目を覚ますと暗闇だった。
そう
何度も見た暗闇。
最初の指を潰されて
どれ位経っただろう…
1本潰れる度に気を失い
目を覚ます度に潰された。
もし此処から生きて帰れても
手のひらだけで生活しなきゃな。
大変だ、はは…
声は大丈夫だ。
3本目の指が潰れるときの悲鳴が声になったから。
しかし
もうすぐ声も失ってしまうだろう。
さっきからコイツが
ノコギリか何かで俺の足を
切断しようとしている。
「あ゛ぁっ――――う゛ぅ―――っ」
ノコギリか何かが
骨を、肉を、削るたびに
掠れた声が歯の消えた口から漏れ出している。
ああ
忘れていた。
指を潰された後に
歯を全部抜かれたんだっけ。
痛かったなぁ…
あんなに痛かったのに
忘れてたのか
もう
どうでもいい。
痛みも
生きることも。
1本目の足を切断し終えると
ヤツが明かりを取り出した。
光だ!
久しぶりに見た気がする光に
疲弊しきった俺の脳が反応する。
だがよく見てみると
それは光というより
熱源
のようだった。
事実、さっきから空気が暖かい。
まさか
血止めか?
思った通りヤツは熱源を
切断面に近づけてくる。
痛みには慣れていた。
指を潰され
歯を抜かれ
足を切られたから
想像できるから我慢ができる。
だが熱さは想像できない
経験してないから
我慢ができない
無理だ
止めろ
お願いだ
止めてくれ
無理
ジュヴゥゥゥゥゥ―――
少しずつ聞こえ無くなる音と共に
俺の意識も少しずつ
無くなって―――
ゴッ
顔面を殴られ
俺は意識を繋いだ。
何だ?
気絶させてくれないのか?
このパターンは今まで無かった
やっと殺す気になったのか?
「もう、飽きたな」
初めてヤツが喋った。
「疲れたし」
男だ、聞いたことがない。
「終わりにしよう」
終わり…
その言葉は何を意味する?
死ぬこと以外の終わりが
死ぬこと以上の絶望が
俺の頭をよぎった。
つづく
怖い話投稿:ホラーテラー 6さん
作者怖話