8/10 AM5:55
Yowll Shard Main Street (ヨウルシャード中央通り)
対バイオハザードチーム30、アルファ3がメインストリートに到着する。
彼等の任務は、このメインストリートに後からやって来るチーム22を乗せたC130輸送機用の滑走路を造ること。
造るといっても、道路上の街灯や、路上駐車している車を撤去したり、道に落ちているゴミを掃除するぐらいだが。
「メインストリートに到着っ!」
エバンズ軍曹はどこか楽しそうに言った…
そんな彼にヒューイ軍曹が訪ねた。
「エバンズ、何がそんなに楽しいんだ?」
「ん?いや別に。ほら、こんなどんよりした町だろ?少し位雰囲気をよくしようと思ってさ。」
「…中尉の顔見てみろ。
雰囲気、よくなったと思うか?」
アンダーソン・マクガーウィン中尉。メインストリート全体を見渡し、眉間にシワを寄せる彼は、このアルファ3の副官である。
「よし、作業を開始する!各自、持ち場に付け!
重機を操作する者は周りに注意を払うように!」
アンダーソン中尉の指示で部隊は素早く作業にかかった。
メインストリート上の街灯やポストはドーザーになぎ倒され、路上に駐車していた車は装甲車に押し退けられた。
その後を、掃除係の隊員達が歩き、路上のゴミを拾い集める。
朝日が昇りきり、辺りが太陽の陽射しに包まれる頃、滑走路の準備は整っていた。
その様子を確認したアンダーソン中尉は満足げな笑みを一瞬浮かべ、だがすぐにいつもの強面になって言った。
「よぅし、皆、よくやった!!ハンビーに戻って警備地区に引き返すぞ!!
…これでチーム22も楽に到着出来るだろう。」
アルファ3の隊員達の乗った車列が町中に消えていく…
8/10 AM6:00
ヨウルシャード市総合体育館
チームベータ全滅の訃報は既にマーティン少佐の耳に届いていた。
少佐は、すぐに各持ち場の責任者を集め、会議を開いた。
もちろん、議題はチームベータを全滅させたイーターについてであった…
「少佐!イーターとは、何ですか!?何かの生物なんですか!?」
「イーターの存在は、国の最重要機密に該当する。
よってこれから私が話す事はここにいるメンバーの中だけに留めてほしい…」
ゆっくり、落ち着き払って話すマーティン少佐とは裏腹に、会議の参加者達は焦り、憤っていた。
「イーター…。それは人間がType6ウイルスに感染し、死亡する際に産まれる知的生物の総称だ。」
「知的生物?それじゃ、我々と同じ様に話し、武器を使うのか?人間を襲うのか!?」
「ああ、そうだ。奴等の主食は人だ。イーターはウイルスとして人間に寄生した瞬間から、宿主の養分を吸い取り成長していく。
初めは、ミジンコの大きさにも満たない小さな生き物だが、宿主がイーターの成長に必要な環境を整える度に大きくなる…」
「イーターの成長に必要な条件って、つまり温度、湿度、それから未発見の最後の条件なのか?」
「その通りだ。」
「じゃあ、俺達はそんな化物を体に飼ってるのか!?」
「そうだ。イーターは、人、1人に必ず一体ずつ寄生している。つまり、人が1人死ねば、その瞬間に一体のイーターが誕生する。」
「待ってくれ、今ヨウルシャードの発症者数はここに避難してきた人数を除いた、1万9千程だと推測できるが、そいつらが全員イーターを産むんだろ…
そしたらここはどうなる!?」
「産まれたイーター達は生きた人間の臭いを本能的に辿る。つまり、近い内にこの総合体育館にもイーターが押し寄せて来るだろうな。」
「来るだろうなって、そんな2万近くいる奴等相手にたったこれだけの人数でどう戦うんだよ?」
「既に援軍はよんである。心配ない…」
そう言ってマーティン少佐は、黙り込んだ。
8/10 AM5:50
ヨウルシャード駅構内
突如現れたイーターの襲撃。
チームベータは壊滅、残されたのは彼等が持ち込んだ武器に器材、そして列車。
巧く身を隠し、何とかイーターの襲撃から逃れたアン・パターソン。
彼女は未だ震えが止まらない左手でペンを握った。
書き留めなくては…
フリーライターとして有名になる為ではない。このヨウルシャードの町で起きている恐怖の出来事を外の人に知ってもらう為に…
アンは今しがた自分のすぐ近くで起こった出来事をつぶさに箇条書きした。
【目の前に現れた黒塗りの列車。
降りてくる防護服を着た人々。
彼等は何かの調査に来たのか?
何かを仕掛けに来たのか?
彼等の中の一団がプラットホームの出口へ向かうとき、奴等が現れた。
イーター。そう呼ばれていた。
私は身を隠していたからその姿を見ていない。
イーターによって彼等は全滅。
辺りは硝煙と血の匂い。
それから、内臓のみを引き抜かれたミイラの様な死体で溢れていた。】
「……うぅ。う、うぅ…」
アンは嗚咽しながら涙を溢した。
突然の出来事に気が動転し、さらには辺りの余りにもむごい光景に哀しみが襲ってきたからだった。
………涙に濡れたノートのページをたたむ。
力強く脚を踏み締め、駅構内のベンチに置きっぱなしたナップザックを手にする。
アン・パターソン。
彼女の真実を暴きたいという強い意志は、いつしか哀しみの涙に濡れた彼女の顔を凛々しい表情へと変えていた。
朝焼けの町並みが、アンを迎え入れるように呑み込んでいった…
怖い話投稿:ホラーテラー ジョーイ・トリビアーニさん
作者怖話
Yowll Shard City (Infection2) story11505
Yowll Shard City(Team22) story11550