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第4回 コロナをぶっ飛ばせ 秋のリレー怪談2021開幕!

第4回「コロナをぶっ飛ばせ!」 2021秋のリレー怪談 スタート!!

◯小説の形式及び登場人物
2021、11月21日現在

  舞台;私立鳳徳学園高校;明治時代に建てられた地方の進学校。元は男子校であったが平成に入り共学制に。
旧校舎には時計塔あり。ロンドン塔によく似ている。 敷地内の一角に英国人墓地と併設して礼拝堂がある。

主人公;秋永九十九(あきなが つくも)。ごく普通の男子。部活は未定。残りの書き手さんに任せます。
ヒロイン;甘瓜美波(あまうり みなみ)、転入生。すらりとした体系のボブカットの美少女。背は高め。周囲に溶け込む気が余りないが敵は少ない。悪夢の中で主人公に会う。父の都合で引っ越してきたことになっているが、実はストーカー被害に悩まされていたことが原因。

甘瓜花波:甘瓜美波の母。鳳徳学園の新米英語教師。

因みに甘瓜家の家系。
雪波→月波→花波→美波。

校長;ロビン・ウィルソン。片言の日本語を話す英国人。顔の怪我を隠す為に半分白い仮面で覆っている。あからさまに怪しすぎてかえって怪しまれない。ニックネームは便器。
マリア・ウィルソン:故人。ロビン・ウィルソンの娘。
大神遊平の元妻であり、大神遊輔の母親。
八島弘:ロビン・ウィルソンの側近。

大神遊人:大神遊輔の祖父。
大神遊平:大神遊輔の父。妻はロビン・ウィルソンの娘、マリア・ウィルソン
オカルト研究部部長・大神遊輔。金色の目を持つ。甘瓜みなみにフラれる。狼一族とヴァンパイ◯一族のハーフ?※超難関キャラw
気水百香:大神家に仕える鳳徳学園の教員。

護摩堂アキラ:鳳徳学園生徒会長。自信が秀才である事に自負を持つ、完璧主義者。 生徒会長の権限として、彼だけが校長との面談を許されている。 八島の存在に疑問を持つ。

沢カレン:鳳徳学園二年。オカルト部の幽霊部員。今どきのギャル風女子。好奇心旺盛。体育は嫌い。放課後はデートと称したパパ活。

ユウタ:沢カレンの中学の同級生

月島聖良(つきしませいら)……進路に悩む鳳徳学園の2年生。甘瓜美波の母、英語教師の甘瓜花波と親交を持つ。魔夜中に取り込まれノイローゼになり入院。その後、学園の旧校舎から身を投げる。生死は不明。
日本生まれの日本育ちで和食党だが、曾祖母が英国人のため瞳は碧眼。曾祖母はロビン・ウィルソンの父の、姉にあたる人物。

麻希子……聖良のことを「セーラ」と呼ぶ友人。普段はいい加減だが、友だち思い。聖良にトドメを刺す。

時系列は以下の通り。
・約20年前。2001年頃。甘瓜花波とマリア・ウィルソン、鳳徳学園に在籍。教師になる夢を語り合う。
・鳳徳学園卒業後、ふたりとも学生結婚をし、大学を中退。花波は美波を、マリアは大神遊輔を出産。マリア死去。
・約10年前。2011年(美波、遊輔は小学生)。英語教師として赴任してきた花波と、月島聖良が出会う。
ふたりとも魔夜中に取り込まれ、花波の魂は八島の手中に落ちる。聖良はノイローゼになり、文化祭の前後に旧校舎から身を投げる。
・現在。2021年。魔夜中の中で、聖良と護摩堂アキラが出会う。

魔夜中;悪夢の中を指して甘瓜美波がつけた呼称。

魔夜中に持ち込めるもの;ない。だが鬼火の怪人(ジャック・オランタン)を倒せるものは夢の中にも存在する。英国人墓地、といえば○○が埋まっているはず。ただこの〇〇を使うかは残りの走者次第。

◯リレー順および〆切り(※順不同・敬称略)

第一走者:ゴルゴム13(掲示板〆:10/9 23:59/「怖話」投稿予定:10/10)
第二走者:五味果頭真 (掲示板〆:10/16 23:59/「怖話」
投稿予定:10/17)
第三走者:ロビンⓂ︎ (掲示板〆:10/23 23:59/「怖話」投稿予定:10/24)
第四走者:rano_2 (掲示板〆:10/30 23:59/「怖話」投稿予定:10/31)
第五走者:あんみつ姫(掲示板〆:11/6 23:59/「怖話」投稿予定:11/7)
第六走者:一日一日一ヨ羊羽子(掲示板〆:11/13 23:59/「怖話」投稿予定:11/14)
第七走者:綿貫一(掲示板〆:11/20 23:59/「怖話」投稿予定:11/21)
第八走者:珍味(掲示板〆:11/27 23:59/「怖話」投稿予定:11/28)
第九走者:車猫次郎(掲示板〆:12/4 23:59/「怖話」投稿予定:12/5)
第十走者:ゲル(掲示板〆:12/11 23:59/「怖話」投稿予定:12/12)
○ 控え走者 (およびリレー順希望)
・ふたば

□物語の形式
①「前半オムニバス+後半なぞとき」
メインキャラ5人(前後)分の導入となるオムニバスを4~5話続けて
残り7~8話+エンディングで、たっぷりと謎解き(および恐怖体験)。

②「途中オムニバス」
主人公視点で物語が進んでいく途中途中に、主人公以外の視点で語られる話がある、という形式。

⇒(意見)まあこれについては、いざ始まってみたら自然に決まるかもしれませんね。。

□最終話について
①合議制で内容を決め、代表者1名が執筆を行う。

②マルチエンディング →その場合、複数の希望者がそれぞれ結末を用意する。

⇒①をトゥルーエンド、②はアナザーエンド(ifのエピソード)とするなら、両立するかもしれませんね。

□タイトル 候補

タイトル候補;魔夜中の殺人鬼、魔夜中の狩人、鬼火の狩人、鬼火舞う学園、鬼火の牢獄、鬼火舞う牢獄、旧校舎に鬼火舞う刻、魅惑の旧校舎~紅蓮の狩人。

・放課後の獄舎 ~転校生と鬼火の狩人~
・ミッドナイト・パーティー
・神無き月の狩人
・Faceless sneaker(顔のない 忍び寄るもの)

○現在までのダイジェスト(綿貫様まとめ)
2021.10.16 現在。

■第一話(秋永九十九)
□シーン1 悪夢の中
九十九が、どことも知れない建物の中を歩いている。
建物の1階で、頭部が縦長のカボチャのような、背の高い、謎の人物に遭遇する。
男の手には紅蓮の炎をまとう、大ぶりの鎌が。
男の背後には制服姿の少女の死体があった。
ガツンという衝突音とともに、悲鳴が響く。男の背後にもうひとり誰かがいることに気付く。

□シーン2 学校/教室の外
九月下旬。十月末に行われる文化祭に向けて、学校中が盛り上がりつつある。
転校生の甘瓜美波が、九十九に話しかけてくる。
美波は親の都合で九月に転入してきたばかりだが、その美貌とふるまいから、当初は注目を集めていた。
しかし、オカルト研究部部長・大神遊輔のラブレターを破り捨てた事件で、「甘瓜さんは甘くない」と噂が立ち、今では男女ともに彼女から距離をとっていた。
そんな孤高の美少女に話しかけられドギマギする九十九であったが、「昨日、夢を見なかった?」という美波の言葉に戸惑う。
美波は九十九をある場所へと誘う。

□シーン3 旧校舎
美波は「あなたの見た夢の場所は、この旧校舎である」と告げる。
たしかに窓の外に見える時計塔に覚えがあった。
「校内に礼拝堂と英国人墓地があるのを知ってる?」
「私は昨日、殺されかけた」
次々と謎の言葉を紡ぐ美波。
聞けば、紅蓮の鎌を持った化け物―ジャック・オー・ランタン―に、廊下の突き当りで殺されかけたのだという。
それがただの夢でない証拠にと、美波は首の付け根に現れたミミズバレを見せる。
夢の中で彼女よりも先に女生徒が殺されたが、美波の調べによると十年前に死んだ生徒であるとのこと。
「あなたも私の夢の中にいたのよ」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、
鳴らずの時計塔が突如鳴り出す。

■第二話(大神遊輔)
□シーン4 自室
オカルト研究部部長・大神遊輔は、先日、甘瓜美波にラブレターを出したものの、ビリビリに破かれ玉砕。そのことを校内の裏サイトにもさらされ、ショックから不登校になっていた。
悪夢を見て飛び起きる遊輔。手元の時計はPM4:44を示している。
夢の内容を振り返り、気になることが出てきた遊輔は、それを確かめるため学校に行くことにする。

□シーン5 祖父の部屋
出がけに祖父に呼ばれ、父とともに祖父の部屋に。
不登校を責められるかと思いきや、
「そろそろ文化祭だ。文化祭といえばなんだ?」と謎の問いをされる。
祖父も父も遊輔の通う高校のOBだが、私立鳳徳学園は元々は男子校で、また時代柄男女交際のチャンスなど文化祭以外になかった、と告げられる。「恋愛については奥手な家系だ」とも。
大神家には遊輔の物心がついた頃から、すでに祖母・母親の姿がなかった。

□シーン6 旧校舎①
遊輔は、美波に惹かれた原因のひとつは「甘い香り」であると考えていた。
学校に到着すると、悪夢に見たであろう旧校舎へと向かう。
現場に着いて、場所の確信を持つ遊輔。
彼は悪夢の中で、美波が何者かに襲われるのを見ていた。

□シーン7 旧校舎②
遊輔は旧校舎で美波と九十九の姿を目撃し、逢引きであると思い込む。
九十九に首筋を見せる美波に、嫉妬から正気を失う遊輔。
思わず走り出し、旧校舎の裏側、英国人墓地へと足を踏み入れる。
遊輔は旧校舎に、美波とは別の魅惑的な香りが漂っていたことに気が付く。
墓地には、誰かが掘り返したような跡があった。
墓穴の中にはあるべき棺桶の存在はなくなっていた。
頭上の空を大きな鳥のような影が横切る。
空に浮かぶ真っ赤な満月を見て、自分の身体が大きくなり、全身を毛が覆いつくす感覚を得る遊輔。
その時、突然鳴らずの時計塔が鐘を鳴らし始め、それにあわせ、遊輔は吠えた。

@ふたば 様
久しぶりに、こちらの掲示板を覗いてみました。
なかなかに苦戦されているようですね。
几帳面で慎重な性格が垣間見えたりします。
私などは、ある程度プロットが決まれば、とにかく走り出してしまって、アップした後、調整を加える方でして、たまに読者さんとかに矛盾を指摘されたりして、冷や汗ものの体験をよくしたりします。(笑)
まあ、ご自分のペースで納得のいくところまで、仕上げてください。
ただこれのために、体調を崩したりしましたら、本末転倒ですから、お体最優先でお願いしますね。

返信

ゴルゴム13さん
大変そうに見えるのは私の能力が足りていないからです、レベリングが足りないので最終章で時間がかかって申し訳ありません( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )

改変していただきたい台詞は、第五話なのであんみつ姫さんの投稿された部分ですね。
出来れば2カ所(どちらも遊輔の台詞)直して欲しいです。

「大神家の人間は、満15歳を過ぎると、血が騒ぎ、どうすることもできなくなるんだそうだ。。」

「大神家の人間は、満15歳を過ぎ、心奪われる女性と出会うと、血が騒ぎ、どうすることもできなくなるんだそうだ。。」

「それと、15歳になって初めての満月の夕方、」

「それと、俺が夢で美波ちゃんの悲鳴を旧校舎で聞いた日。満月の夕方、」

いずれも年齢が狼化の直接的なトリガーでは無い、とする為の改変です。(実際のトリガーは匂いと感情の揺れ)
おそらく15歳という年齢は、第三話の遊山の「遊輔ももうしっかりと鼻の効く年頃じゃ。」という台詞の“年頃”が15歳くらいなのかなと思っております。

ロビンさん
この企画においてバッシングを受けるのは私だけなので、お怒りは全て私のへのものです。
私以外誰も悪者はおりません。ロビンさんが謝る必要は御座いませんので、気軽にクソ雑魚葉っぱへ進捗を催促してやって下さい🌱💦

改変する候補としては、他には、ウィルソン校長と気水先生の着任が5年前から2年前(メイン組の入学タイミング)に変更をお願いする可能性がありますが、変更しなくても大丈夫かもなので、現段階では変更の必要は無さそうです。
また、書いていて追加で変更をお願いする可能性も割とあるかもなので、申し訳ありませんが、その時はお願い致しますm(_ _)m
先のコメントで発言していた一見矛盾っぽいところは、伏線か、もしくはブラフという扱いにするというのは、次の投稿でどういう事か分かると思います。

返信

皆皆様、企画がまだ途中だというのにもかかわらず大変長らくご無沙汰をしてしまい本当に申し訳ありませんでした!!
言い訳はいたしません!体調不良でも、仕事が忙しかったわけでも、悪さをして刑務所に入っていたわけでもございません!なんとなく、ただなんとなく、本当にただなんとなく怖話にログイン出来ずにいました…うう…
お怒りの方もいらっしゃるでしょうが、どうかこんないい加減なロビンをお許しください…ひ…

返信

@ふたば 様
ご無沙汰です。
お話を聞いて安心しました。もしかして大変なものを押し付けてしまっているんじゃないかと不安になってましたので。
僕の方は気長にお待ちしておりますので、納得のいくように書いていただければと思います。

年齢の件はどなたでしたっけ・・・修正可能ですよね?
飛び級というのも考えられなくもないですが、年齢を修正したほうが簡単そうです。

他にも何かありましたら、皆さんコメントお願いします。

返信

@ゴルゴム13 さん
お久しぶりです。そしてお気遣い有難う御座います( ᴗ ̫ ᴗ )

個人的には、皆さんの作った展開で、無かった事にして欲しい部分は今のところ御座いません。
ただ、どうしても話の進行上不自然になってしまう為、キャラクターの設定を弄りたいところが御座います。

・主人公達の年齢について
実は殆どメイン組の年齢は言及されていないのですが、確定事項として秋永と甘瓜の2人はクラスメイト、第二話にてラブレターが破かれる様子を教室内で見ていたと振り返っている遊輔も同じクラス、つまりというのがありまして、アキラも第五話で「クラス一のヘタレ陰キャラ秋永君」と言っている為、同じクラス、もしくは「君達は他クラスだけど僕のクラスは僕が一番のイケメンだから秋永君は学年一じゃ無くて、そっちのクラスで一番」という意味で言っていた場合は他のクラスかも知れないです。ですが、誰一人生徒会長に対して敬語を使っていないので、メイン4人は同学年。
多くの高校で夏休み前後で前期後期の生徒会長組織が発足されると思うので、後期生徒会長には、あとは卒業するばかりの3年生はおそらく就任しない為、護摩堂生徒会長は2年生が妥当。
また、遊輔も後期の部長という立場から1年生でも3年生でも無い可能性が高く、必然的にメイン4人共現在高校2年生という事になります。
ただ、ここで問題になるのが大神家の狼化の時期でして、この時期は第五話にて「満15歳を過ぎると、血が騒ぎ、どうすることもできなくなる」と言及があり、実際に遊輔は「15歳になって初めての満月の夕方、放課後、美波さんと九十九君が一緒にいるところを見かけて、二人の後を追ったんだ」と語っています。
しかし15歳になる年は中学3年生の時なので、「15歳になって初めての満月の夕方」という部分だけ少々改修をお願いしたいですm(_ _)m

その他の矛盾っぽいところは、伏線か、もしくはブラフとして考えております。(私が気付いていない矛盾や食い違いはあるかも知れません)
また、自分でぬかしたマルチエンディングは、こんなにも待たせた上にまだ続けさせるのかとなる為、辞めた方がいいかもですね。

現在皆様を待たせてしまっている身ですが、中々文字数だけ増えて話が進んでおらず(遊輔目線を入れたのが原因)、現在書いているシーンが出来たら、経過報告としてここに上げさせて頂きます。
また、私の考えているストーリーの展開上、ここまでで影も無かったキャラが1人(人では無いけれど)増えます。登場人物を増やしてしまい申し訳御座いません( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )

返信

ふたば様、皆様

ご無沙汰しておりますが、お元気でしょうか?
さて、リレー企画ですが、やはり今回は話をまとめるのが大変困難に思います。

なので、この回のこの部分はこう改変してはどうだろうかとか、ふたば様ご自身、この展開はなかったことにしてほしい、など話し合ってみたらどうでしょう。

アンカは絶対という決め事は特にないはずですし、ふたば様一人にこの難しい話をまとめさせるのは心苦しく思います。

肝心なのは面白くて楽しめるホラーを作ることですから、最終的に良いものが出来ればいいと思います。

皆様、どう思われますか?

返信

ふたば様
長らく音信不通にしてしまい申し訳ございませんでした。
春彼岸までには、お会いできるでしょうか。

返信

ふたば様、皆様、お元気でしょうか?
僕は自分で買ったチョコレートをボリボリ食べたりなんてしてません。絶対だ、絶対だぞ!
ではまた。

返信

久しぶりに来てみましたが、皆様、お元気でいらっしゃいますか。
だいぶご無沙汰してしまいました。
なんとか元気にしております。
ふたば様のラストラン。聞くところによりますと、既に3万字を超過しているとのこと。
どのような作品に仕上がるかは不明ですが、雪解けの頃を目指し、頑張ってくださいませ。

返信

こんばんは。夜遅くに失礼します。
年が明けてだいぶ経ってしまいましたが、みなさん、新年あけましておめでとうございます。
去年は怪談リレーをはじめ、色々な体験発見ができた年でした。コミュ症な僕がこうして企画に参加したこと自体、自分的には大きな出来事のひとつでしたが、皆さんと交流ができてとても嬉しかったです。
去年はあまりこちらに顔を出せず申し訳ありませんでした。こんな僕ですが、今年もどうぞよろしくお願いします。

返信

今晩は。ゲルです。今さっきやっと今年の仕事を終え、無事帰宅しました。無双の時間ですね。笑
これから、ふたばさんの前編を読ませて頂きます。秋ぐらいから始まってようやく最終話ですね。楽しみです🤗

そしてこの場を借りて挨拶をします。リレーきっかけで初絡みとなる、ゴルゴム13さん、五味果頭真さん、綿貫一さん、珍味さん、初めまして、私はこのサイトに登録して一年半ぐらい経つゲルと申します。このサイトは2年前ぐらいに知りました。なので恥ずかしながらベテランの方々がどう活躍されたのか、リアルタイムではわかりません。でも皆さんのお名前は存じておりました。

そして絡んだ事がある方へ。

ロビンさん
多分今年の九月ぐらいに初絡みでしたね。かなり先輩に当たりますね。まだまだ経験の浅い私と絡んで頂き、リレー怪談に参加させて頂いた事感謝してます。ありがとうございます…ひ…。

rano_2さん
ranoさんは初代のアカウントから知ってます。連載を主にされている印象なので、どこか私と近い存在だと勝手に感じていました。笑。連載続けるのって結構大変ですよね。そう思うのは私だけかな?笑

あんみつ姫さん
あんみつ姫さんの怖話での活動力が素直に凄いなと感じました。流石、怖話の母です。笑
私の作品にも頻繁に怖ポチやコメント頂き、実は結構嬉しかったです。今年もアワード二冠ですね。そして現在年間三位。やはり、文章力は勿論の事、他の作家さんの作品の書評力が凄いです。その活動力あっての結果だと思います。後リレー怪談の回、あんみつ姫さんの作品開いた時に「40分」と記載されていて、マジかよ、と思いました。笑

一日一日一ヨ羊羽子さん
去年の5月ぐらいに初絡みかな?
文も書けて、絵も描けるなんて能力が羨ましすぎますよ。私絵の才能皆無なので、文は…まぁノーコメントとしましょう。笑
昨日メッセージボードにコメントくれてましたね。さっき気が付きました。そうですね。今回のリレー怪談、皆さんの作品を読ませて頂いてる間に、なんか怪談と言うより、ラノベ?いやフリーゲームに近いな、と感じ、本当にゲームにしてみました。笑

車猫次郎さん
猫さんもこのサイトに登録する前から知ってました。いや、更新頻度の多さにとても驚いています。バラエティー豊富だな、と常々感じます。どうかその才能私に下さい。笑
そしてこれからもこのサイトを盛り上げて下さい!

ふたばさん
クリスマス(誕生日)と同時にリレーターン、お疲れ様です!動画も毎月しっかりアップしてますね。実はふたばさんの動画の後語りを毎月楽しみに聴いてます。怖話の歴史や、他の作家さんの事がよく知れて、とても為になる動画です!あともう一踏ん張りですね。ファイトです!

皆さん今年もありがとうございました。来年も宜しくお願いしますm(_ _)m

返信

ふたば様
遅くなりました。
そして、何より、お疲れさまでした。
何事にも一生懸命全力投球、ご誠実で真面目なお人柄がわかる作品でした。
ここまでの10作品の伏線や謎、それぞれの作家様の伝えたいメッセージや想いを懇切丁寧に拾い上げ掬い上げ、ラストに導こうとしている真摯なお姿に感銘を覚えています。
ラストを走る思いは多々ございましょう。
が、まだ、前半の途中しか読めておりませんが、各作家様たちへのリスペクトが随所に感じられて、これから、後半に向かっての展開が読めず、嬉しい悲鳴を挙げています。
自分自身の感想や本イベントに関する思いは。一旦脇へ置くとして、ラストまで、ふたば様の筆の赴くまま臆することなくお進みください。

そもそも、これだけの作家様たちが数ヶ月かけて作り上げたストーリーを矛盾なくまとめあげること自体、無謀と言わざるを得ないでしょう。
おそらく、プロの作家様たちでも出来ないことです。
尤も、書くことの恐ろしさを知っているプロであれば手がけないでしょうね。
もしくは、編集会議と称し、多くの読者ほか作品に関わる人達がともに手を加えなければ仕上がらないほどに 広がりすぎた大作をラストにおいて、ここまで持ってこれたふたば様の才能に感謝します。

本コメントには返信は不要です。
ただ、しっかりと読んでいただきたいとは思いますが。😁

後半のメインアイテムは、キラキラと光るふたば・・・ですね。
よろしくお願いいたします。

今年もカウントダウンに入りました。
今年は、大変お世話に鳴りました。
また、此のイベントに数年ぶりに参加できましたことや、分不相応なプレゼントまで頂戴し、心に残る年となりました。

今月後半は、色々ありすぎてとてもここに来る余裕も 描き続ける気力も時間もありませんでした。またまた不誠実なことになってしまい申し訳なく存じます。
新しい年は、今よりはちっとは良い作品を描けるように、がんばります。

ふたば様 良いお年をお迎えくださいませ。

ではでは。
このへんで、
誤字脱字については、私ほど酷い作家は居ないので、笑い
目くじら立てるほどのものではなかったように思います。

皆々様へ
沢山の愛をありがとうございました。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
皆々様のご多幸と健やかな日々をお祈り申し上げます。

返信

ふたばさん、こんばんは。
遅くなりましたが11話前編の執筆お疲れ様です。
僕の回の文章がでてきた時はドキッとしてしまいました。まさに集大成といった感じの展開ですね。このボリュームで後編のストーリーが待ち構えているのは、ふたばさんの労力推して知るべしと言った感じでしょうか。
前編のお話楽しく読ませていただきました。後編も楽しみしておりますが、無理はせずに頑張ってください。
ざっと読んでしまいましたので、誤字脱字の確認をしつつまた改めて読み返させていただきます。

返信

ふたばお兄様!ご執筆お疲れ様です!
すみません。ちょっとまだ読めていないのですが、今日、明日中にはお兄様の力作を堪能したいと思っておりますので、申し訳ございません!…ひ…

返信

@ゴルゴム13 さんこんばんは( ᴗ ̫ ᴗ )
己の文章力が低過ぎて、この前編だけでも投稿用の推敲がめちゃくちゃ多いふたばです……
登場人物の都合上、今のところ甘瓜さんの台詞が多めですが、もっと口数を減らしてゴルゴムさん好みのクールビューティーで聡明な時々悪戯心を覗かせる女の子に仕立て上げたいところですね(*`ω´)b
続きも頑張ります🌱💡

返信

最近忙しくてコメントできず申し訳ありません。第十話まででどうなるんだろうと思っていたんですが、さすがふたばさんですね。
まだお疲れ様というには早いかも知れませんが、後半がすごく楽しみにしてます。

返信

すいません、長すぎるとコメント出来ないみたいで、キリの良いところで分けて投下ております。
見づらくて申し訳ありませんm(_ _)m

返信

『魅惑の旧校舎(仮)第十一話 前編-2

今日は旧校舎の裏手の墓地で目が覚めたようだ。

 あの怪人、早く私を見つけてくれないかな。私の方から殺されに行くの、面倒なんだけどな。

 赤い月を見上げながら考えた。

…けど、何故だろう。昨日の悪夢では、誰かが私の名前を呼んだような気がした。そんなこと、ある筈が無いというのに。

私が殺され始めて、一体どれくらいの時間が経ったのか。

 殺されては目覚め、また殺される。

 無限に思われる繰り返しの果てに私の心はすり減って、もうわずかな欠片しか残っていない。

 終わりにしたいと思った。

 消えてなくなりたいとも思った。

 でも、この欠片はなぜか消えてくれない。

 誰かの声が、私をこの世界に固く縛り付けている。

 いったい誰の声なんだろう。

 懐かしい、あの声は。

 不意に涙がこぼれた。

 こんなこと、ここしばらくなかったのに。

 一度泣き出すと、止まらなかった。

 膝を抱えて、声を出して泣いた。

 誰かを求めて。

 その時だった。誰かの声がしたのは。

「ここは…、外……?」

「待って秋永君。空の月が赤い、ここはまだ魔夜中よ」

「そんなっ、それじゃああの手は僕らを逃がさないつもりで…ッ?!」

顔を上げると、1組の男女が立っていた。

 鳳徳学園の生徒だろうか。制服のデザインが、微妙に違っているようだが。

秋永……、どこかで聞いたことのある苗字だった。それに、この二人の声、どちらも聞き覚えがあるような気がするのだが……。

 いや、そんなことより。

 人だ、人がいる!

 私以外に、この魔夜中に人がいる!

 今回は、これまで過ぎ去った無限の過去とは状況が違っているのだ。明らかに。

 不意に、脳裏に懐かしい人の顔が浮かんだ。

 光にあふれていた、あの頃の。

『月島さん、Never give up! Girl‘s be ambitious!』

 甘瓜先生――! 

「私の名は……月島聖良。お願い、助けて――!」

§

――ふと気がつくと、僕と美波は旧校舎英国人墓地へと移動していた。

「えっ聖良さんっ?!そうか、聖良さんはずっと魔夜中に捕らわれてたんだ!」

謎の黒い手に引きずり込まれた先で、僕と美波は緑眼の少女と邂逅した。月島聖良、昨夜の夢で、僕が助けてあげられなかった女子生徒。

「秋永君の知り合い…?って、貴女泣いてるじゃない!どうしたの?あのカボチャ頭の怪物に襲われたの?」

「――ッ!……先生ッ、甘瓜先生…!」

「え?ちょっと、どうして更に泣きそうになっているのよ。それに私は先生じゃあ…」

今にも泣きつきそうな聖良に、美波は困惑している。

「あーえっと、聖良さん…、彼女は甘瓜花波先生じゃなくて、その娘の甘瓜美波ちゃんなんだ」

「甘瓜…美波ちゃん……?」

「ねえ秋永君、どうして私のお母さんの事…?!」

「あっそうだ、それも説明してないんだった――」

「甘瓜…美波ちゃん…!そうだ、先生には小学生に上がったばかりの娘さんが居て…、ねえ、美波ちゃんの、彼氏…さん?」

「っかかか彼氏ぃ?!」

聖良さんの発言に声が上ずる。え、もしかして僕らって傍から見たらそう見えなくも……ちらと美波の方を見やると、彼女は心底不機嫌そうに僕のことを睨んでいた。この視線ならきっと人を殺せる。

「え…だって、さっき二人手を繋いで……」

「いやいやいやいや、そんなんじゃなくって、僕らはただの友だ…」

「ソイツはただのクラスメイトよ」

グサッ、と美波の冷たい言葉が刺さる。もはや友達という関係すら認めて貰えない上に“ソイツ”扱いだなんて……疑念があるとはいえ、甘瓜さんは甘くない……

「そうなの…?ねえクラスメイトさん、今って平成何年なの…?」

「あぁ…今は2021年の、平成でいうと…えーと、」

「平成で言うと33年よ。聞きたい事は色々あるのだけれど、先ずはそうね、私たちをこの墓地に連れ込んだのは貴女?」

聞きたい事、と言った時にはしっかり僕を睨んでいる美波が答え、質問する。

「連れ込む…って?私…10年もここに居て、でも他の誰かと会うなんて無くて、いつもあの怪人に殺されてばっかで……」

「つまり貴女も被害者ってことね。それで?ここの英国人墓地を掘り起こして、どうするつもりだったのかしら?」

甘瓜さんの言葉に周辺の見ると、誰かが掘り起こしたのかもしれない墓石が無惨に転がっていた。僕はふと墓穴を覗くとそこにあるはずの棺桶は綺麗さっぱりなくなっている。

「え…、何、コレ……こんな事初めて……」

「ん?どういう事?まさか偶然飛ばされた先は偶然いつもと違っていて、貴女と出会ったのも偶然だと言うの?流石にそれは無理が無いかしら?」

「待って甘瓜さん。彼女は紛れもなく僕らと同じ側の境遇だ。ずっとこの魔夜中で殺されては生き返ってを繰り返しているから、心が弱っているんだよ。どうか優しく接してあげて。
それに、これ……」

僕はスマホのライトで掘り起こされた英国人墓地の周辺を照らす。

「これ、旧校舎とこの場所を繋ぐように足跡が続いてる。つい最近誰かが校舎からここへ来たか、ここから校舎へ向かった痕跡じゃ無いかな」

「…秋永君の癖に急に冴えてるわね。
……はぁ、えっと、月島聖良さん?頭ごなしに疑う発言ばかりで御免なさい。私もずっと不可解な事ばっかで余裕無かった」

「いえ、私も、その…一緒だから……」

美波が聖良に謝ると、申し訳無さそうに彼女も答える。

「それで、秋永君その靴痕ちょっと見せて貰える?」

「あ、うん」

僕は地面に向けてライトを照らし、足跡を彼女に見て貰う。

「この足跡の大きさ…おそらく男性ね。それに、歩幅がやけに広いのも妙ね」

「もしかして、カボチャ男のじゃあ…」

「いや違うわ。確かにアイツは背がやたら高いけど、これはブーツの足跡じゃ無い。どちらか言うとこの歩幅と地面の蹴り具合、あと土の跳ねる向きから、走って旧校舎からここにやって来た誰か他の男性みたいね」

「凄い…、まるで探偵みたい……」

美波の推理に聖良が感嘆の声をあげる。

「だけどこれが本当なら、この世界には今、私たち以外の誰かがいるという事になるわ。そいつの目的は分からないけど、他人の墓を荒らすような奴なんて、きっとマトモな人間じゃ無いでしょうね」

それを聞いて僕らに緊張が走る。今この魔夜中に、僕ら以外の誰かが居る…、僕は校長と八島の顔を思い浮かべ、警戒心のボルテージが上がる。

「とにかく、今その何者かと鉢合わせるのは避けるべきね。その為にも、他の足跡が無いか探すわよ。ここに来た痕跡がある以上、離れた方向にも痕跡が残る筈よ」

美波の指示で僕は再び地面を照らす。彼女はスマホを持っていないし、聖良も手ぶらである為、光源はこのひとつだけだった。

掘り返されたお墓の周りを調べると、先ず墓穴の周りにはそれ程足跡が無い事が判る。穴を掘るという作業をしていたと言うより、その穴を覗き込んだかのように、墓穴の前で足が揃えられている。
周辺には、カラスだろうか、黒色の鳥の羽らしきものが落ちていた。
そして時計塔の方へと向かって、犬か猫のような、しかしそれにしてはやけに大きな動物の足跡が残っていた。

「これって、もしかして遊輔の足跡なんじゃないかな……」

「遊輔?誰それ?」

僕の感想に美波が反応する。

「大神遊輔君だよ、クラスメイトの。ほら、君にラブレターを贈った、前髪の長い男子」

「ああ、アレ贈ったのそんな名前の子だったのね」

興味なんて無かったわと言わんばかりに、さらっと名前さえ知られていなかった新事実が判明する。

「え、告白してきた子の名前も知らないの…?」

「机に入ってた手紙なんて、開封せずに破いたわ。1人目が手酷く振られれば、同じ轍を踏もうとする馬鹿は現れないでしょう?」

「うわぁ…花波先生と一緒だ……」

さすがの聖良も若干引いている。SNSで晒し者にされた挙げ句、告白した相手に顔や名前はおろか、クラスメイトであったことさえ知られていないとは……
この様子だと欠席が続いている事さえ気付かれていないのだろう。哀れ遊輔、これには同情せざるを得ない……

「で?ソイツがどうしたって?」

「ああ、端的説明すると、彼は俗に言う狼男なんだ。でも、その前に僕が持っている情報を伝えたいんだけど、いいかな?」

「そうね。出来ればこんな危険な場所でゆっくりなんてしたく無いけど、色々聞かせて貰おうかしら」

「聖良さんにも聞いて欲しい。それと、聖良さんのこれまでの事も甘瓜さんに教えてくれないかな。甘瓜さんにとっても、重大な話だから」

僕ら3人は墓の周りで話を始めた。最初に自己紹介を兼ねて、聖良は自分の身の上をみんなにブリーフィングした。特に、美波には、彼女の母、花波が自分を守ろうとする中で魂を抜かれてしまったことを涙ながらに伝えた。

「結局、貴方のお母さんは、10年前に私を守ろうとして、魂を取られてしまったの。本当にごめんなさい」

そして、その次に僕の話。先ず、自分はこの世界の二週目の人間であること。
一週目の世界で明らかになった話、アキラから教えてもらった凰徳学園創立に関する都市伝説と大神・護摩堂・甘瓜・秋永の四家の繋がり、悪魔に呪いをかけられたという話。ウィルソン家・八島家との因縁、この二家が僕ら四家と敵対しているという事。
遊輔の祖父大神遊人から伝えられた、魔夜中の存在理由、“大きな穢れ”“真の敵”の危惧……
最後に、一週目の世界でドレス姿の甘瓜美波に正しい分岐へと向かうように言われた事、その正しい道へは僕で無ければ向かう事が出来ないであろうという事、その役割を光る双葉と共に託され、それが今の僕の、二周目の秋永九十九の目的であるという事。

記憶は完璧では無いし、僕がその場に居なかった出来事は当然分からないなままだったが、一通りの僕に分かる全てを話した。

美波と聖良は驚いた様子を見せていたが、最後まで口を挟まず、黙って聞いていた。そして、

「それは……信じがたい話だけど…、先ずはそうね……
……聖良さん」

美波が聖良の目を見つめる。聖良の碧眼は潤んでいて、逃げたくなる程弱々しく、それでも真っ直ぐに美波を見ていた。

「確かに母は10年前に昏睡状態に陥った。でも時々ふっと意識が戻ることもあって、そんな時は”Never give up!“って、うわごとのように呟くとまた眠りに落ちる。それを繰り返しながら、何とか生命だけはつないでいる状態なの。

でも、それはあなたのせいじゃないわ。私は貴女を恨んでなんかいないし、母だってそうだと思う。悪いのは、その八島とかいう奴よ。貴女だって、被害者なんだしね。だから貴女は謝らないでね」

精一杯優しく微笑みながら、美波はそう伝えた。

その言葉に、聖良はより一層涙を膨らませ、

「……有難う」

と、初めてほんの少しでも救われた顔をした。

「それで秋永君」

「私の立場からすると、まあ信じるしか無いわね。現に貴方は今日ここで魔夜中に巻き込まれた途端、急に落ち着いたというか、私の知らない事を口走り始めたのもそのタイミングだったわね。

正直なところ、自分では解決出来ないからと頼りない貴方に全てを任せるなんて、その私はどうかしてたんじゃないかと思ったけど……、でも託すなら確かに貴方かも知れないわね」

「えっ。」その言葉に僕は驚く。今までの彼女の反応から、正直かなり疑われるのではと覚悟していたからだ。それなのに、思いの外彼女から信頼を得ているなんて……

「だって秋永君……」

美波がふらりと僕に近づく。僕の目をじっと見つめながら、口元を少し緩めながら、ゆっくりと、ゆっくりと歩み寄る。

(…ってあれ?!なんかめちゃくちゃ近くない?!)

彼女の顔が僕の直ぐ目の前に来た。彼女が纏う甘い香りがして、僕は緊張で背筋が伸びたまま動けないでいる。そして美波はスッと僕の耳元に口を近付け、

「……貴方、私が放課後に呼び出した時、『告白されるんじゃ』って思ったでしょ…」

「はぃっ?!ふぇ?!そそそそそそんな事ッ!?!!」

(嘘!?心読まれてる!?っていうか“はい”って言っちゃった……!?)

美少女からの急な囁きボイスに僕がパニックになって慌てていると、花弁のように彼女は僕から離れ、

「ほら、秋永君は直ぐ顔に出るもの。貴方の言葉なら、私簡単に嘘かどうか見極められるわ」

と悪戯に微笑んで見せた。その顔が可愛くてドキドキしてしまって、僕は何も言い返せない。

(そ、それはズルいって……)

なんだか顔が火照ってしまって、直視出来ない。聖良もウブに顔を隠した指の隙間から、小悪魔を見る目で美波を見ている。あわわと開いた口が栗みたいだ。

「とにかく、話を前に進めましょう」

僕らはその言葉にようやくはっとして、「そ、そうだね……」とドギマギしながら会話を再開する。

「色々問題が起きているみたいだけれど、一先ずはこの場所から抜け出すのが先決ね。
秋永君の予想が正しいのなら、大神遊輔とかいう狼男がこの墓地で狼に変身して、鳴らずの時計塔方面へ向かった。なんで時計塔へ向かったのかしら」

「遠吠えの音を周りに聞かれたく無かったんじゃないかな。彼、あまり進んで狼になりたがってた訳じゃなさそうだったから」

「鐘の音が聞こえてから、獣の声が重なるように聞こえてきたからって事かしら。鐘の音に紛れるように吠えて誤魔化そうとしたと」

「まあ、そういう事かな」

「さっきの話だと、鎌の化け物は狼男が天敵なのよね。だとしたら、今ソイツが中々現れないのはその狼男が発現したこの場所を嫌がってるからって事かも知れない。これは利用出来そうな敵対関係ね」

美波の発言に僕らは頷く。

確かに、今回はあのカボチャ頭が姿を見せていない。昨晩の夢も獣の声が最初にしてから、怪人とのエンカウントまで時間があった。偶然じゃないのだとしたら、獣の声が縄張りの主張のような働きをしているのかも知れない。

「でも、それなら怪人が今ここに現れないのは一時的なんじゃあ…、その狼男君が行った方へ行って、一緒に行動するのは駄目かな…?」

自信なさげに聖良が提案をする。

「そうね。それにあの声切っ掛けで魔夜中が始まったのだから、魔夜中が終わる切っ掛けも彼かも知れない」

「どの道遊輔と合流するのは悪くないと思う」

「それじゃあ、カボチャ頭に鉢合わせる前にその彼を探しましょう」

僕らは意見を一致させ、大型動物の足跡の続く方へと歩もうとする。

と、その時……

「その必要は無いわ」

「えっ!?」「誰っ!?」

僕らの元に突如大人の女性の声が聞こえて来た。
見ると、如何にも真面目そうな眼鏡をかけた、見覚えのある女性が立っていた。

§

「き、気水先生…っ?
なんで先生がこんなところにっ?!」

「校舎の見廻りよ……って、誤魔化してもいいのだけれど、そうしない方が話がスムーズになりそうね」

気水先生はよっこいしょと背負っていたらしい何かを丁寧に下ろした。暗くてよく分からなかったが、どうやら人間を1人背負っていたらしい。

「って、遊輔っ!?なんで先生に背負われて…!」

墓地の植え込みにもたれかけるように降ろされたのは、ぐったりとした遊輔だった。僕は駆け寄って彼の様子を見る、脱力し切ってスヤスヤと寝息を立てている。良かった、若干獣臭いがどうやら眠っているだけみたいだ。

「…あの、貴女は誰…ですか……?」

おずおずと聖良が質問する。美波は気水先生のことは認知ているようで、警戒しながら敵か味方か探るように見つめている。

「私は気水百香(きすい ももか)。凰徳学園の教師で担当科目は国語。そして、大神遊人老に仕えてロビン・ウィルソンと八島弘の動向を探っていたの。貴女たちの話は聞かせて貰ったわ」

「盗み聞きとは結構な趣味ね。しかもこのタイミングで出て来るなんて怪しさ満点じゃない」

「隠れて動向を伺っていたのは申し訳なかったわね。
…まあ、疑ってもしょうがないと思うわ。だから先に証拠を見せてあげる」

気水先生は身に着けていた黒い手袋を外して、美波に手渡した。

「何よ、これ?」

「狼の毛が編み込まれている手袋よ。それも、狼男…大神家の人間が変化した時の毛が使ってある。貴方たちの推論通り、あの化け物は狼男の声や匂いを嫌うから、お守り代わりにと遊人様から渡されたものを普段から持っているの」

「その人から渡されたっていうのも嘘だったら?」

「誰から渡されたかを証明することまでは出来ないけれど、怪人の嫌がるものを持っている地点で、少なくともあいつの味方ではないでしょう?それも、手袋というまだ9月の終わりにしては普段から持ち歩くのに不自然なものを」

「……分かったわ」

「あの…私も信じます。何故か分からないけど…、私貴女の声にも聞き覚えがある…から……」

美波に続いて聖良もそう答える。聖良の言葉に、気水先生は一瞬だけ意外そうな、そして少しだけ寂しそうな表情をした。

「そう、ありがとう……」

「それで、貴女はさっきの秋永君の話には一ミリも出てきていなかったのだけれど、それはどうしてかしら?」

「元々私は正体を隠しながら行動していたからよ。たとえ味方であろうと、そこから敵方に情報が漏洩しないとも限らないでしょ?だから本来なら最後の最後まで私が表立って出てくることはない筈だった」

「なら、どうして出てきたんですか?」

僕も沸いた疑問を口に出し、気水先生は答える。

「貴方達が遊輔君を探すとなったのに私が背負っていたのだから、私が出てこなければずっと危険な魔夜中を探し回ることになっちゃうでしょ?眠っている遊輔君をその辺に転がしておくわけにもいかないし。
それに秋永君、貴方の話に少し妙なところがあったから、確認のために姿を現した。そのままにしておくと危険な事態に陥れかねなかったから」

「えっ?それって、僕が聞いてきた話に偽物の情報があったってこと?」

「そうね。でもその話は長くなるから、ここを出てから大神家で遊人老も交えて話しましょう。それ以外にも明らかな矛盾があったのだけれど、でもそれは甘瓜さんもおそらく気付いていることでしょ?」

僕と聖良は驚いて美波を見やる。

「美波ちゃん、本当なの?」

「どうして教えてくれなかったのさ?」

「それはおそらく貴女がいたからよ、月島聖良さん。

……甘瓜さん、貴女は他人への配慮が足りていないと思っていたけれど、案外優しいのね」

気水先生の言葉に、美波はバツが悪そうに首を横に反らした。

「配慮が足りないは余計よ、それに、ここで変なこと言って取り乱されても困るじゃない……」

「……美波ちゃん、どういうことなの?」

「秋永君の話した情報では、魔夜中で殺され続けていた月島聖良は現実世界で生きているとされていた。でも甘瓜さんが図書館のアルバムで調べた限り、その子は死んでいると記載があった。そうでしょ?」

「あっ!確かに!」

気水先生に言われ、初めて気が付く。でも僕は確かに彼女が病院で十年ぶりに目覚めたと聞かされた、筈だった……。そして美波と共に、甘瓜花波の捕らわれた魂を戻しに行ったとも聞かされた、筈だ……
結局彼女と再会することなく二週目に送られたから、現実世界で彼女と会うことはなかったけれど、もしかして記憶が完璧じゃないから情報に食い違いが?まさか甘瓜さんが嘘をついていたなんて思えないし……

「それって……、それじゃあ私…今生きているの?死んでいるの?」

聖良が混乱する。元々殺され続けてノイローゼ気味な彼女にとって、この情報は思考力を奪うのに十分だった。

「落ち着いて。……安心して、貴女はちゃんと現実世界で生きている。

貴女には本当に申し訳ないけれど…、そのアルバムを書き換えたのは、私なの……」

「なん、で……」

「大神遊人様の指示よ、貴女が死んだということにしておいた方が、入院し続けるあなたの体をロビン・ウィルソンや八島弘に手出しさせないよう守るためにってね。…でも、だとしても貴女を死んだことにするなんて……本当に悪いことをしてしまったわ。ごめんなさい……」

気水先生は本当に申し訳なさそうだった。そして、誠実に聖良へ謝罪の言葉を述べ頭を下げた。

「そう、なんですね……、私のために……
寧ろ私の方が感謝しないといけませんね。気水先生、有難うございます」

聖良もまた頭を下げ、二人とも同じ姿勢になる。ごめんなさい、ありがとう、とどちらもなかなか頭を上げないので見かねて美波が気水先生に声をかける。

「それで先生、この魔夜中からはどうやって抜け出すの。こんな危険な場所、いつまでもいられないわ」

「そ、そうね、先ずはこの場所から出ないといけなかったわね……
と言っても、私は魔夜中に来るのが初めてだから確信はないのだけれど……」

先生はハッとしたように頭を上げ口を開く、慌てて頭を上げたので少し眼鏡がずれている。

「はあ?何よそれ?」

「だけどここからの抜け出し方は聞かされているわ」

「そう、なら方法を教えて貰える?」

一応相手は先生なのだけれど、依然甘瓜さんはタメ口なことに少しひやひやする。

(気水先生って、結構校則にも厳しい先生だったよね……?)

この様子だとタメ口で話されていることにも気づいていないような気が…、気水先生は意外と天然なのかもしれない。

「この魔夜中に入り込むには、いくつか条件があるの。これ以上の長居は無用だし、静かに移動しながら話しましょう」

先生はズレた眼鏡を両手で直すと、眠る遊輔をおんぶして歩き出し、話し始めた。

§

「まず、この学園に小さくない縁があること。と言ってもこれはこの学園の関係者であれば条件としては満たされるから、学園の生徒や教員、卒業生も含まれる。これは縁が深ければ深いほど迷い込むリスクも高くなるわ。……ただ、秋永君の話が本当なら、この条件は変化している可能性があるわね。松井ユウタ…彼は他校の生徒、なのよね?」

「ええと…、確か沢カレンさんの中学時代の友人…だとしか僕には分からないです」

「そう、ならそれはここを出てから調べるわ。

それで、この魔夜中の入り方には主に二つの方法があるの。一つは、深夜の時間帯に夢の中で強制的に呼ばれた場合。どうやって読んでいるのかは知らないけれど、魔夜中そのものに呼ばれているのではないかと遊人様は仰っていたわ。縁が深い人間ほどというのはこれが理由ね。この入り方の場合だと、眠ってさえいれば旧校舎から離れていても魔夜中に連れ込むことが出来てしまうのが厄介ね。
二つ目は、この旧校舎の敷地内が場所ごと魔夜中の空間に切り替わった場合。どうやら意図して空間の切り替えが出来るのはウィルソン校長や八島らしいわね、方法はやはりわからないけれど。空間が切り替わるというよりはもしかしたら異空間に転移させられているのかもしれないわね。例えば中国の仙人はそれぞれ固有の仙界を持っていて、自由に出入りが出来ると言うし、それがこの魔夜中に繋がっているのかもしれないわ。現在私たちが直面しているのはこっちの場合ね」

旧校舎の敷地内を歩きながら、気水先生の言葉に耳を傾ける。途中から寝ている遊輔は僕が代わりに背負っており、彼女の両手には再び黒い手袋がはめられていた。

「それぞれの脱出方法なのだけれど、先ず一つ目の方法で入った場合、眠っている時に入り込んだわけだから夢から覚めるか朝になるのを待てばいい。具体的に言うと、旧校舎は午前零時から始まりの鐘が鳴って、午前六時に終わりを告げる鐘が鳴るの。それまでやり過ごすか、何かしらのきっかけで夢から覚醒すれば悪夢から解放されるという訳よ。
次に二つ目の方法で迷い込んだ場合は、魔夜中に空間を転移させた者が空間を元に戻すことが基本的な方法ね。だけど今回の場合、これだけ色々な情報を晒しておきながら校長も八島も現れていない。彼らが空間を変えたのだとしたら、この旧校舎のどこかにいる筈なのに現れないということは、この魔夜中の帳を下したのは、その二人のどちらでもない可能性が高い」

「どういうこと?それなら誰が空間の転移とかいう傍迷惑なことをしたっていうのよ」

「おそらく…、遊輔君じゃないかと私は思ってる。鎌の化け物も…月島さんも、元々魔夜中に居るから現実世界に干渉できるのか疑問があるし、第三者がいる可能性は…考えたくないわね」

「それなら私や秋永君かもしれないし先生貴女かもしれないじゃない」

「勿論その可能性だって零じゃない、だけれど校長や八島の例を考えると、一番可能性があるのは遊輔君なのよ。何故なら彼は……、いや、これは本人が目覚めてから一緒に聞かせた方がいいわね。それと、遊輔君には“狼の姿を誰にも見られたくない”って動機もあるしね」

「ふーん…つまり、そこで眠りこけっているラブレター男を叩き起こせばいいのかしら」

「そうとも限らないわ。恐らく無自覚に魔夜中へ転移させてしまっているから、起きたところで戻し方が分からないって可能性も十分にある」

「周りごと異空間へ飛ばして自分は暴れまわって、疲れたら眠ってお荷物なんて…、随分と迷惑な奴ね、コイツ」

「思春期なんだから色々あるのよ、甘瓜さん?貴女がもっと優しくしてあげていたらこうはなっていなかったかもしれないわよ?」

「……まあ、ちょっとはやりすぎたかもしれないわね」

「それで、こうなってしまった以上、他の方法で出ざるを得ないのだけれど、ここがさっき話した仙界のような異空間であるならば、必ずどこかに境界がある筈よ」

「境界?」

「空間や認識の境目の事よ。内と外の境であったり、陸と海の境であったり、こういう閉鎖的な空間であるならば、ドアや玄関といったものが境界となりうるわね」

「それじゃあ今向かっているのはその境界の場所ってことでいいのかしら?」

「ええ、そうよ。この場所が学校という空間であるのなら、その出入口は校門、丁度もうすぐ見えてきたわね」

つまり僕らが魔夜中を出るために校舎を出ようとしたのは正解だったという訳か。それを聞いて僕は少しホッとする、美波は若干つまらなさそうな顔をしているけれど。

「ねえ、秋永君」

「は、はい…?」

不意に、気水先生に話しかけられた。

「貴方の語ってくれた話、信じられない部分もあったし知らない情報もあったけれど、私の持っている情報と合うものも多いし、納得もあった。私は、貴女の言葉を信じるわ」

「え?あ、ありがとうございます…」

「それに、遊輔君のことも下の名前で呼んでくれているのね。貴方と遊輔君は同じクラスだけれど、呼び捨てするような関係じゃなかった。あなたの言う一週目の世界でそれだけ仲良くなったのね。彼、目の色が人と違うからか人目を気にし過ぎるせいで、友達を作るのが上手じゃなくてね、所属している部活だって活動もあって無いようなものだし幽霊部員も多いし…、だから、そんな彼と仲良くしてくれていたのが嬉しいの、ありがとう。この世界の遊輔君とも仲良くしてあげてね」

「は、はい…っ!」

思いがけず感謝されてしまい、少し恥ずかしいような、むずかゆい気持ちになってしまう。

気水先生の顔を見やると、意外にも僕に自然な笑顔で僕に微笑んでいた。普段は鉄仮面を被ったように真面目な表情しか見せないからか、その笑顔に少しどきりとしてしまう。

「…鼻の下が伸びてるわよ。本っ当単純でわかりやすいわね」

「うっ……」

べべべ別に、わかりやすくなんか……、なんだか制服を着た女性陣からの視線が刺さるような気がする。

「甘瓜さんも、もう少しだけ遊輔君に優しく接してあげてね」

「…まあ、秋永君の話では私のことを守ってくれてたみたいだし、有益なクラスメートとしてなら、別にかまわないわ……」

美波はプイっとしながらそう答えた。素直じゃないところが実に彼女らしく思える。

「……あのっ、気水先生はその…どうして大神家の方に仕えているんですか?」

横から聖良が質問をする。気水先生は一瞬困ったような顔をして、そして少しだけ悲しい表情をしたと思ったら、言葉を選ぶように話し始めた。

「元々私の家系は明治時代から大神家に仕えていたのだけれど、でも私は3人兄妹の末っ子だったし勉強も苦手な子だったから両親からはどんな道に進んでもいいって言われていたんだけどね……
実は私もこの学園の卒業生でね。それで、在学中に親友が一人魔夜中の犠牲になっちゃったの。その子、とっても辛そうだったのに私は何もできなくて、それどころかもしかしたらその子を追い詰めちゃったかもしれなくてね……」

「それは…、辛いことを聞いてごめんなさい……」

「貴女が謝らないで、悪いのは私なんだから。だからその罪滅ぼしのつもりで、必死に勉強もして自分から学園の潜入にも志願したの」

「…そうなんですね。……先生はとても、友達想いな方なんですね。きっとそのお友達も先生みたいな素敵な親友と過ごせてすごく幸せだったと思います…、私にも大切な親友がいたから分かるというか、だから…っその…………」

「……ありがとう。とても救われたわ。

もう直ぐ校門に到着するわ。ここで怪物に見つかる訳にはいかないから、ここからは静かに行動しましょう」

先生の言葉に僕らは黙り、足音も殺して歩みを進めた。彼女の声は震えていて、僕らはそれ以上会話を進められなかった。

§

そして暫くもしないうちに、僕らは目的地である旧校舎の校門近くへ辿り着いた。目標である校門まで残り十メートル足らず、僕らや気水先生の仮説が正しければ、ここを超えれば元の現実に戻れるはずだ。そう信じ、僕らは校門を目指す。

……が、ここに来て、聖良の足が止まってしまった。

「どうしたの、聖良さん?」

僕は思わず声をかける、彼女は校門に対して足を揃え、それ以上進んでいいのか悩んでいるかのようだった。

「…私、ここから出て大丈夫なのかな……?」

「何を言っているの、そんなのいいに決まっているじゃないッ」

「でも、私…、ずっとずっと、十年もここにいて……」

「大丈夫よ月島さん。貴女が目覚める時には私が傍にいてあげる。だから…一緒にここを出ましょう?」

「気水先生……

……うん、分かった…私も一緒に……」

だがその時だった。

――ガアッ!ガアッ!グアア!!グアアアッッ!!!――

突如頭上から、けたたましいカラスの鳴き声が響き渡った。

「何よこれッ!?うるさい!こんなのカボチャ男にもばれちゃうじゃないッ!!?!」

「見つかる前に走るわよっ!!皆!急いでッ!!!」

背後の校舎から、バリバリとガラスの砕ける音がした。ドンッと火山が噴火したような爆発音とともに隕石の如き勢いの鬼火が向かってくる。

「化け物がこっちに気づいた!!急いで逃げなきゃ追いつかれるッ!!!」

「待って、皆…っ!!」

見ると、反応が一人遅れた聖良が逃げ遅れている。

「聖良さんッ!早くッ!!!」

「秋永君っ!甘瓜さんと遊輔君を連れて先に行きなさい!!!私はあの子を置いていけないッ!!!!」

「先生ッ!でもっ!!!」

「言うことを聞きなさいッ!!現実に戻ったら、話さなきゃいけないことあるから必ず明日は学校へ来るのよ!!!」

「秋永君急いでっ!でなきゃ貴方も――!!!」

――ヒュンッ!ザクッ!!!――

僕と気水先生の目の前で、旧校舎から投げられたであろう紅蓮に燃える鎌が飛んできて、聖良の胸を貫いた。

「…カハッ…ゴフッ……」

聖良は立ったまま胸を焼かれ、声にならない声を上げた。口元から垂れる血液と零れる涙が、メラメラと燃え盛る炎を映して光る。

「そんな…どうして……ッ」

目の前で焼け焦げていく聖良の姿に、気水先生が絶望に染まる。

「あ…あああぁ……あああああぁぁぁぁあああッッ!!!!」

「秋永君!先生の腕を引いて走って!カボチャ男が来たら全員殺されちゃう!!」

美波は校門の閂を外し、鉄門を横に押し開きながら叫ぶ。

僕は遊輔を背中に背負ったまま呆然とする先生の腕を引き、美波が開いてくれた出口へと走った。

「先生ッ!聖良さんはもう助かりません!早く逃げましょう!!!」

「どうしてッ…どうしてッ!!私はまた……っ!」

僕ら四人は焼き焦げる聖良を残し、ガアガアと騒ぐカラスに責められながら…、魔夜中を走り去った。

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『魅惑の旧校舎(仮)第十一話 前編-1』

 どことも知れぬ薄暗い廊下を一人歩いていた。窓の外を見れば、不吉に輝く赤い満月が時計塔を照らし出していた。

 なぜ僕はここにいるのか。ここはどこなのか。

 分からない。だけれど…何だろう、頭の何処かで、割れたガラスの破片のような、記憶の欠片がチラついて、まるで頭の中が万華鏡を転がしたように、酷く眩しくて騒がしかった。

 不意に、どこからか低い唸り声が聞こえた。

(この声……)

獰猛な大型犬を連想した僕は、とっさに耳を澄ませ、忍び足でその場から遠ざかった。廊下を進み、階段を上って、また廊下を進んで、今度は降りて………………。

(まるで、何かを探しているみたいだ。でも、だとしたら何を……)

足を運ぶたびに軋む床板に冷や冷やしながら、一体どれほど進んだだろう。

どこかで、悲鳴を聞いたような気がした。誰かが、何者かに襲われているのか。助けなくては…………しかしどうやって?

(考えろ、いや考えるな。ぐずぐずしてたら間に合わなくなる)

 分からないまま、悲鳴の方へと走り出した。

(急ぐんだ。そうすればきっと)

足音が立つのも気にせず床板を蹴る。
自分こそ襲われたらどうしよう…………でも助けなきゃ……。使命感と恐怖が僕の心を交互に廻った。

(きっと助けられる筈なんだ)

 一階まで下りた時、不意にブーツの音が聞こえた。立ち止まり、慎重に階段から廊下を覗いた僕は、音の主を見据える。

 火の玉。火球。鬼火。呼び方は何でもいい。それが幾つも宙を飛び交っている。その中心に、背の高い何者かの姿があった。そのシルエットがあまりにも異様で僕は目を凝らす。

 頭部が歪んでいた。縦長のカボチャ、とでも言えばいいのか、ともかく不格好な輪郭が見て取れる。それだけじゃない。奴は紅蓮の炎を纏う、禍々しいまでの大ぶりの鎌を手にしていた。

コツ、コツ、コツ、コツ……

カボチャ男はこちらに背を向け、どこか一点に向かって歩みを進める。

脱力した右手の大鎌が引きづられ、ガリガリと音を立てながら、床に焦げ跡を残していた。
炎で影が揺れていて、真っ直ぐ歩いている筈なのに、ケラケラと笑っているみたいに震えている。

 非現実的な光景に、僕は息を呑んだまま固まっていた。だがその時、男が足を進める先にあるものに気が付いてしまった。黒い制服に、震えた白い手足、そして恐怖に染まった、碧の瞳…………。

 カボチャ男が、大鎌を振り上げる。ゆっくり、ゆっくり、蕾が閉じるように両腕が頭の真上で鎌を持ち、メラメラと紅蓮の炎に包まれた凶刃が、震えて足腰の立たない少女を見下ろした。

「逃げてっ!聖良さんっ!!!」

僕は叫んだ。知らない名前が口を飛び出し、鬼火に照らされた赤い壁に反響した。

(あれ…、セイラって…誰……?)

僕の叫びに、へたり込む少女がこちらを向く。はっと驚いた、でもやはり震えた瞳がこちらを見据えた。が、カボチャ頭の動きは止まらない。僕の声など聞こえていないかのように、大鎌の刃が振り下ろされた。

「危なっ………!」

――ザシュ…ボトッ……――

駆け出す僕の二度目の叫びが出切るより早く、少女の首は刈り落された。

スローモーションのように、ゆっくりと丸い頭が落ちて、一度だけ地面にバウンドして転がった。見開いた瞼からは光のない瞳が覗いている。首の断面は焼け焦げて、血が流れない代わりに肉の焦げた匂いを垂れ流す。

「そん、な………」

遅すぎた僕は膝からバランスが崩れ、少女だったものの前へ慣性のままに倒れこんだ。

無様に這いつくばったまま顔を上げると、転がる首は僕と目が合ったままブーツに踏まれ、ぐしゃり鮮血をまき散らしながら破裂した。

「あ……ぁあああ…………」

 もう手遅れだった、ごめんよ、ごめんよ…………

 己の無力さが胸中に湧き上がっては、どうしてもっと早く駆けつけてあげなかったんだ、と罪の意識を駆り立てる。

 その時、赤い一階フロアの向こうに新たな悲鳴が響き渡った。
 はっとして目を凝らすと、廊下の奥に、もう一人誰かいることに気が付く。その悲鳴には男も気付いたのか、ダッっと地を蹴り、恐ろしい速さで駆け出した。やや前傾姿勢で首を前に突き出し、袈裟懸けに振り抜けるよう大鎌を背負うように構えている。先ほどのゆっくりと歩く様子とはまるで異なる、俊敏で火山弾のような迫り方だった。

彼女もまた襲われようとしているのだ。鎌の先端が当たっているのか、それとも炎の熱によるものか、カボチャ男の迫る廊下のガラスが割れ砕け、布を裂く悲鳴と衝撃音が重なる。

 助けなきゃ、助けなきゃ、助けなきゃ、僕が、僕が、僕が!!!!
今度こそ、助けなきゃ、僕がっ、あの怪物を止めて、止めて、止めて、止めて………ッ!!!!

「止まあぁぁれぇええええええ!!!!!!」

叫び、喉の奥が震える。頭もグラグラ揺れていて、瞼が落ちるように視界が闇に覆われていく。

鬼火に照らされた男の鎌は、大きく振り上げられていた。

§

 九月も終わりに近づき、木々が色とりどりの紅葉で秋化粧を始めた。校内は今、十月末に行われる文化祭への気運で盛り上がりつつあった。とは言っても、学校の方針で実際に準備が始まるのは二週間前からだ。

「ねえ、秋永君……秋永九十九君、だっけ…………」

下校すべく教室を出た僕に声を掛ける者がいた。振り向くと、女子生徒が値踏みするように僕を見ていた。

 甘瓜美波。九月に転入してきたばかりのクラスメートだ。高二の秋という中途半端な時期に、親の仕事の都合で東京を離れたらしい。

 都心の名門女子校出身ということもあってか、彼女の容姿も振る舞いもどこか垢抜けた雰囲気が漂っていた。背は一六〇くらい。しっとり黒光りする髪はボブに切り揃えていて、涼し気な目元が彼女を大人びて見せていた。

 転入当初、男子生徒が色めき立ったのも無理はない。だがスマホも所有せず、放課後は家に直帰するなど、いかにもなガードの硬さが近づき難い雰囲気を醸し出していた。

 極めつけは、机に入れられたラブレターを眉一つ動かさず、未開封のままビリビリと引き裂いてゴミ箱に捨てた件だ。

 手紙の主は後で特定されて、学校の裏サイトで「勇者撃沈!!」とさんざん笑い者にされたらしい。ちなみに彼はオカルト研究部の部長でもあり、裏サイトでは異常者だとかサイコパスだとか好き勝手噂が流れており、男子生徒にすら薄気味悪い奴と思われていたことも事態に拍車をかけた。

 可哀そうに、彼はそれ以来欠席している。失恋に加えての羞恥攻めとは、なんと過酷な。これもIT時代の闇というやつか。

 以来、男子の間では「甘瓜さんは甘くない」と噂が立ち彼女に寄り付く者はいなくなったし、女子もどこか遠巻きにする状況が続いている。そんな彼女が話しかけてきたものだから、僕は色んな意味でドキリとしてしまった。

「何か用?」

かすれ声で返す僕の目を、彼女はじっと探るように見つめた。一歩、また一歩、猫に睨まれたネズミのように、僕は後ずさる。薄暗い廊下はいつになく閑散としていて、僕を助けてくれる救世主は現れそうになかった。

「秋永君…………」

壁際にまで追い詰められた僕は、彼女から目を逸らせなくなっていた。光の断片を宿した瞳が、僕を映し出している。

「昨夜、夢を見たでしょ?」

「え?」

意外な言葉に、僕は反応が遅れた。『見なかった?』ではなく『見たでしょ?』なんて、どうして決めつけるような言い方をするのだろう。

「夢よ。眠っている時に見るあれのこと」

「夢……」

僕は夢の内容を思い出せることは滅多にない。これまでの経験でも、起きた瞬間には夢を見ていたかどうかすらあやふやになることが多い。だが、昨夜の夢だけはおぼろ気ながら記憶に残っている。

「どうなの?」

「うっすらと、だけど…………覚えてる」

「どんな? 話して」

さらに身を寄せた彼女はじっと僕の目を覗き込んだ。

「わ、分かったよ」

美波ちゃん(そろそろ「ちゃん」付で呼んでもいいだろ? 心の中だけなら……)の迫力に押され、思わず数歩離れてしまう。そして気が付いた。

あれ……? 今、すごくいい匂いしてなかった?どこか懐かしくもあるような、魅惑的な臭いがっ、なんで自分から離れてしまったんだよ!! 

密かな無念を押し隠して、僕は記憶の糸を手繰り寄せた。

「どこか、暗い廊下で探し回っていた……かな……自信ないけど…………」

彼女は小首をかしげて目を細めた。

「探し回ってた…?」

「何を探してたかはわからなくて」

なんだか訝しげな視線を向けられている気がする。もしかして僕、変なこと言った?

「探してたのは人?」

「いや、モノ…だと思う」

「…そう、まあいいわ。ほかに憶えていることは?」

僕の答えに、彼女の敵対心のようなものが弱まった気がする。…よくわからないけど。

「う~ん…………そう言えば、目が覚める前…………どこかで声がしたような…………多分女性の悲鳴みたいな…………」

そして僕はハッとする。そうだ。あの悲鳴のような声があったから忘れずにいたんだ。

「悲鳴を聞いた後は?」

「後?…………いや、分からない……ただ、その悲鳴に焦ったというか、なんというか、えーと…分からないというか、憶えてないよ……」

「それだけ?」

「え?…うん、なんかごめん……」

やや落胆したように、彼女は小さな溜息をついた。にしても、なぜこんなことを尋ねるんだろう。

「一緒に来てほしい場所がるの」

「え? い、一緒に……?」

どういうつもりだろう。まさか告白……なんてある訳ないよな。落ち着け、落ち着け。

「来てほしいって、ど、どこに?」

 僕の問いに彼女はふっと微笑を浮かべた。その瞬間、心臓がドクンと跳ねる。仕方ないだろ? 笑った顔見たの、これが初めてだったんだから!! 

 僕の動揺を知ってか知らずか、美波ちゃんは半身を軽やかに翻し、とある方角を指差した。その先にあるのは…………

 夕陽の中に蹲る旧校舎。真っ白な新校舎と対照的に、赤茶けた煉瓦張りの、老朽化し今や立ち入り禁止となった古臭い建築物───。

§

「これ、ばれたら停学かもな…………」

通用口の窓ガラスを割って鍵を開けた僕らは、旧校舎に足を踏み入れていた。

ここ私立鳳徳学園は、およそ140年前、財閥の出資で明治時代に創始された。長い歴史があるので、校内には随所にその名残がある。平成に入り共学制になって以来使われなくなった旧校舎もその一つ。建物自体は古いので文化財としての価値はあるのだろうけど、不気味な雰囲気が漂っていて誰も近づこうとしない。

通用口の窓ガラスを割って鍵を開けた僕らは、旧校舎に足を踏み入れていた。

「ねえ、どうしてこんな所に?」

「…………」

美波ちゃんは答えずに、先に立って進み始めた。コツコツという足音に混じって古い床板が軋む音がした。とは言え元々の施工が良いのか、まだ現役で使えそうな状態だ。

 しばらく無言で歩き続けた彼女が、ぴたりと立ち止まり振り返った。

「あなたが夢に見たのは、きっとこの旧校舎よ」

 ここが?……まあ言われてみればそうかも知れない。確かに廊下の幅はこれくらいだったような気がするし、板張りなのも同じだ。その時、窓の外に視線を向けた僕は思わず息を呑んだ。

 ああ、どうして気が付かなかったんだ!!

 旧校舎の中央に聳える時計塔───。この角度、この位置…………そうだ、間違いない。

「確かに……夢の中で、あの時計塔が見えた」

頭の中で、今何が起こっているんだと警告音が鳴り始める。なぜ彼女が、僕の夢の中身を知っているんだ?

「甘瓜さんは、どうしてそんなことが分かるの?」

§

「校内に、礼拝堂と英国人墓地があるのは知ってる?」

「もちろん…………それがどうかした?」

敷地の隅に、ひっそりと木立に守られるようにそれはある。時折外国人の姿も見かけるが、おそらくご遺族や子孫の方々なのだろう。生徒はなるべく近づかないように、と入学式のオリエンテーションで釘を刺されていた。

「昨夜ね…………私、殺されかけたの」

「え?」

突然何を言い出すんだ。脈絡がなさすぎる。本気で言っているのか? いや、まさか…………。

「化け物に、鎌で切り殺されそうになったわ。あの燃え上がる鎌、紅蓮の刃……鮮明に覚えてる。ただの夢とは到底思えない」

抱きしめたら折れてしまいそうなほっそりした背中を追いながら、僕はその現実離れした話に困惑を覚えていた。

「ちょうど、ここだったわ」

廊下の突き当りで、美波ちゃんは振り返った。

「ジャック・オー・ランタン」

「え?」 

今度は何だ。

「ハロウィンのカボチャのやつ?」

 窓から差し込んだ西日が、彼女の鳶色の瞳を照らし出した。その揺れ動く瞳の中にあるのが緊張と怯えであることに、僕は今更ながら気が付いた。

 あの美波ちゃんが何かを怖がっている。その事実に僕は軽い衝撃を受けていた。

 だが、もし殺されかけたというのが本当なら、当然恐怖を覚えるに違いないのだ。さっきから冷静に振舞っているのも、動揺を表に出さないためなのだろう。

 ガラス玉のような半透明の虹彩に魅入られながら、僕は緊張を帯びた声を漏らした。

「甘瓜さん、一応確かめさせて。殺されかけたってのは……その、本気で言っているんだよね?」

少しの沈黙の後、彼女はおもむろにブラウスのリボンを解き始めた。

「あ……ちょ…………」

焦る僕を他所に、彼女はボタンを二つまで外し、首元を露出して見せる。

「見て。秋永君」

目のやり場に困っていた僕も、そう言われれば見ざるをえない。はだけた制服の襟元に、絹のような白い肌が露出している。だがその瑞々しい肌には、痛々しいまでのミミズバレの跡があった。

「これでも、思い出せない?」

思い出す? 何を? 僕と何の関係があるんだ? 

「昨夜、私の前に殺された女生徒がいるの」

またも不可解なことを口走る。さっきから彼女に翻弄されっぱなしだ。もういい、やめてくれ。頭がおかしくなりそうだ。

「図書室でアルバムを調べたわ。その子、十年も前に死んでいるの。それも在校中に」

「一体、何を言って…………」

汗が額を伝う。何を、イッタイ、コイツは何ナンダナニガシタインダサッキカライッタイナニヲナニヲナニヲナニヲ…………

僕を真っ直ぐに見つめて、切実なまでの口調で彼女は告げる。

「あなたもそこにいたのよ、秋永君。昨夜、私の夢の中に…………」

 ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン────

 鳴らずの時計塔が、突如大鐘を鳴らし始めた。ガラス窓がビシビシと振動し、彼女を照らす斜光が微かに震えて陰影のさざ波を作った。

§

「…魔夜中だ……」

僕がぽとりと呟いた言葉は、自分がまだ知らないはずの言葉だった。

「マヨナカ……?」

甘瓜さんがオウム返しに聞いてくる。鐘の音に交じって、獰猛な獣を思わせる咆哮が聞こえた。

「…え?この声っ、夢の中…?!」

はっとして、甘瓜さんが動揺する。鳴らずの時計塔の鐘が響くと共に、タイムラプスのように空が徐々に暗くなっていき、赤い月が照らし出す。

「そう、悪夢の世界…魔夜中だ。魔の潜む夜中と書いて魔夜中、君がその名を僕に教えてくれた」

「秋永君…?何を言ってるのっ…?早く逃げないとっ」

じんわりと、制服のポケットの中が暖かい。僕はおもむろにポケットを探り、その暖かなものを取り出し、手を広げる。

掌に包まれたそれは、緑色をした小さな双葉だった。不思議な事に、ごく僅かながら光を発しているように見える。
ピタリ、と頭の中で散らばったガラスの破片が、1つの場所にハマったような感覚がした。
しかしそれは穴の空いたステンドグラスのように、不完全な隙間が闇の中に抜け落ちていた。

「思い、出した……」

「ねえ秋永君、どうしちゃったの…?思い出したって一体なんなの?」

“美波”の声は震えている。この状況に、唐突な魔夜中に、恐怖を抱いているようだった。

僕は、彼女との約束を思い出していた。それは断片的な記憶、赤いドレスに身を包む彼女に「やってみるよ」と僕は言ったのだ。目の前の甘瓜美波とは違う、もう1人の、甘瓜美波に。

僕は気が付く。

(そっか…、美波ちゃんが魔夜中の名前を知っていたのは、過去の記憶からだったんだ……)

そして目の前の彼女がその名を知らないという事は、この甘瓜美波は以前の記憶を持たないという事……

「無視しないでっ!どうして眠りに就かないまま、私達は夢の世界にいるのっ!?貴方、何か知っているのでしょう?」

美波の語気が強まる。焦りと恐怖と…僕への怒り……

「ねえ教えてよっ!秋永君!」

声を荒げる美波の絶叫に僕は我に返る。慌てて見やると、彼女が両の拳を握りしめて睨んでいるのに気付く。

「あっ!ご、ごごごごめん。えっと、今魔夜中……夢の中に居るのは…、あの悪夢の舞台がこの旧校舎…だから?…多分……?」

「多分って何!?それなら旧校舎に入った瞬間から変わるはずでしょ?ここに侵入してどれだけの時間が経ったと思ってるのよ?」

「え?あっ…そ、そうか。なら僕達がこの学園の創立者と関係する、から…?」

「それも一緒。そもそも何を根拠に創立者との関係とか言ってるのよ?」

「そ、それは……、じゃあ、誰かがこの世界に僕達を呼び出した、とか……?」

「誰かって誰よ?というか、なんでさっきから疑問系なのよ!」

「う…ごめんよ、実は僕も全然分かんなくって……
 でも、もし僕らを呼び出すのだとしたら、校長か側近の八島か……って、あっ!」

「今度は何よ!?」

「今、これが魔夜中なんだとしたら、あのカボチャ頭の化け物が来ちゃうんじゃあ……!」

「だから貴方に何か知らないか聞いているのよ!あの鎌男は何者なの?対処法は?獣の声の正体は?そもそもこの場所は一体何なの?どうすれば抜け出せるのっ?!!!」

「えっと、鎌男が何者かは分からないけど、多分獣の声は狼男で僕らの敵じゃない。むしろあのカボチャ頭と敵対していて、僕らの味方だ」

「獣の声の主はどこに居るの?」

「それは…分からない。でも、今は取り敢えず逃げなきゃ」

「逃げるってどこにっ?」

「分からない、正直、ここがどういう空間なのかもよく分からないから。けど今は逃げるか隠れるかしなきゃ、僕らじゃアイツに対抗出来ない」

「…それは、信じていいの?」

「……え?」

「咆哮をあげるものが敵対しているのは信じられる、昨夜の夢でアイツはあの声が聞こえた途端立ち去った。でも、あのカボチャの化け物は昨夜……」

美波が言い詰まる。何か、考えているというより、こちらを探っているように見えた。

「貴方に従っているようにも見えた」

「…え、そんな…馬鹿な……!」

あり得ない話だった。美波の言葉は荒唐無稽で、聞いた事も無い情報だった。もしかして嘘を吐いている?でもこの状況で、何の為に?あまりの衝撃に何も言えない僕に、彼女は続ける。

「昨夜の夢の中で貴方は、カボチャ男が私に襲い掛かった瞬間に『止まれ』と叫んだ。そして、その声を聞いたアイツは、鎌を振り切る途中で動きを止めた。お陰で私の首は飛ばなかったけど、切先が触れた首元はさっき見た通りよ。
あの時、見ようによってはあの化け物が貴方の指示に従ったように見えた」

「そんな、おかしいよっ…だって、僕もあの化け物に…あれっ?でも、だって、だって!……もう、訳が分かんないよ……!」

思えば僕はあの怪物に追われている時、誰かと一緒だった。そして、1人で居る時に襲われた事は……

「落ち着いて、私よりも取り乱さないでよっ、貴方男の子でしょ?」

確かに僕は夢の中で叫んだ。そして、その後の事は意識を失ってしまい分からない。でも、だからって……

「……全くあり得ないって顔ね」

彼女はやや視線を逸らして溜息を吐く。彼女に溜息を吐かれるのは今日で2度目だけれど、落胆というより、気が抜けてしまう程呆れてしまったような、そんな吐息だった。

「本当は貴方がアレを使役していて、私の前に女の子が殺されたのも、貴方の指示だったかも知れない。そんな可能性もあったから、まだ日のある内にここに連れ出したのに……」

その言葉に、今日の美波の僕への態度に納得があった。僕に対する怯えや疑いの視線、それは僕が犯人かも知れないと、そう思っていたからだった。

「でも貴方はあまりに何も知らない。昨夜夢を見たことすら、私に問われるまで忘れていた。今だって分からないだらけでまるで役に立たない。……けど、誤魔化そうとも、嘘を吐こうともしてないのはわかる……」

「ねえ教えて、貴方は……秋永君は、私の味方?」

「当たり前だよ!夢でも現実でも、女の子が目の前で死ぬなんて、そんなの嫌に決まってるっ!」

反射的に返答していた。役に立たないと言われ若干ショックだったが、これは間違い無く僕の本心だった。

「……そう。なら今は貴方を信じるわ。もし裏切ったりしたら……」

「君を裏切ったりはしない。約束する」

「そんな簡単に約束されたら逆に不安なんだけど、まあいいわ。それで、さっきの質問で貴方がまだ答えて無かった質問、どうやったらここから抜け出せるの?」

「魔夜中はこの旧校舎を舞台に展開される。だから、この旧校舎を出れば、きっとそこは魔夜中の外だと思う……今まではそんな事を試す余裕も無かったし、その前に魔夜中が終わっていたから確証は無いんだけど……」

「つまりこの旧校舎が異世界のようなもので、そこの外は現実かも知れないってこと?」

「うん、この物語の舞台は旧校舎だって、教えてくれた人がいたから、そうだと思う」

「だけど外に出た事が無い以上、外が現実どころか、奈落の底の可能性だってある訳ね」

「えっ?そんな!?それじゃあどうすれば…?」

「あくまで可能性の話。だからシュレーディンガーの猫と同じで考え過ぎたらキリが無いわ」

「シュレーディンガーの猫……?」

「どの道試すしか無い。結局賭けになっちゃうけど、立ち止まっていてもいつかは殺されるなら、可能性がある方へ進むだけよ」

美波はキッパリと言い切る。そして「早く行くわよ」と僕の腕を引っ張った。
その様子は僕なんかよりずっと格好いいと思ったが、よく考えたら、それなら不安になる事は言わないで欲しかったとも少し思う。

2人で進むのは、昨夜の夢と同じ旧校舎一階の廊下。暗い廊下は視界が悪いが、床や壁は侵入時の現実の旧校舎よりも綺麗で風化も少ないような気がした。

出来るだけ足音は立てず、だけど早足で元来た道を戻る。息を潜めたように静かな廊下、今にもカボチャ男のコツコツという足音が聞こえたらと思うと、心臓が落ち着かない。侵入時に割った窓までは、そう遠くは無い筈だった。

魔夜中の暗さでは距離感がわからず、来た時よりも道のりが長いような感覚がする。しかし以前のように廊下がループするということもなく、しばらく歩けば侵入場所である通用口に辿り着いた。だが……

「……窓」

不意に、美波が呟く。

「窓のガラスが、割れてない」

「え、それじゃあ外に出られないってこと?!」

「そうじゃない、通用口の鍵は内側からなら開くもの」

確かにそれはそうだ、そもそも僕らがガラスを割ったのは、内側に腕を通すためだった。

「…ただ、現実の旧校舎で付けた傷や破損は、こっちの旧校舎とは関係がないということね。それにおそらく、こっちの旧校舎内での損傷も再生される」

「なんでそんなことがわかるの?」

「秋永君は気付かなかった?廊下を歩くときに聞こえた床の軋みが、こっちの旧校舎では鳴らなかったわ。それに、昨晩の夢でカボチャ男が付けた傷や焦げ痕も、何一つ残っていなかった」

そう言われて気が付く。確かにあの怪物は、鎌を引きずっては床に傷痕を付けていたし、ものすごい速さで疾走した時には廊下の窓ガラスが粉砕していた。でも、床の軋みさえ無かったというのなら、一体ここはいつの旧校舎なのだろう…?

「今考えてもしょうがないわ。取り敢えず、早くここから出ましょう」

「そ、そうだね」

その言葉に僕は通用口の取っ手を掴む。その時、僕は美波が自分の腕をぎゅっと握りしめている事に気がついた。そう言えば、廊下を歩くときも彼女はずっと僕の腕を掴んでいた。か細く、小さな手は恐怖に震えていた。そして僕は気が付く、表情には出さないが、彼女は怯えているのだ。この自らの命をつけ狙う、魔の潜む空間に。

「甘瓜さん……」

「離れないで。もしもこの先で闇に呑まれたら、帰ってこれなくなる…」

恐怖に怯える瞳の裏には、敢然とした覚悟の色が滲み出ていた。

「だから、行くなら2人で一緒に…」

彼女は僕の隣に並び、通用口の扉を真っ直ぐ見据えた。そして2人で扉に手を掛け、呼吸を合わせて声を上げた。

「せーのっ!」

だが僕らの意に反し、扉がひとりでに開くと、暗闇から腕が伸びて僕と美波の手首を掴んだ。

「なッ———」

骨と皮だけの黒に染まった腕は、瞬く間に僕らを通用口の中へ連れ去ってしまった。

§

返信

ヘナチョコ葉っぱふたばです🌱💦

あまりにも遅筆過ぎて、まだ最後まで書き切れていないのですが、既に待たせ過ぎているので途中ですが一旦投下しますorz
現地点で22,740文字の怖話換算39分らしいのですが、これでやっと二週目の1日目が終わりです。
これを前編として投稿すべきか、全て書き切ってから投稿すべきか、意見を頂きたいです( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )

それと日本語間違いや前走者様方との矛盾が無いかも教えて頂きたいです……

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