病院に帰ってから、俺は先生とはあまり話さないようになった。カウンセリング中、黙る俺に困った表情をする。
代わりに看護婦と話すようになった。どうせ地獄に逝く前に、全てが知りたい。
「閻魔様が初めて死んだ人間って聞いた事があります」
「…」
「もしかしたら、生前とても嫌な目にその人は逢ったんじゃないですか?で、人間を恨んでる。貴方が言うように人はとても弱い…それをわかってて地獄を作ったんじゃないですか?全てこうなる事がわかってて」
「…」
むちゃくちゃだ。正直俺の憶測でしかない。バチ当たりでもどうせ地獄にもうすぐ逝く身…関係ない。ただ…看護婦はずっと黙っていた。
「地獄は、今俺がここに居るから信じます。でも、天国はないんじゃないですか?」
その途端、看護婦はなんとも言えないような笑みを浮かべた。
「…天国はありますよ」
俺は今、地獄の門の前にいる。自分で扉を開けて中に入った。簡単に開いた。
奇妙な場所だった。ぐちゃぐちゃになったかと思うと、また一瞬で元に戻る。さまざまな国の人たち、中には十二単を着た人や、教科書で見たようなヨーロッパの貴族も中にはいた。多くの人たちが苦しみ悶えていた。
足がすくむ…
いつか、何回も生まれ変わった両親、友人、知人もここに来るだろう。
…待ってる
怖い話投稿:ホラーテラー 携帯中毒さん
作者怖話