高い給料で簡単な仕事は誰しもが望むもの。リスクが付きものだが。
俺とて例外ではない。
様々な仕事を経験してきたが、どれもしっくりこない。そんなとき求人雑誌を何となしに見ていると、端っこに小さな文字で
「簡単な倉庫作業です。時給〇〇〇〇円」
と書いてある。募集する気あるのか?と疑いたくなるぐらいアピールされてなかったが、高額な時給に目を惹かれ電話を手に取った。
数日後、面接に合格した俺は職場へて向かっていた。
車のガレージを大きくしたような場所から地下へ入って行くと男が現れた。
その男から仕事内容を聞いた。予想以上にシンプルな仕事だった。
倉庫内にある箱を指示通りに冷凍庫に入れたり出したりするだけという単純作業
箱が全て同じ大きさ(一辺が30センチ位の正方形)で同じ材質(プラスチック?)なのと冷凍庫内に鍵が付いてたのを気にしなければ、とても楽な仕事だった。
仕事中はもちろん出社して退社するまで常に1人きりなのも気になったが人付き合いが苦手な俺には好都合だった。
1日で仕事に慣れ、それから1月ほど経ったある日に事件は起こる。
作業をしていると天井のスピーカーから声がした。
最初に『緊急時にはスピーカーで指示します』と言われたのを思い出した。
「冷凍庫に入り中から鍵をしてください。こちらから開けに行くまで決して出ないで下さい。では速やかにお願いします」
俺は言われるままに冷凍庫に入り鍵をしめた。嫌な予感がしていた。
庫内に備え付けの防寒着を着て誰かが来るのを待った。庫内の広さは大人が2人入れるかどうかの通路と両脇に箱を置く棚がある、閉所恐怖症の人には辛いであろう空間だった。
(ああ、だから面接の時にあんな事を聞かれたのか)
俺は少々の事では動じない鉄の心臓が自慢だ。しかしこの時ばかりは肝を冷やした。
コンコン…
ノックの音だ、スタッフがきたのか?
いや「こちらから開けに行くまで」と言ってた筈。
そのままで少し待っていると今度は
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
と激しく叩いてきた。数分して漸く止まったと思ったら今度は声が聞こえてきた。
この世のモノとは思えない声が
「ああぁぁけぇぇぇろぉぉぉぉ」
ドア越しにハッキリ聞こえたその声は何人もの人間?が絶叫しているようだった。
全身に鳥肌が立った
外ではサラリーマンが真夏の炎天下の下「暑い」と漏らしてるだろうが俺は今にも心身ともに凍り付きそうだった。
何分?いや何十分たったろうか。
ガチャ!とドアが開いた。外には最初の説明をした男が居た。
「お疲れさま。怖い思いをさせてすまなかった。」
状況が飲み込めない俺に男は続ける
「一応仕事はここまでだが…君が希望するなら正式に採用するけどどうする?」
更に高額な給与に先程の恐怖は消えた。
二つ返事で「はい!お願いします」と答えたのを今後悔している。
目の前には倉庫内を映すモニターとマイク
モニター内には俺が説明を言い渡した男が作業をしている。
俺の仕事は二つ
緊急時にマイクで男を冷凍庫に誘導
そして『事が終われば』冷凍庫のカギを開けに行く。
とても簡単な仕事だ
男が働きだして1週間
モニタールームに警報アラームがなる。
仕事か…
鼓動が早くなる
モニターは倉庫内を映している
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話