葬儀の続き
次の異変は参列者に配膳をする時に起こった。
参列者の人数とお膳の数が合わないのだ。
喪主であるお父様との打合わせで、参列者の人数を何度も確認したし、取引き先の仕出屋にも間違いのないように確かに伝えた。
ただ人間がやる事なのでミスはあるだろうと片付け、急いで足りない分の膳を手配し事なきを得た。
それからも細かい異変が起こった。
それは祭壇を照らすライトが突然点滅したり、司会のマイクが入らないなど本当に細かい事だったし、式の進行の妨げにならないレベルだったので機器トラブルで片付けた。
しかし、お坊さんを呼んで読経をしてもらう際に機器トラブルなんかでは済まされない異変が起こってしまった。
お坊さんが座布団に座り、祭壇の方を向いて木魚を鳴らしながら経を読む。
すると祭壇の上の花や遺影がカタカタと音を立てて揺れ出した。
注意して見ていないとわからない様な、小さな揺れだったので亡くなった女子高生のご両親やご兄弟をはじめ、参列者は気付いていなかったのがせめてもの救いだった。
しかし葬儀スタッフは祭壇の近くにいた事もあり、全員がその現象を目の当たりにした。
印象的だったのが、経をあげてくれたお坊さんの青ざめた表情だ。
なんとか読経が終わり、いよいよ出棺の時間になった。
その頃には、もう揺れはおさまっていたが、もう一つ不可解な事が起こった。
出棺は棺を親族が担いで霊柩車に乗せるのだが、棺は木で出来ていて20kgはある。
それにご遺体を合わせれば女子高生とは言え、70kg位になる。
その時はお父様とお兄様、そして親戚の男性二名の計四名で担ぐ手筈だったが、なかなか持ち上がらない。
スタッフや他の親戚の方が手伝って、計八名でやっと持ち上がった。
その友人も手伝ったらしいが尋常じゃない重さだったらしい。
まるで出棺を拒むかの様だった。
なんとか棺を霊柩車に乗せ、いよいよ火葬場に向けて出発する。
霊柩車のドライバーは出発の合図と最後の別れの為にクラクションを長く鳴らす。
その時に、司会用のマイクのスピーカーから、
「嫌ぁぁぁぁぁ」と叫び声が上がった。
友人によれば、その様に聞こえたそうだが、他のスタッフはギャーやらうわぁぁぁぁぁっと聞こえ方が様々だったらしい。
これには参列者一同、驚きを隠せなかった。
それでも霊柩車は火葬場に向うしかなく、親戚が騒めく中、火葬場に向け走り出した。
完
後日談もありますので、もしよければ投稿します。
怖い話投稿:ホラーテラー 小結さん
作者怖話