第4回「コロナをぶっ飛ばせ!」 2021秋のリレー怪談 スタート!!
◯小説の形式及び登場人物
2021、11月21日現在
舞台;私立鳳徳学園高校;明治時代に建てられた地方の進学校。元は男子校であったが平成に入り共学制に。
旧校舎には時計塔あり。ロンドン塔によく似ている。 敷地内の一角に英国人墓地と併設して礼拝堂がある。
主人公;秋永九十九(あきなが つくも)。ごく普通の男子。部活は未定。残りの書き手さんに任せます。
ヒロイン;甘瓜美波(あまうり みなみ)、転入生。すらりとした体系のボブカットの美少女。背は高め。周囲に溶け込む気が余りないが敵は少ない。悪夢の中で主人公に会う。父の都合で引っ越してきたことになっているが、実はストーカー被害に悩まされていたことが原因。
甘瓜花波:甘瓜美波の母。鳳徳学園の新米英語教師。
因みに甘瓜家の家系。
雪波→月波→花波→美波。
校長;ロビン・ウィルソン。片言の日本語を話す英国人。顔の怪我を隠す為に半分白い仮面で覆っている。あからさまに怪しすぎてかえって怪しまれない。ニックネームは便器。
マリア・ウィルソン:故人。ロビン・ウィルソンの娘。
大神遊平の元妻であり、大神遊輔の母親。
八島弘:ロビン・ウィルソンの側近。
大神遊人:大神遊輔の祖父。
大神遊平:大神遊輔の父。妻はロビン・ウィルソンの娘、マリア・ウィルソン
オカルト研究部部長・大神遊輔。金色の目を持つ。甘瓜みなみにフラれる。狼一族とヴァンパイ◯一族のハーフ?※超難関キャラw
気水百香:大神家に仕える鳳徳学園の教員。
護摩堂アキラ:鳳徳学園生徒会長。自信が秀才である事に自負を持つ、完璧主義者。 生徒会長の権限として、彼だけが校長との面談を許されている。 八島の存在に疑問を持つ。
沢カレン:鳳徳学園二年。オカルト部の幽霊部員。今どきのギャル風女子。好奇心旺盛。体育は嫌い。放課後はデートと称したパパ活。
ユウタ:沢カレンの中学の同級生
月島聖良(つきしませいら)……進路に悩む鳳徳学園の2年生。甘瓜美波の母、英語教師の甘瓜花波と親交を持つ。魔夜中に取り込まれノイローゼになり入院。その後、学園の旧校舎から身を投げる。生死は不明。
日本生まれの日本育ちで和食党だが、曾祖母が英国人のため瞳は碧眼。曾祖母はロビン・ウィルソンの父の、姉にあたる人物。
麻希子……聖良のことを「セーラ」と呼ぶ友人。普段はいい加減だが、友だち思い。聖良にトドメを刺す。
時系列は以下の通り。
・約20年前。2001年頃。甘瓜花波とマリア・ウィルソン、鳳徳学園に在籍。教師になる夢を語り合う。
・鳳徳学園卒業後、ふたりとも学生結婚をし、大学を中退。花波は美波を、マリアは大神遊輔を出産。マリア死去。
・約10年前。2011年(美波、遊輔は小学生)。英語教師として赴任してきた花波と、月島聖良が出会う。
ふたりとも魔夜中に取り込まれ、花波の魂は八島の手中に落ちる。聖良はノイローゼになり、文化祭の前後に旧校舎から身を投げる。
・現在。2021年。魔夜中の中で、聖良と護摩堂アキラが出会う。
魔夜中;悪夢の中を指して甘瓜美波がつけた呼称。
魔夜中に持ち込めるもの;ない。だが鬼火の怪人(ジャック・オランタン)を倒せるものは夢の中にも存在する。英国人墓地、といえば○○が埋まっているはず。ただこの〇〇を使うかは残りの走者次第。
◯リレー順および〆切り(※順不同・敬称略)
第一走者:ゴルゴム13(掲示板〆:10/9 23:59/「怖話」投稿予定:10/10)
第二走者:五味果頭真 (掲示板〆:10/16 23:59/「怖話」
投稿予定:10/17)
第三走者:ロビンⓂ︎ (掲示板〆:10/23 23:59/「怖話」投稿予定:10/24)
第四走者:rano_2 (掲示板〆:10/30 23:59/「怖話」投稿予定:10/31)
第五走者:あんみつ姫(掲示板〆:11/6 23:59/「怖話」投稿予定:11/7)
第六走者:一日一日一ヨ羊羽子(掲示板〆:11/13 23:59/「怖話」投稿予定:11/14)
第七走者:綿貫一(掲示板〆:11/20 23:59/「怖話」投稿予定:11/21)
第八走者:珍味(掲示板〆:11/27 23:59/「怖話」投稿予定:11/28)
第九走者:車猫次郎(掲示板〆:12/4 23:59/「怖話」投稿予定:12/5)
第十走者:ゲル(掲示板〆:12/11 23:59/「怖話」投稿予定:12/12)
○ 控え走者 (およびリレー順希望)
・ふたば
□物語の形式
①「前半オムニバス+後半なぞとき」
メインキャラ5人(前後)分の導入となるオムニバスを4~5話続けて
残り7~8話+エンディングで、たっぷりと謎解き(および恐怖体験)。
②「途中オムニバス」
主人公視点で物語が進んでいく途中途中に、主人公以外の視点で語られる話がある、という形式。
⇒(意見)まあこれについては、いざ始まってみたら自然に決まるかもしれませんね。。
□最終話について
①合議制で内容を決め、代表者1名が執筆を行う。
②マルチエンディング →その場合、複数の希望者がそれぞれ結末を用意する。
⇒①をトゥルーエンド、②はアナザーエンド(ifのエピソード)とするなら、両立するかもしれませんね。
□タイトル 候補
タイトル候補;魔夜中の殺人鬼、魔夜中の狩人、鬼火の狩人、鬼火舞う学園、鬼火の牢獄、鬼火舞う牢獄、旧校舎に鬼火舞う刻、魅惑の旧校舎~紅蓮の狩人。
・放課後の獄舎 ~転校生と鬼火の狩人~
・ミッドナイト・パーティー
・神無き月の狩人
・Faceless sneaker(顔のない 忍び寄るもの)
○現在までのダイジェスト(綿貫様まとめ)
2021.10.16 現在。
■第一話(秋永九十九)
□シーン1 悪夢の中
九十九が、どことも知れない建物の中を歩いている。
建物の1階で、頭部が縦長のカボチャのような、背の高い、謎の人物に遭遇する。
男の手には紅蓮の炎をまとう、大ぶりの鎌が。
男の背後には制服姿の少女の死体があった。
ガツンという衝突音とともに、悲鳴が響く。男の背後にもうひとり誰かがいることに気付く。
□シーン2 学校/教室の外
九月下旬。十月末に行われる文化祭に向けて、学校中が盛り上がりつつある。
転校生の甘瓜美波が、九十九に話しかけてくる。
美波は親の都合で九月に転入してきたばかりだが、その美貌とふるまいから、当初は注目を集めていた。
しかし、オカルト研究部部長・大神遊輔のラブレターを破り捨てた事件で、「甘瓜さんは甘くない」と噂が立ち、今では男女ともに彼女から距離をとっていた。
そんな孤高の美少女に話しかけられドギマギする九十九であったが、「昨日、夢を見なかった?」という美波の言葉に戸惑う。
美波は九十九をある場所へと誘う。
□シーン3 旧校舎
美波は「あなたの見た夢の場所は、この旧校舎である」と告げる。
たしかに窓の外に見える時計塔に覚えがあった。
「校内に礼拝堂と英国人墓地があるのを知ってる?」
「私は昨日、殺されかけた」
次々と謎の言葉を紡ぐ美波。
聞けば、紅蓮の鎌を持った化け物―ジャック・オー・ランタン―に、廊下の突き当りで殺されかけたのだという。
それがただの夢でない証拠にと、美波は首の付け根に現れたミミズバレを見せる。
夢の中で彼女よりも先に女生徒が殺されたが、美波の調べによると十年前に死んだ生徒であるとのこと。
「あなたも私の夢の中にいたのよ」
ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン、
鳴らずの時計塔が突如鳴り出す。
■第二話(大神遊輔)
□シーン4 自室
オカルト研究部部長・大神遊輔は、先日、甘瓜美波にラブレターを出したものの、ビリビリに破かれ玉砕。そのことを校内の裏サイトにもさらされ、ショックから不登校になっていた。
悪夢を見て飛び起きる遊輔。手元の時計はPM4:44を示している。
夢の内容を振り返り、気になることが出てきた遊輔は、それを確かめるため学校に行くことにする。
□シーン5 祖父の部屋
出がけに祖父に呼ばれ、父とともに祖父の部屋に。
不登校を責められるかと思いきや、
「そろそろ文化祭だ。文化祭といえばなんだ?」と謎の問いをされる。
祖父も父も遊輔の通う高校のOBだが、私立鳳徳学園は元々は男子校で、また時代柄男女交際のチャンスなど文化祭以外になかった、と告げられる。「恋愛については奥手な家系だ」とも。
大神家には遊輔の物心がついた頃から、すでに祖母・母親の姿がなかった。
□シーン6 旧校舎①
遊輔は、美波に惹かれた原因のひとつは「甘い香り」であると考えていた。
学校に到着すると、悪夢に見たであろう旧校舎へと向かう。
現場に着いて、場所の確信を持つ遊輔。
彼は悪夢の中で、美波が何者かに襲われるのを見ていた。
□シーン7 旧校舎②
遊輔は旧校舎で美波と九十九の姿を目撃し、逢引きであると思い込む。
九十九に首筋を見せる美波に、嫉妬から正気を失う遊輔。
思わず走り出し、旧校舎の裏側、英国人墓地へと足を踏み入れる。
遊輔は旧校舎に、美波とは別の魅惑的な香りが漂っていたことに気が付く。
墓地には、誰かが掘り返したような跡があった。
墓穴の中にはあるべき棺桶の存在はなくなっていた。
頭上の空を大きな鳥のような影が横切る。
空に浮かぶ真っ赤な満月を見て、自分の身体が大きくなり、全身を毛が覆いつくす感覚を得る遊輔。
その時、突然鳴らずの時計塔が鐘を鳴らし始め、それにあわせ、遊輔は吠えた。
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珍味お兄様。力走、お疲れ様でした!
すみません。今週土日は忙しくてなかなか腰を据えて読める時間が作れず、今から本編の方をじっくり読ませていただきます!皆様のコメントから察するに後半がかなりぶっ飛んだ展開になっているご様子ですね…ひひ…
それでは、また後ほど。
とにかくお疲れ様でした!
皆様
特に他にご指摘なければ、誤字修正の上、本日中に本投稿致します。
また、第9話をご希望の方、いらっしゃいますでしょうか。もし本日中に挙手がない場合は、今までのやり方通り、小生にてご指名させて頂いてよろしいでしょうか。
@あんみつ姫 様
毎度ご丁寧なコメントを頂きまして、誠に有難うございます。あんみつ姫様に"言うこと無し"とか言って頂けると は、冥利に尽きます😃。最後にもう一度、楽しかったぁと言って頂いたのも、大変嬉しく思います。お楽しみ頂けたのなら、それは何よりです。
何となく、少々大きな展開が有っても良いかなぁと思う一方で、あまり掻き回すのも顰蹙ものかと悩んだのですが、第8話というポジションが多分ラストチャンスかなと思い、思い切ってやらせて頂きました。
勿論、韻文的怪談も散文的ホラーも好きですが、特に今思うのは、怪談の愉しみとも言うべきものが必要とされてるような状況なのかなぁという気がします。逆説的に言うと、闇の中に逃げ込むというか、裟婆苦に満ちた現世を暫し忘れる為に怪談の世界が求められているのかなぁという気がします。その意味で、闇を舞台にする者達、4家も聖良もロビンも八島も、あと、今回拾えなかった気水もカレン達も、基本的に同じ町の住民なのかなぁという気がして、あんな風にした次第です。一方で、聖良は一生闇の中にいるわけにいかず、いつかは目覚める。そして目覚めた人間の目の前には、現実世界が一気に、唐突に現れる。その象徴が必要だと思い、妙ちきりんなキャラ(名前もつけてませんが)、を登場させざるを得なかったものです。こいつがどういう輩か、ラスボスなのか小物なのか、それともやっぱりラスボスはロビン一派なのか、さらに予想外の展開となるか、勿論後続の皆様次第です。
新種株の流行が懸念される中、誰であれここの登場人物達が力を合わせてコロナをぶっ飛ばしてくれることを祈っております。もうかなり気温も下がってきましたが、姫様も風邪など召されませぬようくれぐれもご自愛下さい。改めて温かいコメント有難うございましたm(__)m。
@珍味
おはようございます。
大作執筆お疲れさまでした。
ここまで噛み砕いていただくには、かなり難儀したのではないでしょうか。
筆力実績、人生においてもベテラン作家様ですので、発せられる言葉や用語、なぜその人物が絡むのか、キャラのパーソナリティに更に深みを加える、その絶妙なさじ加減に脱帽です。
私的には、そうですね。
後半部分につきましては、大好きな映画『マトリックス』シリーズを見ているような感覚に襲われました。狙っていましたか?
同時に、今回のリレー怪談だけでなく、ホラー作品を描くにあたっての珍味様が抱かれる思いのようなものも垣間見え、たいへん、楽しくそして興味深く読ませていただきました。
昨日、帰宅途中、待ちきれなくて、行きつけの喫茶店で掲示板読み、帰宅してからも、再読し、とにもかくにも、どう感想を述べたらいいか困惑しつつも
嬉しい悲鳴を上げました。
なる程、暴走とご本人をして言わしめる 凄い展開です。
これは、さすがに想定外でしたね。
リレー競作、リレー怪談は、後半に行くにしたがって、どうしても展開が困難になっていく、壮大になっていくわけが分かるような気がいたします、会を重ねる度に、毎回、作者様たちの作品への想いを投入するかのごとく新キャラが出現してくるわけも、また、そのひとりひとりが実に魅力的で、次の展開へのキーマンとなっていること、魅力的であればあるほど、次の走者様たちは、その肉付けに更に力が入ること。
ストーリーに関しては、もう、何も言うことはございません。
本当にいろんな意味で楽しませていただきました。
はい、ここまで展開するのであれば、あとは、後続の作家様に、それこそ、全開バトルしてもらいましょう。
>スピリチュアルな世界とIT技術……あり得ない二つの要素をコラボさせられるのは、この僕だ>けさ。
まさしく、本来の「読本」として、庶民の文化だった怪談を 「2ちゃんねる」とIT技術が電子媒体にかえてしまいましたからね。
ただ、その一方で、本来の怪談の文化は、そのまま継続、踏襲されていることもあり、ドロドロした因縁もおどろおどろしい怪物的要素は残っている。
それが、以下の文面で明らかに鳴ります。
>暗闇の中に蠢くおどろおどろしい怪物や、どろどろとした積年の因縁が祟りになって降りかか>ってくる、とかじゃなくて、もっと簡単に、明るく日の当たる日常の中に無造作に現れるの>よ。真昼間、普通に電車に乗っていると、いきなり隣の男が刃物を取り出して、グサリ!とか>。そういうノリだよね。怖いよねえ、怖い怖い。ウエットな韻文的怪談vsドライな散文的ホラ>ー、
ウエットな韻文的怪談vsドライな散文的ホラー、
この二つの側面をうまくコラボさせているのが、いわゆるゲームの世界、You Tubeといった動画配信、そして、今現在を席巻するホラー的要素を含む全ての作品 メディア全般といえるのかもしれません。
>ルサンチマン,
ニーチェをして「弱者側の道徳観」といわしめた、社会的な弱者・被支配者が抱く、強者・支配者に対する怒りや憎悪、嫉妬などの感情をロビン・ウィルソンになぞらえ、八島弘のキャラとかぶせる
このあたりの考察もなかなかですね。ルサンチマンは、元々フランス語ですから。そして、古くから続く人間の感情の発露として因果応報的な作品が好まれるのも、この感情が底辺にあるからだとも言えましょう。
ここまで、噛み砕いていただけたのでしたら、もう、外伝も補遺も必要ありませんね。😁
用語解説と詳しいネタバレ解説は、必要かもしれませんが。
それは、作家たちがすることではないので。😁
私的には、「うつしよと現実世界を操る本当の黒幕とその陰謀に 護摩堂君あたりが気づき、花波さんや美波さんや聖良さん ほか、それこそ、本作の隠れ主人公的な秋永九十九君とともに ぶちこわしにかかってほしいなぁ。全開バトル ゴジラとその仲間たちVS宇宙怪獣とその仲間たち なんだこりゃ。大活躍してほしいと思います。
もちろん、これは、私の願いであって、本作がどのようなラストを迎えるかにあたっては、後続の作家様の手に委ねられておりますから、そこは、もう安心してよろしいかと存じます。
1週間足らずとはいえ、後半、ここまで書かれるとは、大変骨の折れる作業だったのではないでしょうか。
とにもかくにも、お疲れさまでした。
本当に、ありがとうございました。
ゆっくりとおやすみくださいませ。
そろそろ11月も終りを迎えますが、どうぞお身体ご大切になさってくださいませ。
ご自愛下さいますように。
益々のご活躍お祈り申し上げます。
たのしかったぁ。です。
@ゴルゴム13 様
コメントを頂きまして有難うございます。悩んだのですが、大きく展開するなら今回が多分ラストチャンスかなぁと思いましたので……(やり過ぎだったかなぁf^_^;)。全開バトル、いいんじゃないでしょうか。冠タイトルも"コロナをぶっ飛ばせ!"ですし^_^。
@珍味 様
第八話お疲れ様です。
後半が随分と大胆な展開になりました。真の黒幕らしき人物が出てきましたね。
ここからどういう展開になるんでしょう。ここまできたら、はっちゃけ全開バトルもありでしょうか(笑)。
@車猫次郎 様
早速にお読み頂きまして有難うございました。そうですね、前半はアクションとかあって、軽快でしたが、後半面倒な話もいろいろとしなければならなくなりましたf^_^;。また、確かに前提となっていたところに揺さぶりをかけたりしてますが、そこもまあ、リレーあるあるという事でf^_^;。
@珍味 様
お疲れ様でした。
中間部までは澱みなくすいすい読めていたのですが、
後半部に至り、今までの前提を覆すような、むむ、これは?という難解な部分が現れてきました。
しばらく頭を悩ますことになりそうです。
@綿貫一 様
早速のコメント誠に有難うございますm(__)m。綿貫様の創造された聖良さんの物語を、なるべくアクティブに進めようと無い知恵縛りましたが、あれが小生の限界でしたf^_^;。ご寛恕下さい。折角の花波さんの魂も、もう少し色々引っ張れたかなぁとか、今更ながら思っております。
あと、雄遊誤字のご指摘有難うございました。色々やらかしましたが、最大のやらかしですね😅。本投稿で訂正します。有難うございましたm(__)m。
大神家の面々は、雄→遊、ですね。
@珍味 さん
第8走者、お疲れ様でした!
かくして役者は揃い踏み、悪夢の続きは魔夜中の外へ、という感じですね。
これから起こるのはどんな大事件なのか。
真の黒幕の正体、気になります!
とにもかくにも、まずはお疲れ様でした!
今日は、珍味です。
第四回リレー怪談 第八話掲示板投稿させて頂きますのでまずはご高覧ください。大体綿貫様より少し短いくらいの字数になりました。
最初に謝っておきます。ここにきてとっちらかしてしまいまして、すみませんでしたm(__)m!
「先生!大倉先生!大変です、102号の患者さんが!」
「どうした?」
「とにかく、早く来てください!」
帝都大学病院の一室。担当看護師の切羽詰まった声に、慌てて病室に駆けつけた大倉医師は、自分の目を疑った。
「そんな……なんてこった……」
一瞬、呆然と立ち尽くしながらも、辛うじて看護師に指示を出す。
「とにかく、すぐにご家族に連絡して!」
「は、はい!」
〇
「月島……聖良さん?うちの学校の生徒?」
「そうよ。鳳徳学園の2年生」
「2年生なの?じゃ、僕と同じだね……でも」
聞いたことの無い名前にアキラは少々戸惑う。そうか、ごく最近転入してきたのかな。だから制服もちょっと違うのか。間に合わなくて前の学校のを着てるとか……
「そんなことより、えっと、ゴマドーフ、あ、ごめん。えっと」
「護摩堂アキラ。アキラって呼んでいいよ」
アキラが親指を立てて、わざとらしい笑顔で答える。
「護摩堂君。今、何年?」
「だから2年だって」
「違うの。今は、平成何年なの?」
「……はい?……」
さすがのアキラも面食らった。この子、一体何を……そうか、この子、僕の頭の良さを試そうとしてるんだな。令和3年は、平成でいうと何年でしょう?ってことか。そんなの簡単だ。30を足せば良い。
「簡単さ。今は平成でいうと33年だよ」
「33年……もう、10年も経ってしまったのね」
「……?」
アキラは、もはや困惑していた。すごく可愛い子だけど、何だかちょっと言ってることがアレな感じだし……とんでもない厄介者を背負いこんじまったのかなあ、いや、生徒会長たるもの、困ってる生徒を放置するわけにもいかない。とにかく、保護しなきゃ。そんなことを考えていると、闇の中に不気味な咆哮が響き渡った。猛々しい野生を感じさせる野獣のような声が尾を引いて闇夜の中に浪々と響き渡る。
「え?今のなんだ?」
「……怖い……」
怯えた表情の聖良が、震えている。
「とにかくあれは人間の声じゃない。ここから動こう。さっさと逃げようぜ」
そう言いながら聖良の手を引いて、走り出そうとしたアキラの足が、一瞬止まる。
(でも、美波ちゃんたちは……あいつらは無事なんだろうか)
「どうしたの?」
聖良が怪訝そうに尋ねる。
「うん、いや、実は友達が、まだ旧校舎の中にまだいる筈なんだ」
「お友達がいるの……」
「うん、三人ほどね」
「早く行きましょう……」
怯えた表情の聖良が、かすれた声を絞り出す。
「やっぱ、そうだよね。あんな声聞いたら怖いもんね。よし、すぐ逃げよう」
「違うの。お友達の所へ行かなきゃ」
「……え?……怖くないの?
「怖い。物凄く怖い。私もずっとずっと、ここで何年も怖い思いをさせられてきた。恐ろしいバケモノに何百回となく、殺された……たった一人で……」
また、涙が一筋聖良の頬を流れる。
「誰かに助けに来て欲しかった。ずっとずっと待っていた。だから、誰かに来て欲しい気持ちが凄くわかるの。行きましょう、早く」
「……よし、わかった。行こう」
生徒会長の自覚か、友情の重さに目覚めたか、いや、やはり目の前の碧眼の美少女の前で良い所を見せたいという、極めてわかり易い動機につき動かされたアキラは、さりげなく聖良の手を握って走り出す。
「確かこっちから聞こえて来た」
廊下の角を曲がり、走り続ける。。
「護摩堂君、暗闇の中でも道が分かるの?」
「うん、まあ、何となく。勘だけどね」
その時、もう一度、咆哮が聞こえた。
「こっちだ。近くなってきた」
小さな声で囁くと、震える足を無理やり踏みしめながら、暗い校舎内を手探りで進む。黙っていると余計に恐怖が増してくる。アキラは思いきって声をあげてみた。
「おーい、九十九。美波ちゃーん。雄輔―、どこだー」
その途端、自分のすぐ傍の暗闇で、もう一度あの咆哮が響き渡った。思わず、アキラと聖良は、悲鳴をあげた。
「ぎゃーっ!」
「アキラ君!」「アキラ!どこにいたんだ!」
声に振り返ると、目を見開いた美波と九十九が手を握り合って立っている。
「おっ!大丈夫か?変な声が聞こえたから、君らの事が心配で、矢も楯もたまらず助けに来たんだ」
「有難う、アキラ君。で、その人は?」
聖良に目をとめた美波が不思議そうに尋ねた。
「ああ、彼女は月島聖良さん。うちの二年生だが、今は詳しく説明してる暇はない。そう言えば、雄輔は?」
アキラの問いに、九十九が黙って廊下の端の方を指さす。
「……?」
一瞬、アキラは目を疑った。
そこには、明らかに人外のものと思われる二体の怪物が睨みあっている。片方は、犬のような形態の、だが、もっと凶悪な風貌をした生き物、どうみても狼だ。そうか、さっきから聞こえていた猛烈な咆哮はこいつだったのか。
それと相対しているのは、一応人間の形はしているが、不気味なオレンジ色のカボチャの顔をした大男である。ギザギザにくりぬいた口が邪悪な笑いを連想させる。そのオレンジ色の顔面以外は、全身黒ずくめで大きなマントを羽織っている。何よりも禍々しいのは、その両手で構えた大鎌、西洋の悪魔が魂を断ち切るためにもっていると言われる巨大な鎌だった。
狼は、しゃにむに跳躍し、カボチャ男の喉笛に食らいつこうとしているが、カボチャ男は見かけからは想像もつかない身軽さで、その攻撃をかわしている。嘲笑うかのように、ひょいひょいと身をかわし、まさに寸止めのような正確さで牙を逃れる。まるで楽しんでいるかのようだ。苛立った狼の牙がガチン!と虚しく嚙み合わされるたびに、闇の中に火花が飛ぶ。疲れた狼が一旦呼吸を整えようとした瞬間、それを待っていたように、大鎌が一閃し、狼の肩の辺りの毛が宙に舞った。
「ギャン!」
苦痛に満ちた声と共に、地面に転がった狼の肩の辺りから真っ赤な鮮血がだらだらと流れ始める。
「雄輔!」「雄輔君!」
美波と九十九が悲鳴をあげた。
「え?あの狼って、雄輔なの?なに?どういうこと?」
眼前の状況は完全にアキラの理解を超えている。
「そうなの!説明してる暇はないけど、とにかくあれが雄輔君なの!アキラ君、何とかしてあげて!」
「何とかって……」
三人がなすすべもなく見守る中、カボチャ男は、苦痛のあまり床に転がった狼に向って、ゆっくり近づいていく。足元の獲物に向って、脳天高く大鎌を振りかぶった瞬間。
「いやあーーっ!」
それまでアキラの隣で震え続けていた聖良が大きな悲鳴をあげた。
その声が響いた瞬間、カボチャ男の鎌がぴたりと止まる。ゆっくりとこちらを振り返ると、じっと聖良の方を見つめている。オレンジ色のカボチャの顔には、何の表情も見られないが、明らかにそれは聖良に注意を向けている。そして……笑っている。何の声もせず、くりぬかれたカボチャ顔には何の変化も無いが、明らかにそれが嗤っているのは、三人にはわかった。
カボチャ男はこちらの方に向き直ると、ずるっ、ずるっ、と嫌な足音をさせながら、ゆっくりと歩いてくる。恐怖に襲われた三人は逃げ出した。
「いや!もういや!もうやめて!お願い!」
パニックになった聖良が恐怖のあまり、そのまま座り込んでしまう。
「聖良さん、逃げて!」「逃げるんだ!」
座り込んだ聖良は立ち上がれない。座り込んだ彼女の前で、カボチャ男が大鎌を振り上げたその時。
「グシュッ!」
汚らしい音がして、カボチャの右上の約4分の1程が砕け散った。
一瞬、聖良に気を取られたカボチャ男の背後から忍び寄った狼が、跳躍し頭部の一部を噛み砕いたのだ。不意を突かれたカボチャ男が動揺して膝を突く、と同時に大鎌を取り落とし、暗闇にチーンと金属音が響き渡る。聖良を庇うようにその前に降り立った狼が、口中に残るカボチャの欠片をぺっ、と地面に吐き出した。
「クソまずいカボチャだぜ」
肩から血を流した狼が、明らかに雄輔の声で人語を発するのを聞いて、アキラも、もはや眼前の事実を受け入れざるを得ないと腹をくくった。三人で聖良を抱き起すと、後方に引っ張る。
カボチャ男は、割れ目の部分を片手を押さえながら、もう一方で大鎌を拾い上げると、一旦逃走した。翻るマントが、あっという間に闇の中に消えて行く。
「……疲れた」
狼が一言つぶやくと、どさりとその場で横倒しになる。と、見る間にその姿が変貌し、そこには大の字に寝転んでいる雄輔が現れた。
「雄輔!」「雄輔君!大丈夫?」「早く、止血しなきゃ!」
四人の生徒が雄輔の周りに駆け寄る。
〇
雄輔の肩の傷を手当しながら、自己紹介を兼ねて、聖良は自分の身の上をみんなにブリーフィングした。特に、美波には、彼女の母、花波が自分を守ろうとする中で魂を抜かれてしまったことを涙ながらに伝えた。
「結局、貴方のお母さんは、10年前に私を守ろうとして、魂を取られてしまったの。本当にごめんなさい」
「それは……未だに信じがたい話だけど、確かに母は10年前に昏睡状態に陥った。でも時々ふっと意識が戻ることもあって、そんな時は”Never give up!“って、うわごとのように呟くとまた眠りに落ちる。それを繰り返しながら、何とか生命だけはつないでいる状態なの。でも、それはあなたのせいじゃないわ。私は貴女を恨んでなんかいないし、母だってそうだと思う。悪いのは、あの八島よ。貴女だって、被害者なんだしね。だから貴女は謝らないでね」
「……有難う」
聖良が雄輔に声をかける。
「傷は痛む?」
「ああ、もう大丈夫。有難う」
雄輔が笑顔を見せる。
「ごめんなさい。私を守るために、こんなケガまで負わせてしまって、本当にごめんなさい。また、私のせいで人が傷ついてしまった……これで二回も」
「二度目?」
「そう。一度目は今話した通り、美波さんのお母さん」
「だから、貴女は悪くないんだってば。聖良さんのせいじゃないのよ」
「そうだよ、悪いのは君のじゃない。俺が戦ってケガしたのも、みんなの為、っていうか俺自身の為でもあるんだ」
雄輔が妙に神妙な顔をする。
「あなた自身の為?」
「そう、何たって、この能力を使って実戦に臨んだのは初めてだからな。どんな力があるのか、自分でも試したかった。ケガをしたのは、俺がまだまだ未熟だからさ。だから君は気にすることないよ」
「そうさ。聖良ちゃんは、あくまでも被害者なんだから」
みんなの言葉に聖良が少しだけ笑顔になったその時。
暗闇の中に、ゆっくりと足音が響いてくる。
「誰?」「また、あいつか?」
だが、あの不吉な足音とは違う。ゆったりとした、普通の人間の靴音だった。
「誰だ?」
緊張した面持ちの九十九が誰何すると、闇の中に何とものんびりとした声が響いた。
「デビュー戦としては、まあまあの出来じゃな。雄輔よ」
雄輔が目を見開いた。
「爺ちゃん!」
その言葉に他の生徒たちも、きょとんとする。
「え?」「爺ちゃんて?」「雄輔君のお爺さん?」
闇の中にゆっくりと姿を現したのは、雄輔の祖父、雄人だった。
「爺ちゃん、なんでここに、どうやって?」
雄輔のみならず、一同呆然と雄人の姿を見つめている。
「簡単さ。ワシもこの学園の関係者だからな。と、急に言われてもわからんだろうが、まあ、ゆっくり説明する。まずは皆さん、雄輔の祖父、大神雄人と申します。孫がいつもお世話になっとります。また、今回はケガの手当もしてくれて有難う。良き仲間を持って雄輔は誠に幸せ者です」
真っ当な挨拶の後に深々と一礼する。雄輔以外の生徒たちもつられて頭を下げる。
「それで、じゃ。色々とお話せんといかんのじゃが、まず、皆さんは、この魔夜中を“作った”のは誰だか知っとるかね?」
一同、沈黙する。そもそもこれは誰かが“作った”ものだ、なんて発想は思いもよらなかった。
「それは我が父、大神雄山なのだ」
「嘘だろ?ひい爺ちゃんが?」
雄輔が大声をあげる。他のみんなも絶句している。
「いったい、何のために……?」
聖良が呟いた。
「鳳徳学園の経営方針をめぐって、ウィルソンと対立した時、父、雄山は、この学校の未来には、容易ならぬ困難が待ち受けていることを意識せざるを得なくなった。それは深刻な対立、闘争……それも、現実的な意味だけでなく、精神的な面、スピリチュアルな面での対立や闘争に直結していることをよく理解していたのじゃ。
「ここで、父が考えたのは、とりあえず、関係が完全に断ち切られてしまうことを避けることだった。例えば世界大戦の最中でも、スイスのような中立国を舞台に、各国のエージェントが接触を図ったりするだろう。そういう空白地帯のようなものを父はイメージしたわけじゃ。この魔夜中は、鳳徳学園の関係者であれば、誰であれ……生徒、教職員、わしらのような卒業生も含め、凡そ関係のあるもの全てにつながっている。関係者であれば、誰もがここを自由に訪れることが出来るが、同時に、望まなくても呼び出されてしまうこともある。だが、ここは、敵であれ味方であれ、とにかく“接触”する場所に過ぎない。そして、どちらも、ここでは、最終的な勝者にも敗者にもなれない。勿論、害を為す者、敵対する者も沢山現れる。恐ろしい経験もするだろう。だが、ここは“最終的な決着がつく場所ではないのだ”。」
一同、唖然として雄人の説明に聞き入っている。“魔夜中”にそんな意味合いが込められていたという事実が、未だよく呑み込めていないという感じである。
「それにしても、なんでいつも悪夢ばっかりなんだろう?」
素朴な疑問を口に出した九十九の方を見やり、“いい質問だ”とでも言いたげに軽く頷くと、雄人は言葉を続ける。
「もともと悪夢とは、危機管理の為のシミュレーションである、という説をご存知かな?」
「あ、それ、聞いたことがあります。人間が危機に遭遇した時の記憶を呼び覚まし、反芻することによって、同様の危難に遭遇した時のシミュレーション、いわば訓練を行う為のものである、って考え方ですよね」
護摩堂がドヤ顔で知識を披歴すると、雄人は軽く頷いた。
「さすがじゃな、優等生君。悪夢は、確かに恐ろしい。何かに延々と追いかけられる夢、殺される夢、あるいは、こっちが誰かを殺して、逃げ回っている夢……とにかく、自分の身に降りかかってくる色んな危険の疑似体験になっているわけだ。そして、それを追体験することは、現実にそういう危険が発生した時の対処の仕方を訓練するという意味がある。つまり、この魔夜中も、学校的に言えば、例えば道場としての機能を有するということじゃ」
雄人は聖良の方に向き直る。
「月島聖良さん、じゃったな。10年に渡って、大変、辛い思いをされたと思う。こんな物があったばかりに、毎日地獄の苦しみを味わい、青春の一番良き日々を、あたらこんな昏いところで無駄に過ごすことになってしまった。父になり替わり、お詫び申し上げる。
じゃが、聖良さん。ちと、考えてみてくれんか。“何百回も殺された経験”を持つ人間が、今まであっただろうか?そして“何百回も殺されたということは、何百回も生き返った”ということでもあるのではないか……」
聖良は黙って俯いている。
「あんたの気持ちは痛いほどわかるが、やはり、あんたが旧校舎から身を躍らせたのは、つくづく残念なことじゃった。全てが終わってしまうところだった。だが、逆に言えば、旧校舎で身を投げたのは幸運だったのかもしれん。つまり、この地を守る者達……古来からこの地の安寧を司ってきた神々も、そして外人墓地に眠る霊も、そして何より甘瓜花波先生も……誰もが、あんたが死ぬことを望まなかったということじゃ」
“Never give up!” 甘瓜先生の声が聖良の中に蘇ってくる。
「聖良さん、あんたは不思議な力によって、守られ、生かされた。そして、今のあんたには、もはや何も怖いものは無い筈じゃ。何百回も殺され、そして生き返って来た人間に、恐れるものは無いであろう。今のあんたは、もはや無敵じゃ。どうか自分の力に自信を持って欲しい」
雄人の言葉に聖良はゆっくりと頷いた。
〇
「実は、この学校の設立当時の事情については、僕も色々自分で調べてみたんです」
アキラは自分の家に代々伝わる資料を調べた時の話を始めた。
「行きついたのは、あの当時、設立にかかわった大神、護摩堂、甘瓜、秋永の四家に悪魔による呪いがかけられたという事実でした。そして、狼、蝙蝠、鳳凰、死神が描かれた4本の掛け軸。各々そのキャラクターに相応しい呪いがかけられたらしい、そしてどうやら大神家には狼、護摩堂家には蝙蝠の呪いがかけられたらしい、というところまでは分かったんですが、鳳凰と死神については、誰が割り当てられたのか、僕に調べた限りでは今一つはっきりした事情は掴めませんでした」
雄人が深く頷いた。
「よく調べたな。それでもたいしたもんじゃ。君の言ったとおり、ここにいる四家の祖先は、あの時悪魔による呪いを受けた。いわば、運命共同体というわけじゃ。その時一緒に呪われたウィルソン、八島の先祖共々な」
雄人が少し妙なことを言った。
「ウィルソンと八島は敵じゃんか。俺たち四家は分かるけど」
雄輔が異議を唱える。
「言ったとおりだ。ウィルソン、大神、甘瓜、秋永、護摩堂、八島、明治時代にあの場でデーモンの呪いを受けた者は、全員が同じボートに乗っているのだ。等しくな……」
雄人の説明に一同首を傾げている。
「護摩堂家は、蝙蝠に象徴されているが、蝙蝠について、皆さんはどんなイメージを持っている?鳥からも獣からも裏切者として忌み嫌われた、信用のおけない小悪党?。だが、彼等の能力はどうだ?そう、彼等は暗闇の中でも自由自在に飛び回ることが出来る。全く視界の利かない真っ暗闇の中でも、何不自由なく飛ぶことが出来る。他の者達が闇の中で戸惑い、足を踏み出せずにいる中、彼等は暗闇の中にも道を見つけ、何のためらいも無く、進んでいくことが出来るのだ」
聖良は、ふと思い出した。そうか、護摩堂君は、闇の中でも私の手を引いて、軽やかに走れていた……
「そして、我が大神一族は、言うまでも無く狼の力を持つ。勿論、その特徴は高い戦闘能力にある。だが、もう一つ忘れてならないのは、彼等が最も得意とするのは、チームプレイであるということだ。彼等は群れに生き、群れで狩をする。狼が最も力を発揮するのは、“仲間と共に戦っている”時なのだ。彼等は常に仲間と共に戦い、生きていく。雄輔、お前も今のデビュー戦で、良くわかっただろう」
「次の呪い……死神。鎌を持った男。巨大な鎌を振りかざして魂の緒を断ち切ろうとする恐ろしい存在だ。だが、考えてみろ。何かを断ち切る力……それは、時として我々の生活に必要になることもある。悪縁を断ち切る、腐れ縁を断ち切る、悪しき習慣を断ち切る……よりよく生きる為に、何かを断ち切る力は、必要なのだ。ワシが思うに、この呪いをかけられたのは秋永家だと思う。何故なら鳳凰の呪いは……」
今度は美波の方を向いた。
「さて、四つ目の呪いは鳳凰。甘瓜家は、アルプ鳥として呪いがかけられたとの記録があるが、もともとこれも、ギリシア神話に登場する鳥でな。“由緒ある”お家柄というわけだが、この鳥は冥界の王、ハデスの手下と位置付けられている。そして、わが日本でも、死者の魂を運ぶ鳥という、極めて親和性の高い性質の神が古えから存在していた。お嬢さん、ご存知かね?」
今度は、聖良の顔を見ながら訪ねた。
「……そう、たしか鳥鳴海神……」
「そのとおり、良く覚えておいでじゃな。あんたを助けようとした甘瓜先生が呼び出した鳥の神じゃよ。アルプ鳥になぞらえたのは、“鳥つながり”という、デーモンの軽いノリじゃが、そもそも鳥鳴海神は、大国主命という極めて徳の高い大神の娘にして、立派な国津神じゃ。そして、甘瓜家はこの鳥鳴海神の血を引く由緒ある家系というわけじゃ。代々霊力の高い女性がこの家を継いできた、ですな?お嬢さん」
今度は美波に向って笑いかける。
「じゃが、ここで神の系統について話し始めると、実はもう一つ、避けて通れない話が出てくるんじゃが……わかるかね?」
誰もが沈黙している。一体、何を聞かれているのかわからない。
すると雄人は、ゆっくりと後ろを振り向き、背後の暗闇に向って声をかけた。
「これは、あんたの口から話してくれんか。のう、八島さんよ?」
一同驚愕する。
「八島!?」
闇の中から、さっきのように、また一人の足音がゆっくりと近づいてくる。ゆっくりとフォーカスを合わせるように、ダークスーツ姿の八島が姿を現した。
「八島!」「八島、てめえ!」「なんでここに……」
四人の生徒たちが一気に警戒する。聖良の顔が見る見る青ざめ、震え始める。
「言うたであろう。この学園の関係者なら誰であれ、いつでもここに来られるのじゃ。そして、呼び出されることもな」
「大神雄人さん。いやいや、この魔夜中にお呼び出しとは、あなたもなかなか人使いがお荒いですな」
「爺ちゃんが呼び出したの?」
雄輔が呆れたような声をあげる。
「そうじゃよ、いかんかったかね?」
「だって、なんでこんな奴を」
「おやおや、これは心外ですねえ。折角、大事な物をお持ちしたのに」
そう言うと、八島が美波の方に向って手を延ばす。思わず、聖良と美波が後ずさる。
「早速ですが、さて、どちらにお渡しすれば良いでしょうかね。これは」
聖良と美波を当分に見比べながら、皮肉な笑いを浮かべている。伸ばした手には、何やら球体のようなものが握られている。
「これは、やっぱり貴女にお渡しするのが筋でしょうね」
そう言って美波の方を向く。
「何よ……」
美波が警戒する。だが、八島の手の中の物を見た聖良が、声を上げた。
「それは!」
「そう、貴女はこれに見覚えがありますよね、聖良さん。貴方の為に戦ってくれた人の大切なものですからね、ふふふ」
面白そうに八島が嗤う。それを無視するように、聖良が美波に向き直る。
「美波さん、受け取って!」
「え?」
「いいから、早く!あれは、貴女のお母様の魂なの!」
恐る恐る伸ばした美波の手のひらに、八島が軽い手つきでポトリと球体を置いた。
「では、確かに、お返ししましたよ。少々長いことお預かりしましたが」
「美波さん、それを大切に持ち帰って。そしてお母様に返してあげて」
美波が緊張した面持ちで魂を握りしめている。
「お礼なんか言わない。ただ教えて。何故、返してくれたの?」
聖良が八島を睨み付けながら低い声で問い詰める。
「それは、大神雄人さんから頼まれたので……というのは表むきですがね。私の最大の目的は、八島家の再興、繁栄です。それは当然、子孫繁栄の願いにもつながります。その為にはもう少し、花波さんにもご活躍頂く必要があると思いましてね」
「子孫?」
「そう、子孫繁栄です」
「……どういうことよ」
八島が美波の顔を見つめながら、楽しげに答える。
「つまりですな、甘瓜家は八島家の末裔ということです」
「うそよ!」
美波が悲鳴のような声をあげる。
「美波さん、残念ながらそれは事実じゃ」
雄人が静かに告げる。
「八島とは、もともと日本そのものを指す麗しき雅称です。この国が誕生した頃から、我が一族はその歩みを始めた……そして我が始祖、八島牟遅能神(やしまむじのかみ)、大国主命の岳父でもある大神は、鳥鳴海神の外祖父にあたるのです」
一同、未だに信じられないと言った面持ちだが、雄人が目を閉じて頷いているのをみると、受け入れざるを得ないように思う。
「……うそ……なら、なんで、あんなことを……」
「そこは大人の事情という奴でね」
「ふざけないで!」
「まあ、美波さん。今はその魂をお母様に早く返して上げたら如何ですか。どうせこれから何度もお会いすることになるでしょうから、詳しいお話は、またおいおいということで。ただ、一つ申し上げておきたいのですが、こうやって闇の中でカボチャの怪物と追っかけっこをしていた日々がいかに幸せなことか、それを懐かしく思い出す日がいつか来ると思いますよ、ふふふ。それでは皆様、どうぞ良い夢を」
捨て台詞を残すと、八島は来た時と同じ足取りで、ゆっくりと闇の中へと歩き出す。
「待てよ!てめえ!」
飛び掛かろうとした雄輔に向って、八島が振り向きざまに軽く手をふると、肩先の傷口に、ズキンと痛みが走る。
「いてっ!」雄輔が顔を顰める間に八島の姿は闇の中に消えて行った。
「お爺様が交渉してくださったんですね。有難うございます」
美波が雄人に頭を下げる。
「礼には及ばんよ。大した手間じゃなかった。ある意味、わかりやすい男じゃからな」
「どこがわかりやすいのさ。あんな奴」
雄輔は不満顔である。
「“ロビン様への手土産が出来た”とか言って得意げに奪っていった花波さんの魂も、あっさり返してくる。一見忠誠心の塊のように見えて、実は自分のボスでも平気で裏切る男よ。奴の目的は一貫して、八島家の繁栄じゃ。それ以外のことは考えないし、またそのために必要とあらば、誰の事でも簡単に裏切り、そして誰とでも簡単に手を組む。全く信用はおけないが、同時にツボを押さえれば理解しやすい男でもある」
「でも、どうやって八島のツボを押さえたんですか?」
アキラが興味深そうに尋ねる。
「そこは大人の事情という奴でな」
「なんだよ!」
「ひとつ言っておくが、世の中単純な善悪、敵味方の二元論では、割り切れぬこともある。寧ろ割り切れないことの方が多いくらいだ。敵であれ、味方であれ、とにかく、相手のことをよく観察していくことじゃな。“真の敵”を見極めること、これが一番難しい。この点、まだワシにも、自信を持って言えるような答えは無い」
「その、真の敵とは、みんなの祖先に呪いをかけた、あのデーモンのことでしょうか?」
美波が尋ねる。
「ふーむ……さあ、どうじゃろうな。奴らは、確かに厄介ではあるが、少し違うような気もする。奴らは、いわばワシらの影だ。確かに、ことあるごとに我々の邪魔をするが、奴らのかけてくる“ちょっかい”は、実はそれほど恐れるものではない。そう、奴らが仕掛けてくるのは、“ちょっかい”に過ぎないのだ。言ってみれば、車を運転している時に、横からちょいちょい色んな手出しや口出しをしてくるわけだ。勿論、それは時として、身の破滅につながる大事故の原因にもなる。非常に危険な存在だ。だが、そもそも車を前に進めることは、奴らには出来ない。前に進む力、エンジンを動かすことは、我々にしか出来ないのだよ……」
「とにかく、これ以上何も思いつかないよ」
雄輔がぼやく。
「ワシとて、五里霧中の状態だ。ただ、一つ重要なポイントがある。みんながここに結集したのは、何故、“今”なのだ?」
「何故、“今”?」
九十九が思わず鸚鵡返しに問い返してしまう。
「明治の頃に、私達関係者たち、ウィルソン、大神、甘瓜、秋永、護摩堂、そして八島の祖先たちは、各々呪いを受け、業を背負うことになった。だが、考えてもみろ。あれから100年以上が経過しているのだぞ。その間、我々に何がおきていた?そう、殆ど“何もおきていなかった”。太平洋戦争という国難の時でさえ、特に大きな動きは無かった。
「話が少しそれるが、他の民族は、見慣れないものにまず警戒感を抱き、排除する。だが日本人は、見慣れないものを目にすると、まず好奇心を抱く。そして、とりあえず受け入れてしまう。あとは、一生懸命、それをリファインする。磨いたり擦ったり、色んな他のものと組み合わせたりして、手間暇をかけ、より使いやすく、洗練されたものへと磨き上げて行く。これは日本が、あるいは日本の神々が営々と実践してきたことじゃ。デーモンによってかけられた各家への呪いも、そのままでは禍々しく邪悪なものだったが、この国の神々は様々な手を加え、いつの間にか洗練され、この国にすんなりと溶け込むように仕上げてしまっているのではないか。そして、ロビンも八島も例外ではないように、ワシには思えるのだ。
「奇貨居くべし、という言葉がある。特殊な能力を持ったものは、一見変わった人物でも、いずれ必要になる時があるから抱えておけ、という意味じゃ。“この国”……“この国の神”と表現してもいいが……は、まさにこれらの“奇貨”を保存しておくことにしたのではないか。来るべき、本当にヤバい国難に備えてな。そしてみんなが今結集したのは、それが、まさに今、必要だからではないのか……今、何が起きている?」
「今、起きていること……」
それは、みんな分かっている。
「そう、大きな“穢れ”がこの国を、そして世界を覆っている。それは単なる遺伝子の組み合わせではない。ことは単なる感染症の流行だけではなく、経済への打撃、社会の分断、人心の荒廃、あらゆる所に“穢れ”が撒き散らかされている。寧ろ、感染症というものを隠れ蓑にして、その背後にはとてつもなく邪悪な意図、呪いのようなものが身を潜めているような気もする」
雄人が重々しく告げた。
「今の所は、推測に過ぎないが、やがてこの大いなる穢れの只中に“真の敵”が姿を現すような気がしてならん。そして皆さんは、それを払うために呼び集められたような気がするのだ。特殊な力を結集して、“穢れをぶっ飛ばす”ためにな……」
沈黙が続く。そうは言っても、一同これから何をしていけばいいのかわからない。自分にもどんな力があるのか、何が出来るのか、これからどんなものが現れるのか、何もわかっていないのだ。
「さて、長々と話してしまったが、今日はもう帰るとしよう。下校時刻じゃ」
雄人の言葉に、一同腰を上げる。旧校舎の出口から現世に帰ることが出来るだろう。
「聖良さんも一緒に帰ろうよ」
アキラのかけた言葉に、聖良が微笑み返す。
「有難う、でも、私一人で帰る」
「えっ?」「なんで?」「一緒に行こうよ」「一人じゃ危ないよ」
一同口々に引き留めるが、聖良はゆっくり首をふる。
「みんな有難う。でも、私は、どうしても一人で帰らなきゃいけないの。みんな、またお会いしましょう……近いうちに、必ず」
聖良は、決然として背中を向けると、みんなと別れて闇の中に向って歩き出した。
〇
聖良はひたすら速足で歩き続けた。何かあてがあるわけでもない。何をどうしたいのかもよくわからない。いや、本当はよくわかっている。自分自信の足でここを出て、帰らなければならない。そして、その前に、どうしてもやらなければならないことがあるのだ……
ずるっ、ずるっ、と不気味な足音が聞こえて来た。
そう、忘れようとしても、忘れられる筈のない足音。何百回となく聞かされた吐き気のするような足音。ゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。
(怖い。いやだ。もういや。もうやめて)
動悸がどんどん早くなり、殆ど過呼吸に近くなった時、そいつはいきなり聖良の前に禍々しい姿を現した。
ジャック・オー・ランタン。
今まで何百回となく、私の首を刎ね、四肢をもぎ取り、焼き殺し、目玉を抉り出したやつ……オレンジ色のカボチャにくりぬかれたわざとらしいギザギザの口が、今日も禍々しい笑いを浮かべている。一部を雄輔に粉砕されて凹んだその頭部は、一層歪んだ、不快感を与える形をしている。
「やっぱり、来たのね……」
恐怖で気絶しそうになりながらも、聖良が震える声を絞り出す。
「さあ、今日はどんな風に殺してくれるのかしら」
膝ががくがく震えている。はったりなのは見え見えだ。
「楽しみ」
言いかけた途端、フルスイングの大鎌が聖良の首を一薙ぎにした。一瞬でその細い首は切り離され、跳ね飛んだ頭部が床にバウンドする。首の切り口からは、血液が噴水のように吹き上げる。
満足気に軽く頷いた怪人が、立ち去ろうとしたその時。
「クフフフ」
妙な笑い声が聞こえてきた。思わずカボチャ男の足が止まる。
「フフフフ、アハハハ」
振り返ったカボチャ顔が凍り付くように静止した。切り落とされて、転がった聖良の首がおかしそうに笑っている。
「今のは2ね,あと32か」
首の無い聖良の身体がゆっくりと立ち上がると、切り落とされた頭部を無造作に拾い上げ、何事も無かったように、首の切断面につなげた。すると、瞬時に傷口は塞がって、そこに五体満足の聖良が笑っている。
「お次は?」
今度は、大鎌を振りかぶって、真正面から振り下ろした。正確に中心線を切り裂かれた聖良の胴体から「ぶしゃっ!」と音をたてて、一気に全ての内臓が飛び散る。
だが、聖良は相変わらず愉快そうに笑っている。数秒後、「よいしょ」と言いながら屈みこむと、自分の内臓を一つ一つ丁寧に拾い集めて、体腔に無造作に詰め込むと、傷口は綺麗に塞がってしまった。
「今のは4ね。本当、何の進歩もないのね。それ、全部“あなたが教えてくれたこと”じゃない?アハハハハ」
表情の無いカボチャ顔の横側を、汗が一筋流れ始める。
「ねえ、そろそろどいてくんない?あたし、急いで帰らなきゃなんないの。これから忙しくなるから」
聖良が前に踏み出すと、怪人がゆっくりと後ずさりを始める。
「さっさとどけってんだよ!!この腐れカボチャ!!」
聖良が裂帛の気合で左手を突き出すと、暗闇の中に、強烈な光が炸裂した。一瞬の後、ジャック・オー・ランタンは、大鎌ともども跡形もなく消えうせていた。
遮るもののいなくなった闇の中を、聖良は走り始める。
〇
「先生!大倉先生!大変です、102号の患者さんが!」
「どうした?」
「とにかく、早く来てください!」
帝都大学病院の一室。担当看護師の切羽詰まった声に、慌てて病室に駆けつけた大倉医師は、自分の目を疑った。
「そんな……なんてこった……」
一瞬、呆然と立ち尽くしながらも、辛うじて看護師に指示を出す。
「とにかく、すぐにご家族に連絡して!」
「は、はい!」
医師の指示に従って、看護師が上ずった声で家族に電話する。
「もしもし、月島様のお宅でしょうか。こちら帝都大学病院です。あの、入院中のお嬢様が、はい、聖良さんが……いえ、違うんです!目を覚まされたんですよ!そうです!たった今、意識が戻られたんですよ!……」
10年の眠りから覚めた聖良が、ベッドの中で、ぱちりと目を開けた。
〇
都内某所。とあるオフィスの中。
こちらでも、一人の美少女がパチリと目を開けると、甲高いアニメ声で喋りだした。
“緊急アラート。月島聖良ガ覚醒シマシタ。帝都大学病院監視ユニットガ確認。繰リ返シマス。月島聖良ガ覚醒シマシタ。”
「オッケー、AI(アイ)ちゃん、いつも有難うね」
自分の傍らに侍らせた、異様に胸の大きく、すらりとした美脚の美少女型アンドロイドに向って、男は満面の笑みを浮かべる。最先端の人工知能を搭載したAI(アイ)ちゃんは、彼にとっての万能端末であり、秘書であり、そしてパートナーでもある。
「ナオ、月島聖良ト接触後、ジャックオーランタンノ姿ガ消滅シマシタ」
「あー、いいのいいの。あれは、もともと昔誰かが見た悪夢の中に出て来たキャラクターが、ずっとあそこに残っちゃってたのを、そのまま利用させてもらってただけだしね。我々にとっての利用価値は、データ収集用のシミュレーターみたいなもんだから。あれに遭遇した人間達がどんなふうに反応するか……どんなふうに怖がるか、立ち向かうのか逃げるのか、どの程度の力があるのか、逃げ足は早いか遅いか、さっさと一人で逃げるような奴か、仲間を置いて逃げることは絶対出来ない人間か……“魔夜中”をモニターしてると、実に色んなデータが取れる。これがまた、見てると本当に面白いわけよ、ひっひひひ。まあ、これで現在の聖良ちゃんの能力も、少しわかったし。ジャックオーランタン君は、必要なら作っちまえばいいさ、ひひひ。そうだ。いいことを思いついた。こうなったら、リアル・ジャックオーランタンを大量に生産して世に送り出すなんてのも面白いかも。スピリチュアルな世界とIT技術……あり得ない二つの要素をコラボさせられるのは、この僕だけさ。僕ってやっぱり天才じゃね?ひひ。いや、まったく、ロビンも八島も由緒正しい家系だとか言って、プライドだけはやたら高いけど、お財布の中身はスッカラカンだったしね。お家がらがらって奴だね、ひひ。偉そうなこと言ってても、すべて我々の財政的な援助無しには、その日のご飯にも事欠く有様だったくせにね。まあ、八島は、あんなもんでしょ。どうせいつか裏切るだろうとは思ってたよ。そして、尾羽打ち枯らしたロビン君を、我々が財政的にバックアップしてやって、あの学校に行かせてやったのも、創立者の家系でもあり、そしてルサンチマンの塊みたいだった彼なら、何か面白いことやってくれるだろう、ぐらいの感じだったのよ。本当、見ている立場としてはまあまあ、面白かった。しかし、あの陰キャ、何とかならんかね。これからは、陽キャの時代ですよ。そうだ、アイちゃんさ、これからは僕のことBig Bossって呼んでね。Big Bossよ、ひひひ」
「承知シマシタ。Big Boss」
「ひひひ、有難う。君は本当にお利口さんだねえ。それにしても、“うつし世は夢、夜の夢こそまこと”、か……これってさ、現実の方がよっぽど悪夢に近いって意味じゃないかなあ。。今時の怖さってのはねえ、アイちゃん、暗闇の中に蠢くおどろおどろしい怪物や、どろどろとした積年の因縁が祟りになって降りかかってくる、とかじゃなくて、もっと簡単に、明るく日の当たる日常の中に無造作に現れるのよ。真昼間、普通に電車に乗っていると、いきなり隣の男が刃物を取り出して、グサリ!とかさ。そういうノリだよね。怖いよねえ、怖い怖い。ウエットな韻文的怪談vsドライな散文的ホラー、ってところかね。僕、またうまいこと言っちゃったかな、いひひひひひひひひ……さてと」
〇
数日後。
昼過ぎまで惰眠を貪っていた雄輔は、父、雄平の大声にたたき起こされた。
「雄輔、起きろ!」
「……何だよお、まだ」
「起きろ!!」
有無を言わせず、布団を引きはがされ、手を引っ張られ、パジャマのまま車に詰め込まれた。雄平がそのままタイヤを鳴らしながら、急発進する。
「どうしたんだよ」
「爺ちゃんが刺された」
「え?」
一発で目が覚める。
「警察から連絡があった。爺ちゃんは、今朝、駅前のショッピングセンターに買い物に出かけたんだが、そこで通り魔に刺されたらしい。市立病院に搬送されたが、容体は不明だ」
ハンドルを握る雄平の表情は険しい。
「そんな……」
病院に到着した二人は、遊人の病室に走る。
「爺ちゃん!」
そこには、いつもと変わらない穏やかな寝顔の雄人が布団の上で眠り続けている。が、傍らに立ち尽くす医師の沈痛な表情から、雄輔は瞬時に悟った。
「誠に申し訳ございません。手はつくしたのですが……」
傍らの計器には、もはや何の波形も示さなくなった緑色の線がいつまでも動かない水平な直線を示している。
「……嘘だろ……嘘だよな……なあ……爺ちゃん!爺ちゃん!起きろよおー!起きてくれよおー!」
雄人の身体に取りすがり、雄輔はいつまでも叫び続けている……
[続く]
@車猫次郎 様
秋永君のキャラはある程度自由がきくよう余り詳しく書かずにおきましたが、そのために影が薄くなってしまってるかもです。
本人は覚えてないようですが、第一話冒頭では我が身を顧みずに美波ちゃんを助けようとしてましたし、普段の頼りなさとは別の一面も持っています。終盤でまた覚醒してくれるといいですね。
@車猫次郎 様
あくまでも私の意見ですので。参考程度にしてくださいね。
秋永九十九君が、「魔夜中」での体験を通し、また、美波やアキラや遊輔、セーラといった人物たちとともにジャックオーランタンの化け物や多くの化け物と、力を合わせて戦ううちに、以前のヘタレキャラが、逞しい男性キャラに変化したというような展開にすると、それこそ、青春群像的なビルディングスロマン的なホラー小説になると思います。
第7話までで、主要なキャラは全て出尽くしておりますし、謎解決に向けてのヒントや過去の遺恨について等も含めた、いわゆる伏線の回収等は、概ね網羅されているように思います。
ここまでの登場人物たちを 綿貫様が上記解説欄に追加記載し、更に詳しいキャラに関する説明を加えてくださっています。
大人も含め女性キャラは、もう増やさなくていいんじゃないのかな。
これ以上、他の人物たちを増やすとなると展開も厳しくなりますし、もう一巡するか外伝で補遺するか、後続の作家様たちが、一万字以上にもわたるお話にでもしないと物語は収まらなくなるでしょうね。
それぞれ、自分の生み出したキャラには、愛着があるものですが、もう、タスキとバトンは渡してしまったので、後の処理については、ストーリーに破綻を生じない限り、私は、あまり執着はしませんね。
@車猫次郎 様
そうですよね。
作品の冒頭から登場し、秋永九十九は、甘瓜美波さんと絡むキャラ設定ですが。
現在激走中の珍味様がどのように描かれるかはわかりませんが、もし、主人公扱いなのに影が薄い(元々、イケメンだけど、陰キャラ、ヘタレ。クラスでも目立たない存在という設定ではありますが。)もし、疑問に思われるのであれば、徹底的に車様の段階で、彼を掘り下げてみては、いかがでしょうか。
リレーの面白さは、まさしく、そこにあります。
今後の展開をいかようにも出来るのは、後続の作家様にしかできません。
過去は変えられないが、未来は変えられる
ということですね。
過去、秋永九十九の先祖も、「鳳徳学園」設立時に関わっていますし、当然ですが、彼自身も何らかの因果と呪いをかけられた家系のひとりとして描いています。
過去の設定を変えるのは難しいので、もし、彼を活躍させたいと思うのであれば、これからの展開にかかってくるかな。ということになります。
もちろん、これについては、車様にかぎったことではございません。
後続のゲル様やふたば様にも当てはまることかと存じます。
まぁ、最近の漫画やアニメの傾向として、いわゆる、メインキャラよりもサブキャラの方が魅力的に描かれているのが特徴的です。
たとえば、今は快適な人気の『鬼滅の刃』の主人公 竈炭次郎よりも、ある意味、サブキャラや本来であれば、悪役的な存在である「鬼」たちが魅力的に描かれています。
少し遡って、『新世紀エヴァンゲリオン』のメインキャラであり主人公である碇シンジよりも、サブキャラである女生徒たち アスカや綾波レイといったキャラの方が印象的に描かれていたりしますし、人気です。
それは、先に述べた『鬼滅の刃』での主人公の扱いにも似ています。
ただ、そこは主人公。ラスト近くになり、大活躍するみたいですよ。
脇役やサブキャラが弱いお話は、正直長弛みします。
もちろん、それは受け取る側の感じ方でもあります。
今回リレーに参加してみて、私よりもずっと年下と思われる作家様に後続を依頼したのも、そのためです。
お若い作家様たちのキャラ設定には、勉強させられますね。
ライトノベルや令和のアニメを見ているような気持ちにさせられる一方で、あぁ、これが、リレー競作の醍醐味でもあり、多くの作家の手を経て、一つの作品を完成させるということの難しさと楽しさなのかなと思いつつ、楽しく拝見させていただいています。
暴走、爆走結構です。
車様の実力をいかんなく発揮してくださいませ。
この段階に来て思ったことは、主人公である秋永九十九くんに関する描写が極端に少ないのは何故なんだろう?ということです。
皆様、他のサブキャラについては、結構細やかに描写されているのですが、何故か秋永くんについては、あまり全面に出してこないというのは、何か意味があるのでしょうか?
それとも彼はあくまでも傍観者的な位置付けで、他の人物を際立たせるために存在しているという風に思った方がよろしいのでしょうか?
@あんみつ姫 様
ご声援有難うございます。確かにイメージ的には心臓破りの丘みたいな感じかもしれませんね。とにかくここまで来たら全力疾走というか、もはや暴走だと思ってます😅。出来不出来の段、平にご容赦ということで、よろしくお願い申し上げます。
@ロビンⓂ︎ 様
お気遣い有難うございます。一応毎日少しずつ走っておりますが、なんというか、快走というより暴走かもしれません😅。一応予定通り投稿するつもりですが、万が一の場合は早めにご連絡します。
ふたば様
こんばんは、
さて、さて、
いかがお過ごしでしょうか。
お元気でいらっしゃいますか。
第四回リレー怪談も後半に入り、ぞくぞくするような展開になって参りました。
ふたば様の走りも、楽しみにお待ちしております。
もう、ここまで来たら、どの型にバトンが渡っても、手に汗握る二つとない作品となることだけは、想像できます。
ふたば様もお忙しい中、YouTube朗読に力注がれていることと存じます。第二の母は、いつも応援していますよ。
こちらは、里山がうっすらと雪を纏い始めました。
いよいよ。本格的な寒さが訪れそうです。
ふたば様の走り、楽しみに待っています。
きっときっと、私たちの期待を裏切らない走りをしてくださること信じています。
今、珍味様が走っておられますね。
いつ、どなたがバトンやタスキを渡されても、大丈夫です。
既に走り終えた作家様他全員、応援していますよ。
とはいえ、決してご無理なさいませんように。
お身体ご大切に
無理をな沢ずに、ご自愛くださいませ。
老体に鞭打ちながらの日日ですが、何とか頑張れていますので。
ご心配なく。
ではでは、この辺でおやすみなさいませ。
@ゲル 様
「自殺村season2」お疲れさまでした。
こんばんは。
お元気でいらっしゃいますか。
近所の里山には、ふんわりと白い雪が帽子のようなかかり、いよいよ冬が到来と言った感じですが、ゲル様のお住まいの地域も、本日は、とても寒い朝を迎えたのではないでしょうか。
リレー怪談も だいぶ佳境に入って参りました。
もう、早く走り出したくて、うずうずしておられるのではないでしょうか。
って、部外者の私が言うのもなんですが。
長編大作 ぞくぞくする怖さ なにより若い学生さんを描くのが得意なゲル様。
いつ誰に指名されても きっとその任を立派に果たされることと存じます。
あんみつ姫 応援しております。
お身体ご大切に。
ご自愛くださいますよう。
突然の訪問、失礼いたしました。
ではでは、これにて。
おやすみなさいませ。