「あっ、おばさん?Aです。おじさんいますか?」
Aは相手が電話口に出るまでの間、俺に手短かに説明をする。
「俺のおじさん、寺の住職なんだ。いったい何が起きてるのか教えてもらおうと思ってさ。」
「おじさん?こんにちは。実は聞いてもらいたいこと・・・」
「えっ?おじさん?・・・」
「ダメだ!雑音でよく聞こえない!」
Aの苛立ちが伝わってくる。
「えっ?・・・とにかく行きます!!」
おじさんとの電話は聞き取りにくかったが、今すぐ寺に行かなくては、という事だけは理解できた
のだと緊張した顔つきをみせるA。
Bだけを連れ出そうとも考えたが、事の成り行きを説明しなくてはならない。
いきなり説明されたBはショックで取り乱すに違いない。
「よし、全員で行こう!」
Aの決断は早かった。
これからバイトがあるとしぶるBとCだったが、あまりにも俺とAが頼み込むので仕方なく休みの連絡を入れてくれた。
車内では「楽しい事じゃなかったらお前ら許さねーかんな!」と冗談まじりに話すCの笑顔とは対照的に無表情に外を眺める俺。
1時間程で着いたのは、セミの声が真っすぐ耳に届いてくる林の中の寺。
おじさんは「よく来てくれたね。」と笑顔でむかえてくれた。
俺達は、おじさんの書斎に通された。
Aのおばさんが、飲み物を運んで来てくれたが、おじさんの目配せですぐに書斎を出て行った。
Aが説明する前におじさんが口をひらいた。
「君たち、何をした?」
さっきまでの温和なおじさんの顔ではない。
「B、落ち着いて聞いてくれ。」
そう断りを入れ、Aはおじさんとあの日廃墟に行ったメンバー全員に語り始めた。
全てを話し終えた時、Bは顔色を失い、じっと自分の手元を見つめていた。
「今更叱っても遅いが、そんな所に行くんじゃない!!」
おじさんの強い口調に誰もが下を向く。
「廃墟なんて所は、時間が止まった死んだ空間なんだ。淀んだ空気、壊れた物、闇・・・。悪いモノが集まってもおかしくないだろう!?」
みんながおじさんの言葉に気圧されているなか、Bが尋ねた。
「除霊しなきゃダメですよね・・・?」
「B君、除霊じゃなくて浄霊だよ。」
「誰かに憑いた霊を取り除いて、その霊はどこにいく?」
B「他の・・・誰かのところに・・・」
「その通り。結局その場しのぎで他の誰かを苦しめる・・・。」
「さあ、B君、病院に行っても治らない君の腰のだるさを何とかしよう。」
おじさんの冗談めいた言葉が、緊張しきった俺達のせめてもの救いとなった。
「その前に、ちょっと電話してくる。」
書斎に残されたいつもの仲間でBを励ましながら氷がすっかりとけた飲み物を渇いたのどに流し込んだ。
おじさんが書斎に戻ってきた。
「驚かして悪いが、相当念が強い霊だ。B君から離すのも命がけとなるかも知れない.おじさんが浄霊までいきつかなかった時、ある策を試す。協力してくれる古くからの友人が来る事になったから、A、みんな、その人が来たら説明頼むぞ。」と言い残し、おじさんとBは書斎の隣りにある部屋へと移動した。
“そんなの驚くに決まってるでしょー!!”
俺は心で叫んだ
怖い話投稿:ホラーテラー たかしょうさん
作者怖話