葬儀 後日談の続き
友人視点で書かせてもらいますが、お許し下さい。
社長は大学時代からの知り合いであるカブラギさん?に連絡を入れた。
カブラギさんは今週の日曜なら伺えるとの事。
続いて僕はお父様に連絡を差し上げ、カブラギさんの事と日曜なら伺える事を伝えた。
お父様も日曜で了解して下さった。
そして当日、お宅に伺ったカブラギさんの後ろに何故か僕もいた。
話の流れでお供させて頂く事になったのだ。
挨拶もそこそこに、カブラギさんは仏間に上がり、仏壇に手を合わせた。
僕もカブラギさんの後ろで正座し、手を合わせた。
僕が目を開けると、カブラギさんはまだ手を合わせていた。
そしてそこから約30分位、手を合わせ続けた。
そしてようやく、ご両親の方に向きをかえ、こう言った。
「娘さんは真実を話したいと仰っています。」
その言葉を聞いて、ご両親は眉間と膝に乗せていた拳に力を入れたのがわかった。
カブラギさんは続ける。
「娘さんは、お付き合いしていた方にフラれてしまい傷心の為に自ら命を絶ったとお思いですね?」
ご両親共々頷く。
「しかし真実は違います。」
そこまで言って、カブラギさんは僕を見た。
多分、お身内以外の人間に話していいものか迷っているようだった。
僕もそれを察して、正座を崩し、立ち上がろうとした。
その時、お父様が
「◯◯さん(僕)には葬儀や今回の件で、大変お世話になりましたので結構です。」
と答えた。
僕はバツが悪かったが、もう一度正座した。
僕が座ったのを確認するように、カブラギさんは話出した。
要約するとこうだ。
娘さんは自殺した事を後悔しています。
遺書を残さなかったのも衝動的に飛び降りてしまった為であり、ご両親には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
ただ、先にも言った様に自殺の原因は彼氏に捨てられたわけではなく、イジメにあっていたのが原因です。
イジメの内容はご両親に配慮して伝えなかったが、怒りを抑えながら話すカブラギさんの表情で凄まじさは感じ取れた。
クラスメイトの1人を除いた全員からイジメを受けていました。
そしてイジメに関わらなかったのが娘さんの彼氏です。
しかしイジメに加担しない彼氏が次の対象になった。
それが娘さんには耐えられなかったのです。
自分だけなら卒業までの半年、耐えるつもりだった。
だが、大好きな彼氏が酷い目に合うのは耐えられなかった。
事実、彼は肉体的にも精神的にも傷ついていた。
娘さんは原因は自分と付き合うからだと責任を感じていました。
だからあの日、彼を屋上に呼び出して別れを切り出したのです。
しかし彼はそれを拒んで、別れようとしませんでした。
彼女は困りましたが、このまま自分と付き合い続けたら、彼はもっと傷つくと思い、彼を突き放しました。
彼が去った屋上に1人残り、何気なく地上を見ていると、死んだら楽かなぁっと思ってしまいました。
でもお父さん、お母さん心配しないでね。
飛び降りた瞬間、気を失ったので痛くなかったよ。
親孝行もせずにゴメンなさい。
もっともっと一緒にいたかったよ。
いつしかカブラギさんではなく、娘さん本人が話しているようだった。
ご両親は号泣していたし、僕も涙が流れた。
カブラギさんはご両親の肩を抱き、
「娘さんの分も生きなさい。」
と力強く言った。
そして日本酒や塩、米などを用いて供養した。
最後にカブラギさんは、ご両親に向かってこう話した。
「娘さんは天国に逝かれました。自殺した事に後悔はしていましたが、クラスメイトを恨んだりはしていません。ただ大好きな彼にもう一度会いたいと言っています。近い内に彼を呼んで、線香を上げてもらうと喜ぶでしょう。」
ご両親は、頷きながらも涙を止める事は出来なかった。
僕もしばらく動けずにいたが、落ち着きを取り戻すと、ご両親に挨拶を交わし、カブラギさんと一緒にご自宅から出た。
帰り道でカブラギさんが僕に、
「あの娘さんはとても優しい子でしたね。」
と目を細めた。
その表情がとても神々しく見えたのが印象的だった。
完
怖い話投稿:ホラーテラー 小結さん
作者怖話