雨の降る昼下がり
古びた家に
訪問者がまた一人
まだ幼い顔立ちの
若い少年だ
おばさんの手招きで
家の中へと
吸い込まれてゆく
ギィー…バタン
いつものごとく
おばさんが沈黙を破る
『どうしたんだい?』
「僕の家族を返して」
『それは無理な問題だね
「ここに来たら何でも叶えてくれるんだよね?だったら…だったら返してよ」
『誰がそんなこと言ったか知らないが、ここはそんなとこじゃないさ。
坊や帰って他にいきな』
泣き出す少年
中年のおばさんは葉巻に火をつける
数十分が経っただろうか…
『どうなるか知らないが一つだけなら方法はあるがね…。』
「それで返ってくるなら…何でもいいんだ」
『だったらそこに横になりな』
少年はベッドらしきものに横になる
変な香りのお香で少年は眠りにつく
中年のおばさんは分厚い本をパラパラとめくり
葉巻の火を消した。
……。
どこだろう
少年は
燃え盛る炎の中に
呆然と立っていた
家族の叫び声・呻き声が聞こえてくる
「嫌だ嫌だ」
耳を塞ぎたくなる
プツン……
地面に倒れる
その瞬間回りの風景が変わる
僕が見える
パパにママにお姉ちゃんだ
なんで僕はここにいるんだろう
少年は空から自宅を見ていた
あれは誰だろう?
知らない人が僕の家の回りをウロウロと歩いている
「叔父さん?」
その時叔父さんらしき人が僕の家に火を放った
「パパ気づいて、叔父さんが火をつけてるよ」
叔父さんらしき人はどこかへ走りさってしまった。
パパ…パパ
家は段々と炎に包まれていく
こんなの嫌だよ
こんなの見たくないよ
叔父さんなんでなんだよ
その瞬間
風景が写真の様に
ペラペラとめくれていく
一枚、二枚……。
『全て終わったよ』
意識が現実世界に戻ってきた
父・母『起きなさい
姉『起きろぉ
「パパ、ママ、お姉ちゃん戻ってきたんだね」
しかし真っ暗な世界
「あれ?何も見えない」
『アンタには家族の声が直接聞こえてるだろ?』
「そうだけど…何も見えない。何も見えないよ」
『家族の代替にあんたの視力は失くなってしまったんだよ』
「そっか、だけどみんながいるからこれからは淋しくないよね」
あんたの夢はホントに美味かったよ…
「…??」
「おばさんありがとう」
『あんたにゃ見えないだろうがわたしゃ20代のお姉さんなんだがね…ヒッヒッヒッ』
ギィーバタン
トントン…
『また新しいお客さんかね??』
若い女性は家の中へと手招きをする……
怖い話投稿:ホラーテラー 猿飛さん
作者怖話