私は高校2年生。今日もいつものように、放課後残って仲の良い友達数人とワイワイ話していた。
「現社の△村、女子高生フェチらしいよお」
「え~っ、まじ?」
最初は教師の悪口で盛り上がっていたが、次第に誰が誰と付き合ってるだの、誰が誰を好きだのという恋愛の話になっていった。女子高生ならお約束の展開である。
みんなで噂話で盛り上がってる時、聞き慣れた着信音が鳴った。それは私の携帯から流れていた。
「なに、電話?」
「うん、でも非通知なんだけど」
携帯電話を開くと非通知の文字があった。普段なら無視するが、みんなの
「出てみてよ、変態だったらマジウケるじゃん」
の声に、渋々通話ボタンを押した。
「もしも~し?」
なにも聞こえない。
「誰だった?」という問い掛けに首を振った時だった。
「イマ迎エニ行クヨ」
ノイズのような声だった。男か女かもわからない声。その一言だけで電話は切れた。
「ね~誰?」
友達の声で我に帰った。私は「いきなり切られた」と嘘をついて笑った。場の空気を壊したくなかったからだ。携帯電話を閉じた時、鳥肌が立っていることに気がついた。
帰り道、一人だけ反対方面の私は早足で歩いていた。あのノイズのような声に対する恐怖がそうさせた。壊れた機械のような声が頭から離れなかった。
と、携帯電話から着信音が鳴り響いた。親かな、と思い携帯を開くと、
非通知
の文字がディスプレイに浮かんでいた。
鳥肌が立ち、とっさに電源ボタンを押そうとしたが、ある考えが浮かび指をボタンから離した。
友達のうち誰かのイタズラだとしたら?彼女達の顔を思い浮かべると、その可能性は十分に感じられる。
私は深呼吸をして、通話ボタンを押した。
「もしも~し?イタズラなんてタチ悪…」
「イマ迎エニ来タヨ」
あの、声だった。
ノイズのような声が頭蓋に響き、私は悲鳴をあげて携帯を落とし後退った。しかし、背中がなにかにぶつかり振り向いた。
「どうしたんだい?」
振り返ると、そこには見慣れた学校の先生がいた。私を見ると、先生は耳に当てていた携帯をおろし優しく微笑んだ。
いつもなら先生となんか話したくもないが、今は誰でもいいから味方が欲しかった。
「先生、あの…」
先生はなにも心配しなくていいというような笑顔で、私を殴った。地面に倒れこんだ私にすかさず馬乗りになり、私の首に手をかけた。
わけがわからずもがいたが、彼と私の間には圧倒的な力の差があった。
「ぐぅ…うっ…」
頭に血がのぼる。息ができない。
先生を見ると、彼は笑っていた。目がぎらぎらと異常な輝きを放っており、私は最近多発していた女子高生絞殺事件の犯人は、たぶんこの人だろうなと妙に冴えた頭で考えた。
「どうしたんだ…俺が、殺してやるのに…なあ…迎えに来たんだよ…迎えに…死神が…迎エニ…来タヨ…」
現社の△村先生は、うわごとのように呟きながら、首にかけた手に力を込めはじめた。
「どうして…か、聞きたいか?お前みたいなのが苦しむ顔が…俺は…なあ…あはは…」
薄れゆく意識のなかで、私は友達が言った言葉を思い出していた。
『△村って、女子高生フェチらしいよ』
「イマ逝カセテアゲルカラネ」
△村の嬉しそうな言葉を聞きながら、私は目を閉じ意識を手放した。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話