episode 0 ~出張~
老人は一代で築き上げた豪邸、その自慢の書斎で、皺の入ったプロフィールに目を通し溜め息を一つ吐いた。
氏名 : 都築 白使
性別 : 男
生年月日 : 1973年
資格 : 普通免許
特技 : 英検二級
その他 : 特に無し
その世界では有名なセンセイからの紹介という事もあり少しだけ期待していた老人は、何の変哲も無い内容に落胆しその紙切れをシュレッダーに食わせる。
その拍子に一枚の写真が封筒から舞い落ちた。
老人は写真の男を一目見た途端に、そう長くはない寿命が更に短くなるような妖しげな色気を感じ狼狽した。
都築白使… この男なら逝けるかもしれない。
ボキは今、すこ~しご機嫌斜め。
全然知らない町の、全然知らない駅前の、全然知らないコンビニのおばちゃん店員に、全然知らない煙草を買わされたからさ!
マルボロライトメンソールボックスで
聞き取りにくかったのかな?
マルボロライトメンソールボックスで
なんでコンビニにこんな煙草置いてんの。
なんか中国(?)の湿っぽいそれに火を点けると、おっ! 意外にイケるよ、コンビニのおばちゃんありがとう。
すっかり機嫌も直った所で、今回の依頼を頭の中で確認する。
え~っと まず、金持ちじいさんに会って金持ちじいさんのじいさんに会って話をして金持ちじいさんの方が生き延びれば今月の給料が支給されると。
うん、訳が分からんネ。
ウチの所長は、毎回言葉が足りない。
ま、行くだけ行ってみるかね。
暫く歩き交差点で信号待ちをする、そこでは霊媒師(三流とオモワレ)が何やら御祓いをしていた。
「この交差点には得体の知れないモノが憑いておる!」
あんたも出張ですか、ご苦労様さんです。
ボキは信号機の上に座っている坊主に労いの言葉を掛ける。
坊主は三流霊媒師の眼前に行き、自分がこの先の祠の者である事をナンとか伝えようとするが流石三流、気配は感じるがそれ以上はワカラナイ。
坊主イライラしてきたようだな、その気持ち分かるよ。
ボキはコンビニの件を思い返し、一人頷いた。
暫く二人のやり取りを静観していたが埒が飽かないと思い、三流に事の次第を告げようと近づくと、アララ 坊主祠に帰っちゃったよ、三流得意満面、これからこの交差点、事故増えるんだろうな~
などと寄り道しつつ、目的地を目指す。
やっと着いたよデッカい門構え。
「たのも~」
いや、一度言ってみたかったんだよね。
「たのも~」
いや、二度目で恥ずかしくなったんだよね。
三度目を言おうか迷っていると、門が開いて中に通されました。
さて、屋敷に入ると広いのなんの、でも、奥の方からなんか凄い気配がするよ!
ボキはちょっとビビりながらもすました顔して平静を装います。
だって探偵だもん。
一応決めとかないとね、顔だけでもね。
暫くすると気配の正体に気づいちゃいました。
先客がいたのね、しかも同業者、しかも先輩。
「どうも~!都築で~す!」
なんか辛気臭い部屋で先輩と、依頼者らしきじいさんに明るく挨拶。
軽くスルーされると、先輩に目配せされ、その先の布団の上に視線を向ける。
ん?ミイラ発見!これが金持ちじいさんのじいさんか、ナムアミダブツ ナムアミダブツ…
よし、これでいいっしょ、先輩。
後はこっちのじいさんだけだ。
え~っと 先輩 まだ話してなかったのね、じいさん憑かれちゃってるのにね。
ここはボキが解説してあげちゃおう。
金持ちじいさんのじいさんが死ぬ前に父さんが死んじゃったから、死んじゃった父さんは自分の父親は誰が送り出してやれるのか心配だったんだね。金持ちじいさんのじいさんは送り出されなくても勝手に旅立ったのにね。
要するに、金持ちじいさんにその父さんが憑いちゃってる訳、自分が死んじゃってからず~っとね、未練だけで訳わかんないまま。
ん?でも待てよ?先輩がいるのになんでボキが呼ばれたのよ!意味わかんねえYo!
兎に角、金持ちじいさんから父さん引っ剥がしますか。
先輩、スッゴい目でこっち睨んでます、恐いデス。
急に襖が開いて金持ちじいさんの息子登場!
や~助かった、先輩のデビルアイに焼かれるところですた。(たけし風)
息子見てやっと理解できますた。(←くどい)
霊力のある(笑)探偵(笑)が二人いないと、翁(笑)を助けられない理由。
金持ちじいさんず~っと憑かれちゃってたから、体乗っ取られて、知らず知らず今度は自分の息子に入っちゃったんだ。
複雑。
え~っと まずミイラのじいさん呼び出して、金持ちじいさんの父さん引っ剥がしてミイラのじいさんに連れて行ってもらって、金持ちじいさんの体カラにしたらすかさず息子から金持ちじいさん抜き取って元の体に戻す。
出来るんでしょうか?
~続~
怖い話投稿:ホラーテラー ジロウさん
作者怖話