短編2
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予知能力

私が予知能力を得たのは何十年前になるのか

もう覚えてはいない

しかし、その時なにを予知をしたのかは覚えている

あれは不思議な感覚だった

予知能力を得る予知をした

いやいや、そもそも予知するのが人生初で

後々、考えるとそれが予知だったことに気づいた

と言ったほうが正しい

予知といってもそんなたいした事ではないのかもしれない

どちらかと言うと「デジャヴュ」に近い

(ちなみに「デジャヴュ」は脳の誤作動が原因らしい

 ひょっとしたら私の予知能力はこういった類なのかもしれない)

ほんの数秒先のことを思い出すという感覚だ

それはまさに未来の記憶だ

私にとってそれは決定事項で

文章や映像ではなくインスピレーションとして

頭に浮かんでくるのだ

そして不思議なことに

一度インスピレーションとして浮かんでしまうと

一瞬にして私の記憶として定着してしまう

1+1が2であるように

今しがた起こったことでも

昔からそうであったかのように感じてしまう

そして、この予知は

私の意思とは関係なし無差別に連続的に行われる

分かるだろうか?この苦しみを

どんな本、小説でもマンガでも映画でも楽しめなくなった

次のページの内容を見る前に内容が分かってしまう

それは「昔、一回読んだな」程度の既視感ではない

今から開けるページが、既に数時間以上見続けていたかのような感覚

とても本など読めたものではない

全ての出来事に悲しみや驚きや感動がない

しかしそれでも、生活に必要なニュースや情報などは手に入れなくてはならない

それはまさに苦痛の時間でしかない

そして、それより苦痛なのが自分の意思の薄弱さを感じることである

自分がしたはずの思いつきや行動が

当たり前で当然のように感じてしまう

まるで決められたレールの上を進むように

生きてること全てが苦痛でしかない

絶望の中、私はあの瞬間を予知する事を望むようになった

そして、今、私は幸せを感じている

今日は朝からあの瞬間が来そうな感じがあるのだ

方法や場所、時刻までは分からない

しかし、数秒先のことしかできなかった予知が

なぜか今日はある程度先までおぼろげに感じる

あの瞬間が近づいている影響だろうか?

午後になると予知能力がさらに冴えを見せてきた

もう方法も場所も時刻も分かっている

後は残り少ない時間を消化するだけだ

ああ、いよいよ近づいてきた!!

あの電車なのか?あの電車でいいんだな!!

……!!

バカな!!そんな!!

何故、今になって死んだ筈両親の顔が見える!!

……そうか!!

これは予知ではなかったのか!!

これは予知ではなく記憶なのだ!!

だとしたら、私は…私は…

いったいこれは何回目だというのだ!!

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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