないと約束したではありませんか。運命の歯車が合わなかっただけのこと。縁とはそういうものです。」
「縁だと?マリアがあんな黄色い猿の息子と本当に添い遂げたいと願ったとでも言うのかね。私の父を、裏切り、破滅に追い込んだ大神家を。娘の命を奪っただけでなく、孫の遊輔にあの忌まわしい血を入れた。それだけじゃない。あいつらのしたことは、言語道断なことばかりではないか。大神一族許せない。絶対に。」
「ロビン様。少し落ち着いてください。ここは、校長室です。さっきまで、お休みになられていた「魔夜中」つまり異空間とは違います。
すべて筒抜けになります。お控えください。」
「す、すまない。つい、父や娘や幼き日過ごしたスコットランドの暗く淀んだ空を思い出してしまったよ。ロンドン塔のカラスの鳴き声もね。」
「えぇ、何度伺っても、お父様のお話は、心が痛みます。誰が好き好んでこんな身体になりたいものか。気づいたときには、人を殺めている。そうしないと生きてはいけない身体になってしまった私ですら。そう思うのですから。」
この学園の時計塔は、ロンドンの有名な時計台「ビックベン」を模して造られたと父から聞いた。ビックベンほどではないにしろ、この時計塔を目にする度に、父が、この地で何をしようとし、どんな夢を抱いていたかがよく分かる。
相対する旧校舎は、ビクトリア様式とゴシック様式がコラボした見事な建造物であると。
工法は、従来の石や煉瓦(れんが)などに加え、鉄・コンクリート・ガラスといった新しい工業的材料を積極的に取り入れ、卓越した職人たちに酔って造られたのだという。
ゴージャスで贅沢かつ優美な佇まいをしていることから、地元では自慢の観光スポットになってのよいはずなのだ。それもこれも、全て、父がいたからこそ出来たことだった。
にもかかわらず、この学園の過去の記録からは父のことは全て抹消されている。
それが、神々の神を愛し、祀り、信じる者どものすることか。
あいつらは、人間じゃない。
「悪魔」だ。
我々の家系と同じ、呪われて当然だ。
鏡に写る顔は、高度な移植手術を幾度も繰り返したにもかかわらず、あの有名な怪物のごとく眼は垂れ落ち、鼻はこそげ歪み、顔も頭部も身体も、継ぎ接ぎ(つぎはぎ)だらけの有様だ。
私は、荒ぶる呼吸を整え、鏡から見を遠ざけると 白い仮面で顔を覆った。
トントントン
校長室の扉がノックされた。
「はい。誰かね。」
「生徒会長の護摩堂アキラです。」
八島がドア越しから咎める様な声で応答する。
「もう、下校時間をとっくにすぎているではないか。」
「すみません。今月末に行われる文化祭と併せて行われるハロウィンパーティについてのお話をさせていただきたいのですが。」
「どうしても今日でないとダメなのか。」
「それが、2学年の一部の生徒が、最近、立入禁止になっているはずの旧校舎と時計塔のあたりをうろついているという噂があって。そのご相談を兼ねて来たのですが。」
私は、ヒロと顔を合わせ、目で合図を送った。
「入り給え。」
「すみません。こんな時間に。では、お邪魔いたします。」
「立入禁止地域に侵入する生徒がいると。それはけしからんが。いつ頃からだね。」
「いつ頃からって。ご存知じゃなかったんですか?」
ムッとして詰め寄ろうとする八島を、私は、制した。
「では、、この件に関して、君は、生徒会長としてはどう対応したらいいと思うかね?」
私は、校内一いや全国でもトップクラスの成績を誇る護摩堂アキラに質問した。
護摩堂は、いともたやすく。
「いっそ立入禁止の札を取り外し解放してはいかがでしょうか。外人墓地、旧校舎、時計塔。誰でも出入りできるようにしてみては。」
と切り出した。
「何を言い出すんだ。君は。」
「まぁまぁ、八島さん、そう怒らないでくださいよ。せめて、文化祭の時だけでも、解放しませんか。実は、生徒会で先月アンケートを取ったところ、今年は、創立140周年記念を兼ねて、付属施設も併せ、全校開放してほしいという要望と意見が多数を占めたんです。」
「そんなバカな。ありえんだろう。そもそも……。」
「安全や防犯上問題が在る。特に、時計塔や旧校舎は、老朽化が激しく危険だ。おまけに、学校敷地内には墓地もある。いくら全校生徒の希望でも、校長として、首を縦に振るわけにはいかないな。」
八島の慌てる言葉に続いて、私は、そう答えた。
護摩堂は、黒縁のメガネの縁を軽く触ると、一向に怯む様子もなく、
「別に一日中解放しろと言っているわけではないんです。文化祭の間だけ。昼だけなら別に問題はないと思いますが。」
「駄目だ。」
「おかしいですよね。老朽化が進んでいると言う割には、時計塔の時計はちゃんと時を刻むし、旧校舎は、なぜかずっとあのまま。寄付金も相当あるはずなのに。どうして改築しようとしなのか謎ですよね。」
「とにかく、この件に関しては駄目だ。」
「過去何度も重要文化財に指定したいと国から要請があったにもかかわらず、なぜか、『そのうち改築する予定だから』とか『取り壊す予定だ』と言って国の介入を拒んできたんですよね。
今の時代、私学生き残り作戦として、歴史的建造物を売りにするって、絶好のチャンスだと思うのですが、なんで、あのまま放置しておくんですか。そのうち、老朽化が進むと自然倒壊とかが起こって、今以上に、まずいことになるんじゃないんですか。」
「君は、大人に対して、しかも校長先生に対して、そんな口を効くのか。気水君は、いったいどんな指導をしているんだ。」
「その気水先生ですが、最近、2学年のある生徒と様子がおかしいという噂です。」
「何?」
「その例の立入禁止区域を超えて、旧校舎内に男子生徒と教師の気水先生が長時間一緒にいたって噂ですよ。」
「それは、どこから出た話だ。」
八島がいきり立つ。
「まぁ、あくまでも噂です。だから、さっきも言ったように、昼間だけでもいいから、立ち入り禁止区域を撤廃すればいいんですよ。人目につきやすくなって、かえって防犯上も都合がいいんじゃあないんですか?こんなおかしな噂も立たなくなるだろうし。」
私は、護摩堂アキラが、何かを感じ取ったのではないかと疑った。
護摩堂アキラ こいつは、一体どこまで知っているのだ。
それとも、ただ単に勘と目利きの良いだけの奴なのか。
こいつには、今後も目を光らせておかないと。
気を抜けないな。
プープープープープー
その時、校長室に職員室から内線が入った。
八島が受話器を取る。
「なんだね。ウンウン・・・なんだって。分かった。捜索願については、保護者と相談しよう。昨夜、夜9時過ぎに学校の敷地内に入るのを見たものが居るということだな。分かった。」
八島の顔色が変わった。
ロビンの耳元に囁く。
(2学年の沢カレンが昨夜から行方不明だそうです。)
ー学校には来ていないのか。
(2日続けて無断欠席だそうで。親には、文化祭の準備があるから学校に行ってくるといって出かけて以来連絡が途絶えているとのことです。携帯も繋がらないらしいですな。)
―うむ、分かった。
「何かあったんですか?」
「ちょっと面倒なことが起きた。」
「君はもう帰り給え。とりあえず、文化祭と立入禁止地域の開放については、保護者会にも議案として提案しなければならないし、即答して良い話ではない。もう少し待ってくれないか。」
八島の慌てぶりと、いつも口数の少ない校長が、今日ばかりは多弁なことから、護摩堂は、皮肉を込めて言った。
「しかたないですね。わかりました。ただ、旧校舎の中に入り込んだと思しき生徒の中には、この学園と関係の深い大神遊輔君や、転校生の甘瓜美波さんの名前も上がっています。他にはえぇと…。あの、昨日から、学校来ていない沢カレンさんも旧校舎で怪しいものを見つけたんだーと、言っていたそうですが。」
八島の顔色が変わった。
「あれ?もしかして、今の電話は、沢カレンさんについてだったのですか。」
「とにかく、今は、何もわからない状況だ。いいから早く帰り給え。」
「では、このへんでお暇します。また、後程伺いますので。よろしくお願いいたします。」
護摩堂アキラは、わざと丁寧にお辞儀をすると、これ以上ないというくらい ゆっくり校長室のドアを閉めた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
大神家とウィルソン家の繋がりは、明治時代に遡る。
そう、18世紀 我が母国大英帝国が、最も栄えたヴィクトリア王朝時代だ。
ヴィクトリア女王の血筋に当たるウィルソン家も、そのお零れに授かったといえる。
あのおぞましい悪意に満ちた血の呪いがなければ、我々は、もっともっと栄華を極めるはずだった。
「血友病」
この恐ろしい病によって、繁栄を誇った一大帝国の男系である血筋は途絶えた。
かろうじて、その難を逃れたのは、王族階級の中でも、最も地位の低い我がウィルソン家だけだったとは、皮肉な巡り合せだった。
そう、ウィルソン家だけが、男系を貫けることが出来た。
理由は、ここでは語るまい。
別の血が入ったか、もしくは、下等な身分の女が産み落とした男子を我が王族の子として残したかのどちらかであろう。
ここ日本に来る前まで、そう、つい最近まで、私はそう信じていた。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
さて、皆様。
ここからは、私、ロビン・ウィリアムの父の話になる。
父は既に他界している。
また、今更父の名を知る必要もないだろうから敢えて挙げない。
そして、これから出てくる大人たちは、私の父も含め全員、既に他界している。
つまり、故人である。
今までの話を読み、もういいわと思われた方は、ここから引き返していただいて構わない。
断っておくが、歴史的な検証等は、厳密にはしていないことから、記憶違いやこの時代に対する温度差や意識の違いは多少なりともあると思う。
違和感を感じる方も多いとは思うが、その点を十分留意して読んでいただきたい。
2.ロビン・ウィルソンの父の話
私は、ヴィクトリア王家の血を引く人間だったが、あの恐ろしき病「血友病」にはかからぬまま成人を迎えた。
父は、私が8歳の時流行り病で、母は、私が13歳の時に不慮の事故でなくなった。私には、姉がいたが、母が亡くなってすぐにスコットランドに住む叔母の養子となった。
私の妻、メアリーは、ロビンを産んですぐに産褥熱で亡くなった。
私が、不死鳥を意味する「fenix(フェニックス)」と名付けようとした時、今際(いまわ)の際でメアリーは、私にこう言った。
「この子には、Robin(ロビン)と名付けてください。過去、同族同士が殺し合い、血で血を洗ったこの国も、やっと平穏な時代になりました。もう、二度とあの恐ろしい権力闘争が蘇らないためにも。この子には、野心や邪心など持ってほしくない。生涯、こまどりのようなかわいい声で歌い続ける愛おしい存在として、誰からも愛される子として生きてほしいのです。」
「わかった。そうだね。Robin(ロビン)=こまどりは、我が国イギリスの国鳥だったね。君の言うとおりこの子の名前は、ロビンにするよ。だから、安心しておやすみ。」
妻は、私の言葉に安堵した笑みを浮かべ天国へと旅立って行ったのだった。
ある日、ウィルソン家に、カンタベリー大司教から勅命が下ったことを知らされた。
神学校で一般教養を教える傍ら、主に事務の仕事を担当していた私に、白羽の矢が立ったというのである。
それは、東洋の外れにある島国「Nippon」JAPANが開国したことに伴い、その地に赴いて、我が国の貴い働き(ミッション)に尽力してほしいというものである。
既に、アメリカや主要な大国は、最果ての島国において、その勢力を伸ばしつつあった。
私に与えられた使命は、「開国以前から交流のあるこの島国において、真の神は誰か、神を信じるとはどういうことかを、「教育」を通して正しく教え導くこと。」
という実に困難で抽象的かつ曖昧模糊としたものだった。
「それならば、牧師や宣教師、直接行政や組織に働きかけやすい政治家といった、もっとふさわしいものがおりましょう。」と固辞したのだったが、「教育に関しては、宣教師や政治を司るものでは歯がたたないことが分かった。お前のような誠実な平信徒で貴族の血を引くものこそがふさわしい。なぜなら、日本において最も行き渡るのが早かったのが、中産階級である元士族と言われる人達であるからだ。」とのことだった。
私は、未だ亡き妻を忘れられず、再婚もしていないことや、3歳になったばかりの幼子ロビンがいることを理由に断ろうと思ったが、最終的には、司教様の再三の説得に根負けしてしまった。
王家の血筋とは、程遠い「東洋の黄色い猿」「八百万の神の国」が棲むという東洋の外れの島国「JAPAN」「NIPPONN」において、私の果たす役割の大きさに心が打ち震えた。
私は、ロビンを、ロンドンから遠く離れたスコットランドに住む叔母の元へ預け、最果ての地、我が国と同じ島国「日本」を目指し、船上の人となった。
異国の地での生活は大変だろうと、外務省の口利きで、八島清右衛門という身寄りのない若い男が私の世話をしてくれることになった。
使命感に燃えた私は、降り立った地で、黄色い猿たちから厚い尊敬と敬意を評されていた大神主税と相見えた。
「黄色い猿」と呼ぶには、気がひけるような堂々とした振る舞いと、異国の我々に対する礼儀正しさに、私は次第にこころを開かれていった。
主税は、別の名を「遊山」と呼び、私にもそのように呼ぶように命じた。
遊山には、産まれたばかりの乳飲み子がいた。名を「遊人」と呼んでいた。
私にも当時3歳になる息子ロビンがいたことを話すと、奥方らしき人が、
「お国に置いて来られたのですか。なんと おいたわしいことでしょう。お連れいたしましたらよろしかったのに。」とたいそう不憫そうな顔をして、茶菓を勧めてくれた。
その美しい所作と身にまとう和服の裾捌きに、思わず見とれてしまったのだった。
ふと あのビクトリア女王が好んだというオレンジのような甘い柑橘系の匂いが漂い、遊山の奥方と見(まみ)える度に、私は、ロビンと祖国が恋しくてたまらなくなった。
八島清右衛門は、そんな私に、よく尽くしてくれた。
寂しそうにしていると、いつも、この国に古くから伝わるおとぎ話を聞かせてくれた。
勧善懲悪、因果応報といった話もあったが、中には、雪女や飴を買う女、のっぺらぼうといったゴースト・ストーリー怪談話もしてくれた。
私は、この国の文化や人々に触れるごとに、この国がだんだん好きになってきた。
童話やおとぎ話をして貰う御礼代わりに、八島に毎日少しずつでいいから、英語の勉強を教えることにした。
八島は思ったよりずっと上達が早かった。
頭がよいのだろう。
いや、八島だけではない。大神もその召使いたちも、皆一様に頭が良かった。
一向に、日本語がマスターできない私に対し、八島は、数ヶ月も経たないうちに、日常の会話程度なら、苦もなく出来るようになった。
そんな八島のお陰で、私は、異国での暮らしを寂しいと思わなくなっていた。
同時に、前述した 大神遊山とは、かなり親密になっていった。
英語を覚える気はサラサラなかったが、好奇心旺盛な男で、いちいち些細なことまで尋ねた。
彼は、とても豪放磊落な人間で、私の話すことに、いちいち頷いては、「それは、たいそうなことだなぁ。」と大きな声で笑い飛ばした。
私が、この地に新しい天皇と新しい憲法のもとで、英国で学ばれている最新の学問を推進するため私学校を建てたい、それも、正しい歴史や我が国の大切な教えを伝えるため、新しい世界観を教えたい旨を虚心坦懐なく伝えたのだった。
大神は、私の話を最後まで聞いた後、
「教育か。それも、新しい教育となれば、話は別だ。ここは、東京とは違うが、この地に学校を作るという話には大いに賛同する。英国国教会に基づく教えに対しても全面的に協力しよう。」
とほぼ二つ返事で納得してくれた。
資金調達から始まり、学校建設に伴う全ての手筈はトントン拍子に進んだ。全て、大神遊山の力によるところが大きかった。
学校名を決める段階まで進んだある晩のこと、突然、大神遊山の離れに呼ばれた。
初めて招かれる場所だった。
そこは、大神家に古くから祀られている氏神のために造られたものだということだった。
いつもは、豪勢な食事や美しい女子衆、楚々とした奥方が迎えてくれるのだが、この夜は違っていた。
黄昏時を過ぎ、既に夜の帳が下りかかっているような時分に、何の話かと訝しく思っていると、
「すまぬが、この学校の実質的な主導権は、私に握らせてくれないか。」
と開口一番切り出した。
驚いている私の前で、遊山は、更に驚愕するような話をした。
「校名は、当初予定していた『鳳光学園』ではなく『鳳徳学園』にしていただきたい。」
「なぜ、今になって?」
「いや、私は思うのだ。確かに、キリスト教の教えは素晴らしい。欧米諸国の繁栄にも納得できなくはない。礼拝堂の建立もよかろう。ただ、この土地に古くから伝わる神々も大切にしていただきたいのだ。加えて、私は、「徳」を積むということも大切にしていきたい。「光」あなたの国では、Rightと言って、正義や正統 主という意味があるようだが、どうも そちらの色が濃く出てしまって。ここの氏神様やこの地の荒ぶる神々がざわついておられるのだよ。不死鳥を意味する鳳光の二文字のうちの「光」を「徳」に代えていただきたいのだ。」
「もし、この申し出を断ったら。」
「何が問題なんですかね。別に光も徳もどちらも素晴らしい。たった、一文字を替えるだけですよ。」
「たった一文字でも、意味や学校のポリシーは変わってくる。それは、良くない。」
「もし、校名の変更を許可していただけないのであれば、現段階で、全て白紙と化します。ロンドンのビックベンを模した時計塔。ビクトリア朝様式の校舎。すべてがなくなります。そして、あなたが望んだ唯一にして絶対の神も、その崇高な教えも魂も、すべてこの土地、この学校から撤回、いや撤廃していただきます。」
「そ、そんな。では、私がこれまで、してきたことは、全て水泡に化すということですか。」
「ええい、分からぬ人だな。いずれにせよ、この地の神々を祀っている我々に従っていただきます。」
遊山は、スパーンと快音を挙げて、すぐ横にある襖を真ん中から両側に開け放った。
開け放した襖の奥には、更に別の こじんまりとした部屋があった。
そこには、丸い眼鏡をかけたインテリ風の背広を着た若い男性、白髪を襟元で切りそろえた着物姿の老婆と、山伏のような修行僧の三人が居住まいを正して座っていた。
「ご紹介しよう。右から、秋永百慶様、甘瓜雪波様、護摩堂暁星様 です。
もし、学園を意のままにしようとなさいますなら、この方々が、いや、この方々が信じる神々があなたを許しません。よろしいですね。」
「なんということだ。これはいったい。きょ、脅迫ではないですか。」
秋永:「皆様、信じる神は違いますが、素晴らしい霊力と心眼、神性を持っておられます。あなたやあなたの国、あなたがしてきたことは全てお見通しです。確かに、これからは、あなたのような国の時代がやってくるでしょうが、この国にはこの国が長年培ってきたものがございます。それを捨てることを教育で教えることは出来ません。」
護摩堂:「脅迫とは違います。私は、むしろ、あなた方の国のしてきたことに疑問を感じます。何も棄教しろ改宗しろと言っているのではありません。受容し、共存しながら、ともに同じ目標に向かって行きましょう。ということですよ。」
私:「馬鹿を言うんじゃない。宗教とは、そんなものではないぞ。違う神、人や動物やもののけの果てまでを神として崇め奉るなど、私には到底出来ない。」
甘瓜:「ですから。別に、あなたのことをどうこうしようというわけではないのです。あなたも自分の信仰や信じる神を大切に思うのであれば、当然ですが、そうでない神々を信じている私達のことも敬い認めてほしいと言っているだけです。」
私:「なんと!これらは全て、大神遊山 あなたが仕組んだことなのか。」
大神:「悪いが、『鳳徳学園』とその理念は、あなたの国の司祭様も了承済みです。これが、その書簡です。」
私は、渡された書簡を見て、あまりのことに気絶しそうになった。
確かに、司祭様の手書きの文面で、
「Thank you for all the work of the Lord. (全ては、主の御業 感謝して受けよ。)」
と書かれてあった。
目の前が急に暗くなり、私は、目眩がしてそこに倒れ込んでしまった。
振る舞われた茶の中に、何か入っていたのかも知れないと思った。
「ウィルソン様。ご主人様ぁ。どうなさいましたか。」
八島が私のそばに駆け寄るのが見えた。
「えぇい、邪魔をするな。」
大神が八島を平手打ちにし、八島は、もんどりうって縁側から外庭へと転がりた。
けがをしたらしく、唸り声が聞こえて来た。
「八島大丈夫ですか。」
そう、叫ぶのが精一杯だった。
何が起こったのか分からなかったが、私は、身動きができずに、仰向けになっているしかなかった。
あの中のひとりが、私の中に危険で邪悪なものが居るから追い出したいと言い出した。
異教の神、八百万の神々が今私を責めさいなもうとしているのか。
そんなことはさせない。
私は、ありったけの力で、神に祈った。
「神よ、助け給え。異教の神々から。この私をどうかどうか。」
ぐわっ、ぐわっ、ぐわっ 鳥のような声があたりに響き渡る。
バサバサバサ と羽ばたきをしているようだ。
しばらくすると、廊下を
ズルッ…ズルッ…ズルッ…
ぴちゃ、ズルッ…ぴちゃ…ズルズル…
と 何かを引きずりこちらに向かってくる音が聞こえてきた。
私の中から 眠っていた何かが ムクムクと湧き上がるのを感じた。
―なぁ、お前。こいつらに、こんなことをされるために、ここに来たんじゃあないよな。
グルルルルルル
外庭からだろうか。狼のような唸り声がする。
八島は、どうした。
大丈夫か。
ーお前の連れ下僕なら大丈夫だ。頭にたんこぶを作って、気絶しているだけだ。
ぐわっぐわっぐわっ
ズルッ…ズルッ…ズルッ…
ぴちゃ、ズルッ…ぴちゃ…ズルズル…
グルルルルルル
―こいつら、馬鹿だな。
お前の中にある 寝た子を起こしちまったぞ。
薄れゆく意識の中で、数人の男女の泣き叫ぶ声が響き渡っている。
ぼんやりとした眼の前に映し出されたもの
阿鼻叫喚の中
激しい怒号とともに血しぶきが散らばる
―神々の神が聞いて呆れるなぁ。
こうしていたら、じき、お前も喰われちまうぞ。
生きて祖国に帰りたければ、俺の言うことを聞け。
「お前誰だ!」
ー俺は、悪魔だ。デーモン様だよ。
「悪魔だと。」
―元は、天使=神の使いだったんだがな。
どうやら、お前の神様は、お見捨てになられたようだ。
つうか、お得意の「沈黙」だんまりを決め込んでおられるようだ。
「悪魔だと。堕天使のくせに、私に何の用だ。命が欲しいのか。だったら、くれてやるわ‥さっさと取って行くがいい。」
のっぺりとした顔に真っ赤な口。
長く伸びた爪とその爪で傷をつけたかのような細く長い三日月状の目で、悪魔は、私の顔をじっと見つめていたが、やがて、
―お前ら人間の命などほしくはないわ。ただ、お前が持っている神への忠誠心、従順な信仰とやらを俺にくれ。その代わりと言っては何だが、俺の力を全てやる。こいつら全員に呪いを掛けることだってできる。」
視界が開けてきた。
ここは、地獄なのか。
真黒い雲が立ち込め、ゴツゴツとした岩肌に横たわる私の周りを、4体の獣のような化け物が私を取り囲んでいた。
秋永、甘瓜、護摩堂、大神 の成れの果てか。
うわぁ、ははははははは
いいざまじゃないか。
では、さしずめ私は何だ?
化け物になるとしたら何だ!
―ありがとうよ。
お前の魂もらったわ。
綺麗だねえ。
―あぁ、こいつら全員に、解けねぇ呪いを掛けてやったぞ。
お前にも。
ついでに、お前の下僕の八島清右衛門にもな。
「八島は関係ない。頼む呪いは説いてやってくれ。彼は、純粋で善良な日本人だ。頼む何もしないでくれ。」
―何を言ってるんだよ。この八島とかいう奴が、ご主人様と同じように私の魂を差し上げますから、どうか下僕のままでいさせてください。
と、あいつからお願いしてきたんだそ。
どうにも、お前を置いては行けないんだとさ。気の毒じゃねぇか。
「ご主人様、おっしゃるとおりでございます。お願いします。私を、イギリスに連れて行ってくださいまし。英語もマナーも頑張って覚えますから。ご主人様にお供できるのであれば、私は、蛇にも鬼にも鳴りますから。お願いします。お願いします。」
―はいはい。お涙頂戴はいらないから。
ぐわっぐわっぐわっ
ズルッ…ズルッ…ズルッ…
ぴちゃ、ズルッ…ぴちゃ…ズルズル…
グルルルルルル
―化け物どもが腹をすかせているわ。
この4人もろとも、そろそろ、元の場所に返してやらなければな。
―お前の子孫は、永久に人にはなれない。
お前の子ども、たしか、ロビンといったな。せっかく良い名をもらっていながら、彼の生涯は、フランケンシュタイン博士の作った名もなき大男の怪物そのものだ。
いいか、人はな。
悪魔にはなれても、神にはなれんのだ。
「鳳徳学園」の創立メンバーが揃ったぞ。
鳳凰(アルプ鳥のこと)=甘瓜一族
死神=秋永一族
狼男=大神(家)一族
吸血鬼=護摩堂一族
よく、覚えておけ!!
俺は、一族郎党 こいつら全員に呪いをかけた。
喧嘩両成敗ってことよ。
人間なんて醜いものだろう?
自分なんて、ちっぽけなものだろう?
因果応報?
勧善懲悪?
笑わせるぜ。
んなもんあるかい。
これらに、疑念が在るから、お前らは、神とやらを信じたいのだろう?
それなのに、最終的には、こんな現実には、ありもしなことで溜飲を下げようとする。
ついでに言っておくがな。
お前の家系も呪われているからな。
あの中のひとりも言っていただろう?
「お前に付いている悪しきものを取り払わなければならないって。」
結果、誰も取り払えなくて、逆に俺を呼び出しちまったんだから。
馬鹿だっつぅの。
人間の存在で、神を手玉に取ろうったってそうはいかないよ。
ついでに言っておく。
お前の祖先は、母国にも厭われた「人造人間」だったんだよ。
そう、フランケンシュタイン博士の作った 化け物。
人造人間。
人の姿はしているが、つぎはぎだらけの醜い容姿。
ビクトリア女王の血族?さぁ、それはどうかね。
ウィルソン家には違いないが、親族の多くがスコットランドに押しやられ、ロンドンに住めなかったわけが分かるか。
お前はこの先、ずっと仮面を付けたまま過ごさなければならない。
「善い人間」という仮面をな。
深い悲しみや憎しみの感情が湧き上がった時、お前の眼は、あの狼男たちのように赤く怪しく光るのだ。
赤い満月のように。
そして、やがて、獣と化す。
―それにしても、大神って奴は、最低だな。
「この中でも一番の悪党かもしれんな。」
悪党にふさわしい呪いをかけてやるよ。
男系しか育たぬように。
女は、すぐ死ぬように。
男系で長く存続したためしはないのだ。
ほほう。狼男が 大神を気に入ったようだ。
まぁ、こいつも代々、その系統でもあったようだな。
唯一の生き残る道は、そう、狼男になることだ。
15歳の誕生日から数えて一番早い満月に、奴等は目覚める。
お前の末裔も、これから後、大神家とは関わるようだ。
後の3人も、まるで大神に惹き寄せられるように。
いや、ウィルソン家に集まってくるのさ。
その依代が「学校」とはねぇ。
「唯一の真の神」「神々の国」「八百万の神々の国」
笑わせるねぇ。
さてと、俺はまた仕事があるから。
「私は、これから、どうしたらいいのだ。こんな惨状を見せつけられて、まともでいられるわけがない。」
―めんどくせぇなぁ。
分かったよ。
これは、全部お前の夢の中で起きていることだ。
つまり、「魔夜中」という悪夢の世界でのみ起きている出来事だ。
現実と連動する場合もあるが、大概は、「夢」の中でしか起こらない。
「悪夢」の中では、お前らは自由自在に動き回れる。
問題は、現実に立ち返った時だ。
要するに、夢から覚めた時だな。
そのまま、覚めてしまえばなんのことはないのだが。
万が一、夢の中で、化け物の力を得なかった場合は、残念だがお陀仏だ。
化け物の力を得た場合、現実に戻ってからも、悪夢を引きずり、人を襲い、殺め、死肉を喰らい、血の滴りをすすり合うかどうかの違いだ。
まぁ、どっちにしろ、「悲劇」であることに変わりはない。
お前はまだいい。
お前の息子ロビンは、相当やばいやつになりそうだ。
ひひひひひひひひひひひひひぃ
楽しみだなぁ。
それが、お前の運命なんだよ。無名の文化人。祖国イギリスのロンドンに返還してやるよ。愛しい我が子ロビンとも、しばらくは一緒に暮らせるだろう。
さてと、昔話はこれくらいにしてと。
どれどれ、時間を元に戻そうか。2021年10月〇〇日
日は指定できないのだ。指定するのは、夢の中で遊ぶ君たちさ。
ーウィルソン家:、ロビン・ウィルソン、八島弘
大神家:、大神遊人、大神遊平、大神遊輔、気水百香
秋永:秋永九十九
甘爪:甘爪美波
護摩堂:護摩堂アキラ
おっと、かわいい蝶々が舞い込んできたねぇ。
おや、沢カレンと その友人の松井ユウタじゃないか。
ユウタは、既に虫の息か。
それは、それは、気の毒だったねぇ。
カレンちゃんには、囮(おとり)となってもらおうか。
じゃぁ、また。
おや、甘いいい香りが漂ってきたねぇ。
う~ん、何度かいでもいい香りだ。
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
気がついたら、旧校舎の前にいた。
スマホを見る。
22時半か。
家族の目を盗んで出てくるのも容易ではないが、甘瓜さんは、どうなんだろう。
こうして、夢と現実で会っては居るけれど、実は、彼女の私生活についての情報は全く知らないのだ。気になるということは、恋?いやいや、違うだろう。違うよ。
誰かがこっちに向かって走ってくるのが見えた。
今夜は、満月。あたりはとても明るく、照らされたシルエットから、甘瓜美波であることがひと目で確認できた。
「秋永君、聞いた?あの悲鳴。」
「甘瓜さんか。君にも聞こえたんだね。助けて、誰か助けてって。」
「そうそう、助けて、ここから出してって言ってたよね。」
暗闇から若い男の声がした。
「ふーん。なんかやばいことになっているみたいだね。」
「誰?誰かそこにいるの?」
旧校舎の裏口近くの植え込みから、ひょこりと顔を出したのは、意外な人物だった。
「はいっと。俺です。生徒会長の護摩堂アキラです。こんばんは。」
「護摩堂君、どうして。ここに。こんな時間になにしているの。」
「そうだよ。ここは、原則立入禁止区域だ。生徒会長の君が、こんなところに居ていいの。」
「おやおや、それは、こっちが聞きたいですよ。どうしたんですか。謎の美少女転校生 甘瓜さんと、イケメンなのにクラス一のヘタレ陰キャラ秋永君。こんな時間に、こんな場所でデートとは。おっと、デートにしては、ふたりとも随分怖い顔をしていますね。」
美波と九十九は、顔を見合わせ、うつむく。
「君たちが話せないようだから、僕から話そう。沢カレンさんが、昨夜から家に帰っていない。友人の松井ユウタ君も一緒らしいんだが、その彼も昨夜から行方不明だ。」
「沢カレンさんって。あの、ちょっと傾いちゃってる子。」
「そ、そうだね。あまり、話したことはないけど。とってもきれいな子だね。」
「ハーフだからね。両親とも超絶美人にイケメンだそうだ。」
秋永九十九と南瓜美波は、少々呆れた顔で護摩堂を見つめている。
「別に悪口じゃないだろう。情報収集だ。かなりの遊び人だなぁ。沢カレンさん。SNSでも有名だよ。彼女。」
護摩堂が入ってきた反対側、ちょうど時計塔が見える辺りから ノソノソ黒いと人影がこっちに向かってやってくる。
美波が、声を上げた。
「お、大神君じゃない!」
「護摩堂君に続いて大神君まで。なんでここに。」
大神遊輔は、美波と秋永九十九を見かけ、後をつけてきたらしい。
「思いかげない恋敵だものな。そりゃ、後をつけたくなるわな。」
遊輔は、護摩堂アキラを睨みつけ、九十九に詰め寄る。
「これは、いったいどういうこと?説明してくれないかな。」
「待ってくれ。大神君。あのね。僕と甘瓜さんは、そんな関係じゃないから。うーんと、話せば長くなるけど。」
業を煮やした美波が、
「あなたとは付き合う気はない。もちろん、今後いっさい誰とも付き合う気はない。よって、今現在も、秋永九十九君とは、付き合ってない。秋永君は、ただの有益なクラスメートだから。ゲスの勘ぐりはやめてね。」
「もういいよ。分かったよ。別に、君たちの後をつけてきたわけじゃないんだ。いや、それもあるけど。今回は、ちょっと違うんだ。声が聞こえたんだよ。叫び声が。」
「え?大神君にも聞こえたの?」
アキラが言う。
「さてと、お互いの自己紹介は済んだよね。叫び声の主だが、俺は、昨夜から行方不明になっている沢カレンさんじゃないかと思っている。」
「護摩堂君は、沢カレンさんが捜索願を出されていることどうして分かったの。」
「あ。俺のことアキラって呼んでいいから。護摩堂って名字あんまり好きじゃないんだ。実は、俺、生徒会長だから、校長やあの秘書の様な存在の八島に直接会える立場に在る。時々、ドア越しに彼らの会話が聞こえるんだけど、「大神」「甘瓜」という名前が頻繁に聞かれるんだよ。どうやら、例の学園に伝わる「都市伝説」が本当なんじゃないかと思ってね。秘密裏に調査を始めたんだ。ここの創立者は、大神君のご先祖たちということになってはいるけれど、本当にそうなのかなと思い始めた。」
「護摩堂君、いやアキラ君、勇気あるね。さすがだな。」
「まぁ、ガセならガセでいいという気持ちで、旧校舎に侵入してみたんだけど。新月だったのかな。外は真っ暗だし。何も起こらなかった。時計塔も鳴らなかったし。」
「じゃぁ、助けてという女の子の声は聴いてないのね。」
「いや、聴いてないな。どうして。」
最初に口火を切ったのは、九十九だった。
「実は、これは、遊輔君にも聞いてほしいんだけど。僕と美波さんは、以前から悪夢に悩まされているんだ。それも、かなりリアルで気持ちの悪い、下手すりゃ命まで奪われそうな夢なんだ。そこで見たものは、それこそ、さっきアキラくんが話してくれた、学園の『都市伝説』どおりなんだけど、ハロウィンのジャック・オー・ランタンのような頭をしている。南瓜のように見えるのは、頭部がゆがんでいるからだろう。黒いマントを羽織り、大きな鎌を持った大男なんだ。男はブーツのようなものを履いているのか、コツコツと音をさせてやってくる。そいつの周りには、火の玉のようなものが飛び交い、禍々しいまでの紅蓮の炎が大きな鎌にまとわりついている。挙げ句、その男の背後には、そいつになぶり殺しにされたかのような血を流した制服姿の女生徒の死体が宙に浮いたように漂っているんだ。」
「その場面は、日によって少し違っているの。私が見た女の子は、引きずられていたわ。」
「俺が見た時は、そうだな。その大男の前に血だらけの死体となって、投げ出されていた。もっと怖いのは、そいつ以外にも、獰猛な大型犬を思わせる唸り声を上げる化け物がいる。」
美波が口を挟む。
「そうね。ジャック・オー・ランタンと、もう一体いるわ。あれは、獣だわ。狼のような犬。化け物同士は、別個に動いているみたいだったけど。ジャック・オー・ランタンが持って歩いている女生徒は、10年前に亡くなっていた。なのに、その子は、何度もここの夢を見る学園生の前で、殺され続けているの。叫び声を上げ続けて。私は、実際にジャック・オー・ランタンのような化け物に殺されそうになった。これを見て。鎌で傷つけられた跡よ。」
アキラは、
「おっと。いくら気を許した仲間同士とはいえ、僕たちは男ですよ。レディが気軽に肌を見せてはいけませんな。…とはいえ、今回は致し方ないか。ほう、美波さん、いい香りがしますね。これは、ロイヤルファミリー御用達と同じ銘柄の香水?」
「なにするんだよ。生徒会長には、そんな権限ないぞ。」
遊輔が飛んで中に入る。
「もういいよ。美波さんも、こんなことまでしなくていいよ。生徒会長、これでわかっただろう。秋永も美波さんも嘘は言ってないって。」
「大神君、生徒会長は辞めよう。アキラでいいよ。大丈夫、美波さんの白い柔肌は見ていません。僕が見ていたのは、傷口です。ミミズ腫れになっていますが、これは、一度や二度の傷ではありませんね。美波さん、あなた、何度も殺されかかっているでしょう。」
「どうして、そんなことまで分かるの。」
「はい。一応、東大の医学部志望ですから。見立てがいいのは遺伝です。我が家の家系は、明治以降、ある事件をきっかけに、祈祷師家業を廃業し、医者に鞍替えしたんですね。親戚一同、医者ですね。科学的治療のほうが安定した収入を見込めるし、持っている能力はそっちに使ったほうが絶対いい。護摩堂というのは、昔名乗っていた屋号。」
「ある事件って?」
遊輔が怪訝そうな顔で聞く。
「あぁ、大神君じゃなくて遊輔君ってよばせてもらうよ。遊輔君の曽祖父さんの時代の話だがね。大神家とウィルソン家にまつわる因縁話。聞いてないか。さすがに大神家は真実は話せないだろうけど。ま、我が家もそれは同じ。そもそもの発端は、教育に対する利害が互いに違っていたということ。それを強引に変えようとしたことにあるのだから。両家は、この件で呪われた家系になってしまったてわけね。あくまでも、推測だけど。」
九十九が慌てて話に割って入る。
「大神家が呪われた家系だなんて。アキラ君、言いすぎじゃないか。今はもう、学校法人化したり、20年以上前に男女共学になってからは、学園とは立場的には関係ないみたいだし。」
「いや、いいんだ。そのとおりなんだと思う。俺の家は、明治以降、女子が育たないんだ。母親は、子どもを産んですぐに死んでしまう。祖父は、呪われた家系だから、このままでは家が絶えてしまうというので、イギリス人の女性を妻に娶った。俺の父もそうだった。母は、俺を産んですぐに死んだ。」
「遊輔君、もういいよ。こんな辛い話しなくていいって。アキラだめだよ。君は、頭が良すぎ。読みは深いし、分析力は大したものだと思うけど。性格悪いわ。」
「いいや、いいんだ。実は、俺も悪夢を見るんだ。そして、ジャック・オー・ランタンだっけ。そいつに出会っている。女の子がなぶり殺しにあって、廊下をズルズルと引きずり回されるところも見ている。」
「そうなのか。君も…。」
「九十九君、俺、例のラブレター事件の後、学校では、「ヤブレター、ラブレター」事件としてSNSで叩かれまくって、家に引きこもっていた時、父と祖父の会話を偶然耳にしたんだ。驚いたよ。呪われた家系で、外見には、奥手で色気も素っ気もない女とは無縁の家系らしいんだけど。大神家の人間は、満15歳を過ぎると、血が騒ぎ、どうすることもできなくなると。人間とは言えないものになってしまうと。気水百香先生とロビン校長が、同時に着任した時の尋常じゃない様子や、気水先生の俺に対する異常なまでの干渉が気になってしかたがなかった。それと、赤い満月の夜、15歳になって初めての満月の夜に、俺は、美波さんと九十九君の後を追ったんだ。二人が親密そうに見えたし。てっきり、デートでもするのかと思って、旧校舎へと急いだ。旧校舎に入る前、とてもいい匂いがした。美波さんの匂いかもしれないと。その残り香を頼りに、二人を追ううちに、例の化け物に出会い、仰天して外人墓地へ行ったら…時計塔の鐘が12時を告げたんだ。それと同時に、俺の姿が…変貌して。」
遊輔は、泣いていた。
「もういいよ。遊輔。泣くな。これからは、もうひとりじゃない。」
「遊輔君、ごめんなさい。本当に、すまなかったわ。文化祭は、4人で盛り上がろう。」
九十九と美波が、その場に蹲(うずくま)る遊輔の肩を抱いた。
「まいったな。今、何時だっけ?23時25分か。かれこれ、一時間もここに居るんだな。腹減ったな。近くのコンビニで何か買ってくるわ。」
アキラはそういうと、裏口のフェンスをかいくぐり、通りへと駆けていった。
「この状況で腹減るか?酷いやつだなぁ。言うことがストレート過ぎるんだよ。」
「あれが、今彼にできる精一杯の優しさなんじゃないのかな。アキラ君だけが経験していないことを、私達は、知っているってことで。
九十九と美波の会話を聞きながら、
「お前ら、俺が仮に呪われた存在で、化け物の片割れだったとしても、俺を信じてくれるか?」
「それはわからないぞぅ。」
「私を守ってくれるのなら話は別。」
「条件付きかよ。ひでぇなぁ。」
5人数分のサンドイッチとおにぎりと500mlのミネラルウォーターを手に、アキラが買い物から帰ってきた。
「5人分も?」
「あぁ、もしものために摂っておく。」
「誰用?」
「別に、誰用でもないさ。余ったら持って変えればいいだけの話だ。」
「ありがとうね。気が利くね。」
「健康第一。食べて寝て出せることが一番。」
「遊輔食べるの早っ。ゆっくり噛んだ?」」
「お茶がほしかったなぁ。できれば珈琲とか。」
「おごってもらって贅沢言うんじゃないの。」
九十九とアキラは、美波と遊輔の打ち解けた様子に、ほっとしていた。
「美波さんって、あんなに明るい表情する人だったんだ。」
「冗談も言ったりしてさ。女ってわかんねぇな。」
「そういえば、少し肌寒くなってきたな。どうする?」
「んじゃ、旧校舎に入りましょうか?」
「まじっすか。美波お嬢様。」
おいおいと言った笑みを浮かべながら、ゴミ集めをしていたアキラが、
「ちょっと、待って。もうじき、時計塔が0時の鐘を鳴らず。それまでは、じっとしていよう。」
九十九が素朴な疑問を投げかける。
「今日は、満月だけど赤い月じゃないね。」
「ん!そうなの?月は、赤くなくちゃ変身出来ないの。」
「そこまでは、俺もわからん。お前ら、俺の悲劇的な状況を見たいのか。」
遊輔が言って皆が大笑いした。
「まぁなぁ、もうじき、ハロウィンを兼ねた文化祭も始まることだし。どうぜなら、そのまま狼男出でるか?」
「いいかげんにしろよ。お前ら。本当に喰ってしまうからな。」
遊輔が何かを思い出したように真顔になった。
「そうだ。化け物の話で思い出した。この外にも、大きな鳥の化け物がいるようだ。はっきりとした姿は見えないけれど。赤い月の夜に俺の目の前を飛んでいった。」
「まじかよ。一体ここには、何体の化け物がいるんだ!」
「まさしく、魑魅魍魎が跋扈する世界の入り口に、俺達は居るわけだ。さぁ、これからバーチャルホラーゲームが始まるぞ。倒すためのアイテム捜ししないとなぁ。めんどくせぇな。」
アキラの発する声は、こころなしか震えているようにも感じられた。
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン。。。。。。。。。。。。。。。
時計塔の鐘が午前12時を告げた。
旧校舎の窓ガラスが割れんばかりに振動する。
あたりを照らす月光の明かりが、一瞬陰ったように感じられた。
全員の顔がこわばるのが分かった。
最後、12回めが鳴り終わった、その時だった。
「誰かー助けて。助けてー誰かー。」
女生徒の声がかすかに聞こえてきた。
「聞こえる?でも、この声は、いつものあの子とは違う。」
「あの子って。誰か分かるのかい?」
「いつも夢の中(魔夜中)で殺される女の子とは別人だと思う。もっと、たくましい声だわ。この子は生きてる。」
アキラが問う。
「魔夜中のまは、悪魔の魔か?」
美波が、眼光鋭く答える。
「そう。私達の間では、そう呼んでいる。それで、間違いないと思うわ。」
九十九も無言で同意する。
「まさしく、そんな感じか。」
「じゃぁ、仮に、俺のように夢の中、要するに魔夜中で、過去、一度もそいつらに遭遇したことのない人間は、永久にその異空間には入れないってことになるのか?」
九十九が答える。
「それは、わからないけど。最近、美波さんと話ながら気になるのは、まさしくそこなんだ。
これは、想像に過ぎないのだけれど、何がきっかけなのかわからないのだけれど、ハロウィンが間近になるに従って、魔夜中と現実との境の扉が開き出したんじゃないかって。」
「そう、そうなの。ということは、誰でも異空間、つまり夢を経なくても魔夜中に入れるようになりつつ在るということ。もしや、これは推測なのだけれど、まさに文化祭がその日にあたるんじゃないかって。」
「地獄の釜の蓋が開く。ってこと。今は、その前段階ってわけか。」
遊輔が答える。
「ゲームもそうだよな。メンツやアイテムが揃った段階で、次のステージに昇格するっていうかさ。よくわからんけど。」
皆の心は、いつもとは違う空気に満たされ、それぞれの顔に緊張感が漂い始めた。
美波が叫ぶ。
「離れて!誰かが来る。それもすごい勢いで。」
4人が佇む旧校舎の壁の中から、湧き出るように一人の女子学生が、息を切らしながら、
ほうほうの体で飛び込んで来た。
「え?今、君、壁の中から。」
「あ!もしや君、捜索願の出ている。」
「沢カレンさん?」
女生徒は、髪を振り乱し、制服もあちこち破れている。
胸元ははだけ、白い肌には、大きなミミズ腫れが出来ていた。
沢カレンの周りには、美波とは違う独特の甘い香りが漂っていた。
息を切らし、所々に血の跡を残しながら、
「助けて。助けて。ユウタが、ユウタが…大きな鎌を持った南瓜の頭をした大男に捕まった。捕まって。あぁ~。殺されたかもしれない。」
そういうと、沢カレンは、その場に倒れ伏し、身を震わせて号泣した。
2021年11月06日 10時44分
@ロビンⓂ︎ 様
えええ、ロビン様大丈夫ですか。
ビールケース2つを一度に持ち上げるなんて。
よく腰を痛めませんでしたね。
私は、月曜日も仕事をお休みすることにいたしました。
仕事もしかしたら少しお休みすることになるかもしれません。
いつも温かいお言葉感謝いたします。
腰痛があまり改善されず、本当にご迷惑をおかけしており、申し訳ございませんでした。
不覚をとりました。
とりあえず、第5話は、後続の方たちにつながるようにはしておきましたが、少し書き込みすぎたかなぁと反省しております。
怪異や恐怖といった場面は、少なかったのでただいたずらに長かったかなと。
反省しきりでした。
ではでは、訂正を加えた後、他の方からの依存がなければ、明日、朝までに本編に投稿いたしますので、よろしくお願い申し上げます。
パソコンだけは打てますから、投稿はできます。
同じ姿勢を取り続けないようにいたしたいと存じます。
皆々様のご活躍をお祈り申し上げます。
次の走者様まだお決まりではないでしょうか。
そうですよね。(^_^;)
こんな長いものを読まされた挙げ句、この続きを書けと言われてもって感じですよね。
なので、少し内容をまとめたものを後からアップいたしますので、よろしくお願いいたします。ではでは。また。
あんみつお姉様!おはようございます!
なんと、お腰を!だ、だ、大丈夫ですか?!
絶対にご無理はなさらぬようにしてください。
もし、投稿が遅れましてもなんとでもなりますのでどいあぞ、お体重視でお願い致します!
ちなみに僕も、こないだ見栄をはってビールケースを二つ持ち上げた瞬間、腰から変な音がしました…ひ…
それでは、ランチタイムが終わりましたらゆっくりと読ませていただきますね。
細かなミスたくさん発見しましたが、これから、治療と診察に行ってまいります。
訂正は、夕方から夜にかけて行いたいと存じます。
本編へのアップは、深夜から明け方になります。
すみません。
次の走者様、一日ずれてしまうかもしれません。
。・゚・(ノД`)・゚・。。
ロビン様、タスキを引き継いでくださったrano_2様 皆々様
長らくお待たせいたしました。
予定より早くたすきを受け取り、頑張って走っていましたが、遂に、予定の時間を大幅に過ぎて、第5話完成いたしました。
今週火曜日に、腰椎を痛めてしまい、予定よりも大幅に遅れての投稿と鳴ってしまいましたこと、こころよりお詫び申し上げます。
あれ程、きたいをもたせていながらにして、ただ長いだけの駄作拙作に終わってしまったことを強く反省しております。
後続の走者様たちに、期待いたします。
前作までを受けて、そろそろ、学生たちに活躍してほしくて、学生たち4人 旧校舎の前に午前0時の時計塔の鐘の音とともに、現段階での主要キャラが揃いました。
ジャック・オー・ランタンの化け物に襲われ、命を奪われそうになった沢カレンを加え、学制キャラは、5人となります。
松井(名字がなかったので私がつけました。)ユウタくんは、「鳳徳学園」の学生ではなく、生かしたかったのですが、流石にそこまで話を広げる時間も字数もありませんでした。
明治時代に遡っての検証に齟齬がないようにしたつもりですが、そんな理由で???人恨むかぁ憎むかぁと言うような展開になってしまいました。
ただ、宗教を信じる人達にとっては、成程なぁと思われるような内容になっているかもしれません。いないかもしれません。ごめんなさい。
次の走者様ですが、どなたか、私のタスキを受けてくださる方はいらっしゃいますでしょうか。
私的には、とてもご指名できるほどことはなく。
どなたかに、お願いいたします。
本当に申し訳ございませんでした。
座って作業している分はいいのですが、経ったり座ったり寝たり起きたり、次の動作に移るときが激痛で、今週いっぱい仕事をお休みいたしました。
一部の作家様の作品には、細々とコメントを書き込んだりしておりましたが、掲示板の方がはかどらずすみませんでした。
誤字脱字だらけだと存じますが、温かい目で見守ってくださいますようよろしくお願い申し上げます。字数制限…あぁ、どうしよう。
@ロビンⓂ︎ 様
お優しいコメントありがとうございます。
最近、全然イケてないといいますか、ぱっとしない作品ばかり排出しております。
まずは、慌てず焦らず、じっくりと時間を掛けて、この大作の一翼を担いたいと存じます。
これまでの作家様たちの描かれたストーリーと人物たちに真摯に向き合うことから始めます。
このイベントを開催してくださったこと、いつも励ましてくださること、なによりこの怖話をこよなく愛する方々に夢と希望を捧げてくださっていることに感謝申し上げます。
ではでは、作品に没頭するため、しばらくお暇させていただきます。
安息日の日曜日。
今日は、ハロウィンの宵祭ですね。
楽しんでおられますでしょうか。
お寒くなってまいりますが、新しい月も良き日を重ねていけますように。
皆々様のご多幸をお祈りいたします。