【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

中編3
  • 表示切替
  • 使い方

同僚の話

その日は仕事が終わってから、 久しぶりに同僚のKと飲みに行く事にした。

会社の愚痴や仕事での苦労話で盛り上がっていた時、Kが唐突に

「雀ってさ……見える人?」

と聞いてきた。

何の脈絡もなくいきなり言われて驚き

「は?何、急に。」

と、思わず聞き返した。

「いや、俺さぁ、一度だけ見た事あるんだよね。」

「見た事あるって?」

「だから……幽霊をだよ。」

そうして話し始めた同僚の体験談は、俺の興味をひいた。

「俺がさ 中学の時の事なんだけどさ。

すっごい変なのを見ちゃったんだよ。

俺目が悪くて、その頃は眼鏡をかけててさ。

今はコンタクトなんだけどね。

で、クラスの女子の一人がなんだかぼやけて見えるんだよ。

他の人はハッキリ見えるのに、そいつだけぼやけるの。

いや、ぼやけるって言うか、なんか、そいつが動くと残像が残るっていうか。

とにかく変だった。

だから眼鏡が汚れてんのかと思って、外して拭いてみたんだよ。

拭きながらそいつの方を見たら、今度は逆に そいつ以外の奴はぼやけてんのに そいつだけハッキリ見えるわけ。

は!?なんだコレ?って、何回も眼鏡をかけたり外したりしてみたけど、やっぱり裸眼だと見えるんだ。

そしたらさ、残像みたいに見えたやつの正体がわかっちゃったんだよ。」

そこまで話して、Kはビールを一口飲んで一息ついた。

「それで?正体って何だったんだ?」

「それがさ……。

その女の子の後ろに、ぴったり張り付くみたいに三人の人がいたんだよ!

すごく薄いの。

一人10㎝くらいしかないんだよ。三人合わせて やっと一人分くらい。

それが その子の動きに合わせて動いてたから、残像みたいに見えてたんだよね。

俺怖くなっちゃってさ〜。なんだよ、あれー!って。

どう考えても人の形としておかしいのが、三人も張り付いてんだぜ?

冷や汗かきながらずっと下向いてたら、隣の奴も汗だくで下向いてる事に気づいてさ。

隣の奴にも見えてたみたい。

ひたすら下向いてたら授業が始まって、先生が入って来たんだ。

そしたらさ、無言でその子に近づいて来て いきなり名簿で背中をパンッて叩いたんだよ。

その子も驚いてたけど、俺達はもっと驚いたね。

叩かれたとたんに、張り付いてた奴らが手足をめちゃくちゃに動かしながら 外に出て行ったんだ。

先生は 虫がいたとかごまかしてたけどさ、見えてたんだよな。」

「うわ……。なんだよそれ〜。気持ち悪いな。」

俺も色んな体験はあるが、そんなのは見た事はなかった。

「それ一回きりで、今まで何か見たとかなかったんだけどな。」

「うん。」

「さっき人生で二度目の霊体験したわ。」

「は?さっき!?」

「そう、さっき。 俺今さ、コンタクトを片方はずしてんだよ、ちょっと痛かったから。

そしたら、あの時と同じ奴をさっき見ちゃった。」

「……マジで?」

「マジで。しかも五人張り付いてた、うっすいのが。

客にくっついて もう出て行っちゃったけどな。」

なんだか薄気味悪いものを感じて、思わず後ろを振り向いた。

全然気づかなかったな……。

一体それはなんだったんだろうか。

「もしかして、それを見せようとして 俺が見えるかどうか聞いたのか?」

そう 俺がKに聞くと

「ん〜、っていうか……。あれが通り過ぎて行く時にさ、五人全員が お前を指差して行ったから……。

なんか、雀ってそういう人なんかなぁって思ったんだよな〜。」

なんだよ それ!

酒が劇的にまずくなったよ!

あれから随分たつが、俺は何事もなく健康に過ごしている。

本当に、一体何だったんだろう。

勝手に指差して行くのは やめてもらいたい。

凄く気になるから。

怖い話投稿:ホラーテラー 雀さん  

Concrete
コメント怖い
0
1
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ