前に『封じられた力』という投稿をしたが、そこで書いたように 俺の弟はある時期までは霊感がめちゃくちゃ強かった。
今は全く感じる事さえないのだが、相変わらず霊は彼に寄ってくる。
何故こんなに、弟は霊に好かれるのか?
親は全然霊感なんてないし、親戚に坊さんがいるわけでもない。
なのに、俺と弟だけが 生れつき霊感が強かった。
しかも 霊感の種類?が、俺と弟では違うらしいのだ。
例えて言うと、饅頭とケーキが並んでいたら
『どっちも好きだけど……どっちかと言えばケーキが食べたいな』
といった感じか?
弟がケーキで、俺が饅頭である。
なかには『ケーキより饅頭が好き』という人もいる。
しかし手に取ってみたら
『あ……。こしあんなら好きだけど、つぶあんはちょっと……。』
みたいなね。
俺はつぶあんの饅頭である。
もちろんこれは、勝手に俺の好みで例えただけだから、つぶあん好きな方々 気を悪くしないで下さいね?
まぁとにかく、つぶあん大好き!というタイプの霊は俺に寄ってくるが、大多数の霊はまず弟へ寄っていくわけだ。
そして弟に寄る霊は、俺の事が嫌いな奴が多い。
俺が弟の肩に手を置いただけで、激しく睨んでくる奴もいた。
俺も負けずに 睨み返すけどね。
霊達は 弟に気づいて欲しくて、必死にアピールする。
目の前に立ちはだかり、顔を限界まで近づけてみたり、耳元で何か囁いてみたりする。
酷い奴になると、何をしても気づかない事に苛立つのか 家中の電化製品を壊していく霊もいた。
俺は実家を出ているが、たまに帰ると そこに住んでいる人間より霊の数の方が多かったりする。
最近思わず笑ってしまったのが、弟から見せられた社員旅行の写真だ。
「あんちゃん、ちょっとコレ見てよ。」
そう言われ、差し出された写真を見て吹き出してしまった。
楽しげに同僚と写真に写る弟。
その弟の右腕が……
長〜いんである。
明らかに不自然な腕の長さ。
「お前これさ〜。腕を下に降ろしたら、完全に地面に手ぇつくよね。」
「だよね。俺は宇宙人かっつの!
もう一枚もすごいよ?」
そう言いながら出して見せた写真を見て、俺は我慢できずに爆笑してしまった。
ピースしている弟の人差し指が、異常に長い。
さらに、人差し指の上に二本の小さな指が出ていて、ダブルピースみたいになっているのだ。
後ろは壁なので、当然誰かがいるわけもない。
これは霊障がどうたらって事ではなく、ただ単にいたずらされただけだ。
弟の後ろには、得意げな顔をした小学生くらいの男の子が見え隠れしている。
この子がやったんだな……と思いながら見ていたら、俺と目が合った事に驚いたのか、走って二階に逃げて行ってしまった。
こんな風に、弟が写っている写真は 八割が心霊写真になってしまう。
気づく事がなくても、向こうが勝手に近づいて来るからだ。
しかし、何も感じないと言うのは つくづく最強だと俺は思う。
女の霊がおぶさっていても体調を崩しもしないし、下半身がちぎれたオッサンが足首にしがみついていても、構わず歩いて行ってしまう。
そのうち いつの間にかに霊はいなくなっているのだ。
そんな弟が、俺は少し羨ましい。
いや、やっぱり羨ましくはないか。
写真は楽しい事だけを 写しておいて欲しいですもんね。
次の機会があったら、また違う話をここに投稿したいと思います。
怖い話投稿:ホラーテラー 雀さん
作者怖話