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短編2
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裁きを待つ間

僕は死んだ。

何故死んだかは分からない。

気がつけば知らない部屋にいた。

部屋は壁、天上、床までもが真っ白に塗られている。

部屋の中央には椅子が置かれているだけで他に物は何もない。

そしてこの部屋には黒猫が一匹いる。

しかもこの黒猫、驚くべき事に人間の言葉を話すのだ

黒猫は

「お前は死んだ。そして今お前が天国に行くか、地獄に行くかの裁きがおこなわれている。まぁすぐには決まらないから、退屈しのぎにオレの話でも聞いててくれ。」

といった。

「これはある男の話だ。」

男にはある悩みがあった。

それは男の父親が母親に暴力を振るうという事だ。

父親は小さな病院を営んでおり、患者の事を親身に考えてくれる良い医者だと村では評判だった。

しかし裏の顔は何かと理由をつけて母親に手をだす最悪の男だった。

母親の顔に痣や腫れが出来る度に男の心が痛んだ。

そして遂にいつものように母親に暴力を振う父親の姿を見て男の何かが壊れた。

父親に尋ねられた。

「何してるんだ?」

「母さんに頼まれて水の入ったペットボトルに父さんが吸ったタバコの吸い殻をいれてるんだよ。この水を花壇にまいたら猫がよってこないんだって」

「ふぅん」

そういって父親は何処かへいってしまった。

その夜、母親が離婚届けを突き付けた。

その事に腹を立てた父親はいつにもまして激しい暴力を振った。

母親は

「お願いします。私と別れてください。お願いします・・・」

と涙ながらに悲鳴にも聞こえる声で訴えた。

しかし男は聞く耳をもたず、暴力を振るい続けた。

そして

「下らない事いってんじゃねえ!オレはもう寝る!」

と寝室へ入っていった。

次の日、意外な形で母親は父親と別れる事になる。

父親は死んでしまった。

そして男は首を吊った。

「どうして父親は死んじゃったの?」

と尋ねてみた。

「さぁな」

と黒猫は首を捻り

「知ってるか。タバコを浸した水ってのはニコチンが濃縮されてて、少しでも体内に入ると死んじまう程の猛毒になるんだってさ。注射器なんかで体内に入れられたら堪ったもんじゃねぇな。」

と続けた。

音が聞こえた。

いつの間にか壁に扉ができていてそれが開いていた。

「裁きが終わったみたいだ。さぁ行って来い」

と黒猫はいった。

扉の向こうに行く途中、黒猫の声が聞こえた。

「天国に行けるといいな」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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