※この話を読む前に、コップに水を一杯、用意してください。用意できましたら、水を口に含み、読み終わるまでそのままにして、部屋の窓を少し開けてください。そうすれば、この話の怖さが引き立ちます。
◆本文
これは、高校時代の夏休み頃の話である
当時、塾の仲間と海沿いの廃病院に行く事になった
病院は、ここいらじゃ、珍しいくらい大きな総合病院だった
ただ、この廃病院、出るという噂で持ち切りだ
ある人は、緑の手術着を着た人が院内を徘徊しているのを見た。また、ある人は、俯き加減で誰も乗っていない、車椅子を押している看護婦を見たという……
夜、塾仲間と病院近くの公園に集まり、病院を囲む金網をカツカツと乗り越え始めた
――敷地内は、特に荒らされた形跡がなかった
廃墟といえば、DQNの落書きだ――しかし、ない
月明かりのせいか、建物自体、何処妖気をまとっているような気がした
正面玄関に向かい、ガラスが割れているドアから侵入した
待合室は、だだっ広く、茶色い腰掛けが並んでいた
受け付けの中をのぞくと、つい最近まで、営業してたかのように整然としていた
この病院は十年前までここらで唯一の総合病院だった。しかし、経営難で閉院した。だから、塾のメンバーにも「ここに来た事ある」という奴がいた。
仮にそいつをAとしよう
Aは小学生の頃、閉院するまでここが掛かり付けの病院だった。
そういう訳で、
みんなで受け付けのカルテ置場でAのカルテを探した
探す事、一時間……
――ガサッ
「うわっ……マジでありやがんの……」
それは、誇りにまみれて棚にあった。気管支喘息か……
一通り確認して飽きると、受け付けカウンターに、Aのカルテを放置して探索を続けた
―― 2階
2階はいろんな処置室があった。レントゲン室やらなにやら……
その中で一際、全員が不気味がったのは……
――手術室
恐る恐るドアを開ける……ギギギ……
中は、今、まさに手術があるかのように術具が並べられていた
Aが鼻歌混じりにひょいっとメスを握った
「戦利品さ」
周りは口々に「やめておけ」と言ったがAは、ニヤニヤと無視をした
――三階、病床
ここでは、車椅子のナースが目撃されている現場である
どの病床も、今すぐに入院出来る感じがする。何とも言えない、圧迫する空気が辺りを支配している……
――四階、病床
ここは重篤患者専用だったらしい。
このまま、なにもないのかあ、なんて愚痴りながら歩いてると、―番奥で物音がした
――キュラキュラキュラ
それは、奥の扉から現れた
誰も乗っていない車椅子を押しながら、俯き、顔の見えない看護婦がでてきた。看護婦は身体中、白色をしていた。
身体中の間接が不安定で、ゆらゆら揺れ動きながら、足を動かしていた。
人間じゃない
キュラキュラと近づいて来る。俺達は、踵を返して下り階段に走った。
「……な、なんなんだよ、あれ」
あんな者は、この世に居てはいけない。誰もがそう思い、恐怖にかられた。
――みんな動揺していた、その時である。院内放送が流れ出す……
「……メス……を返せ……Aの手術が……できない」
「――今から捜しに行く」
捜しに来る? 俺達は、パニックになった特に名指しだったAはガタガタと震えている
「とりあえず、ここから出ることが先決だ」
俺はそう言うと、みんなを入口まで導いていく……
――2階
2階に来たとき、廊下の突き当たりから、緑色の手術着を着た何かが両手を肘から上に真っすぐあげ、こちらに向かってきた。医者だ。
――コツッコツッコツッ
それをみるやいなや、全員反狂乱。泣く者、叫ぶ者、いろいろだった。そうなりながらも――待合室に着いた
絶望した。入って来たドアが茶色い椅子のバリケードで埋められていたからだ
全員でなんとかバリケードを撤去し始めたが、なかなか入口が見えない!
それでも、ここから逃れたい一心で、バリケードを除去する
三分位たったであろうか
半泣きで作業をしていたAがゆっくり振り向くと、そこには
ゆらゆらと、左右に身体を揺らし佇む、不気味な医者と看護婦がいた。
――医者は目玉がない、看護婦は顔にぽっかりと穴が開いていた
このままでは、Aは連れてかれる。そう思った時であった!
――ガラガラガラガラ
バリケードを破り、外から侵入して来るものがいた。
「予約した者ですが……」(´・ω・)ノシ
えのきじじぃである
えのきじじぃは車椅子に乗ると、手術室に連れてかれてしまった。
疲弊しきった帰り道で考えた。
恐らく、脇の下にびっしり生えたえのきサイズのアレを切り取る手術ではないだろうか……
一ヶ月後、河川敷で犬と争っているえのきじじぃを見かけた。脇はそのままで鼻がギリシャ彫刻のように高くなっていた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話