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中編3
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アニメーター

初めて投稿します。

僕は、アニメ制作進行の仕事をしています。

簡単に言うと、サザエさんの、ノリスケさんね。

原稿まだですか?早く描いてくださいよー、ってやつをアニメ一本分、300カットくらい期間内に集めて色つけて撮影する。

ただ、ノリスケさんみたいに、昼間とかだけではなく、24時間いつでもおっかける。

基本は深夜が多いかな。

蝉が、けたたましく鳴き、茹だるような暑さの時期に、それは起こりました。

ある、アニメーターさんと仕事をしていた時の話。

基本的には、電話で連絡して回収時間を決めてから相手方の家やスタジオに向かいます。

その人は毎日決まって、深夜の二時回収。

上がりはアパートのドアに紙袋がぶら下がってて、その中にある感じ。

こんな光景見たことある人いませんか?結構いろんなとこにあると思いますよ?(笑)

それで、アニメーターさんには珍しく、その人は毎日電話に出るし、上がりも毎日くれるんです。

だけど、その人の上がりが、あと一つってなった時から、まったく連絡がとれなくなった。

締め切りも過ぎ、制作的にも、かなり末期の状況。

ドアをノックしても反応もない。

上司にも相談して、強行手段にでました。

大家さんに事を話し、鍵をあけ直接乗り込む事に。

まぁ、やな予感はしてたんだけど、鍵をあけドアが開いた瞬間に、大量の蝿。

ものすごい悪臭も漂ってきて、

「おえええええ!」

「うわああああああああ!」

と、大家さんと僕、大パニック。

蝿って大量の群れをなすと黒いカーテンが動いてるくらいすごいんですね。

蝿の群れが飛び出し、中が確認出来るようになると、嫌でも中の様子が目に入ってしまいました。

1Rの小さな部屋に、一つの作業机。

雨戸が完全にしまっており、真っ暗な部屋に開けただれた、ドアからの一筋の光。

座ってるんです、机に向かって。

数匹の蝿が飛び交い、蝿の羽音以外は、僕と大家さんの呼吸音しかしない、無機質な部屋で。

「〇〇さーん?」

と、声を掛けるのがやっとです。

しかし、もちろん返事は無く・・・

「お、お邪魔しまーす」

在り来りな、あいさつをして恐る恐る部屋内へ。

突然の来訪者に蝿達は羽音を荒立てます。

ギシギシと畳の音が響く。

大家さんの

「お、おい!」

という声が聞こえた気がしましたが、そんなのはお構い無しに。

1Rの小さな部屋がこの時ほど、広く遠く感じたことはありません。

「〇〇さーん?」

もう一度声をかけ、肩に手をかけました。

「ぼとん」

と、音をたて右腕が落ちました。

恥ずかしながら、僕はそこで意識を失いました。

気がつくと、アパートの前。

回りには、けたたましいパトーカーのサイレンと、複数の警察。

どうやら大家さんが連絡してくれたようです。

警察の現場検証も終わり、警察にアパート前で話を聞かれていると、青いブルーシートが運ばれて行きました。

やはり、亡くなっていたのかと、その様子をただ見守っていた時に見てしまいました。

シートからはみ出した右手にしっかりと鉛筆が握られていたのを。

ぞわっとしたのと同時に、どれだけ無念だったのかと、なんとも言えない気持ちになりました。

警察の話では、机に突っ伏して、亡くなっていたそうです。

死後二週間。

え?ちょっとまって?連絡は付かなくなってたけど、それは一週間前からで・・・

電話でもその前は話してたし、上がりもあった。

亡くなってからも、描き続けてくれていたのでしょうか?

最後の一カットも部屋から出てきまして、無事にアニメは完成できたのですが・・・

なんとも言えない、不思議な体験でした。

幽霊とか、念とかってあるのかな?と、それからは思ってます。

怖い話投稿:ホラーテラー 制作さん  

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