ある雨の日、俺は川沿いを車で走っていた
土手があり川幅50m程の比較的大きな川だ
赤信号で止まり、ふと川に目をやると一人の女が川岸に傘もささずに佇んでいた
川は連日の雨でかなり水量が増えている状態だ
(自殺?)
そんな言葉が一瞬脳裏に浮かんだ
俺が目を離せないでいると、女はこちらを振り返った
(思いとどまったか)
勝手に自殺志願者だと思い込んでいた俺は少しホッとした
前を見ると信号は青へ変わっていた。去り際にもう一度女に目をやると女はこちらを見ていた
それから数日たったある日、玄関の前に水溜まりが出来ていた
その日は久しぶりの快晴だ。俺は不思議に思いながら仕事へ向かった
その翌日、靴を履こうとして異変に気付いた。玄関が水浸しだ。施錠はしてある。雨漏りしている様子はない
さらに翌日、部屋のドアの前に水溜まりが出来ていた。俺は恐ろしくなり友人のAに泊めて貰うことにした
しかし、友人宅に泊まったことは無駄だと気付いた。そこにも水溜まりはできていた。場所は俺のすぐ横だった
俺は恐怖でパニックになっていた。するとAが俺を落ち着かせ話を聞いてくれた
話を聞くとAは知り合いを紹介してくれると言い電話を始めた。俺はすがるような気持ちでAの知り合いに話を聞き、ある方法を実行することにした
身代わりを作る方法。俺は家に帰るとすぐに準備を始めた。俺の毛布を丸めて縛る。次に俺の名前を書いた紙、髪の毛、唾、爪を毛布の中に押し込む。最後に俺自身はAから借りた毛布の中にくるまる。準備は完了だ
そして夜、俺は毛布の中で息を殺して待つ。
どれぐらい時間がたっただろうか。俺でもわかるほどに部屋の空気が変わった。ジメッとするような生ぬるい感じだ
俺は声を出すことも、顔を出すことも禁じられている。ただただ時間が過ぎるのを待った
少しすると、叫ぶような女の笑い声が聞こえた
俺は口を押さえてひたすら耐えた。手を離せば叫んでしまいそうだ
気が付くと朝だった。
俺が毛布から出ると、丸めておいた毛布はズタズタに切り裂かれていた
梅雨が始まると必ず思い出してしまう嫌な思い出
怖い話投稿:ホラーテラー Mさん
作者怖話