長文な上に怖くない話なので暇な方だけお目通し下さい。
今から30年近く前の話です。
当時私は家庭の事情もあり、高校を卒業すると調理師を目指してあるホテルに就職しました。
そこでは今思い返すとかなり過酷な労働だったと思います。
10代の当時はそんな事も考えず、当たり前だと思い先輩が言った仕事を右も左も解らず必死にこなしていました。
そんな時、通常の仕事とは別にゴミ置場の掃除をするように言いつかりました。
ホテルの各部署、各調理場から出るゴミは相当の量です。
そこの掃除を通常の仕事の時間外にしなくてはなりません。
最初のうちは2時〜4時までの休憩中に掃除をしていました。
ゴミ置場の掃除だけでなく、掃除用具の掃除もします。
何で俺だけがやらされるんだろう なんて考えは当時ありませんでした。
毎日黙々と掃除していました。
そんなある日「ご苦労様」って声が聞こえて来ました。
女の人の声です。
えっ!ッと思って周りを見ても誰もいません。
気のせいだと思い作業を続けました。
それからは毎日ではありませんが、頻繁に「ご苦労様」って声が聞こえました。
その頃になると私も気にしなくなりました。
ある日私は調理場でコンロのゴトクが熱くなっているのに気づかず、握ってしまい火傷をしてしまいました。
かなり痛かったのですが、痛いとも言ってられず洗い物をするフリをして手を冷やしていました。
そんな日も掃除をしなくてはならないので、ゴミ置場に行き痛いと思いながらも掃除していました。
掃除も終わりそうな時、「大丈夫!」って声が聞こえました。
何が大丈夫だと思いながら掃除を終わり調理場に戻ると、不思議と手の皮が剥け火傷の後は在るのに痛みがありません。
その日の夜、仕事が終わり私が作った水菓子をなんとなくゴミ置場に供えました。
夏のある日いつもの様に掃除を終えて調理場に戻ると、先輩に「お前クサイから明日からは夜仕事が終わってから掃除しろ」と言われました。
それからは夜に街灯の下で掃除していました。
相変わらずたまに「ご苦労様」って声がします。
何か私も誰かが見ていてくれるって気持ちになり、今思うと声がすると嬉しく感じていたと思います。
ある日夜掃除して帰る時、電車に乗るとOLさん達が「なんかクサクない?」って会話が聞こえました。
私はあわてて次の駅で降りて、ホームの端まで行きました。
その時初めて涙が流れました。
ホームの端で空いている車両が来るまで待ってから帰りました。
今もトラウマです。
今は別の意味で加齢臭を気にしちゃいますが…
ホテルには社員が使う仮眠室は在ってもシャワーはありませんでした。
中堅位の社員は客室のシャワーを使えるのですが、下っぱには無理です。
そんな日々を繰返しているうちに次の年の夏が来て、調理長とホテル側の意見の対立があり調理場の人達が全員辞める事になりました。
私は最後の日の掃除を終え、一斗缶をひっくり返しハーゲンダッツを一個供え、一個食べながら誰もいない空間に「今日で辞めるんだ。火傷した時はありがとう。」って言いながらアイスを食べました。
食べ終わってから目を瞑って手をあわせていると「お疲れ様」って声が聞こえ頭を撫でられる感じがして、びっくりして目を開けました。
誰もいません…
アイスかたずけて帰りました。
後日
数ヶ月してフロントにいた人から電話がありました。
フロントの人「元気?」
私「はい」
フ「今度会おうよ」
私「じゃ 休みの日にでも」
フロントの人と会ってその後の話を聞きました。
どうやらゴミ置場に幽霊が出ると言うウワサがたったそうで、毎日掃除していた私が仕事を辞めた後死んで化けて出たんじゃないか?とウワサがたった様で、ホテルとしてはウワサは致命的なので生きているか確認の電話でした。
フ「別にゴミ置場で変わった事なかったよな?」
私「別に何もありませんよ。たまに『ご苦労様』っておばさんに声掛けてもらいましたけど…」
フ「どこの人?」
私「さぁ?」
フ「幽霊?」
私「一緒にアイス食いましたよ。」
フ「だよな。」
こんな会話がありました。
今思うと柴田りえの声とそっくりだったので、勝手におばさんだと思い込んでました。
怖くない話を最後まで読んでくれてありがとうございました。
読みにくくてスミマセン…
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話