今ではアニメの制作進行をしていますが、以前はドラマなどのADをしていました。
(今後は両方の話を描いていくつもりです)
その日のロケは、役者さんがお墓でお参りをすると言うものでした。
場所は横浜の外人墓地。
しかし、有名な横浜外人墓地は撮影許可が降りず、少し離れた所にある、外人墓地を紹介してもらいました。
その場所は横浜外人墓地に入り切らなかった、仏様を埋葬するために急遽作った場所らしく、実際には歩道以外、墓石の下以外にも、埋葬されている仏様がいるらしく、管理会社にも、配置と数の詳細は解らないとの事でした。
撮影する際、カメラ引っ張ったり、レール引いたりと、沢山の面積を使用するものですから、自分の足元に仏様くる事もあると。。
うーん、とは思いましたが、監督がどうしても外人墓地ではなくては駄目だと言うのと、役者さんのスケジュールなどもあり、その場所での撮影を決行することにしました。
実際、撮影スタッフは僕も含め、映像を撮るためなら、多少の事は気にしない、良くない変な慣れの様なものがありました。
朝は山下公園などでの撮影を順調にこなし、いざ墓地へ。
敷地内に車は通せなさそうなので、外に車を置き、中に。
昼間と言うこともあり、雰囲気は悪くありません。
ロケハンもしていましたし、サクッと撮り終え、次の場所に向かう予定でした。
撮影準備のため、歩道を越え、墓石回りに。
墓石に近づくためには低い柵を跨ぎます。
まぁ、柵を越えるとその下には乱雑に埋葬されている仏様がいる可能性があるわけで。。
どたどたと踏み荒らすスタッフ達。
少しは気にしようよ、と思っていたものです。
いざ撮影が始まりました。
役者さんも定位置に付き、監督のスタート!と言う声が響きます。
が、その後に続いたのは、役者さんの演技ではなく、カメラマンの
「え?え?待って待って!」
と言う声でした。
カメラマン曰く、録画ボタンが押せないと。
固く固くボタンが固く、撮影を拒んでいるかのように。。。
カメラの故障?
いや、先程の撮影では全く問題なかった。
予備のカメラを取りに車へ。
念のため機材確認をし、現場に戻ります。
仕切り直し、再び監督のスタート!と言う声が響きます。
が、
「待って待って!なんで?なんで押せない?」
その頃には、やな空気が流れ出し、役者さんも半泣き状態。
一番力の強かった他のADが無理矢理ボタンを押すとなんとか成功しました。
さっさと撮り終え、移動したい。
誰もが感じていたはずです。
カメラはなんとか回り、撮影も1カット、1カットと順調に進んで行きました。
次のカットで終わりという時、突然
「ギュルルルルルルルルルルルルル!」
と、テープが巻き戻り始めました。
場は我慢の限界でした。
「のわあああああ!」
カメラマンを筆頭に役者さん、監督全てがその場から逃げ出しました。
勿論その日の撮影は中止。
お墓のシーンも、何とかつじつまを合わせてなくしました。
カメラマン曰く、何年も、この業界にいるが、こんな事は始めてだと。
その後置き去りにされた機材をAD二人で回収しに行った時は、本当に恐かったです。
後日談ですが、
その日撮影したテープを再生してみると、山下公園のシーンはきちんと撮れているのに対して、お墓のシーンだけは、真っ黒の画面がずっと写っていました。
普通何も撮影されていないテープはザーッと砂嵐の様な映像になります。
なのにただただ、真っ黒なのです。
さらに不思議なのは、カメラマンはカメラを抱えたまま逃げたので、その一部始終が写っていなければおかしいのですが、真っ黒の画面のあとに、外人墓地の敷地から出た瞬間の映像から写っていたのです。
編集室が氷ついたのは言うまでもありません。
怖い話投稿:ホラーテラー 制作さん
作者怖話