「ただいま…」
最近、私に弟が出来た。たっくん。家族はたっくんに付きっきりで私には構ってくれない。ただ、たまに寂しい思いさせてごめんねと言ってくる。
テストで100点を取ってもそんなのに構ってられないとでも言うように、わーわー泣くたっくんに付きっきり。
ネチャ…
足の裏に気持ち悪い感覚がし、足をあげてみるとたっくんが吐き出した、おやつのまるぼーろがついていた。
本当にもう嫌だ…
「だ…だ…」
止めてよ
「たっくん、ミルクの時間よ」
「もう止めてよ!」
私が叫ぶと、静まり返った。
「止めてよ…正気に戻ってよ」
ベッドに横になってるたっくん…五階堂拓海…私のお父さん。髭を生やしてよだれを垂らし、哺乳瓶をねだってる。Tシャツに短パンで…そんな姿なんて見たくないよ。
「仕方ないのよ…拓海の会社が潰れてから、おかしくなっちゃったのよ。疲れたのよ…可哀想な拓海」
でも、そういうおばあちゃんは悲しそうで…どこか嬉しそう。
「拓海、ママがいないとすぐ泣いて…この子、私がいないと駄目なのね」
お母さんは、嫌になって先月出ていった。だからずっと会ってなかった祖父母の家にやって来たけど。
「拓海…拓海。幸せよ。本当はずっと寂しかった。お帰り…」
「拓海…たっくん」
ああ…
まともな人は誰もいない。
怖い話投稿:ホラーテラー 家さん
作者怖話