幽霊話ではありませんので、興味のない人はスルーしてください。
同僚の晴美はシュレッダーが好きで、不要と思えばなんでもシュレッダーにかけてしまうちょっと危ない女である。
一度、主任のプレゼン用の資料をシュレッダーにかけ、大目玉をくらったにもかかわらず
その習性は直らない。
今年の1月のことだ。私は会社に忘れ物をしたので戻ってみると、晴美がいた。
「君も忘れ物か?…」と声をかけようとしたが、彼女の様子がなんだかおかしかったので、そっと隠れて様子をうかがった。
彼女はシュレッダーのそばにしゃがみ、横にあるゴミ箱の上でなにかをハサミで細かく切っている。
・・・ん?シュレッダー故障か?
よく見ると、写真のようなものを切っているのだが、晴美の顔が尋常じゃない。
どう、表現したらいいのか・・・
まるで、この世の憎しみを一手に背負っているみたいな・・ただならぬ怖い顔だった。
普段の少し天然で、明るい晴美とは別の顔を見た私は、見てはいけないものを見てしまった感じで、戻ってきたことを一瞬後悔した。
しかし、次に晴美のとった行動に僕はくぎ付けになった。
写真か何かを裁断し終えた彼女は、目の前のゴミ箱をじっと見ていたが、なかに入っていた不要な書類を手に取り、次々にシュレッダーにかけていく。
故障じゃないのに、どうしてさっきは入れなかったんだ?
彼女は空になったゴミ箱から、先ほど自分がハサミで裁断したものを出し、じっとながめている。
シュレッダーで裁断した方が、もっと細かくできるぞ..好きだろ?なにをしているんだ?
晴美は再びハサミを持ち、一度裁断したものをまた細かく切り始めた。
表情は変わらない。まるで怖い鬼か般若だ。
なんと彼女はその後も3回、同じことをくりかえしていた。
最後は、もう指先でしかつまめないぐらいの小さな紙片になっていた。
最後の紙片を自分の目の高さに持ってきて、表情は鬼の顔のまま「ニヤッ」とほほ笑んだ。
彼女は、私に気付かずに帰り支度をして帰って行った。
当然のことだが私はゴミ箱の中を確認した。
執拗なまでにハサミで裁断したものはなんだったのか?
写真じゃなかった。
ハガキ・・写真つきの年賀ハガキだった。
私は、それを確認するために壁にかけてあるホワイトボードを見た。
やっぱり・・・
ホワイトボードに飾ってあった年賀状がない。
それは、去年の春、転勤していった私の同期の森田から部署宛てに来た年賀状だった。
よく子供が小さい頃は、家族写真を年賀状に使用するが、森田からのもそれだった。
森田は妻子持ちだったが、晴美は森田に好意をもっており、彼自身それを知っていた。
私や、周りの何人かもそのことを知っていた。
しかし、二人とも間違いを犯す人間ではなかったため、何もことは起こらなかった。
晴美がいるのに、なんであいつは部署宛てにこんなものをよこすのかなあ・・
ま、なにもそんなことまで考えていないだろう・・
私だって、今日の晴美の行動を見るまでは何にも思っていなかった。
あれ以来、私は晴美に対して今まで以上にやさしくなった。
別に、彼女を哀れに思っているわけではないし、恐怖に思っているわけでもない。
恋が芽生えたわけでもない。
晴美の別の一面の心理って、男が守らなくてはいけない使命のような気がしたからである。
女の神経って男より図太いし、デリカシーがないと思っていたけど・・
晴美のしたことは女の怖い一面かもしれないが・・
違うと思う・・・うまくみんなに伝えられないけど・・
まあ、若い時の私なら、到底受け入れられない出来事ではあったが・・
男女を問わず厳しい反論があるかもしれませんが甘受します。
私の表現力の乏しさはお許しください。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話