中編5
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地蔵盆:上

文才が無い為に無駄に長文となってしまった事と、文中には実際の背景なども感じていただきたいため不快に感じる方がいるかもしれない言葉も綴られておりますので予めお詫びを申し上げます。

私の住んでいる町は古い都のあった町です。

歴史と情緒に溢れていて少し不便なところもありますがとても素晴らしい所です。

・・・・・・と、言えるのは実際は市の中心地辺りくらいのものでして、

私の住んでいる所の周辺はまさしく田舎としか言い様の無い場所なんですよ。

まあそれでも歴史の古い町でして、そういった場所には恐らくは付き物なのでしょうが近辺には被差別地域が沢山御座います。

俗に言う「同和地区」「部落」ですね。

「石を投げれば同和に当たる」と言われるほどにその数は多く、私の住んでいる地域も隣町や隣の隣といった具合で徒歩30分圏内に4~5つ程が存在しております。

確かに古い町ですので差別意識等は内包的には持っている方も多いかと思いますが、私自身はこれまで一度も強く意識した事はありませんでした。

前置きが長くなりましたが以前に私が遭遇した事件はこの地域と普通に隣人として存在されている人間の恐ろしい心の黒い部分が因果として起きたものだったと思います・・・

あれは数年前のこんな季節の事でした。

私は日々の暮らしに追われて自己管理が不足している自分の体を鏡の前で嘆いております。

このままではダメだ!!運動をして体を動かさないと!!

そう強く何度目かの決意を致しました・・・・

今まで通販、特殊なトレーニングとお金さえ出せば手軽に痩せれると言う謳い文句に引っかかり結果として継続せずに無駄なお金を捨てるといった経験をしてきた私は地道にウォーキングを初める事に致しました。

大体が時計が10時を回ったころに自宅を出発し日付が変わるころに自宅に到着するといった感じです。

飽き症な私にしては殆ど休むことなく続けられ吐息の白く染まる頃から田が青く色づき蛙の合唱が始まる季節まで続きました。

最初は特に決まったコースも無くぶらぶらと万歩計の数字だけを気にして歩いておりました。

しかし、ふとした折に路傍にある地蔵に目を止めました。

まあ何の変哲もない路傍に佇むお地蔵さんなのですが、今まで気にも留めてなかったのですが界隈には至る所にお地蔵さんが居りました。

のんびりと歩いていると普段は気付かない風景に気付き、心にもゆとりが現れるのかそこはかとなく趣を感じておりまた。

風景を観察するようにあちらこちらを歩いていると一つの法則の様な事実に気がつきました。

お地蔵さん自体は土地柄か至る所に沢山あるのですがある特定の場所には必ず存在しているのです。

特定の場所以外には特に法則性も無くあちこちに乱立している感じでしたが、その特定の場所だけは必ずお地蔵さんが存在していました。

その場所は必ず町の境目でその町に侵入する為の路地や小道の脇に必ず立っているのです。

あたかもその町への入り口であるという印かの様にも見えました。

それに気づいた私はその特定の地蔵をなぞる様に隣町との境目をぐるりと一周する様に歩いて回るのが習慣となりました。

そしていつの頃からかは忘れましたがポケットにお菓子等を忍ばせ、最初と最後の二度顔を会わせるお地蔵さんに供える様になったのです。

私の自己満足でしかありませんが何となく自分で微笑ましくてずっと続けておりました。

そんな事をしながら季節が巡り、夜になっても昼間の熱気が残りうだる様な頃になりました。

その日はいつもの様にいつものコースを巡っておりましたが、不意に前方に仄かな明かりが幾つか揺らめいているのを発見致しました。

・・・・あれは・・・もしかして・・・

そうです、自治会の青年部の人たちでした。

その日は地蔵盆の日でして、提灯を携え各地にある町内の地蔵を清掃して灯篭(行燈のようなもの)

に火をともし供えるといった行事が行われていたのです。

本来なら町内の男衆である私も準備から参加してそこな一団に加わっているはずなのですが、仕事が抜けられず準備の時間には間に合わないと言う理由で抜けさせて頂いていたのです。

一応は断りを取ってあるとは言え、休んでいるのにこの辺をフラフラしてる所で顔を会わせるのは気まずいな・・・・・

なんとなしにそんな考えが頭を過ぎり、反射的に目の前のお地蔵さんの横を抜け細い路地に入りました。

先述の通り印であるお地蔵さんの向こう側は隣町になるのでうちの町の青年団が来る事は無いのです。

そのまま深く考えた訳ではありませんが隣町をの中を適当にうろついて反対側に抜けて家に帰ろうと思っていました。

しかし隣町なのに普段ほとんど足を踏み入れないその町はまるで異国の様にも感じられました。

道は細く入り組んでおり、周りには一見して同じ家かと思えるような外観の家屋が建ち並び、街灯が殆ど無いせいかとても暗かったのです。

入り組んだ暗い道を大体の方角だけ見当をつけて進んでいたのですが行き止りや、幾条にも枝分かれした辻があったりで完全に方角をを見失ってしましました。

有体に言うなら迷子になってしまったのです・・・・・

しかし、なんだかんだ言った所で隣町だしなんとかなるだろうと特に悲観はしてはおりませんでした。かなりの時間を彷徨った気が致します。

流石に少々ですが焦り出して来た私ははっきりと頭の中で脱出の方法を意識する様になりました。

その辺の家の人に聞いてみるか・・・・・

だけど夜も遅いしな・・・

それにいくらなんでも明らかに散歩してますって格好だし・・・

こいつ近所で迷ってるの??とか思われると恥ずかしいよな・・・・・

色々な考えが頭を巡っていると少し開けた場所に出ました。

それまでは路地や民家の密集地帯と言った様な場所だったのですがその一角だけがポツンと空白の様に空き地になっており、

その中心地に少し黒ずんだ木の柵で囲われた社の様な物がありました。

ぐるりと社の敷地を囲んだ朽ちかけた木柵は一辺がおよそ30M程度だったと思います。

敷地内は端から見ても雑草が伸びて藪と化し、荒れ果てて廃社である事が見て取れました。

疲れ果て体は汗まみれでベトベト、喉はカラカラ・・・・

こんな所じゃまともな手水舎も無いだろうなと思いつつもそこに足を踏み入れました。

藪を踏み分けながら敷地をうろつきましたが、案の定そんな良いも無かったのですが代わりに石造りの腰掛が目に留まりました。

ちょっと一休みするか・・・

腰を下ろし夜風を浴びながらゴロリと腰掛に横になりました。

気持ちいいな・・・

ドスン!!

気がつくと藪に囲まれていました。

どうやら疲れのせいか、そのまま転寝をしてしまい腰掛から落ちてしまった様です。

はぁー・・・明日も仕事だってのに俺は何やってんだろ・・・・

草むらに包まれながら今まで風情を感じていたものが急にやるせなくなりました。

虚無感が湧きあがり、体を起こそうとした刹那

「イやあああああああああああああああ!!!!ヤメテえええええええええええええ!!!!」

闇の帳を引き裂く悲鳴が木霊してきました。

つづく

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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