霊感がある人、ない人の見分け方のひとつとして以下のようなやり方があります。
目を閉じて自分の家を思い浮かべ、玄関から入り窓を一つひとつ開け、すべて開けたら今度は閉めて玄関に戻るという方法。
この間に誰か人に会ったなら霊感があるという事になり、誰にも会わなかったら霊感はない。
ここからは聞いた話です。主人公はA子さん。
A子さんは小さな頃から霊感が強く、この方法で試してみるとやはり人に会ってしまいました。
帽子を深くかぶり、大きめなコートを着た大男。
A子さんが全部窓を開けきり、玄関に戻ろうと二階の窓を閉めていた時にちょっと離れた位置に立っていたようです。
A子さんはハッとして、目を開けました。
誰だろう?あの男の人は…でもどこかで見たことがあるような気がする。
その時彼女は少し気にはなりましたが、どうせもう見ることはないとすぐに忘れてしまいました。
しかし、1ヶ月後その男が誰かを知ることになりました。
A子さんの遠い親戚が亡くなったというのです。
お葬式で遺影を見て気付きました。あっ…あの人だと。
車で仕事場へ向かう途中に信号無視の車に追突されて亡くなったということでした。即死だったそうです。
A子さんは、あの出来事は虫の知らせだったのかなと感じ、心からご冥福を祈りし、その場を後にしました。
それから数日後。
すっかり日常生活に戻っていたA子さんでしたが、夢に亡くなったおじさんが出るようになりました。
場面は、前と全く同じ自宅の2階。3mぐらい離れた位置に立ちじーとこちらを見ているのです。
だが、前と違う点が2つ。
1つ目におじさんの背丈が半分以上低くなっていること。
そう。下半身がないのです。
A子さんは夢の中でありながら、事故で上半身から下は原形を留めないほど酷かったと聞いたことを思い出しました。
100㎝にも満たない身長の男がピクリともせず、自分をじっと見ている。
これだけで十分異様な風景で、A子さん恐怖で頭がおかしくなりそうでした。早く目が覚めろとそれだけを願い続けました。
2つ目に、何か呟いているのです。
「……っ…て…」
「ん…う゛…っ…て」
踊って?
距離が遠い上に小さな声で独り言のように呟いているので、何を言っているかはっきり聞き取れませんでした。
恐怖からか、そこでパッと目覚めました。
あれは何だったのだろう…A子さんは怪訝に思いながらも一種の悪夢だと鷹をくくり、気に留めることを止めました。
しかし、
その日を境に毎日のように同じ夢を見るようになりました。
しかもほんの少しずつA子さんに近づいて来るのです。
「ん…う゛…っ…て…」
と呟きながら。
さすがに恐怖を抑えられなくなったA子さんは母親に相談してみました。
すると、母親はおじさんはA子に踊って欲しくて夢に出てるのではないかと言いました。
「おじさんはA子が幼い頃はよく家に来てバレエを見て喜んでたのよ…夢でも踊ってあげれば心残りがなくなって成仏できるんじゃないかしら。」
A子さんは、昔からバレエを習っていました。
踊ることでおじさんが成仏してくれるのなら…とその日の夜、夢の中で踊ることにしました。
その夜。
やはり、同じ夢を見ました。
おじさんはもう目の前まで来ていました。
A子さんは一生懸命踊りました。おじさんのために…
そして、バレエを踊り終え、これでおじさんも成仏してくれるだろうとおじさんを見ると少し頬が緩んでいるように見えました。
よかった…
喜んでくれた。
そう安心した
その瞬間
がっと足を掴まれました。この世のものとは思えないほどの力です。
そして、おじさんは上を向き呟きました。
「……変わ…って…」
怖い話投稿:ホラーテラー リベリさん
作者怖話