つい先日、久し振りに従兄と会い、その時に従兄本人から聞いた話…。
従兄の息子(二十歳)は関西の大学に通っている。
従って、学校の近くにマンションを借りていた。
従兄は言う…。
『このご時世、仕送りも馬鹿になんねぇんだ。あと2年あると思うと気が滅入るよ。』と嘆いていた。
話が進むに連れ、その息子の住むマンションであったある事を語り始めた。
従兄の息子、篤(仮名)の住む部屋は一番手前の角部屋。
学校が終わると週4日のアルバイトに明け暮れていた。夕方6時〜深夜0時まで…。実質6時間の立ち仕事は二十歳の若者であっても、学校が終わって直ぐなので、部屋に戻るとバタンキューらしい。
ある夜、いつものようにバイトから帰って来ると同じ階に住む、お婆さんが自分の部屋の前でたたずんでいた。
(こんな夜中に、どうしたんだろう…。)
そう不思議に思ったが、あまりジッと見るのも失礼なので軽く会釈をして(俯いていたそうだが一応…)部屋に入った。
しかし、その日を境に不思議な事が起こり出す。
ある日、そのお婆さんの部屋から《パン!パン!》と薄い鉄板を叩くような音が聞こえてきたらしく、篤はドアの前に行き耳を傾けた。
《パン!パン!パン!パン!》
ずっと鳴っている訳では無いが時折、聞こえる。
(中でなんか作ってるのかな?)
部屋に戻ろうと振り返った瞬間!
『何か御用ですか?』
篤の後ろにいたのは初老の男性だった。篤は驚きながらも、
『いや、何か叩くような音がしたんで…。お婆さんに何かあったのかなと思って…。』
男性は顔つきが変わり、
『余計な事はせんでええ!』
そう言って部屋に入って行った。
(なんだ!この間の事があったから心配しただけなのに。)
それから数日、やはり深夜帰るとお婆さんは自分の部屋の前でたたずんでいる。
あまりにも頻繁に目撃するので、篤は管理人さんに相談したそうだ。
『あの〇〇〇号室のお婆さん、僕が帰るといつも自分の部屋の前で俯いて立っているんです。
息子さんに虐待でもされているんじゃないでしょいか?』
すると管理人さんは、
『あぁ、あの男性は息子さんと違います。何年か前に籍を入れた言ってましたなぁ…。列記とした旦那さんですよ。
ご心配なら、旦那さんに会った時にでも言っておきます。』
それを聞いて一安心した。
ある日の夕方、バイトも無く買い物をして部屋に戻ると、篤の部屋の前にあの男性がいた。
『管理人から聞いたんやけど、婆さんが夜…外に出とるんか!』
いきなり言って来た。
しかし、怒鳴るんでもなくむしろ怯えているかにも見えた。
『えぇ…。僕も毎日では無いですが、たまにお見受けするもんで、管理人さんに相談したんです。』
毅然な態度で話すと男性は、
『そうですか…。ご、ご迷惑…おかけしましたなぁ…。』
俯き加減で部屋に戻って行った。心無しか、その背中は震えていたそうだ。
季節も温かくなり始めた頃、マンションの住人達が異変に気付き出した。
マンション全体にする異臭騒ぎ。その臭いは篤の住む階から臭って来ている。
あまりの臭さに管理人に調べるよう、伝えたところ臭いの元は、あのお婆さんの部屋からだと解った。
本当に耐えられない臭いだったらしく、篤は友達の家に身を寄せていた。
数日後、テレビを見てビックリ
自分の住むマンションがテレビに出ていた。
内容は…。
女性(88歳)は病気で数ヶ月前に死んでいた。同居している男性(63歳)は葬式を出すお金が無く、どうしようか考えている間に時間だけが過ぎ、こういう形で発覚したそうだ。
籍は入って無く、内縁の夫だった。
インタビューには管理人さんが出ていたらしい…。
勿論、篤は他のマンションに引っ越しをした。
しかし、篤は引っ越しの前夜に見てしまったそうだ。
自分の部屋の前で悲しそうにたたずむお婆さんを…。
【完】
また、短い話でごめんなさい。
怖い話投稿:ホラーテラー 元・悪ガキさん
作者怖話