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中編4
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図書館

非常にありきたりな話です。

俺には好きな人がいた。

再開発の影響で閉館寸前のよく行く図書館で、いつも同じ席に座る、色白で20代前半の女性。

彼女を見て一目惚れしてしまい、図書館が閉館してしまえば、会うのが難しくなるし今日こそ声かけようと決心した。

俺「こんにちわ。いつもその本読んでますが、すごい好きなんですね。」

急に話しかけられ、女性は戸惑ってた。

俺「実は前から話したいなと思っていました…」

正直に本心を伝え、

自己紹介し、話を続ける。

女性の名前は美沙。

美沙はただのナンパと思ったらしいが、ただやりたいからとかそんな下心はないし、好きな作家や作品の話をし、美沙の警戒心も解け、話が盛り上がる。

初めて見る美沙の笑顔に心を打たれ、最初は気になる存在だったが、もう完全に好きに変わっていた。

俺「あの…よかったらこの後、ご飯とか行きませんか?」

思い切って質問した。

美沙「…ごめんなさい、この後行かなくちゃいけないから…」

質問して後悔した。

初日に誘い出したら嫌がるに決まってる…

俺「明日…明日も来て話をしていいですか?」

美沙「…もちろん、待っています。」

翌日以降も決まった時間に決まった席で会う俺達。

俺にとってとても幸せな時間だった。

だがいつも、その席で俺が先に帰る別れ方だったので、俺は違う場所で美沙と食事したり映画見たりデートしたくて堪らなかった。

勇気を振り絞り、美沙にその思いを打ち明けた。

美沙「…ごめんね…それはできないの…でも代わりに、閉館後に2人だけで会わない?」

思いもしない返事だったが、2人きりで会えるなら…と話の続きを聞く。

美沙「…D棚の本の裏の小窓ね、鍵が錆び付いてて鍵が掛かってないの。再開発で図書館はもう無くなるから、鍵は交換されてないから、そこから入れるの…そこで夜…会いましょう。」

なぜ外で会えないかが疑問だったが、2人で会える嬉しい気持ちの方が強かった。

約束の時間まで外で時間潰し、美沙の為に飲み物や菓子類を軽く買って図書館の小窓へ…。

美沙の言った通り開いてて、図書館の甘いセキュリティーに感謝した。

小声で美沙を呼び探す。

美沙はいつもの席の所で立って待っていた。

俺「美沙!」

嬉しくて思わず抱き締めてしまったが、慌ててごめんねと一言。

美沙はまた満面の笑顔で俺の手を握った。

美沙「あたしなんかを見つけてくれてありがとう…」

俺の手を握ったまま、

美沙は俺の口へ顔を運び、初めて口づけを交わした。

抱き締めて、幸せを全身で噛みしめる。

その後いつもの席で話をする。

菓子類を置いていたが、ご飯食べてきたのか美沙は菓子類に手を伸ばさなかった。

時間は夜11時…。

幸せな時間は過ぎるのが早い。

明日も朝から仕事だし、危ないから家まで送るよと美沙に言う。

美沙「………うん。」

か細い声で返答する美沙。

手を繋ぎ、小窓から外へでる。

美沙が小窓へ出掛かり、手を支えようと振り返り、手を差しだした時、窓から見える図書館の天井に奇妙なものが見えた…。

何か…

黒い雷雲のような…

とにかく黒い煙の塊…

まさか火事?

煙草など吸ってないが、焦る俺。

俺「美沙!早くこい!」

振り返り、黒い煙を確認した美沙。

美沙「…ごめんね……やっぱり無理だったみたい…」

笑顔だがその目は涙をうかべてた…

俺「え?…ど…どういう事?」

美沙「…あなたに気づいてもらえて…

あなたに会えてよかった…一生忘れないよ……いい人…見つけてね……」

美沙が涙しながら

今まで最高の笑顔をした瞬間、

美沙は窓から出掛かった態勢のまま、

天井の煙に吸い込まれるよう美沙の体が煙に包まれ、

黒い煙もやがて消え去った…。

状況が飲み込めなく、

呆然とする俺…

まだ美沙の手の感触が残っている…

美沙がいなくなってしまった事で、自然と涙が流れてきた…

小さな希望を信じ、翌日も同じ時間に行ったが…いない。

職員にも聞いたがそんな人、今まで見たことないと言われ、さらにショックを受けた一言…

「あの席の隣で1人で喋ってるアナタならここ何日も見てる」

帰りの足取りは非常に重い…

もしかしたら美沙は幽霊だったのか?

でも足もあったし、体温もちゃんと感じた…

そんなバカげた事…

と思うが幽霊なら話が繋がる…

俺が誘っても断っていたのは、あの場所から動けない体で、俺が誘って外に出てしまったから、あの黒い煙の何かに連れていかれたのか…?

俺のせいじゃないか…

何もかも…

外に連れて行かなければまた翌日も会えたのか?

後悔と美沙に会えない気持ちで、道に倒れ込み泣く俺。

数ヶ月後、図書館は壊され新たな商業施設の建設が始まった…

美沙を失ったショックで俺は近くの街へ引っ越した。

10年後、何度か恋愛はしたが続かない…

図書館の跡地にできたのはスーパーとファミレスなどが入った大きなビル…

地元の友人に、ある噂を聞いて久しぶりに戻ってきた。

「あのビルに20代前半の色白の女性の幽霊がでるらしい」

会いに行った…………。

怖い話投稿:ホラーテラー Shadyさん  

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