これは一緒に働いている中国人(以下A)に聞いたお話
Aはその日休暇を利用して実家に帰っていた
のんびり過ごすのも良いが、折角だからと狩猟に出掛けることにする
山に入り獲物を探す
しばらくして幸運にも猪を見つけることが出来た
この辺りには猪が滅多にいない。Aは興奮気味に狙いを定める
しかし、僅かな物音に反応して猪は凄い勢いで逃げ出した
逃がすわけにはいかない。こんな機会は滅多にないのだ
Aはすぐに追いかける。幼い頃は1日中駆け回った山だ
気が付くと、とある廃村に行き着いていた
猪を追うのに夢中になりすぎた。Aはすぐに自分の行為を悔いる。ここは絶対に近付いてはいけない場所だった
(すぐにここを離れなければ!)
遅かった
既にAの目にはソレが映っていた
地面を這うソレには手足と首がない。胴体だけで地面をこちらに這ってきている
Aは悲鳴をあげて逃げた。決して振り返らず、ただ前だけを見てひたすら走る。だが、Aはその行為の意味の無さを知っている。見てしまった以上自分は助からない……
家に帰ってきたAを見て両親は驚愕する。汗だくになり、体を震わせて涙を流している。すぐにただ事ではないと理解した
Aはあの廃村に行き、アレを見てしまったことを両親に告げる。Aはその時すでに覚悟を決めていた。自分のせいで両親を巻き込むわけにはいかない
「今までありがとう」最後にそう呟いた
両親は話を聞き終えるとすぐにAを拘束した。手足を縛り、口と耳を塞ぎ目隠しをする。Aには意味がわからなかった。すぐに自分が出ていかなければ両親を危険にさらしてしまう
抵抗出来ないままAはその姿でどこかに運ばれていく。どこに運ばれているかを知るすべはなかった
ここに運び込まれてどれほどの時間が経過したのか……2日?いや3日か?Aは縛られたまま放置されていた。立ち上がることさえ出来ない。感じるのは空腹と、自分の排泄物の臭いだけ
Aはずっと考えていた。両親はなぜこんなことを?
一つだけ心当たりがある。しかしそれは考えないようにしていた
不意にAの戒めが解かれる。耳栓と目隠しをとると笑顔の父が目の前にたっている
「もう大丈夫」
父はAにそう言った
俺「それで助かったん?」
A「だからこうして日本に来てんだろ(実際はこんなに流暢に日本語は話せません)」
俺「そりゃそうか。で、どうやって助かったん?」
A「……身代わりだよ。借金でどうしようもなくなった人を連れてきて私のかわりに差し出す。そのかわり借金を立て替えて、家族にお金を渡したんだよ」
俺「……お金どれぐらいかかったん?」
A「日本円で200万円ぐらい。日本では大した額ではないだろ?でも中国の田舎ではかなりの大金だよ」
俺「ちなみにさぁその身代わりの人は……」
A「……」
Aは無言だ。当然か……
俺「じゃ、じゃあさその廃村はなんじゃったん?」
A「そこは昔、多くの人が国家反逆罪に問われ、ある処刑方法で殺されたんだ。処刑が行われて数年後アレが村に現れる。全ての村人がそれを見て死んでしまったっていう呪われた場所なんだよ」
『八刀刑』
Aはそう書いて俺に見せる
A「これがその処刑の名前」
俺「具体的には?」
Aは首を降る。教える気はないようだ
俺は家に帰り調べてみた
清朝末期の凌遅、『八刀刑』
1905年に廃止されるまで実際に行われていた処刑方法
文字通り八本の刀を使用する
刻むのは全て左側から
第一刀でみぞおちの肉を削ぎ落とす
第二刀は上腕筋
第三刀で大腿
第四刀、五刀で肘より先を切断
第六刀、七刀で膝下
最後八刀目で首を落とす
削がれた各部位は籠に入れられ、食用として市場へ
首は晒される
罪人は首を落とされるまで生きていたという
俺が調べたサイトには八刀刑に処された女性の一部始終が白黒写真で掲載されていた
オススメはしないが、興味のある方は『八刀刑』で検索してみるといいだろう
俺は中国という国が怖くなった
怖い話投稿:ホラーテラー Mさん
作者怖話