ミーンミーンミーン
蝉の声がこだましている、もうすっかり夏だ。
「あーここに戻って来るのも久し振りだな…」
僕はそれだけぽつりと口に出すと家のある方向へ歩き出しました。
「うわー、何も変わってないな~」
僕は久し振りの家の中を見て回り、昔穴を開けてしまった壁や床に書いた落書きを懐かしそうに見つめました。
一回り家の中を見た時母の姿を見つけました。
母はその部屋でテレビを見ていました。
僕はその母の姿をじっと見つめて言いました。
「ただいま。お母さん」と
「孝太?」
お母さんがこっちを振り向きました。
僕は満足そうにその部屋を後にしました。
その夜
「ねぇ、あなた」
「うん?どうした」
「私今日孝太の声を聞いた気がしたの…おかしいわよね…孝太もう死んじゃってるのにね…」
「そうか…。でも孝太はそこにいたんじゃないかな、今はお盆だしなきっと家に帰って来たんだよ。」
「そうね…」
私は仏壇のある部屋へ向かいました。
そして仏壇の前で手を合わせ「おかえり、孝太」と、呟きました。
私は確かに孝太はいたんだなと思いました。
何故なら
私が好きだった花が仏壇の前にそっと置かれていたからです。
怖い話投稿:ホラーテラー YUKIさん
作者怖話