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『誰もいない、誰もいないんだ』
『何かが起こってる…ぼ、僕に何かあった時の為に記録しておく』
画面には父親の顔が映っていた。目が血走り汗だくで恐怖に包まれた顔。
『お〜い、だれか!だれか…』
『なんで、なんでこんな事に…』
歩きながらカメラを持っているせいか、画面が激しく動く。
『明子〜!しんや!あけみ〜!』『どうなってるんだよ…みんな…』
父親の、上がった息と地面をする土の音だけが聞こえる。
『あっ!おいっ』
揺れる画面が一瞬だけ立ち尽くすしんやをとらえた。
『おいっ、しんや!』
『どうしたんだよ、何してんだよ!』
『しつかりしろっ!』
父親は肩紐でカメラをかけたのか映像は地面ばかりを映していた。
ビンタした様な鈍い音がした後しんやの声が聞こえた。
『健二…あぁっ!ダメだ!逃げるぞっ!』
『えっ?』
『走れっ健二!』
『なんなんだよ!』
『ええから走れっ!』
『な、なんか後ろからきてるのか?』
『た、たぶんな!絶対に後ろ見るな!』
『ええっ!マジかよ!』
『何なんだよ?』
『お、俺、見てもうたんや…そ、そんなんええわ!今は死に物狂いで走れっ!』
『ちょっ、なんで急に止まるんだよ!』
滑り込む様な音がした。
しんやが止まったのか…?
『あぁ〜あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』
『しんや!なんだよ、なにしてんだよ!』
『おい、ふざけるのはやめろよぉ』
『しっ、しんや…、どこにいくんだよ?』
『そっ、そっちはあぶない、崖だぞ!』
『落ちるか……ら………………』『……………………ぎゃーっ!』
突然走り出す父親。
かなり走った所で振り返り、思い出したかの様にカメラを持ち、今来た方向に向ける
『ハァハァッ、ダメかもしらん…見てしまった…ゲホッゲホッ』
『何かがいる…何かが』
画面は真っ暗な森の細道を映し出していた。
『あれは、ハァハァ…あれはなんだ……』
『何個も…何人も…ひとじゃない…ひとじゃ…』
『何だよ?何なんだよあれ?』
『来るなぁ!…』
『やめろっ!来るなっ!お前っ!』
その瞬間カメラが飛ばされた。
カメラは何も無い森に向いている。
『た、頼む!やめてっ…や…め…て…あき…こ…ぉ………………』
ぼうぜんとテレビ画面を見ていた俺はテープが終わり砂嵐になっていたのも気づかなかった。
どう言う事だ………要するに…
テレビとビデオの電源を切りながら考えていた…
テレビ画面が暗くなり徐々に俺が映し出された。
何か後ろにいる…その画面には母が俺の後ろに立っているのが見えた…右手に何かを持って…………………
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話