H県H市
そこに有名な峠がある。名前は仮に『緑線』としよう
今は夏になると封鎖されてしまう
地元の人間ならこれだけでわかってしまうかもしれない。それほど有名な峠だ
これは夏でもまだ道が封鎖されてなかった頃のお話
真夏の深夜。俺は助手席にA、後部座席にB子とC子を乗せ『緑線』に向かっていた
四つあるルートから海沿いの道を選択しグネグネと曲がりくねった道をのぼる
しばらくすると多くの地蔵が見えてきた
俺「見えてきたで」
B子「うわぁ~なんかいっぱいあるよ」
俺は地蔵の前に車を停めた
俺「ここは『子供地蔵』とか『百体地蔵』とかって言われとる。まぁ百体もないんじゃけどな。昔そっちの崖からスクールバスが落ちて乗っとった園児がみんな死んだらしい。でその子らの供養の為に同じ数だけ地蔵が造られとるんよ」
B子「なんか可哀想じゃね…」
A「ほんまよなぁ…あっ、C子ちょっと携帯貸してや」
C子「ん?ええけどなにするん?」
AはC子から携帯を受け取ると車から降りて地蔵に向かって歩いていった
C子「ちょっ!?あいつなんしょん!?」
俺「さぁ?」
Aは地蔵まで行くと直ぐに引き返してきた
車に乗るとAは画面を見せながら
A「じゃ~ん!地蔵撮って来ちゃったで。待ち受けにせぇや」
そう言うとC子に携帯を返した
C子「マジで信じられんわ。自分の携帯でやれや!」
A「俺の携帯はカメラ無いしw」
C子「うっさい!死ね!」
そう言うとC子は直ぐに画像を削除した
俺「喧嘩するなって。てかまぁこれはAが悪いわ」
B子「A最低なんですけど」
A「悪かったって。ごめ~んねw」
C子「黙れハゲ!」
少し険悪なムードのまま俺は先へと車を進めた
さらにしばらく車を進めると舗装されていないトンネルについた
トンネルの真ん中で車を停める
俺「ここでエンジンをきってクラクションを二回鳴らすと出るらしいで」
B子「えっ、まさかやらんよな?」
俺「やるに決まっとんじゃん」
そこで俺は三人を怖がらせてやろうと考えた
シフトをDに入れたままエンジンをきりクラクションを二回鳴らす。
そのまま鍵を回しこう言った
俺「あれ?エンジンがかからん…」
A「はいはい」
俺「マジじゃって!見ろや鍵回しとるんよ!」
鍵の所を覗き込むA
A「マジじゃなーか!どうすんな!」
B子、C子「キャー!」
車内は軽くパニックになる
その光景を見て笑いが堪えられなくなった
俺「プッ…ハハハハッ!」
三人が一斉に俺を見る
俺「冗談じゃwPにいれてないからエンジンかからんだけじゃってwww」
B子「脅かさんといてや~」
C子「本気でヤバいかと思ったじゃん」
安堵する二人
だがAは違っていた
A「お前ふざけんなよ!やっていい事と悪い事があんだろうが!」
俺「いやお前が言うな」
Aの激怒具合に軽く引いた。
A「もうさっさと行こうや!」
俺「わかったわかった」
俺は改めてエンジンをかけ、アクセルを踏んだ
だが、車が進まない
俺「?」
アクセルから足を離し、もう一度踏み込む
やはり車は進まない。エンジンだけが空回りしていた
A「はよせいや!なにさっきから吹かしとんや!」
俺「す、進まん…」
自分でも声が震えているのが分かった
B子「ちょっともういいかげ…」
俺「進まんのんじゃ!」
俺は声を張り上げた
C子「冗談じゃろ?」
俺「冗談なんかじゃなーわ!今はマジで進まんのんじゃ!」
今度は俺だけがパニックになっている
なんでじゃ?なんで進まんのんじゃ!?
その瞬間
ドンッ
車の上に何かが落ちてきた
静まり返る車内
B子「ギャーーッ!」
突然B子が叫んだ
見ると窓の外を見てひどく怯えている
その目線の先には…
子供が窓の上から顔を半分だしてこちらを覗いていた
全員がパニックになる
すると
ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ
上から次々に血塗れの子供が落ちて来て車にぶち当たる
俺「うわぁぁぁ!」
俺は力一杯アクセルを踏み込んだ
車は急発進
壁にぶつかりそうになりながらトンネルを抜け峠を下る
途中車内が息苦しく感じた。だが窓を開ける気にはなれない
しばらく走り、ようやく緑線を抜けコンビニに辿り着いた
俺「マジかぁビビったわ…」
A「あんなん初めてじゃ…」
女二人は半べそ状態だ
俺「なんか途中息苦しかったわ」
A「お前もか?俺もなんか苦しかったわ」
俺「とりあえず外の空気でも吸おうや」
そう言い車の外に出て息苦しさの原因に気付いた
全員の首に小さな手の後が無数についていた
俺達はすぐに近くの寺に駆け込んだ
かなり朝早い時間だったが、住職は快く招き入れてくれた
そして俺達は緑線でのことを順を追って話した
住職「C子さん携帯電話を見せて頂いて宜しいかな?」
住職はC子から携帯を受け取り、携帯を開くと
住職「やはりこれか」
そう言い画面をこちらに向けた
そこには消したはずの地蔵が写し出されていた
住職「これで念を持って帰ったようですな。ですがこれは子供のイタズラ程度のものですから大丈夫ですよ」
A「あの…お祓いとかしてもらえますか?」
住職「いえその必要はありません。言ったように子供のイタズラ程度のものですから。そうですな…お菓子でも持って地蔵に謝りに行けば許してくれるでしょう」
それを聞き俺達はすぐにコンビニで買えるだけお菓子を買って地蔵に謝りに行った
その後、無事C子の携帯から地蔵の画像は消えた
だが、C子はその携帯を使い続ける気にはなれず買いかえたそうだ
もちろん費用はA持ちだったとか
怖い話投稿:ホラーテラー Mさん
作者怖話