俺は何処にでも居るような高校生。
人と比べ特別ずば抜けているものなんかない。
ただ違うのは…俺の家系は祓い人ってくらいかな?
高校に上がる頃、両親を事故で亡くした。
2人で出かけた先で、突然車が爆発したと聞かされた。
父と母の遺体は見付かっておらず、あの爆発なら粉々に飛び散った可能性があると言われた。
遺体の無い葬式。
じいちゃんが
「自分のせいだ」
と俺に何度も泣きながら謝っていた。
俺は何故謝られているのかさっぱり解らなかったけど…。
その後父方の親戚の家に預けられたんだ。
父さんの弟夫婦…厳しい所もあるが、凄く親切にしてくれる。
その家にはじいちゃんも同居してて、俺は事ある毎にじいちゃんの部屋に居た。
そして、吸い寄せられるようにアレに触れてしまったんだ…。
~始まり~
信「じいちゃん!おじさんが呼んでるよ!」
何度じいちゃんを呼んでも返事がない。
俺は部屋までじいちゃんを呼びに行った。
襖を開ける…が、そこにじいちゃんの姿は無かった。
信「あれ?おかしいなぁ…。ん?」
丁度部屋の真ん中に小さな箱が置いてあった。
ソレは、いつもじいちゃんが大事そうに持っているものだ。
吸い寄せられる様に自然と体が箱に向かい、ソレを開けてしまったんだ。
中にはピンポン玉程の虹色の勾玉が入っていた。
信「何だろうこれ?凄く綺麗な色だなぁ」
俺は勾玉を取り出してしまった。
バチっと言う音と共に手に痛みが走る。
思わず勾玉を落としてしまった。
手を見ると指から血を流している。
信「痛っ!?何かに引っ掛けたのかなぁ?あっ…じいちゃんの勾玉…」
床に落ちた勾玉を見ると、虹色が見る見るうちに真っ赤に染まっていった。
?「あ~ぁ…。契約しちまったんかぁ。せっかく光守が遠ざけてたんになぁ~(笑)」
背後から声がした。
振り向くと、そこには同い年位の男が立っている。
信「誰??」
?「やっと見えたか…。俺月丸(げつまる)ってんの♪これからよろしくな~。」
信「月丸?」
その時、バン!!っと襖が開いた。
血相を変えたじいちゃん肩で息をしながらが立っている。
光守「信!!ワシの…」
そこまで言うと、驚いた顔をしてこちらに近寄ってきた。
光守「それに触ったんか?信!!触ってしまったんか!!」
今まで聞いた事のない声で、じいちゃんは俺を揺さぶった。
信「ごめんなさい…」
じいちゃんは気の抜けた様にガクっと肩を落とした。
光守「そうか…。契約してしまったんか…。信ごめんよ。こんな事に巻き込むつもりは無かったんじゃ…。ワシ等だけじゃ不十分って事か…。クソが!」
信「じいちゃん…状況が飲み込めないんだけど?何で勾玉は色が?っと言うよりもこの人は?」
光守「こやつは人に在らず。代々神野家に居るモノじゃ」
信「えっ!?」
光守「勾玉の新たな契約主に使える事になっておる。これからは信…お前の守りモノになる」
月丸「そうそう♪よろしくなぁ~」
信「ちょっ!話が見えないんだけど…」
じいちゃんは少し考え、話しだした。
光守「門の所の勾玉は知っているな?あそこからこちらは現世であって現世じゃない。」
信「どう言うこと?」
光守「昔この土地は神が住んでいた所なんじゃ。ワシ等の遠い先祖が、死にそうになって居たところを、この地に住む神が条件を飲むのならば助けてやる!と言われたのが神野家の始まりじゃ…」
信「条件とは何だったの?」
光守「神を守り、神が出す任務を遂行すること…」
信「任務??」
光守「それは後々解るじゃろ。この勾玉はその神との契約の記しじゃ…。」
じいちゃんは勾玉を箱にしまいはじめた。
光守「今日も持ち歩いとったんに…。気が付けば無くて…。なんでここにあったんじゃ。信…この際だから話しておくんじゃが…」
じいちゃんが改まって話し始めた。
光守「お前は元は霊と呼ばれるモノが見えていたんじゃ」
信「えっ!?」
光守「昔な…信がまだ小さい頃、もの凄く強い力を持っていたんじゃ。しかし、その力をアヤツ等は欲しようとお前に近づいて来たんじゃ。ワシ等は来るモノ達を祓っておったんじゃが、小さいお前は負の力に当てられてな…。1週間も寝込んだ。見かねた両親がお前の力を封じて欲しいと頼みこんできたんじゃ。上手くお前の力を封じる事が成功したんじゃが…この勾玉を触ったせいで、その封印も解かれてしまった…」
信「そんな漠然とした話をされても…」
光守「既に目の前に月丸が見えとるじゃろ?」
信「…」
光守「これから嫌って程解ってくるじゃろ。力の使い方は月丸が知っておる。ただ…自分を過信し過ぎたらいけない」
じいちゃんが何の話をしているのか良く解らない。
そして、もっと重大な何かを俺に隠している様に見えた。
コンコンっと叩く音がし襖が開いた。
力矢「信!オヤジ呼ぶのに何時間かかってんだ?」
光守「力矢…信が契約してしまった」
力矢「…そうか。俺達にゃ出来なかったのに信が選ばれたのか」
おじさんは少し考えている様子で、何度か頭を掻いた。
力矢「信!大変だと思うが頑張れよ!…おし!飯食うぞ!」
光守「今日は沢山食って良く寝なさい」
そう言うと2人は廊下へ消えて行った。
いつの間にか月丸の姿が見当たらない。
契約だの封印だのと、未だに信じられない話しばかりだ。
考えたら考えるだけ話が解らなくなる。
取り合えず俺は自分の部屋に向かった。
部屋に行く途中、窓から見える月がやけに悲しそうに見えた。
怖い話投稿:ホラーテラー 優さん
作者怖話