そこにある一枚の絵。
古びた額に飾ってあるのは一人の女性の裸体だった。
私は絵に近づいてみた。彼女の眼差しはこの世のものとは思えぬ美しさを放っている。
絵に触れてみる。まだ書きかけのようで乾いていない絵の具が指につく。
真っ赤なそれの匂いを嗅ぐと間違いなく血の匂いだった。
一体誰がこの絵の具を作ったのだろう。一体誰の血で。何の目的で。
そこで記憶が途絶えた。
ガー。ガー。
何かが研がれる音で目が覚めた。
私は体を固定され、台のうえに寝かされている。まったく動けない。
誰かが近づいてくる。
「ぐちゃ」
私の腹に何かが刺された。そしてかき回される。
鮮血が闇に舞う。
私の胸が血で染まる。まるでパレットのようだ
私の内蔵に筆を入れかき回す。筆を洗っているようだ。
そうかさっき刺したのはこれか。
薄れゆく意識の中であの絵がこちらを向いてほほえんでいる。
そして私は命を閉じた。
怖い話投稿:ホラーテラー 博多さん
作者怖話